六ヶ所再処理工場 セル内における遠隔乾式切断技術の開発
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カテゴリ: 第16回
六ヶ所再処理工場セル内における遠隔乾式切断技術の開発
Development of remote dry cutting technology in cells of Rokkasho reprocessing plant
二菱重工業株式会社
大中
雅侑
Masayuki
ONAKA
Member
二菱重工業株式会社
井上
哲徳
Akinori
INOUE
Non-Member
日本原燃株式会社
飯田
雅之
Masayuki
IIDA
Non-Member
日本原燃株式会社
成田
祐一
YuichiNARITA
Non-Member
日本原燃株式会社
山下
優太
YutaYAMASHITA
Non-Member
Abstract
比較的大型な機器をセル内で遠隔乾式切断にて解体する為に、これまでの実績をベースとした切断装 置に 、解体手順の最適化や、 用の治工具の 用によって実施する技術を 回開発した。 、切断装置本体は汎用的な構造であるため、解体手順と治工具の応用により、他機器への適用も可能と考 られる。
Keywords: cell, remote, dry cutting, chip saw, jig and tool, dismantling
1 諸言
六ヶ所再処理工場において、セル内の設備や機器を老朽化や故障等によって廃棄する場合は、セル外への搬出のために、 用のバスケットに収納する必要がある。従って、バスケットに収納出来ない大型の設備や機器は、収容可能な大きさにセル内で解体しなければならない。しかしながら、再処理工場内は、火気、冷却水、潤滑油等が使用出来ないセルが存在し、そのような環境下では、 解体方式は乾式切断に限定される。また、解体作業はインセルクレーン(以下、「クレーン」)やマスタースレーブマニピュレータ(以下、「MSM」)等を用いた遠隔操作にて実施する必要がある。
当社は、これまでの実績において、チップソーによる回転切断方式を採用しており、比較的小規模な機器向けの切断装置を開発してきた。 回、従来より大型な機器(以下、「対象物」)の解体が新たに必要となった為、これまでの実績をベースに、図 1.1 に示す開発フロー図に沿って、切断手順の最適化や、それぞれの切断作業に応じた治工具を 用することで、当該機器の解体に適した切断技術を開発したので報告する。
図1 1 開発フロー図
連絡先:大中 雅侑、〒652-8585 神戸市兵庫区和田崎町一丁目1 番地1 号 三菱重工業株式会社 原子力事業部 新型炉?原燃サイクル技術部 設備設計課
E-mail:masayuki_onaka@mhi.co.jp
2 切断技術の開発
解体手順の検討
図1.1 に従い、まず対象物の解体手順として、切断手順や装置の組換手順など、全ての作業項目を洗い出した。この内、これまで実績のない厚さ、長さ、材料の切断が 必要となる箇所を、表2.1 に示す通り抽出した。これらの箇所に関して切断検証試験を実施し、結果もあわせて同表に示す。この結果、No.1,2 については、鋸刃の交換を実施することなく切断可能なことを確認したが、No.3 については溶接材である耐摩耗合金の硬度が高いことから、 切断長さ25mm で鋸刃の交換が必要となった。この場合、複数回鋸刃を交換しながら 150mm を切断することになるため、実作業としては非効率と判断し、溶接材の切断を回避するように、切断位置、手順を見直して最適化を実施した。
表2 1 検証箇所の抽出、及び切断検証結果
.
抽出結果
検証結果
材質仕様
切断
厚さ
切断
長さ
切断
方向
切断長さ
1
SUS304L 鋼板
15 m
900 m
水平
鋸刃交換無で
切断可
2
SUS304L 鋼板
20 m
310 m
水平
鋸刃交換無で
切断可
3
SUS304L 鋼板(t15)+
耐摩耗合金溶接肉盛
(t3.0)
18 m
150 m
鉛直
25 m切断で鋸刃交換必要
切断装置本体の設計
項の検討にて、本件で要求される切断能力を満足す る見通しが得られた為、切断装置本体はこれまでの実績 を踏襲した構造とした。具体的な装置の構成要素は、対 象物を切断するためのチップソーと、チップソーを移動 させるスライド機構、及び切断装置本体を対象物に抱き 込むことで固定する把持機構である。また、装置の種類 は、多方向の切断に対応するため、水平切断用、垂直切 断用の 2 種類を設計した。切断装置の外観写真をそれぞれ図2.1 に示す。チップソーの移動は、垂直切断装置については自重、水平切断装置については定荷重ばねの牽引 力を利用する。 、鋸刃の交換には、 用の治工具を用いる。また、これらの装置が、切断時に対象物と干渉し ないか確認を行い、必要に応じて解体手順や装置の形状 の見直しを実施した。
図2 1 切断装置の外観
水平切断装置、(b)垂直切断装置
慮し、そのままバスケットへ収納できない寸法のものは、 容易に収納可能な寸法に解体可能な構造となる様留意した。また、切断装置本体と同様に、治工具についても、対象物や切断装置本体との干渉確認を実施し、必要に応じて解体手順や治工具形状の見直しを実施した。
図2 2 切断用治工具の外観
(a) 用 ー (b) 置 用 ー
モックアップ試験
一度セル内に搬入した装置を再びセル外へ搬出するこ
とは不可能となる為、切断装置本体、及び切断用治工具 は、製作工場から六ヶ所再処理工場に隣接する技術開発 研究所内にあるセルのモックアップ内に持ち込み、MSM、 クレーンを用いて遠隔操作性、及び視認性の確認を実施 した。その後、再度製作工場に持ち帰り改良を行い、最 終確認として対象物のモックアップを用いて、検討した全手順の通りに解体可能であることを検証した。
切断用治工具の設計
対象物の形状や、切断手順が複雑である為、対象物の 切断方向は多方向に及ぶ。一方、切断装置本体において、 チップソーの移動は、水平方向、及び垂直方向に限られ
結言
図3.1 モックアップ試験による検証
る。従って、手順通りの切断を実施するためには、切断
線を常に水平、及び垂直方向となるよう対象物の姿勢を
しなければならない。また、切断線の位置が めて狭い範囲で限定される場合は、クレーンや MSM のみで位置決めすることは困難となる。そこで、これらの課題 を解決するために、姿勢 用サポートや、位置決め用テンプレートなど、それぞれの切断作業に応じた 用の治工具を検討し、導入した。一部の切断用治工具の外観 写真を図2.2 に示す。治工具自身が廃棄物となることを考
回、市販のチップソーをベースとした切断装置を用
い、解体手順、治工具を工夫することで、比較的大型の 機器を、遠隔操作で乾式切断により解体する手法を開発 した。切断装置は汎用的な構造であり、切断手順と治工 具の応用によって他の不要機器などの解体切断への適用 も可能と考 られる。