ケーブル絶縁材の健全性診断に向けた非破壊検査システム開発(3)

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カテゴリ: 第17回
ケーブル絶縁材の健全性診断に向けた非破壊検査システム開発(3) Development of nondestructive inspection system for soundness diagnosis of cable insulating material (3) 原子燃料工業㈱ 石井 元武 MotomuISHII Member 原子燃料工業㈱ 藤吉 宏彰 HiroakiFUJIYOSHI Member 原子燃料工業㈱ 礒部 仁博 YoshihiroISOBE Member 関西電子ビーム㈱ 川島 崇利 TakatoshiKAWASHIMA Non-member 関西電力㈱ 冨宅 ゆかり YukariFUKE Non-member 関西電力㈱ 藤崎 恭史 YasushiFUJISAKI Non-member 関西電力㈱ 大本 正人 MasatoOMOTO Non-member Abstract We have researched radiation-induced deterioration behaviors of cable insulation materials used in nuclear power plants and a nondestructive inspection method to detect the behaviors in our past reports. The deterioration was generated by electron beam irradiation simulating gamma-ray irradiation in the field. As a result, we found it possible to detect the deterioration by comparing the natural frequencies of the cables before and after the irradiation through our original digital hammering inspection technology using AE sensor. In this report, the replaced cables used in an actual nuclear power plant for 30 years were irradiated and the effect of irradiation temperature was studied. The results indicated that the cables had almost the same durability against the irradiations at high temperatures and at room temperature. Moreover, we estimated the diagnostic reference value in the natural frequency by correlating the elongation at break acquired by tensile test and the frequency. Keywords: hammering test, AE sensor, non-destructive inspection, cable, insulating material はじめに 原子力発電所で使用されるケーブルの多くは電気絶縁性の高い高分子が利用されているが、高分子は熱や放射線により次第に絶縁性能が低下する[1]。 ケーブルの絶縁性能についてはその性能を損なうことなく、ケーブルを敷設状態のままで劣化度を測定する非破壊劣化診断技技術の開発が進められている[2]。例えばIM 法は破断伸びと高い相関性があり、絶縁材の劣化診断における有用性が示されているが、架橋ポリエチレンなど一部の絶縁材については十分な相関がみられていないものがある[3]。 本報では、関西電力大飯原子力発電所にて供用された実機取替ケーブルを含む複数種類のケーブルに対して、AE センサを用いた打音検査により、放射線による絶縁材の劣化検出を非破壊的に試みた。 2. 経緯 著者らはこれまでに原子力発電所で使用されているものと同等の複数種類のケーブル絶縁材に対して放射線照射による劣化傾向の把握、およびAE センサを用いた非 破壊検査手法(以下、「AE 打音検査」)の適用性確認を目的とした調査を行ってきた[4]。その結果、照射前後のケーブルへのAE 打音検査によって得られる固有周波数を比較することで、放射線照射によるケーブル絶縁材の電気的特性の低下に先行して発生する機械的特性の低下を検出できる見込みを得た。Table 1 に先行研究において用いたケーブルの仕様、Fig. 1 に試験体外観をそれぞれ示す。 先行研究では単心式および3 心式を含む、新規に調達した5 種類のケーブルを対象に室温での電子線照射による絶縁材の劣化度を調査した。本報では上記知見の拡充を目的とし、関西電力大飯原子力発電所において約30 年間供用された取替ケーブルを含む3 種類の3 心式ケーブル試験体について、経年劣化と電子線照射による劣化における照射温度の影響を調査する。 また上記に加え、ケーブル絶縁材の絶縁低下の評価において照射時の温度は重要なパラメータであり、実機ケーブルの敷設環境温度が通常運転時で約48℃、SA 時で約138℃と報告されていることから[5]、ケーブル絶縁材の劣化における照射温度(室温およびSA 時を意識した、耐熱温度に近い温度)の影響調査を実施した。 