原子核乾板による浜岡2号機格納容器下部の観測(その2)

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カテゴリ: 第16回
原子核乾板による浜岡2号機格納容器下部の観測(その2) Measurement of lower part of PCV of Hamaoka NPP with nuclear emulsion (Part2) 名古屋大学森島邦博Kunihiro MORISHIMANo Member 名古屋大学0中部電力 中村光廣辻建 Mitsuriro NAKAMURA Kenji TSUJI No Member Member 中部電力田畑邦浩Kunihiro TABATAMember Abstract: Muon radiography is one of the remote sensing technologies, and it has been used at Fukushima Daiichi NPP to understand the status of the fuel inside the reactor. Nuclear Emulsion is one of the detectors used for muon radiography. Its features are light weight, compact size, no power supply required, high position resolution, and suitable for installation in a limited space. So far, at the Hamaoka NPP, from the floor on the second underground level and the sub-drain in the building-outdoor part, observations using nuclear emulsion were conducted for the purpose of observing the lower part of the pressure vessel. This report gives an overview of the observations. Keywords: Muon Radiography, Nuclear Emulsion, Attenuation Method, RPV, PCV 1 背景・目的 宇宙線に含まれるミューオンは、上空ほぼ全ての方角から飛来する非常に透過性の高い放射線である。このミューオンの飛来方向と飛来数を観測する技術(ミューオンラジオグラフィ)を用いることにより、大型構造 物の内部を遠隔・非破壊にて把握することが可能となる。 福島第一原子力発電所 1 号機~3 号機の原子炉圧力容器(RPV)内や原子炉格納容器(PCV)内の状況を把握する方法としても、この技術が用いられている。 上空から飛来してくるミューオンを用いてRPV底部やPCV 底部を観測するためには、検出器を地下に設置する必要がある。原子核乾板は、小型・軽量・電源不要・防水性を有するといった特徴があることから、設置場所の制約はほとんどない。 以上のことから、浜岡原子力発電所2号機原子炉建屋の地下2階や原子炉建屋周辺の排水用立坑(サフミレン) 内に原子核乾板を設置して観測を実施している。 今回は、前回報告時[1]以降の観測状況および解析について報告する。 2 観測方法 2 測定装置と観測 原子核乾板 プラスチック製のベースの両面に、臭化銀の微結晶をゼラチンに混合分散させた原子核乳剤を塗布(図1)し て遮光パックしたものが原子核乾板である。これを観測したい場所に必要数設置する。観測終了後に回収した原子核乾板を現像後、専用の読取装置(図2)にて乳剤層の深さ方向の現像銀粒子の位置を読み取ることにより、ミューオンの飛来方向および数を分析する。この分析結果から、ミューオンの飛来方向の密度長を算出することにより、直接内部を観測できない大型構造物の内部を遠隔・非破壊にて把握できる。 原子核乾板の乳剤層は~50μm と非常に薄いが、名古屋大学の専用の読取装置は、乳剤層の深さ方向の銀粒子の位置を読み取ることが可能であるため、3 次元の飛跡解析が可能となり、分解能も数mrad と高性能である。 図1 ミューオンの飛跡を記録する原理 図2 飛跡の読取装置 原子核乾板を用いた観測 現在までに4回観測を実施しており、観測目的、原子核乾板の設置場所、および観測期間を表1に示す。また、RPV やPCV との観測位置 を図3に示す。 報告では、第1回から第3回の観測結果について報告する。 表1 浜岡2号機での観測の概要 図3 原子核乾板観測位置(イメー`) ①原子炉建屋地下2階 ②サブドレン 3 観測結果 第1 回と第3 回の観測結果の比較 観測面積が大きいほど、また観測期間が長いほど観測するミューオン数は多くなり、観測するミューオン数が多いほど観測結果は鮮明になる。第3回は第1回と比較して約7倍のミューオン数を観測している。これらの観 測結果を、シミュレーション結果とあわせて図4に示す。 第3回のシミュレーションでは、圧力抑制室や主要な機器・タンク類のデータを追加したが、それでも図4中の で示す部分(3か所)がシミュレーションと一致しきれていないと考えられる。 図4 第1 回と第3 回の観測結果の比較 第2 回の観測結果 浜岡原子力発電所2号機の原子炉建屋屋 周辺の地下水排水用のサフミレンの立坑で観測を実施した。観測結果とシミュレーション結果の一例を図5に示す。 サフミレン内の梯子に治具を設置しそれに原子核乾板 を固定することにより、RPV 下部やPCV 底部を視野に捉えることが確認できた。ただし,原子炉建屋地下2階よりも原子炉中心からの水平距離が大きくなる分、視野角が小さくなる。また、隣接する1号機の RPV や PCV が視線方向の延長上に位置することが確認できた。 図5 サブドレンでの観測結果の一例 4 まとめと今後 浜岡原子力発電所2号機の原子炉建屋地下2階および 原子炉建屋屋 周辺のサフミレンに原子核乾板を設置した。シミュレーションと比較することにより、RPV 底部や PCV 下部を視野にとらえたことが確認できた。また、ミューオンの観測数を多くすることにより、より鮮明でシミュレーション結果に近い観測結果が得られた。 今後は、シミュレーション結果と一致しきれない箇所の検討を進めるとともに、さらに鮮明な観測結果を得るための方策を検討する。 参考文献 [1] 森島 邦博、中村 光廣、辻 建 、“原子核乾板による浜岡2 号機格納容器下部の観測 、第13 回学術講演会要旨集、横浜、2016、pp.445-456.
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