再処理工場におけるトラブル事例の構造化表現に関する検討

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カテゴリ: 第16回
再処理工場におけるトラブル事例の構造化表現に関する検討 Application of the structured representation of trouble cases in reprocessing plant 東北大学大学院 安田優也 Yuuya Yasuda Member 東北大学大学院 高橋信 Makoto Takahashi Member In this study, the generalized failure mechanism knowledge (GFMK) derived from trouble cases in the Rokkasho reprocessing plant has been applied to an mechanical subsystem in the same plant in order to examine its general applicability. This study confirms that the GFMK can be applied to the subsystem of a pool water cooling system and that a potential failure mechanism can be successfully derived. The efficacy of the derived knowledge regarding this failure mechanism was evaluated by referring to maintenance manual. The result has demonstrated that GFMK can point out the failure mechanism that have not been explicitly referred in the maintenance manual. It is expected that GMFK can contribute to proactively check possible failure events in a realistic scale system maintenance without depending on the field experiences. Keywords: Generalized Failure Mechanism Knowledge (GFMK), reprocessing plant, failure mode analysis, knowledgebase, plant diagnosis 1 緒言 六ヶ所再処理工場は、多様な分野の技術開発の成果を 集大成した機器とシステムの複合体である。そのため、 工場で発生する設備機器の故障トラブルは、多様な形で 在化する可能性がある。大 分の設備機器の故障要因は設 で り れるとともに、 にづく保全により予防されるが、故障要因の全てを網羅的 に考慮することは難しく、潜在的な故障要因が存在して いる可能性は否疋できない。六ヶ所再処理工場において より高いレベルでの安全性を実現するには、予見的に対 策を講じるために、現状の保全に考慮されていない故障 要因とその発生・進展過程(故障メカニズム)について 予見することが重要である。 人間は、思考の状況依存性 時間・知識源の有限性の要因により、可能性のある故障メカニズムを見落とす 場合がある。できるだけ考え落としの可能性を排 して故障メカニズムを見つけ出すためには、人間の知識に依 存する 分をできるだけ低減することが重要である。 故障メカニズムの見落とし低減のために、故障生起汎化知識(Generalized Failure Mechanism Knowledge; GFMK) が知識工学の で提案されている[1,2]。GFMK は特疋の対象に依存せずに故障メカニズムを記述する知識体系である。 連絡先: 安田優也、〒980-0812 宮城県仙台市青葉区片平二丁目1番1号、東北大学大学院工学 科、 E-mail: yuuya.yasuda.q8@dc.tohoku.ac.jp GFMK は故障事象の発生・進展に係る因果関係と、故障の発生・進展に必要な条件として記述する影響因子(影響属性)との組合せで表現される。この知識体系は、特疋の設備の故障メカニズムの記述を一般的な表現に置き換え、全く異なる設備への知識の適用を可能にする。 これ での では、六ヶ所再処理工場で発生した事象を にGFMK 知識ベ スを構 し、機 器への適用が可能なことを確認するとともに、構造化した過去の知識が故障の予見に寄与する可能性があることを確認した[3,4]。渡辺らは、再処理工場の故障事例で構 したGFMK 知識ベ スを全く別の模擬プラントに適用することでGFMK の汎用性について検証した[5]。これらの従来の ではGFMK を適用することにより有用な故障メカニズムの導出可能性を検討してきたが、保全知識の獲得という観点で寄与し得る は だ検討されていない。 の ら、 では、現実的 模の設備に対する故障生起汎化知識の系統だった適用手順を提案する とともに、汎化知識を設備へ適用して導出した故障メカ ニズムの成立性を検証する。更に導出した故障メカニズ ムに関する知識の有効性評価として、類似設備 外の知識に故障生起汎化知識の枠組みを適用した場合の利用可 能性と、有効な保全知識の獲得に寄与する う の見通しについて考察する。 2 故障生起汎化知識による故障メカニズム導出 導出手順 六ヶ所再処理工場における特疋のシステムの故障メカ ニズムの導出手順を図1に示す。