連絡先: 石井元武、〒90-0451 大阪府泉南郡熊取町朝代西1-950、原子燃料工業株式会社 E-mail: mtm-ishii@nfi.co.jp Table 1 Specification of samples Sample name Material Size(mm) C-1 Insulation : XLPE Sheath : vinyl φ : 41 Length : 300 C-2 Insulation : EPM Sheath : CR φ : 38.2 Length : 300 C-3 Insulation : XLPE φ : 20 Length : 300 C-4 Insulation : vinyl Sheath : vinyl Filler : jute φ : 19 Length : 300 C-5 Insulation : silicone rubber Sheath : silicone rubber φ : 13.8 Length : 300 (XLPE:Cross-linked polyethylene、EPM:Ethylene propylene rubber、CR:Chloroprene rubber) Fig. 1 Cable samples 3.試験体の選定 過去の研究で対象としたケーブルは新規に調達した単心および3 心のケーブルであったが、本報では関西電力大飯原子力発電所にて供用された2 種類の実機取替ケーブル(C-6、C-7)のほか、実機取替ケーブルの経年劣化による影響の比較のため、類似の新品ケーブル(C-8) を選定した。試験体の外観をFig. 2 に、仕様をTable 2 にそれぞれ示す。 なお、実機取替ケーブルであるC-6、C-7 は芯線を覆う絶縁材とシースの間に介在が充填されている。また、C-8 は絶縁材がシースに直接覆われている。 Fig. 2 Irradiation samples Table 2 Specification of samples Sample name Material Size(mm) C-6 Insulation : EPM Sheath : vinyl φ : 27 Length : 300 C-7 Insulation : EPM Sheath : vinyl φ : 22 Length : 300 C-8 Insulation : EPM Sheath : vinyl φ : 18 Length : 300 4.放射線照射 前章で示した試験体に対し、関西電子ビーム㈱が所有する10MeV 電子線照射施設を用いて、電子線を照射した。本照射施設は、透過性、均一性に優れ、商用として国内最高の10MeV 電子線照射が可能である[6]。 なお、実機のケーブル布設環境を考慮すると劣化要因となる放射線はγ 線が主と考えられる。 しかしながら、ケーブル絶縁材のような高分子材料において、γ 線と電子線は吸収線量が同じであれば本質的には同じ効果を与える(二次電子による励起やイオン化の発生、それによるラジカルの生成)ことから[7]、本研究ではγ 線と比較して短時間での照射が可能な電子線を用いて実機環境を想定した絶縁材の劣化を評価する。 照射条件 電子線照射条件をTable 3 に示す。試験体ごとのばらつきを考慮し各照射条件において試験体3 体ずつ照射した。 電子線照射は重大事故時の原子炉格納容器内ケーブル布設箇所周囲の平均線量率を想定し、照射1 回あたりの吸収線量(ここでは水の吸収線量相当。以降、「集積線量」という)を30kGy に設定し、目標線量に達するまで繰り返し照射した。なお、高温照射においては温度管理 のため照射1 回あたりの集積線量を20kGy とし、断熱材治具内に配置して照射することで、照射による温度上昇を維持している。 なお、絶縁材全周に均一に照射するため、試験体を回転させながら電子線を照射した。 Table 3 Irradiation conditions Room temperature irradiation High temperature irradiation Integrated irradiation dose 30kGy/time 20kGy/time Current value 10.00mA 10.00mA Transport speed 2.89m/min 4.33m/min Scan width 1,100mm 1,100mm Total dose (kGy) Number of irradiation 0 0 0 100 4 7 250 11 17 500 22 34 1,000 44 67 1,500 67 100 から受ける拘束の変化を検出し、検査対象の施工状態や健全性を評価する手法である[7]。AE 打音検査装置をFig. 3 に示す。 AE 打音検査要領をFig. 4 に示す。Fig. 4 における各計測点において、それぞれ5 回ずつ打撃して得られる信号波形を高速フーリエ変換(FFT)し、平均化処理することで周波数分布を得る。ケーブルへの打音検査より得られる周波数分布例をFig. 5 に示す。 照射試験体の温度計測 照射時の温度上昇による絶縁材の劣化傾向の調査を目的として、温度計測用サンプルを用いた照射中のシース表面および芯線の温度計測を行った。温度計測結果をTable 4 に示す。室温照射においては最大温度が各ケーブルの耐熱試験温度より十分低くなるように、また高温照射においては室温照射と比較して、耐熱温度に近い温度となるよう照射を行った。 