原子力施設の建物外壁塗装等の劣化診断訓練
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カテゴリ: 第16回
原子力施設の建物外壁塗装等の劣化診断訓練
Training for degradation diagnosis of exterior wall coating on Nuclear facilities
株式会社ジェイテック尾崎
大輔
Daisuke OZAKI
新山
裕真
Yuma NIIYAMA
沼尾
洋明
Hiroaki NUMAO
工藤
訓
Satoshi KUDOMember
As the buildings in nuclear facilities have the functions which is fixation, rearrangement and containment of equipment including radioactive materials, to maintain these functions is important.
We built mock-up building as the model of Rokkasho Reprocessing Plant, and carries out soundness diagnosis training concerning finishing coating on exterior wall or state of concrete body which changes gradually under strict natural environment. We will present the results of soundness diagnosis training and utilization of aging data.
Keywords: Building, Coating, Fittings, Degradation diagnosis, Mock-up
1 諸言
原子力施設の建物は放射性物質を内包する機器類等の
・ 置分 ・ 機能、および や外部飛来物からの防護機能を有するよう設計・設置されており、これらの機能を維持するた に行う建物の保全は、原子力安全上非常に重要な要素である。
当社では日本原燃閻再処理事業所の建物(再処理工場
要20 建屋、 物 理施設 要3 建屋、 の 建屋 56 建屋のB計 79 建屋)のB理的かつ確実な保全に貢
す 、再処理工場を ルとする ックアップ建屋を当社敷地内に設置し、直営技術力向上を目的とした各種診断・補修技術訓練を実施している。
また、青森県六ヶ所村特有の厳しい 下におる外面仕上げ材(塗装や防水等)の健全性診断として屋外暴露試験を実施し、本設備運用開始の2014 年度より経過観察および毎年の評価試験を行っている。
本稿では当該 ックアップ建屋を用いた健全性診断等の訓練実績と経年劣化 ータの蓄積について紹介する。
2 モックアップ建屋の設置
2 1 設置背景
再処理工場の各建屋と同様の仕上げを施しスケールダウンした建屋を建設して ックアップとして運用し、健全性診断訓練および補修技術訓練、中長期にわたる屋外暴露試験等を行うことが必要と考え、以下について検
した。
連絡先 尾崎 大輔
〒039-3212
青森県上北郡六ヶ所村尾駁字弥栄平1-108
株式会社 ジェイテック
保全技術部 建 ・土木グループ
E-mail daisuke-ozaki@j-tech66.co.jp
①. 各種健全性診断訓練は事業者が所有する現場にお
る 体の訓練となっているが、 う測 機器や個人の技量によって習熟に要する時間にばらつきがあることから、時間的制約が無い訓練場所の確保が必要である。
②. 破壊または微破壊を伴う健全性診断訓練は事業者が所有する実建物での は許されないことから、十分な測 精度で調査が可能となるまでの習熟には 可能な訓練場所の確保が必要である。
③. 各種健全性診断訓練の方法を検証するにあたり、再処理工場の各建屋と同様の躯体・仕上げ仕様で設置され、かつ破壊または微破壊が許容される設備が必要である。
2 2 要求事項
設置にあたり要求事項を以下の通り整理した。
①. 再処理工場の各建屋と同様の躯体・仕上げ仕様であること。
②. 破壊または微破壊が許容されること。
③. 外面仕上げ材の劣化調査を行えること。
④. 内部塗装の劣化調査を行えること。また塗装補修等の訓練を行えること。
⑤. 建具および 金物の構造を理解できること。また分解・組立の訓練が出来ること。
⑥. 躯体の健全性診断訓練および補修実験(例 樹脂注入工法等)を行えること。
. 各種建 材 の屋外暴露試験を行えること。また
れに伴う気象観測装置を設置できること。(温湿度計、風向風速計、降雨雪量、日射量等)
2 3 基本設計仕様
前述した要求事項を満足できる仕様として、表1~4 の通り設計方針を纏 た。
表1.建屋概要
階数
平屋建て
床面積
9.72 rrf
表2.建屋構造(再処理工場同等仕様)
構造型式
壁式鉄筋コンクリート造(WRC 造)
コンクリート
設計基準強度
24N/龍
表3.仕上表(再処理工場同等仕様)
部位
仕上げ
外部
屋根
シート防水
外壁
弾性吹 タイル
内部
床~腰壁
ェポキシ樹脂系塗装
壁~天井
コンクリート表し
表4. 設備
設備
用途または位置
屋外暴露試験架台
屋上設置
総B気象観測装置
屋上設置
SUS フード、SUS 防虫網
腐食調査用
建具 ックアップ
建具不具B調査、
補修訓練用
塗装試験ブース
試 ・試験体作成、
塗装補修訓練等
コンクリート擁壁(T型)
健全性診断訓練用
2 4 設置
2014 年度より運用開始として以下のスケジュールにてモックアップ建屋を設置した。
