人工物デジタルツイン構築のためのマルチスケールモデル・モニタリングのシンセシス

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カテゴリ: 第16回
人工物デジタルツイン構築のためのマルチスケールモデル・モニタリングのシンセシス A digital-twin of artifact systems by synthesizing multiscale modeling and monitoring 東大院・工 沖田 泰良 Taira Okita 正会員 東大院・工 1畑 友弥 Tomoya Kawabata 非会員 東大院・新領域 村山 英晶 Hideaki Murayama 非会員 東大院・工 西野 成昭 Nariaki Nishino 非会員 東大院・新領域 愛知 正温 Masaatsu Aichi 非会員 We propose an advanced digital twin of artifact systems (DTAS) in which physical and numerical models of structural materials at several time scales and length scales are constructed and integrated, while monitoring and inspection data of structural materials are used as input parameters. As DTAS can reproduce the current state of structural materials and predict their degradation through their service life, it can improve the resilience and give plasticity to artifact systems. A portion of the results related to inspection technique is described as one of the essential components to complete DTAS. Keywords: resilience, plasticity, cyber space, molecular simulations, structural mechanics model 1 緒言 現代社会に存在する人工物システムは,人類が英知を結集させて作成した産物であり,もたらされる恩恵によりQuality of Life が向上していることは,疑いの余地がない.一方,これらシステムは通常数十年の供用が られるが,その 計は 時の知 に いてわれる.現代社会においては,システムを取り巻く環境が目まぐるしく変化し,それに伴いシステムの目 的・ 用 も変 される 合もあるた ,供用時には最適と考えられていた 計が供用と共に陳腐化し,安全性・経済性に劣ったシステムを,時としてそのことを認識せずに使用していることが往々にして存在する.このような問題を解決するた には,複雑なシステムの挙動を適確に把握し,科学的根拠に いて適切な保全処置を講じて人工物システムを強化しなければならない. 本研究では,人工物システムの躯体ともいえる,構造およびそれを構成する材料の健全性という観 を礎とし,上記の問題解決に向けて,人工物デジタルツインを提案する. に,本稿ではその人工物デジタルツインの概念と,その要素技術としての試験片作成手順について述べる. 2 人工物デジタルツインの概念 人工物デジタルツインの重要な構成要素の一つと して,リアルタイムに人工物の状態を把握する検査システムが必要である.具体的には,人工物の構造材料の劣化進 具合を広範に検出するマクロ検査技術,その結 に いて に劣化が進 している を重的に検出するミクロ検査技術である.それによって, 構造材料の劣化状態を適切に把握できる.これら各々のスケールでの時々 々の検査・モ タリン データを入力値として構造材料劣化を計算できる数値モデルを 発し,それらを連成させるマルチスケール解析により仮想空間でシステム構造材料の状態を再現あるいは予測する(Fig. 1 [1]).マクロ・ミクロスケールの検査・モ タリン (ハードウェア)と数値解析モデル (ソフトウェア)を組み合わせることで,実在の構造材料に対してその健全性に関わる時間的・空間的情報が高度に反映された仮想の双子をデジタル空間に構築する. Fig.1 Digital twin of artifact systems [1] 上記で述べた構造材料の挙動評価は,人工物システムの安全性・信頼性に直結する課題であるた ,人工物デジタルツインにより,人工物システムを強化することが可能となる.例えば,現有 備の損傷進展を継続的に評価することにより検査時期や 用計画を最適化することが可能である.自然災害に代表される外的要因によりシステム構造材料に想定外の負荷が付与される 合の検討に於いても,予 人工物デジタルツイン内でのストレステストにより脆弱 を検出することが可能となり,システム全体としてのリスクを低減するた の処置を明らかにできる.また,過酷状況発生時には,人工物デジタルツイン内で実際の負荷を再現することでシステム構造変化を瞬時に把握し,大惨事を防ぐた の処置を提案することも可能となる.このように,人工物デジタルツインの構築により,人工物システムのレジリ ンス性が向上する.