六ヶ所再処理施設の新規制基準に係る適合性審査の概要

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カテゴリ: 第16回
六ヶ所再処理施設の新規制基準に係る適合性審査の概要 Summary of Conformity Review on New Regulatory Requirements for Rokkasho Reprocessing Plant 日本原燃(株) 有澤 潤 JunARISAWA 日本原燃(株) 長澤 和幸 KazuyukiNAGASAWAMember 日本原燃(株) 名後 利英 ToshihideNAGO 日本原燃(株) 瀬川 智史 SatoshiSEGAWA 日本原燃(株) 越智 英治 EijiOCHI Rokkasho Reprocessing Plant, the only commercial reprocessing facility in Japan, was applied for the approval of reprocessing business change to follow the new regulatory requirements on January 7, 2014. After several times of corrective applications, the end of the conformity review is nearing. In order to improve the safety of facilities, we are adding measures for earthquake, tornado, volcano, overflow, etc., as well as trying to strengthen measures for lightning strike, internal fires, external fires, etc. Additionally we are trying to add measures for the severe accidents that may occur under the condition beyond safety design assumptions. Keywords: Rokkasho, reprocessing plant, conformity review, new regulatory requirements, lightning strike, fires, earthquake, tornado, volcano, overflow, severe accident. はじめに 六ヶ所再処理施設は、国内唯一の商用再処理施設であり、新規制基準対応として、2014 年1 月7 日に事業変更許可を申請し、その後の補正を経て、現在は審査の終盤に差し掛かっている。 新規制基準対応では、施設の安全性を向上させるため に、落雷、内部火災、外部火災等への対策の強化を図る とともに、地震、竜巻、火山、溢水等への対策を追加し ている。さ に、安全設 での を た で発 連絡先:有澤 潤、〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所村大字尾駁字沖付4-108、再処理事業部 新基準設 部 E-mail: jun.arisawa@jnfl.co.jp する重大事故に対して、対策を追加している。 本稿では、現在行われている遥合性審査の概要につい て述べる。 六ヶ所再処理施設の概要 六ヶ所再処理施設は、年間の最大再処理能力800t?Upr (t?Upr 照射前金属ウラン質量換算)、1 日あたりの最大再処理能力4.8t?Upr であり、日本原子力研究開発機構の 再処理 、 国Orano Cycle のLa Hague 再処理 等に採用されて実績のあるPUREX(Plutonium Uranium Reduction Extraction)法を採用している。六ヶ所再処理施設の 概要を図 に す。 図1 再処理工程概要図 全国の原子力発電所で発 した使用済燃料は、発電炉で4 年以上 された後、六ヶ所再処理施設の使用済燃料の受入れ?貯蔵 に受入れ、貯蔵プールにて貯蔵? する。15 年以上の により放射能が 分に し た使用済燃料は、貯蔵プールか 引き上げ、せん断?溶解 において細かく切断し、燃料部分を硝酸で溶かし、溶解液とする。分離 では、この溶解液と有機溶媒を接触させ、溶解液に含まれるウラン及びプルトニウムと 核分裂 成物を分離し、さ に、ウランとプルトニウムも化学的性質の違いを利用して分離する。