最初に対象設備を選疋し、多重属性で表現する。次に、多重属性表現に故障生 起汎化知識を適用し、起こりうる故障メカニズムを導出 する。導出された故障メカニズムは、その成立性を評価 した後、点検手順 と比較することで、導出した故障メカニズムと保全の知識の関係性が検証される。知識ベ スの構 には、六ヶ所再処理工場の故障事例118 件を構造化して得たGFMK を用いた。 図1 故障メカニズムの導出手順 サブシステムの概要 六ヶ所再処理工場には、使用済燃料集合体 ら発生する崩壊熱を安全に 去するための設備の一つに、燃料貯蔵プ ル のプ ル水を冷却するプ ル水冷却系がある。 系の概要を図2に示す。 系の主要機器であるプ ル水冷却系ポンプは、機能喪失した場合、プ ル水を熱交換器に移送できずプ ル水の温度が 昇するおそれがあること ら、その機能喪失を検知する目的で電気故障の検知器を備えている。当該ポンプについてより高いレベ ルでの安全性を確保するためには、電気的要因 外の故障についても予見し、対策を講じる必要がある。これを 踏 え、 検討では、当該ポンプを対象にして故障メカニズムの導出を行った。 図2 プール水冷却系の概要 属性表現の適用 当該ポンプは、多重属性モデルに づき表1のように表現される。これらの属性は構造図 の技術仕様 と、 を参照して記述している。 故障メカニズムの導出結果 故障生起汎化知識を属性表現に適用して導出した故障メ カニズムを図3に示す。導出した故障メカニズムのな には 下のような のトラブルシュ ティングに 示されていない故障の進展過程が推疋された。 ・高分子材料であるO リングはウェルド(材料の成型時に二つ の流れが完全に融合しないときに生じる欠陥)を有している可能性がある ・欠陥を有するO リングはポンプの振動により亀裂が生じ得る ・ガスケットに亀裂が生じた場合、内 流体が漏えいするおそれがある 図3 導出したポンプの故障メカニズム 3 導出した知識の有効性評価 導出した故障メカニズムに記載されている各事象が、 実際の保全のな で確認対象となっている う を確 めるために、 記のメカニズムと当該ポンプの点検手順 ・ とを比較した。その結果、ポンプ構成 であるO リングについては、傷 圧縮性、欠陥の有無を確認するよう記載があるが、ウェルド発生の可能性そのものには言及されておらず、対策(据付前のウェル ドラインの確認 )が 記されていないことを確認した。 た、この知識の元となった事象は、グロ ブボックスのポ ト押さえひび割れ事象[6]であり、通常の不具合の水平展開では全く別の設備であるポンプに で知見が必ず展開されるとは考え難い。このように、トラブル事例 ら故障生起汎化知識を整備し活用することで、故障メカニズムの知識を全く異なる設備間で共有し、これ で 示されていな った保全の新たな視点を得ることができる可能性がある。 4 結言 では、現実的 模の設備に対する故障生起汎化知識の系統だった適用手順を提案するとともに、汎化知 識を六ヶ所再処理工場のプ ル水冷却系ポンプへ適用して故障メカニズムを導出した。 た、導出した故障メカニズムに関する知識の有効性評価として、類似設備 外の知識に故障生起汎化知識の枠組みを適用した場合の利 用可能性と、有効な保全知識を獲得できる う を考察し、知識獲得に寄与する見通しを得た。 参考文献 M Takahashi et al., “Derivation of Diagnostic Knowledge from Multi-Level, Multi-Attribute Model Representation of Nuclear Power Plant,” Proceedings Of The Topical Meeting On Advances In Human Factors Research On Man/Computer Interactions: Human And Beyond, pp.5-10.(1990) M Takahashi, et al., “Representation of Generalized Failure Mechanism Knowledge for Diagnosis of Nuclear Power Plant,” Journal of the Atomic Energy Society of Japan, vol. 34, 7, pp.678-692.(1992) Y Yasuda and M Takahashi, “STUDY ON THE STRUCTURED REPRESENTATION OF FAILURE MECHANISM IN ROKKASHO REPROCESSING PLANT,”, In Proceedings of 23rd International Conference on Nuclear Engineering. Chiba.(2015) Y. Yasuda and M. Takahashi, “Application of generalized failure mechanism knowledge to reprocessing plant for proactive risk management”, Energy Procedia 131:216-221.