Table 4 Temperature measurement results Sample heat resisting temperature [℃] Position Measured Temperature [℃] Room temperature irradiation High temperature irradiation C-6 100 surface 54.1 77.5 core wire 67.3 81.7 C-7 100 surface 52.2 77.4 core wire 77.9 90.7 C-8 80 surface 57.2 73.8 core wire 67 87.9 5.ケーブルおよび樹脂の劣化評価 Fig. 3 AE Hammering Inspection system Fig. 4 AE hammering inspection method Back side ケーブルおよび樹脂の放射線照射による劣化評価として、AE センサを用いた打音検査装置、および絶縁材の引張試験を行った。 AE 打音検査による劣化評価 AE センサを用いた固有周波数解析は、AE センサが取り付けられた検査対象の状態(重量や形状など)と周囲 Fig. 5 Frequency distribution (C-8: before irradiation) AE 打音検査による計測 照射前のケーブルAE 打音検査結果の一例として、C- 8 におけるAE 打音検査結果をFig. 6 に示す。いずれの試験体も600Hz 付近に分布している。 1400 1200 1000 Frequency [Hz] 800 600 400 200 0 では0.040、C-8 では0.112 となり、いずれも境界値未満となった。したがって帰無仮説「両データの回帰係数の差は0 である」は支持され、室温照射と高温照射の両データにおける照射線量と周波数変化量の傾向に有意な差異はないということかできる。 300 250 Frequency Difference [Hz] 200 150 100 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 Sample number Fig. 6 Peak frequency (C-8, before irradiation) AE 打音検査結果 各照射条件(試験体3 体ずつ)の実機取替ケーブル (C-6、C-7)の室温照射および高温照射の評価ピーク周波数変化量(照射後-照射前)をとった結果をFig. 7~Fig. 9 に示す。いずれのケーブルも、照射後は照射前と比較して評価ピーク周波数は概ね上昇した。これは、電子線照射により試験体が硬化したためであり、先行研究と同様の結果となった。 ここで、統計的仮設検定により、各試験体について室温照射と高温照射の両データの傾向の差の有意性を確認するため、「両データの回帰係数の差は0 である」と帰無仮説を設定し、t 検定を行った。 両データの回帰直線式をy=a1+b1x とy=a2+b2x としたとき、帰無仮説は「b1=b2」となり、回帰係数の差を求めるために、以下に示す統計量を用いる[8]。 50 0 0500100015002000 Total dose [kGy] Fig. 7 Influence of irradiation dose on peak frequency, C-6 300 250 Frequency Difference [Hz] 200 150 100 50 0 0500100015002000 Total dose [kGy] Fig. 8 Influence of irradiation dose on peak frequency, C-7 300 s 2=S(1-R 2) 1y1y11 250 Frequency Difference [Hz] s 2=S(1-R 2) 2y2y22 200 s=j si+s2 ni+n2-4 t= |bi-b2| j i i+ 2 2 ただし、Sx1x1、Sy1y1、Sx2x2、Sy2y2 は両データのそれぞれの変数の偏差平方和、R 2、R 2 は両データの重回帰係 150 100 50 0 0500100015002000 Total dose [kGy] 12 数、n1、n2 は両データの標本数である。 有意水準5%、自由度8 とすると、境界値は1.860 となる一方、t 分布における確率t 値はC-6 では1.773、C-7 Fig. 9 Influence of irradiation dose on peak frequency, C-8 引張試験による劣化評価 絶縁材料は機械的特性の低下が放射線照射に敏感であり、電気的特性の低下は機械的特性が相当低下した後に現れることが多いことがこれまでの研究で明らかになっている[9]。なかでも「破断伸び」の低下は、「絶縁抵抗」などの電気的特性に比べて経時的に良く変化し、劣化初期から低下が検出できるため、予防保全的にケーブルの劣化を初期段階からモニターするためには「破断伸び」を劣化指標とすることが望ましい[10]。 そこで、照射後のケーブル絶縁材への引張試験を行 い、放射線照射による絶縁材の機械的特性(伸び)への影響を調査した。 引張試験はゴム・プラスチック絶縁電線試験方法JIS C 3005:2014 に準拠した方法で実施した。また引張試験片 は「JIS C 3005 4.16 絶縁体及びシースの引張り」に基づき、未照射を含む照射済ケーブルから、それぞれ3 心の絶縁材を抜き取り作成した。試験条件を Table 5 に示す。 Table 5 Conditions of tensile tests Sample C-6-1~18:54samples C-7-1~18:54samples C-8-1~18:54samples Test condition ・test specimen: tubular (C-7,C-8) : plate (C-6) ・stress rate: 500mm/min ・inter-marker length: 50mm ・test temperature: 23±2℃ Fig. 10 Operating tensile test 引張試験結果 引張試験結果をTable6~Table8 に示す。