精製 では、ウラン溶液とプルトニウム溶液それぞれか 微量に含まれている核分裂 成物をさ に取り除いて純度を高める。脱硝 では、精製されたウラン溶液とプルトニウム溶液か 硝酸を蒸発及び熱分解させて、ウラン酸化物粉末及びウラン?プルトニウム混合酸化物粉末の2 種類の製 を製 し、貯蔵する。 一方、再処理を行う過 で発 する核分裂 成物を含む高レベル廃液は、ガラスとともに溶融した後、ガラス固化体とし保管する。また、同じく再処理を行う過 で発 する低レベル廃液、低レベル廃棄物は、濃縮、圧縮、 等の処理を行い、低レベル固体廃棄物とする。 六ヶ所再処理施設の安全性確保の考え方 六ヶ所再処理施設では、放射性物質が複数の建屋に分 散し、かつ、その性状が固体、液体、気体と異なること か 、各系統や機器においては、それぞれの性状に応じた設 としている。 施設全体としては、これ の異なる性状の放射性物質を施設内に閉じ込めることが最も重要な安全機能である ことか 、換気設備により建屋内を負圧に維持することに加 、多くの において使用される硝酸による腐食漏 いへの対策が必須である。 事故の発 防止の観点か は、臨界に至 ないようにすることが最重要である。また、有機溶媒を使用するこ とか 火災への考慮が必要である。 また、事故対策に関して、従来の安全設 においては、深層防護の概念に基づき、異常の発 を防止すること、もし異常が発 したとしても異常の 大を防止すること、さ に事故に至っても放射性物質の環境への放出を抑制することを満たすよう設 し、さ に評価によりその妥当性を確認してきた。 しかしなが 、福島第一原子力発電所事故を踏ま ると、安全設 において、 される自然現象等に対して の措置をさ に強化することが必要である。また、設上 める より厳しい を した 合に発 する可能性がある事故(以下、「重大事故」という。)に対しても、その発 を防止することに加 、事故の 大を防止すること及び事故の影響を緩和するための遥切な措置 を講ずることが必要である。 新規制基準を踏まえた対応 2013 年12 月に施行された新規制基準においては、これまでの基準を強化?明確化するとともに、新たに基準を追加することにより、安全設 における への対処をより充実化している。 これを踏ま 、安全設 における への対処のうち、落雷、内部火災、外部火災等への対策を強化するとともに、地震、竜巻、溢水等への対策を追加することとした。 また、安全設 における を た 合に起こる重大事故への対策を追加した。 安全設計における想定への対処 安全設 においては、 に安全上重要な施設を防護対象として、各種の への対処を行う。 落雷への対処 従来は 雷撃電流を150kA としていたが、過去に敷地周辺で発 した落雷による最大の雷撃電流を考慮して、 雷撃電流を270kA とし、機器の機能を損なうことが無いよう、サージ電流による機器の故障防止として保安器の設置等を行う。図2に、保安器の設置による機器の故障防止の概要を す。 図2 保安器の設置による機器の故障防止 竜巻への対処 過去、国内で発 した最大規模の竜巻(最大風速92m/s) を考慮して、最大風速100m/s の竜巻を し、防護対象の設備を建物で防護することを基本とし、屋外施設には飛来物か の防護対策を実施する。 図3に飛来物防護ネット、図4に飛来物防護板の設置の概要を す。 図3 冷却塔への飛来物防護ネットの設置 図4 主排気筒への飛来物防護板の設置 火山の影響への対処 降下火砕物による設備故障の防止として、フィルタの 追加設置等により清掃や交換が行 るようにすることで、非常用ディーゼル発電機等、運転時に外気を取り入れる 必要がある設備の機能を維持する。 地震への対処 基準地震動を既認可の250gal か 700gal に引き上げ、必要な耐震性を確保するための補強 事を実施する。 津波への対処 2011 年 北地方 沖地震に起 する や最新見を踏ま て評価した結果、再処理施設は標高約55m に位置することか 、 対策が必要ないことを確認した。 溢水への対処 溢水源となる機器や配管か 溢水量を評価した上で、耐震性の強化による溢水(薬 漏 い)源の排除や地震時に自動で閉止する遮断弁の設置による漏 い量の低を図る。 また、堰、防水扉等の設置により、機器のある部屋へ の溢水の流入を防止するとともに、水密化や溢水防護板 の設置により機器が被水することを防止する。さ に、蒸気漏 いに対しては、蒸気防護板を設置することにより影響を緩和する。