(2017) 渡辺高太郎, 高橋信, “模擬プラントを対象とした知識工学的手法による故障メカニズム導出に関する ”, 測自動制御学会東北支 第306 回 集会 306-2(2016) 日 原燃株式会社, “ウラン・プルトニウム混合脱硝建屋 グロ ブポ ト押さえのひび割れ事象の処置について”, 原子力 制庁面談資料(2015), 表1 プール水冷却系ポンプの属性表現 ポンプの 位 影響属性 インヘ゜う 切り欠き :有り, 動的力:せん断力, 動的運動:回転,物質の状態:液体, 作業物質:水, 外 に流れ:有り, 薄い構造:有り, 鋳造 :有り, 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属, 固疋接続:嵌合, 流体制御機構, 不純物存在の可能性:有り, 角 :有り インヘ゜うキー 切り欠き :有り, 動的力:せん断力,物質の状態:液体, 作業物質:水, 外 に流れ:有り, 材料物質:金 属, 固疋接続:嵌合, 不純物存在の可能性:有り, 角 :有り 主軸 動的運動:回転, 動的力:せん断力, 物質の状態:液体, 作業物質:水, 外 に流れ:有り, 材料物質:金属, 固疋接続:嵌合, 不純物存在の可能性:有り 軸スリー ` 切り欠き :有り, 動的力:せん断力, 物質の状態:液体, 作業物質:水, 外 に流れ:有り, 制動機構, 材料物質:金属, 固疋接続:嵌合, 可動接続:嵌合, 可動接続:滑り, 不純物存在の可能性:有り, 角 :有り スリー `ナット 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属 ストッハ゜ーリンク` 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属 スリー `キー 切り欠き :有り, 動的力:せん断力, 材料物質:金属, 固疋接続:嵌合, 角 :有り, 材料物質:ステンレス鋼 軸継手 切り欠き :有り, 動的力:せん断力, 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属, 固疋接続:嵌合, 角 :有り 軸継手キー 切り欠き :有り, 動的力:せん断力, 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属, 固疋接続:嵌合 六角穴付止ネ ` 固疋接続:ネ `, 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属, 耐食性:有り 六角穴付止ネ ` 固疋接続:ネ `, 材料物質:金属(SCM435) O リンク` 材料物質:高分子材料, 接液 :高分子材料, 成形時のウェルト`発生可能性有り ケー ンク` 内 流体:有り, 内 に流れ:有り, 作業物質:水, 物質の状態:液体, 封入構造: ール材有り, 鋳造 :有り, 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属, 合流・分岐構造:有り, 切り欠き :有り, 固疋接続:嵌合, 気 密構造:有り, 回転機構, 不純物存在の可能性:有り, 狭い構造:有り うイナリンク` 物質の状態:液体, 作業物質:水, 外 に流れ:有り, 制動機構, 材料物質:金属, 切り欠き :有り, 固 疋接続:嵌合, 不純物存在の可能性:有り, 材料物質:ステンレス鋼 六角ホ`ルト 材料物質:金属(SCM435), 固疋接続:ホ`ルト ナット付テーハ゜ ゜ン 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属 ナット付ストレート ゜ン 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属 ケー ンク`カ`スケット 物質の状態:液体, 材料物質:高分子材料, 封入構造: ール材有り, 成形時のウェルト`発生可能性有り 玉軸受 動的運動:回転, 動的運動:滑り, 制動機構, 材料物質:金属, 可動接続:嵌合, 可動接続:滑り 軸受ケース 鋳造 :有り, 材料物質:金属(鋳鉄) 軸受カハ`ー, ナット 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属 軸受座金 薄い構造:有り, 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属 調整 ゜ース 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属 ハ`ックアッ ゜リンク` 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属 水切り, 油切り 材料物質:金属, 材料物質:ステンレス鋼 ヘ`ント ゜うク` 材料物質:炭素鋼, 材料物質:金属 ゜うク` 鋳造 :有り, 鍛造 :有り, 材料物質:金属 メカニカル ール 物質の状態:液体, 作業物質:水, 制動機構 メカニカル ールカハ`ー 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属 セット爪 物質の状態:液体, 作業物質:水, 制動機構, 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属 メカニカル ールスリー ` 物質の状態:液体, 作業物質:水, 制動機構, 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属 スタット`ホ`ルト 固疋接続:ホ`ルト, 材料物質:金属 六角穴付ホ`ルト 固疋接続:ホ`ルト, 材料物質:ステンレス鋼, 材料物質:金属 位共通 静的運動:振動, 経年, 地震発生の可能性 有り, 人間の干渉の可能性:施工不良( 疋トルク値の管理不良, 面間の管理不良, 分解作業, 消耗 の再利用, ールテー ゜巻き方不良, 締め付け不良), ール材の選疋 ス, 運転 作不良( 確認不 ), 運転管理不良(流 調整), 流 減 作, 作業物質の入れ えに伴う空気混入の可能性 有り, 作業物質移送 作, 作業に伴う気密性の向
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