また、各試験体について、室温照射および高温照射の破断伸びと照射線量との関係をFig.11~Fig.13 に示す。Fig.11~Fig.13 よ り、いずれのケーブルも、室温照射および高温照射にお いて照射線量の増加に伴いほぼ同様の傾向で破断伸びが低下していることが確認された。 また、電気学会通則(JEC-6152)においてはケーブル絶縁材の終点基準が破断伸び50%と規定されており[11]、いずれのケーブル試験体においても、未照射の状態ではこの基準を満たしている。したがって、実機において30 年間供用された取替ケーブルであっても、その絶縁材は十分な機械的特性を有していることが確認された。 Table 6 Tensile test results (C-6, after irradiation) Room temperature irradiation High temperature irradiation Sample number Elongation(%) Elongation(%) 1 429.1 448.8 2 438.4 453.0 3 431.7 457.8 4 341.6 373.1 5 356.2 360.0 6 356.5 380.6 7 266.7 301.5 8 248.6 303.3 9 266.6 304.4 10 186.6 213.9 11 198.6 201.9 12 194.6 217.1 13 125.1 128.3 14 111.8 124.0 15 104.6 119.4 16 80.4 82.6 17 86.5 94.9 18 94.1 95.2 Table 6 Tensile test results (C-7, after irradiation) Room temperature irradiation High temperature irradiation Sample number Elongation(%) Elongation(%) 1.0 634.2 686.1 2.0 644.5 679.5 3.0 626.7 694.8 4.0 528.9 572.2 5.0 524.4 575.9 6.0 551.9 573.1 7.0 349.6 471.9 8.0 334.0 495.3 9.0 341.6 463.3 10.0 61.7 308.4 11.0 127.1 306.0 12.0 107.3 333.7 13.0 31.5 189.7 14.0 42.1 189.8 15.0 41.5 182.2 16.0 49.8 110.4 17.0 28.2 121.8 18.0 28.6 116.5 Table 6 Tensile test results (C-8, after irradiation) 800 700 600 Elongation [%] 500 400 300 200 100 0 0500100015002000 Total dose [kGy] Fig. 12 Influence of irradiation dose on elongation, C-8 Room temperature irradiation High temperature irradiation Sample number Elongation(%) Elongation(%) 1.0 440.0 437.4 2.0 434.2 433.6 3.0 428.3 457.0 4.0 352.1 388.8 5.0 362.3 384.3 6.0 359.9 367.5 7.0 266.3 310.3 8.0 275.7 316.4 9.0 245.3 319.8 10.0 172.4 217.4 11.0 179.4 215.9 12.0 183.9 220.9 13.0 97.6 106.9 14.0 98.9 114.0 15.0 97.2 123.7 16.0 61.2 75.9 17.0 64.0 72.0 18.0 63.4 77.6 800 700 600 Elongation [%] 500 400 300 200 100 0 0 5001000 Total dose [kGy] 15002000 AE 打音検査の現場適用に向けた検討 各試験体について室温照射および高温照射での評価ピーク周波数と破断伸びの関係を Fig.13~Fig.15 に示す。ここで、統計的仮説検定により、各試験体における室温照射と高温照射の両データについて、AE 打音検査結果と同様の手法により t 検定を行い、傾向の差の有意性を確認した。その結果、境界値 1.860 に対し、t 分布における確率t 値はC-6 では1.697、C-7 では0.744、C-8 では0.204 となり、いずれも境界値未満となった。したがって、各試験体における両データの傾向に有意な差異はないということができる。 上記を受け、AE 打音検査の現場適用に向け、電気学会通則において規定されているケーブル絶縁材の終点基準である破断伸び 50%の指標を用いて評価ピーク周波数と伸びの関係について評価した。 Fig. 11 Influence of irradiation dose on elongation, C-6 800 700 600 Elongation [%] 500 400 300 200 100 0 0500100015002000 Total dose [kGy] Fig. 11 Influence of irradiation dose on elongation, C-7 各試験体について室温照射、高温照射の両データを統合し、それらの全データを基に近似直線を作成した。