六ヶ所再処理工場における保守管理改善の取り組み

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カテゴリ: 第16回
六ヶ所再処理工場における保守管理改善の取り組み Maintenance management improvement efforts at the Rokkasho Reprocessing Plant 日本原燃掬 町屋 勝幸 KatsuyukiMachiya 日本原燃掬 穂満 進一 ShinichiHoman 日本原燃掬 長澤 和幸 KazuyukiNagasawaMember At the Rokkasho Reprocessing Plant, we will continue our comprehensive and optimal maintenance management improvement activities referring to the concept of maintenance management conducted at the nuclear power plant (maintenance management regulations for nuclear power plants: JEAC 4209) It has been implemented. In this lecture, we will introduce the current status and future plans of maintenance management improvement at the Rokkasho Reprocessing Plant. Keywords: Reprocessing Plant, maintenance, JNFL はじめに 六ヶ所再処理工場においては、2010 年より原子力発電所で実施している保守管理の考え方(原子力発電所の保守管理規程[以下、JEAC4209])を準拠した、網羅的かつ最適な保守管理に向け改善に取り組んできた。 しかし、2017 年8 月に非常用電源建屋に隣接する燃料油配管(安全上重要な設備である非常用ディーゼル発電機に燃料を供給する配管)の貫通部を通して非常用電源建屋に水が浸入した事象が発生し、原因を調査した結果、燃料油配管の一部および当該配管を内包する配管ヒットが長期にわたり未点検であったことが判明した。 これにより、全設備とその状態の把握、適切な保全計画を策定し、設備の健全性を継続的に維持・管理するため、表1に示す「設備を管理下に置く活動」に取り組んでいる。 今回は前述の取り組みも踏まえて、図1の保守管理の 実施フローに示す各項目のうち、「保全対象範囲の策定」、 「保全重要度の策定」、「保全計画の策定」、「保全の有効性評価」および「業務支援を目的に導入するシステム」の進捗について、六ヶ所再処理工場での保守管理改善の取り組み状況を紹介する。 連絡先 町屋 勝幸、〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所村大字尾駁字沖付 4-108、日本原燃樹 再処理事業部再処理工場 保全企画部 保全企画グループ E-mail: katsuyuki.machiya@jnfl.co.jp 表1 設備を管理下に置く活動 活動項目 活動内容 活動状況 STEP 1 設備を全て把握し、設備の状態を確認するとともに、保全計画の有無を確認する。 完了 STEP 2 設備を適切に維持・管理する観点で保全計画が適切な ものとなっているか確認する。 完了 STEP 3 全設備に対する保守管理計画を策定し、設備の健全性を継続的に維持・管理する。 (JEAC4209を準拠した改善の取り組み) しゅんエまでに継続実施 図1 保守管理の実施フロー 保守管理の改善 保全対象範囲の策定 再処理工場の設備数は、機種によって異なるが、おお 100 kW ラスの原子力プラントの 10 プラント相当となっている。 六ヶ所再処理工場では、構成する設備のうち、機器の安全上の重要度等に応じて機器を選定し、保全対象として管理していた。 しかし、前述の事象から未点検の設備が確認されたことから、改めて現場を隈なく確認した上で、全ての設備を把握した。(表1のSTEP1およびSTEP2) これらの結果から再処理施設として管理する設備・機器をリスト化し、改めて保全対象範囲として管理下に置くこととした。 保全重要度の設定 これまでの保全重要度の設定は、六ヶ所再処理工場の安全性を確保するために重要と判断する機器(安全上重要な施設等)の保全重要度を高く設定するとともに人身安全への影響も考慮して保全重要度を設定していた。 この際、安全上重要な施設等に該当するものは、重要な設備として、それほど故障した場合の影響を考慮することなく保守的に予防保全として設定されていた。この手法では、安全性の確保に影響を与えない機器についても予防保全を実施する計画となり、点検計画が過剰となる可能性があり、改善の必要があった。 また、保全重要度の低い機器は、事 保全を選定できるが、故障モードによってはパトロール等で故障を発見できないものもあり、故障の検知性に関する改善の必要があった。 よって、以下の3 点を考慮して改めて保全重要度を設定することとした。図2に改善 の保全重要度設定フローを示す。 a 系統に要求されている機能を整理し、「系統の保全重要度」を設定すること。 b 機器の故障 に系統に要求されている機能へ影響を与えない場合は、低位の「機器の保全重要度」を設定できること。 c 制御盤等への警報出力、パトロール、パラメータの変化等により故障を検知できる場合は、低位の「機器の保全重要度」を設定できること。 図2 保全重要度の設定フロー 保全計画の策定 これまでの保全計画の策定にあたっては、先行再処理プラントの実績、プラントメーカの推奨内容等を考慮して点検項目とその頻度を設定し、改善を継続的に実施してきた。 点検項目とその頻度のさらなる最適化に向けて、機器を構成する部位毎に劣化メカニズムを網羅的に整理し、有効な保全項目(劣化の状況を確認できる点検方法)、頻度等をまとめた保全内容決定 拠書を作成する。 