これ の対策の概要を図5に す。 内部火災への対処 再処理施設特有の火災に加 、電気火災等の一般火災の発 に対しても、安全上重要な施設の安全機能が損なわれないよう、難燃ケーブルの使用、火災感 器の多様化、及び耐火壁(防火ダンパ、貫通部シール等)による3 時間耐火対策を実施する。 外部火災への対処 再処理施設か 12km の範囲内での可燃物(植 )、風向き等の気象 を基に森林火災を し、再処理施設への延 を防止するため、再処理施設周辺に幅25m 以上、長さ約7km の防火帯(外部火災か の延 被害を食い止めるための、可燃物が無い帯状の地域)を設置する。図 6に、防火帯の概要を す。 図5 溢水対策の概要 図6 再処理施設の配置図 重大事故等への対処 重大事故等への対処方針 重大事故等への対処の基本的な方針は以下のとおりで ある。 ①事故により発 する放射性物質を可能な限り再処理施設内に閉じ込める。ただし、セルの内圧上昇によ る放射性物質の経路外放出等の二次的リスクが発する 合に限り、フィルタ等を通じて管理放出を行う。 ②地震により常設の設備が使用できなくなる可能性を 踏ま て、 に可搬型の設備を用いて対処する。可搬型の設備の例として、蒸発乾固への対策等に使用 する中型移送ポンプを図7に、有機溶媒火災への対策に使用する窒素濃縮空気供給装置を図8に す。 安全機能の喪失か 放射性物質の放出に至るまでの 「事象進展の早さ」と、放出される放射性物質の量による「環境影響の大きさ」の観点か 事故を分類し、その重要度に応じて優先順位を めて対処する。表 に重要度分類を す。 表1 重要度分類 また、せん断する使用済燃料の 期間を、従来の4 年か 15 年に変更することにより、重大事故等への対処に要する時間を確保して、対処を確実に実施することに加 、万が一重大事故等が発 した際の放射性物質の放出量を低 する。 図 図 気 置 臨界事故への対処 臨界事故については、従来より 分な安全余裕を有する核的制限値の設 や単一故障基準の要求があり、これ を厳 に遥用した安全設 及び安全管理を行っていることか 、臨界事故の発 の可能性は極めて低いが、再 ③六ヶ所再処理施設では、全交流動力電源の喪失等に より複数の事故(蒸発乾固59 機器、水素爆発86 機器、等)が同時に発 する可能性がある。そのため、 処理施設の特徴を考慮し、臨界事故の発 を した対策を整備する。 臨界事故の 大防止対策として、事故が発 している 貯槽等に、可搬型の設備を用いて可溶性中性子吸収材を 供給することで臨界の収束を図る。 臨界事故により放出される放射性物質は、セルに導出し建屋内に滞留させることで、放射性エアロゾルの沈着、 短半 期核種の 等を図る。 蒸発乾固への対処 貯槽等に内包する溶液の崩壊熱は、安全 水系により を行っている。蒸発乾固は、 機能の喪失により、溶液が温度上昇し沸騰した後、乾固に至る事故であ る。 したがって、重大事故の発 防止対策としては、中型移送ポンプ等を用いて安全 水系の配管に水を通水することで、貯槽等に内包する溶液を する。 また、通水による に失敗した 合には、沸騰による放射性物質の放出が されることか 、事故の 大防止対策として、中型移送ポンプ等を用いて貯槽等へ直 接注水することにより、放射性物質の発 抑制及び蒸発乾固の進行を防止する。 溶液の沸騰により放出される放射性物質は、セル等に 導出し閉じ込めることで放射性エアロゾルの沈着を期待 するとともに、セルの内圧が上昇し、経路外放出の可能 性が高まった 合には可搬型フィルタ等を通じて 排気筒か 管理放出する。 水 爆発への対処 溶液系の においては、溶液内で放出された放射線により水が分解されることで水素が発 する。そのため、安全圧縮空気系により空気を供給して常時水素掃気を行うとともに、着火源を排除することにより、水素爆発の発 を防止している。 水素掃気機能が喪失すると、水素爆発に至る可能性が あることか 、重大事故の発 防止対策としては、安全圧縮空気系の配管等を用いて可搬型空気圧縮機か 空気を供給して水素を掃気する。また、空気の供給に失敗し た 合には、 大防止対策として、別の配管を用いて空気の供給を行う。空気の供給の概要を図9に す。 水素掃気により放射性エアロゾルが空気中に同伴する ことか 、セルに導出してセルに閉じ込めることで沈着を期待するとともに、セルの内圧が上昇し、経路外放出 の可能性が高まった 合には可搬型フィルタ等を通じて 排気筒か 管理放出する。管理放出の概要を図10 にす。 