さらに,社会構造や需要変化等,システムを取り巻く環境の変化によってシステムの目的・ 用 が変化する 合に於いても,人工物デジタルツインによりシステム形 態・仕様の適切な変 を明らかにすることで,柔軟な 用を可能するシステム可塑性を付与することもできる. 人工物デジタルツインにより得られたこれらシス テム 用上の知 は,どうしても保守的な管理 準を規定せざるを得ない内外の維持規格などの現 安全性管理 準に代わり,より合理的な判断を可能にする選択肢を提供するた に重要な情報提供源になり得る. これにより,次世代人工物の 発から実用化までに多くの物質消費・時間を必要とせず,大幅な低コスト化・高効率化,画期的な 計変 も達成できる. 構造材料を対象とした予測モデルにより検査の時 期と を評価する従来の学術体系のみでは得ることができなかった,システム環境変化を取り入れた上でより安全で高効率なシステムの 用を可能にすることが,人工物デジタルツインの大きな 徴である. 3 人工物デジタルツインのための要素技術 外力負荷に伴う材料劣化を検出する検査技術の 発に たっては,これを単一効 として観察できるべく,欠陥密度が極 て低い試験片の作成が,技術完成の根 を うものである. に微細組 を検出するミクロ検査技術として現在検討している超音波試験は, 試験片表面状態や内部構造に敏感な技術であり,これ らによって信号が強く変化する.通常構造材料として 用いられる材料は,内部に多くの結晶粒を含む多結晶 材であり,この結晶粒は超音波の強い散乱体として働 く[2-4].本研究では,材料への外力負荷の影響を引張 試験によって模擬し,歪みに伴う微細構造変化を超音 波応答で測定する技術の 発を っている.しかし, 多結晶材料を用いた引張試験を うと,結晶粒の形状も変化するた ,微細構造変化による応答と結晶粒形状の変化に伴う応答を区別することが困難であり,人 工物デジタルツイン構築のた のミクロ検査技術 発に不適切である.そこで,本章では,人工物システム の構造材料として広く用いられる鉄鋼材料を対象とし, 超音波試験が可能なサイズの単結晶部位を含む引張試 験片作成に関して簡単にホす. 試験材は, 変態鋼Fe ? Al 合 を高温で粒成 させることによって作成した(Fig. 2).これを放電加工により一辺25mm の立方体試料に切断後,電子ビーム溶接により引張試験片つかみ部を接合し,平 部中心に単結晶部位を含む引張試験片を作成した. Fig.2 Fe-Al block metal 表面研削後の試験片外観をFig. 3 にホす.この試験片は,Fig. 4 にホすように中心周波数10MHz の超音波試験に於いても,非常に減衰が弱く強い底面波が観察され,このことから内部に結晶粒などの欠陥密度が極 て低いことがわかる.この試験片を用いることで, 外力負荷に伴う微細組 形成の影響を単独の因子として,超音波応答の測定が可能となる. Fig.3 Tensile test specimen used in this study Fig.4 Ultrasonic signal of the specimen prior to the tensile test. Peak frequency: 10MHz 謝辞 本研究は 科学研究費助成事業(課題番号17H03518 17KT0039)において得られた成果の一部です 参考文献 T. Okita, T. Kawabata, H. Murayama, N. Nishino, M. Aichi,"A new concept of digital twin of artifact systems : synthesizing monitoring / inspections, physical / numerical models, and social system models", Procedia CIRP, vol.79, 2019, pp.667-672. K.Goebbels K. Structure analysis by scattered ultrasonic radiation 87-157. Research Technology in NDT. Sharpe, Editor. Vol. IV. London: Academic Press; 1980. J. Etoh, M. Sagisaka, T. Matsunaga, Y. Isobe, F.A. Garner, P.D. Freyer, Y. Huang, J.M.K. Wiezorek, T. Okita, “Development of a nondestructive inspection method for irradiation-induced microstructural evolution of thick 304 stainless steel blocks.”, Journal of Nuclear Materials, vol.440, 2013, pp.500-507. J. Etoh, M. Sagisaka, T. Matsunaga, Y. Isobe, T. Okita T, “ Asimulation model of ultrasonic wave changes due to irradiation-induced microstructural evolution of thick 304 stainless steel blocks”, Journal of Nuclear Materials 2013, vol.441, 2013, pp.503-509.
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