保全内容決定 拠書は、「保全内容決定 拠書(機種)」と「保全内容決定 拠書(機器)」の2種類を作成し、作成にあたっては、「原子力発電所の高経年化対策実施基 準」を参考にするほか、せん断機、溶解槽等の再処理施設に特有な機器については、プラントメーカとの技術的検 により た知見を踏まえ、保全内容の 拠を整備している。 今 の保全業務に るPDCA は、保全内容決定 拠書 (機器)で整備した点検内容、点検頻度等に基づき、点検計画を策定し、保全の実施結果、保全の有効性評価の結果等から保全内容決定 拠書(機器)の点検内容、点 検頻度等を改善するサイ ルにより、保全の継続的な最適化を図っていく。 なお、上記のほか、保全内容決定 拠書(機種)に関連付く複数の保全内容決定 拠書(機器)で同様な点検内容、点検頻度等の改善が実施された場合は、必要に応じて保全内容決定 拠書(機種)へフィードバッ することで、関連付く全ての保全内容決定 拠書(機器)で反映要否を検 し、改善を図ることができる。 【作成する帳票】 ① 保全内容決定 拠書(機種) 機器を構造、環境、材料等でグループ化し標準的な保全内容の 拠を整備したものであり、保全内容決定 拠書(機器)を作成するためのベースとなる。 ② 保全内容決定 拠書(機器) 保全内容決定 拠書(機種)を基準に機器特有の部位情報の有無、点検実績等を考慮して保全内容の 拠を整備し点検頻度等を決定する。 保全の有効性評価 保全計画(保全内容、点検頻度)が適切か評価するため、分解点検 に点検手入れ前データを採取し、設備の劣化程度の確認および分析評価を行い、その結果をもとに点検頻度等を保全計画に反映している。また、保全内容の最適化にあたっては、点検手入れ前データの評価、過去の不適合情報、運転 のトラブル情報、その他学術研究成果等を参考とし、保全計画を評価している。 今 は、前述した保全業務のPDCA サイ ルのとおり、保全内容決定 拠書で整備された、劣化メカニズムを考慮して技術的に決定した点検内容、点検頻度等について、上記の保全情報をもとに評価および改善することで、より保全の最適化が図られる。 さらに、蓄積された保全情報をもとに様々な項目で比較、分析し、有意な傾向が発生していないか、客観的かつ俯鰍した視点で保全の有効性を評価する取り組みを検 していく。 新たな保守管理システムの構築 現在、保全業務を支援するために、エ セルを用いた簡易ツールで保全に関する情報(点検計画表、点検結果等)を管理している。しかし、これからのJEAC4209 を参考とした保守管理改善の業務は、管理する 度が機器から機器を構成する部位に変わることから、現行の運用と比較すると作業量が増加する。そのため、より一層の支援ができるよう操作性を向上させ、業務管理機能を装備したシステムとして、Maximo を導入し、当社の保全業務と整合するようにシステムの構築を進める。 【新保守管理システムの実装機能例】 ・点検計画の策定、保全の有効性評価等の保全業務に必要なデータを一元的に集約することで、点検計画の策定業務および有効性評価業務の正確化を図る。 ・「計画」、「実施」、「評価」の各タス を自動連携し、業務の効率化、業務の正確化を図る。 ・保全に る各種手続き、審査・承認等を電子化し、業務の効率化を図る。 図3 新保守管理システムの実装プロセス図 今後の取り組み 保守管理の実施フローに基づき、継続的な設備の維 持・管理活動を実施していくにあたり、以下の事項に取り組んでいく。 ① 改善を推進するための明確なルール化 「再処理事業部 保守管理要領(仮称)」を制定し、保守管理の実施フローの業務プロセスに関する要求事項を明確化する。 ② JEAC4209 を参考とした新たな業務プロセスの検証保守管理の実施フローをルールおよび新保守管理シ ステムに従って実施し、ルールどおり業務を進めることができるか確認する。 例)帳票の承認フローが適切か 変更管理が適切に実施できるか 等 ③ 新保守管理システムの構築および改修 新保守管理システムの構築を推進するとともに、業務プロセスの検証結果等を踏まえて新保守管理システム構築・改修を実施し、最適化を図る。 参考文献 尾形 圭司、北条 隆志、日本原燃樹 「六ヶ所再処理工場の設備の保全」 日本保全学会 第11 回 学術講演会要旨 川村 優文、尾形 圭司、新岡 将、須田 憲司 日本原燃樹 「六ヶ所再処理工場における保守管理改善の取り組み」 日本保全学会 第13 回 学術講演会要旨 川村 優文、服部 功三、三浦 進、新岡 将、森榮 顕、日本原燃樹 「六ヶ所再処理工場における保守管理改善の取り組み」 日本保全学会 第15 回 学術講演会要旨 参考 非常用電源建屋非常用ディーゼル発電機B補機室への雨水侵入に る事象概要 事象概要 非常用電源建屋に隣接する配管ヒットB内の燃料油配管(安全 上重要な設備である非常用ディーゼル発電機に燃料を供給する 配管)の壁貫通部を通して非常用電源建屋に水が浸入した。 原因 配管ヒット点検口の止水用パッキン、コン リート蓋の止水用コーキング、非常用電源建屋と配管ヒット躯体との接合部にあ る止水処置が劣化して配管ヒットに侵入した雨水が、非常用電 源建屋と配管ヒットの燃料油配管の壁貫通部における配管と止 水板の隙間を埋めるコーキングのひび割れを通して非常用電源 建屋に侵入した。 保守管理における問題点 当該配管ヒットは内部に雨水が侵入しないよう防水性を有する 設計としていたが、2003年の設置以降、配管ヒットの防水性に る部位を点検対象としていなかったため、配管ヒット点検口 の止水用パッキン等の劣化に気付くことができなかった。燃料 油配管自体も、機能確認は実施していたが、健全性に る点検を実施していなかった。 巡視・点検における 問題点 当該配管ヒットは、2004年から運転員(委託員)による巡視・ 点検の対象としていたが、燃料油配管のフランジ上部に設置さ れた点検口から目視点検を実施しておらず、給油口から目視点 検を実施していた。また、2005年のマニュアル改正において、 2箇所の点検対象(配管ヒットおよび隣接するケーブルヒッ ト)を1つにまとめて記載したこと、および点検対象の名称が 現場に表示していなかったことから、ケーブルヒットのみを目 視点検し、その結果を配管ヒットの点検結果としていた。
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