図9 可搬 気圧 機からの 気の 図10 水 爆発に対する管理放出の概要 有機溶媒火災への対処 六ヶ所再処理施設で採用しているPUREX 法においては、ウランやプルトニウムの抽出の において有機溶媒を使用する。 配管か 有機溶媒が漏 いした 合、回収がなされなければ崩壊熱により有機溶媒の引火点以上に加熱され、 着火することで有機溶媒火災の可能性がある。 重大事故の発 防止対策としては、有機溶媒が漏 いして回収ができない 合において、可搬型の窒素濃縮空気供給装置か 有機溶媒が漏 いしたセルに窒素濃縮空気を供給することにより、消炎濃度に到達させ、これを 維持することにより、火災の発 を防止する。 発 防止対策が機能せず火災が発 した 合には、セルの防火ダンパの閉止等によりセルへの給気を遮断する ことで窒息消火を図る。 また、火災により煤煙に同伴する放射性物質について は、火災により発 する可燃性ガスのリスクを考慮しフィルタにより除去した後に排気する。 TBP 等の錯体の急激な分解反応への対処 PUREX 法において、硝酸溶液中のウラン及びプルトニウムを抽出するための抽出剤としてTBP(Tri-Butyl Phosphate)を使用している。TBP 及びその分解 成物と硝酸ウラニル等の錯体は、135℃を ると急激な分解反応に至る可能性がある。 そのため、加熱を行う濃縮缶にTBP 等が混入しない措置を講ずるとともに、濃縮缶の温度制御を実施しているが、万が一これ が機能せず急激な分解反応に至ったことを して、対策を整備する。 事故の 大防止対策としては、濃縮缶への溶液の供給と加熱を停止し、急激な分解反応の再発を防止する。 また、急激な分解反応により発 する放射性エアロゾルは、セルに導出し閉じ込めることで沈着を期待する。 燃料貯蔵 ールにおける冷却機能喪失への対処 発電炉か 受入れた使用済燃料は、燃料貯蔵プールに貯蔵する。使用済燃料の崩壊熱は、プール水を 環させ、さ に熱を外部に排出することにより除去している。 燃料貯蔵プールの 機能が喪失した 合には、使用済燃料の崩壊熱によりプール水が沸騰して水位が低下し、 使用済燃料自体の損傷に至る可能性がある。したがって、これを防止するために、中型移送ポンプ等を用いて燃料 貯蔵プールに注水することにより、使用済燃料の水位を 維持する。 燃料貯蔵プールか のプール水の大量漏 いが発 した 合には、使用済燃料に対してスプレイ設備か 散水することで、損傷の緩和を図る。 放射性物質の漏えいへの対処 再処理の過 で発 する高レベル廃液は、ガラス溶融炉においてガラス原料と混合して加熱し、ガラス固化体 として貯蔵する。 ガラス溶融炉か 発 する気体状の放射性物質は、廃ガス洗浄器等で浄化した上で 排気筒か 放出している。全交流動力電源が喪失した 合、ガラス溶融炉の加熱は停止するものの、 までに時間を要することか 、それまでは気体状の放射性物質が発 して固化セル内に放出し続けるとともに、浄化機能や排風機が停止すること により、フィルタや 排気筒を経由せずに外部に放射性物質が放出される可能性がある。 したがって、重大事故の 大防止対策として、固化セルか の排気系(固化セル圧力放出系)のダンパを開放することで、排風機を用いることなく、放射性物質をフ ィルタにて除去した上で、 排気筒か 管理放出する。 水源の確保 重大事故等に 速に対処するため、敷地内水源として耐震性を有する貯水槽(20,000m3)2 基を新たに設置する。また、重大事故等への対処を継続するため、敷地外水源として二又川及び尾駁沼を確保し、貯水槽へ取水するための設備を整備する。図6に、新たに設置する貯水槽の 位置を す。 緊急時対策所 支援組織の拠点として、約360 人を収容でき、耐震性を有する緊急時対策所を新たに設置する。図6に、新たに設置する緊急時対策所の位置を す。 体制 再処理事業所として、同じ敷地内に設置される再処理 施設とMOX 燃料加 施設の重大事故等への対処を実施するための対策組織を構築する。 対策組織のうち、対策 動そのものを行う実施組織は、中央制御室を拠点とする。 に当直員で構成し、常に必要な要員数を確保することに加 、交代要員が参集できる体制を整備する。また、支援組織は、夜間?休日であ っても事故発 時に参集し、緊急時対策所を拠点として実施組織の支援を実施する。 さらなる安全性向上のために 今後は、自然現象等に係る最新の 見を反映して、措置が遥切であるかを確認するとともに、より確実かつ効 果的な対策が講じ れるよう、最新の技術 見の収集に努め、さ なる安全性の向上に資する。
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