図1 設置スケジュール
図2 モックアップ建屋外観
図3 モックアップ建屋内観
図4 建具モックアップ
3 健全性診断および補修訓練
3 1 目的
再処理工場の実建物にて健全性診断および補修訓練は時間制限の問題や微破壊検査が不可であること、更に は許されない。これらは作業者の技量により影響が出やす なる。
また、以前には外注としていて即応不可であった不具B事象を再処理工場直近企業である当社が行う
即応技術の強化を図ることを目的とする。
3 2 健全性診断訓練
①. 外壁防水材、内部塗装健全性診断
a. 着強さb. 光沢
c. 色差d. 白亜化
図5 健全性診断訓練(外壁防水材)
②. コンクリート劣化診断
テストハンマーによる圧縮強度試験(非破壊)
中性化 さ測 (微破壊)
図 ク ー 健全性診断
3 3 補修訓練
①. 建具補修訓練
再処理工場では日々の作業に従事している人員が多 建屋間の移動経路となる箇所の建具部品が破損する不具B事象が多発し、場Bによっては部屋や建屋より出られない事例が発生したこともある。こで再処理工場の建物点検および保守を行ってい
る当社への補修依頼が多い。 のた 予備部品を購入しておき、当社社員直営にて交換・修理等の補修対応をできる体制とする為に ックアップを使用し補修訓練をすることで、部品構成や取 ・取外し方法を理解し不具B事象の早期対応ができる。
図7 建具補修訓練の一例
3 4 訓練実績と効果
①. 訓練スケジュール
期的な訓練を計画・実施したほか、グループ員増員時等については必要に応 て不 期の訓練も実施した。
各 年 度
訓練項目
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
塗装診断
コンクリート
建具補修
図8 訓練スケジュール
②. 対象者(2014 年度~2018 年度)
担当毎に必要となる訓練項目を 先した。表5.訓練対象者と実績人数
訓練項目
対 象 者
延 人数
塗装診断
建物点検担当者
30 名
コンクリート
土木設備点検担当者
20 名
建具補修
建具点検担当者
40 名
③. 効果
期的な訓練を時間的・設備的な制約が さい下で実施したことにより効率的に習熟を進 ることができ、十分な測 精度で診断できるようになった。これにより直営体制が強化され、従来外注で実施していた健全性診断業務、および不具B発生から時間を要 していた建具補修も含 て直営で実施可能とする即応技術の強化を実現した。
4 屋外暴露試験について
4 1 目的
①. 実際の劣化 を把握し、事業者へ適切な修繕時期を検 ・提案するた の ータ採取。
②. 暴露試験開始から経年劣化観察・性能評価試験・劣化度判 に至る経緯を若手社員へ教育。
4 2 暴露試験企画時の事前検討
各建 材 メーカーでは促進耐候性試験機を用い
た試験を実施して参考 ータを採取しているが、あまで標準的な 下での試験であるた 、適切な修繕時期の検 には六ヶ所村と同等の 条件下(春~ 夏 東北地方太平洋側で塩分を含む冷た 湿った東風
(やませ)、冬 寒冷地にお る凍害等)にお る暴露試験 ータが必要と考える。メーカーによっては複数の 条件下で屋外暴露試験を行っている場Bもあるが、実施工材 を1 年経過毎に性能評価を実施している例は見当たらず、 ータを入手することは困難である。実際に六ヶ所村に試験 を構 して暴露試験 ータを蓄積し、 の特 や標準地 ( 東)との相違点を確認することとした。
4 3 暴露試験場および試料種類
①. 曝露試験場
a.青森県六ヶ所村(再処理工場隣接当社敷地内)
.神奈川県(塗 メーカー工場敷地内)
②. 試 種類
a.外壁防水材(弾性吹 タイル)
.屋上防水材(塩 シート防水)
防虫金網(SUS304 24 メッシュ)
図9 暴露試験状況
4 4 経過観察および性能評価
①. 経過観察
目視 4 回/年
②. 性能評価
a.期間 10 年間
.評価試験 度 1 回/年
C.評価試験場所 塗 メーカー工場
評価試験方法 各 IS 規格に準ずる
評価項目 外壁防水材の場B
(a) 塗膜厚さ( ) 引張強さ
(C) 伸び率(d) 引裂き強さ
(e) 着強さ(f) 色差
(g) 光沢(h) 白亜化
図10 性能評価試験(引張強さ試験)
4 5 現時点での評価結果考察
試験開始から4 年が経過しているが、著しい性能劣化は見られていない。また、事前の予測では六ヶ所村暴露の方が 的に不利と考えていたが、現在のところ 2 地点間で試 性能について有意な差は見られていない。4 年という期間は暴露試験の期間としては いことから、今後も継続的な試験が必要である。
但し、試 表面の 態について顕微鏡(X25、X50) で観察した結果として、神奈川暴露の方が 着物が多い結果となっている。これは、神奈川暴露の試験場が工業地 であることが原 と考えられる。
なお、性能評価試験の立会いには若手社員も同行させ、試験方法や使用機材、各材 の特 等について教育を行っている。また、塗 メーカーとの意見交換を通 て知見を拡大できる有意義な機会となっている。
5 結言
再処理工場の各建屋と同様の躯体・仕上げ仕様の
ックアップ建屋を設置し、事業者が所有する実建物では難しい健全性診断技能の訓練 を確保した。訓練を通 て技能習得を効果的に行い、直営による即応体制の強化図ることができた。
また、 ックアップ建屋に屋外暴露試験設備を設置し、六ヶ所村特有の気象条件下にお る暴露試験 ータの蓄積と、標準的な地 との比較を可能とした。今後も訓練を継続して即応体制の強化を図るとともに、蓄積した暴露試験 ータを活用することにより適切な修繕時期を検 ・提案し、原子力安全上重要な を担う建物のB理的かつ確実な保全に貢 してい 所存である。