この近似直線より、破断伸びが 50%となる時点での評価ピーク周波数を求めると、Fig.13~Fig.15 よりC-6 では820Hz、C-7 では880Hz、C-8 では860Hz 付近となる。ここで、これらの評価ピーク周波数のばらつきを保守的に考慮し、暫定的にケーブル絶縁材の健全基準値を設定すると、C-6 では約800Hz、C-7 では約850Hz、C-8 では約830Hz となる。 以上の検討結果より、AE 打音検査装置を用いたケーブル絶縁材の劣化調査において、各ケーブル試験体の評価ピーク周波数と絶縁材の破断伸びの関係から健全基準値を設定することで、ケーブル絶縁材の劣化度を検出可能である見込みを得た。 また、実機において 30 年間供用されたケーブルでも、絶縁材は十分な機械的特性を有しており、室温照射と高 温照射による劣化傾向には有意な差異がないことから、本調査で用いた実機取替ケーブルおよび新品ケーブルにおいては、高温環境下においても室温での照射時と同等の耐放射線性を有すると考えられる。 800 700 600 Elongation [%] 500 400 300 200 100 0 6007008009001000 Frequency [Hz] Fig.13 Relationship between frequency and elongation, C-6 800 700 600 Elongation [%] 500 400 300 200 100 0 6007008009001000 Frequency [Hz] Fig. 14 Relationship between frequency and elongation, C-7 800 700 600 Elongation [%] 500 400 300 200 100 0 6007008009001000 Frequency [Hz] 6.まとめ 実機取替ケーブルを含むケーブル絶縁材の経年劣化および放射線と熱による劣化調査を目的として、AE 打音検査および照射後のケーブル絶縁材への引張試験を実施した。 その結果、評価ピーク周波数と破断伸びの関係からケーブル絶縁材の終点基準に対応する評価ピーク周波数の診断基準値を設定することで、AE 打音検査により適切なケーブル取替時期の推定が可能となる見通しを得た。 また、実機において30 年間供用された取替ケーブルにおいても絶縁材は十分な機械的特性を有しており、本報において用いたケーブルは、高温環境下においても室温での照射時と同等の耐放射線性を有することが確認された。 本開発において得られた知見を以下に整理する。 ①AE 打音検査により得られる評価ピーク周波数は照射線量の増加に伴い上昇し、統計的仮説検定によ り、その傾向は室温照射と高温照射で有意な差異がないことを確認した。 ② 引張試験より得られる破断伸びは照射線量の増加に伴い低下し、その低下傾向は室温照射と高温照射でほぼ同様であることが確認された。 ③ 評価ピーク周波数と破断伸びの関係について評価し、統計的仮説検定により、その傾向は室温照射と高温照射で有意な差異がないことを確認した。 ④ ③の結果より、実機において30 年間供用されたケーブルにおいても、絶縁材は十分な機械的特性を有していることを確認した。 ⑤ ①、②、③の結果より本調査において用いた実機取替ケーブルおよび新品ケーブルは、高温環境下においても室温での照射時と同等の耐放射線性を有すると考えられる。 ⑥ ③.の近似式から、電気学会通則の終点基準である絶縁材の破断伸び50%に対応する評価ピーク周波数を算出することにより、ケーブル絶縁材の暫定的な診断基準値を設定した。 Fig.15 Relationship between frequency and elongation, C-8 参考文献 [1]“ケーブル絶縁材料の経年劣化研究”JAEA-Review 2012-027 日本原子力研究開発機構 2012 年 [2]“原子力発電所の低圧ケーブル非破壊劣化診断技術” 三宅悟 INSS JOURNAL Vol.5, 1998, pp.98-107 “インデンターモジュラス(IM)法のケーブル状態監視ラウンドロビン試験結果の評価について” 梶村雄作 INSS JOURNAL Vol . 23, 2016 R-2, pp.160-167 “ケーブル絶縁材の健全性診断に向けた非破壊検査システム開発(2)” 石井元武 他 日本保全学会第16回学術講演会 2019 “高浜発電所1、2号炉の劣化状況評価(電気・計装品の絶縁低下)”関西電力株式会社 平成27 年12 月 [6]“10MeV 電子線の特徴” 関西電子ビーム㈱http://www.kbeam.co.jp/kenkyu/#TOKUCHO “電子線照射技術の工業利用” 中井康二 他日新電機技報 Vol.54, No.2 (2009.10) pp.9-21 “AE センサを用いた打音検査によるボルトの健全性、施工品質点検システムの開発” 匂坂充行 他日本原子力学会2017 年秋の大会 “エクセルを使ったバイオメカニズムのための統計学(3)”富田豊、内山孝憲 バイオメカニズム学会誌Vol.28, No.4 2004 pp.221-222 “高分子系材料の耐放射線特性とデータ集” JAERI- Data/Code 2003-015 日本原子力研究所 2003 年9 月[10]“原子力発電所での低圧ケーブルの劣化診断”山本歳雄ほか 三菱電線工業時報 第97 号 2001 pp.53-58 [11]“JEC-6152 電気絶縁材料の耐放射線性試験方法通則”電気学会電気規格 第1 版 電気書院 1997 pp.26-27
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