プラント運転データによる蒸気タービンの診断システム
公開日:
カテゴリ: 第16回
プラント運転データによる蒸気タービンの診断システム
Diagnostic system for steam turbine using plant operation data
日立製作所
牛尾
裕一
YuichiUSHIO
日立製作所
金田
昌基
MasakiKANADA
日立製作所
笠原
孝保
Takayasu KASAHARA
日立製作所
雨川
洋章
HiroakiAMAKAWA
日立製作所
河野
尚幸
NaoyukiKOUNOMember
日立 GE 日立 GE
大城戸 忍花木 洋
Shinobu Hiroshi
OKIDO HANAKI
Member
Abstract
For the safety improvement of a nuclear power plant, safety equipments are constructing additionally under new regulatory requirements. With the increase of safety equipments, it is important to maintain and improve reliability of equipments by inspection. To improve reliability of equipments, we developed a diagnostic system for steam turbine. This system consists of statistical model and physical model. Wih the statistical model, it is possible to detect abnormality from plant operation data and estimate abnormal parameters. With the physical model, it is possible to estimate failure equipment and failure casue. The physical model is based on rate of change of vibration amplitude with increase of rotational speed. Using the change of vibration, it is possible to diagnose failure cause by the plant operation data. With this diagnostic system, it is possible to improve reliability of equipments.
Keywords: Diagnosis system, Statistic model, Physical model, Steam turbine, Maintenance
1 緒言
原子カプラントの安全性向上を目的に、新規性基準にもとづく安全設備の追加設営が進められている。安全設備の追設に伴い、定期検査時の点検物量が増加する可能性があり、検査による機器の信頼性を維持・向上することが重要である。そこで我々は、運転中の機器の常時監視を強化し、機器の健全性を診断するシステムを開発している。
本システムは、各機器に設置された既設のセンサで測定されたプラントを運転するためのデータ(プラント運転データ)の相関評価を常時行い、通常時とは異なるプ ラント運転データの変化を早期に検知する統計モデルと、異常の原因を特定するための物理モデルから構成される。本研究では、発電用蒸気タービンの起動時の異常診断を 目的に、回転数に対するタービン軸の振動振幅の変化率 による異常診断手法を提案する。一般的なプラント運転データを用いたタービンの異常診断では、異常の原因に
関わらずタービン軸の振動振幅が規定値を超えることで 異常と判断する。本研究の診断手法は、例えばロータの経年的曲り等の劣化による異常や、ロータと静止部との接触によるフリクションホイップ等の不安定振動に よる異常等の異常の種類により、タービン軸の振動振幅の増加測度が異なることを利用し、異常の原因推定を可能とするものである。本診断手法により、既設のセンサから得られるプラント運転データにより、異常 原因を診断し、保全計画に反映することで、検査作業 の信頼性を維持・向上が可能となる。
2 健全性診断システムの概要
診断システムの構成を図1 に示す。本システムは、大
きくデータベース、診断エンジン、可視化エンジンの3 つで構成される。データベースでは、機器に設けたセン サから収集した圧カや流量等のプラント運転データを収集、蓄積する。診断エンジンは統計モデルと物理モデルからなる。統計モデルでは、プラント全体についてプラ
連絡先:牛尾裕一、〒312?0034 茨城県ひたちなか市堀口832-2、(株)日立製作所 研究開発グループE-mail: yuichi.ushio.so@hitachi.com
ント運転データの異常の有無と異常パラメータを特定す る。具体的には、密度比直接推定法を用いて、各パラメータ間の相関関係を監視し、正常状態から相関が変化した場合に、そのパラメータを異常と判定する[1]。物理モデルは機器の物理現象を元に、異常と判定されたパラメー タから故障機器および故障原因を推定するために用いられる。次章にて蒸気タービンを対象とした異常原因の推定手法について述べる。
設定することで、データの蓄積と伴って原因推定の精度を向上していくことが可能と考える。
Abnormal condition A
condition B
Vibration amplitude
Statistical Physical
condition
model
model
Rotation speed
Sensor data from
equipment
Database
Visualization engine
Soundness diagnosis engine
Visualization
Fig.2 Rotation speed vs vibration amplitude
A
B
Change ratio of vibration amplitude
Abnormality judgement
Fig.1 Configration of diagnosis systemline
3 蒸気タービンの異常原因推定
Plant operation data
Rotation speed
蒸気タービンの故障原因推定手法について述べる。故障原因推定では、一般的に軸振動の周波数分析により行われる[2]。周波数分析を行うことなく、プラント運転デー タにより異常原因を推定するため、異常の原因によって、異常の発生回転数および回転数の変化に対する振動振幅 の変化が異なることを利用し、異常の原因を推定する。
図2 に回転数とタービン軸の振動振幅に関係を示す。従来の異常診断では、振動振幅が異常の判定値を超えるA 点およびB 点にて異常と診断しているため、異常原因が異なる異常A とB を区別することができない。本診断手法では、異常の原因によって異常の発生回転数および、回転数の増加に対する振動振幅の増加する割合が異なることを利用し、診断を行う。本手法による診断のイメー ジを図3 に示す。プロットがプラント運転データから求めた各回転数における振動振幅の変化率であり、破線が 異常診断の判定値である。異常診断の判定値を異常の原因 に 数設定しておき、超えた判定値の種類と、その時の回転数により、異常の原因を判定する。異常原因の 判定表の例を表1 に示す。
即章で述べたように、本システムはプラント運転データを収集、蓄積するデータベースを有しており、このデータベースの異常時のデータを用いて、異常の判定値を
Fig.3 Image of detection of abnormality
Table 1 List of cause of abnormality
Rotation
speed
Abnormality
judgement line
Cause
Unspecified
B
Thermal
unbalance
Rubbing
vibration
A
Mechanical
unbalance
Magnetic
unbalance
Less than
critical speed
Friction whip
More than
critical speed
Hysteresis whip
Steam whirl
4 まとめ
本研究では、原子カプラントの運転制御に使用するプ
ラント運転データをいた健全性診断システムおよび、蒸気タービンの異常原因の推定手法を提案した。今後、診断手法の有効性を検証すると共に、診断精度を向上させていく計画である。
参考文献
金田昌基、笠原孝保、牛尾裕一、雨川洋章、大城戸忍、花木洋、岡澤周、“プラント機器の健全性診断技術の開発”、日本保全学会 第15 回学術講演会、2018
大森基次、”振動兆候マトリクス”、ターボ機械10 巻
10 号、1982