宇宙線ミュオグラフィによるインフラ設備の劣化探査用検出器の開発

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カテゴリ: 第15回
宇宙線ミュオグラフィによる インフラ設備の劣化検査用検出器の開発 Development of Muography Detector to Investigate Degradation for Infrastructure Buildings 九州大学永田悠太YutaNAGATA 九州大学金政浩Tadahiro KIN 九州大学クラパ チャイウォンコット Kullapha CHAIWONGHOT 九州大学 小森 智博 TomohiroKOMORI 九州大学 賽来 悠 Yu HORAI 九州大学 渡辺 幸信 YukinobuWATANABE Abstract Muography is an imaging technique using cosmic-ray muons. The principle of this technique is similar to that of X-ray radiography. However, the muography can be applied to much larger object, since the muon has high penetrating power. We have developed a portable prototype muography detector for investigation of infrastructure degradation. Through some feasibility measurements, it was found that long measurement time is required to investigate degradation. To shorten the measurement time, we have designed an upgraded muography detector with larger detection area. In the upgrade, some detector components were also renewed to improve the detection efficiency. It is expected that the upgrade muography detector is applicable to practical investigations with realistic measurement time. Keywords: Cosmic-ray Muon, Muography, Muon Radiography, Infrastructure Building Survey, Radiation Detector 1 序論 宇宙線ミュオンは、高エネルギーの一次宇宙線が地球大気中の酸素や窒素等と相互作用して生成される二次宇宙線のひとつである。高エネルギー領域のミュオンは、物質との相互作用が、ほぼ電磁相互作用のみに限られ、非常に透過力が高いという特徴がある。つまり、巨大な構造物も容易に透過することができるため、レントゲン写真と同様の原理で、内部を透視することが可能である。このようなミュオンを用いた透視技術は「ミュオグラフィ」と呼ばれている。この技術は、防災のための火山の透視[1]や原子炉内部の探査[2]に応用されている。 我々は、地中空洞や橋梁、ダム、焼却炉等のインフラ の 理に対し、ミュオグラフィの 用を検 している。日本はインフラ の老朽化が懸念されており、安心安全な社会の実現のためには適切な 理が となっている。 現在までに、当研究室ではプロトタイプミュオグラフィ検出器の開発を行ってきた[3]。これまでに、形状や内部構造が既知の構造物を対象にしたミュオグラフィ実験を行い、その性能を調査してきた。その結果、実用機と して使用可能な計測時間でデータを取得するために必要な点が明らかとなった。本研究では実用化に向けて改良型ミュオグラフィ検出器を開発することを目的とした。2 プロトタイプミュオグラフィ検出器 プロトタイプ検出器の構成 プロトタイプ検出器は、Fig.1 に示すようにミュオン 位置検出器(mu-PSD)2 台で構成されている。このmu- PSD は、シンチレータとして機能する光ファイバー(PSF, Plastic Scintillating Fiber)によってミュオンを検出する。ミュオンとの相互作用で生じたシンチレーション光はMulti Pixel Photon Counter (MPPC)で検出している。各MPPC には、 として ルミ で れた4 本のPSF が束ねられて接続されている。この束を1 組とし、16 組敷き詰めたシートを直行するように重ねており、mu-PSD は16X16 のピクセル状の検出器となっている。 そのため、ミュオンが入 した位置を特定可能となる。これにより、上下2 台のmu-PSD のミュオン入 位置から飛来方向を決定することができる。 Fig.1 The prototype muography detector プロトタイプ検出器の性能 プロトタイプ検出器を用いたインフラ 探査のテス ト実験が、燃焼試験 の排ガスダクトを対象に行 れた。排ガスダクト透過後のミュオンの強度と構造物が存在しない体系でのミュオンの強度から減衰率を導出し た。そして減衰率と耐火物の厚みの関係性をシミュレーションより計算し実験結果を厚みに換算した。バックグラウンドとして含まれる宇宙線電子の影響 20%を差し引いた結果をFig2 に示す。 計図から厚みを算出したものと比較した結果、厚みや形状、位置はほとんど一致し ていた。しかし、検出器セット ップから実験終了まで1カ月以上の実験期間を要した。インフラ 探査にはより短い計測時間が要求されるため、計測時間の短縮が必要であることが分かった。 Fig.2 Refractory thickness map 3 改良型検出器の設計 計測時間を短縮するには、ミュオンを く検出する必要がある。その方法として、検出面積を広くすることが効果的である。実用の際は、プロトタイプ検出器で得られた計測時間を1/5 以下にする必要がある。このため に、検出面積を約5 倍となる様 計した。 また、MPPC のダークカウントと、ミュオンによる信号の波高が、一部重なっているため、プロトタイプ検出器で取得したデータの解析では、その領域のイベントを用いることができない。ダークカウントとミュオンのイ ベントの重複部を低減できれば、検出効率の向上が可能となる。そこで、ミュオンイベントによる波高を増加させるため、PSF の選定を行った。4 種類のPSF の候補をMPPC に接続し、90SrB線源照 によって得られる波高分布を計測して比較を行った。各PSF から得られた波高分布をfig.3 に示す。観測されたピークはPSF を したB線の エネルギーに対応している。これにより、BCF-10 が、同じ エネルギーでも高い波高を得られることが かった。そこで改良型検出器にはこのPSF を選定した。 Fig.3 The comparison of deposit energy distribution 4 まとめ プロトタイプ検出器の である計測時間を短縮するため、改良型検出器の 計を行った。検出器を構成する要素を見直すことで、検出器の性能を向上させ計測時間を短縮することが可能となる。今後、改良型検出器の開発をし、それを用いた実計測を行い、実用化へ向けて開発を重ねていく。 参考文献 H. K . M. Tanaka, et al., “Radiographic visualization of magma dynamics in an erupting volcano”, Nature Communications 5, 2014, 3381. K. Borozdin, et al., “Cosmic Ray Radiography of the Damaged Cores of the Fukushima Reactors”, Phys. Rev. Left. 109, 2012, 152501. 大野裕明 他, “可搬性の高い小型ミュオグラフィ検 出器の開発研究”, 放 線, 41, 2016, pp.163-169.
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