原子炉圧力容器内面の腐食に関する検討(2)SCC試験
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カテゴリ: 第16回
原子炉圧力容器内面の腐食に関する検討c2)SCC 試験
A study on corrosion immunity of RPV inside cladding
(2) Stress corrosion cracking test
中部電力
原子力安全技術研究所
熊野 秀樹
Hideki YUYA
Member
中部電力
原子力安全技術研究所
田畑 邦浩
Kunihiro TABATA
Non-Member
東北大学
末来科学技術共同研究センター
鍾 祥玉
Xiangyu ZHONG
Non-Member
東北大学
末来科学技術共同研究センター
庄子 哲雄
Tetsuo SHOJI
Non-Member
An inside cladding of RPV in Hamaoka-5 caused pitting damage by sea water intrusion in 2011. For a restart of Hamaoka-5, we need a conservative evaluation such that SCC propagates instead of pitting. Two years ago, we reported metallurgical observation results in advance of SCC tests at AESJ conference. This is the progress report describing SCC test results obtained after the AESJ conference.
Keywords: RPV, inside cladding, pitting, chloride ions, SCC, crack propagation rate
1. 緒言
当社は、2011 年に浜岡原子力発電所 5 号機(以
下、5 号機という)の運転を停止した。その折、主復水器エンドギャップに不具合が生じ、約 5 トンの海水が原子炉内に混入した。そのため、5 号機の原子炉内部の が れ、2013 年 には内面クラッディングに孔食が発見された[1]。この孔食は深く、内面クラッディングの厚み(約 5mm 程 )に達するものもあった。
5 号機の原子炉内面クラッディングの下地は原子炉母材であるが、その部分はクラッディング熱影響を受けていて通常の組織とは異なり注意を要する。前報では、2 号機用に保管されている非照射材(UT ブロック)から SCC 試験片を作製することとし、その金属組織のみについて、硬さ、SEM-EDS およびEBSD 等を 施し、内容を報告した[2]。その結果、内面クラッディングから RPV 母材方向へ硬さ分布が見られた。また、内面クラッディングはッ相と6フェライト相で構成され 内面クラッディングと RPV の接合部から RPV 方向へラス組織(多数の炭化物あり) ラス組織(炭化物なし) 粗粒ベイナイト組
織 細粒ベイナイト組織と変化していた。
今回、前報[2]からの進捗について報告する。
連絡先:熊野秀樹, 〒437-1695 静岡県御前崎市佐倉
5561, 中部電力株式会社 原子力安全技術研究所, E-mail:Yuya.Hideki@chuden.co.jp
2 試験結果
2 1 試験片準備
309L / A533B DMW のモックアップ異材継手は中部
電力より提供した。溶接ブロックは、浜岡原子力発電所 2 号機のプラント建設時に溶接(309L)を使用して の 用に作られた 物大の継手部を用いた。クラッド溶接時のワイヤの幅は 70mm であった。クラッドの厚さは約 5mm である。
クラッド部材より 1TCT 試験片を作製するために、316L の SS タブを 309L の側に電子ビーム
(EB)溶接して、1TCT 試験片大の部材を作成し、そこから 1TCT 試験片を作製した。316L SS / 309L / 低合金鋼複合 CT 試験片に対する大気中予き裂導入後のノッチ先端との相対位置を図 1 に示す。
1
溶融境界までの距離は、環境中予き裂によるき裂進展を想定して、約 1.5 mm とした。
2 2 see 試験
試験は空気中での疲労き裂、その後、裔温水中での予き裂導入、そして一定荷重下で試験を い、試験後は、破面観察のための疲労によるホストき裂導入を う。図 2 に予き裂導入時の ACPD データを示す。各荷重比 R において、き裂成長が観察された。しかし、一定負荷期間中に ACPD 信号はゆっくり減少し、き裂が成長しなかったか、き裂成長速 が非常に遅かった。減少の理由は長時間浸漬による材料学的変化あるいは計測系のドリフト等が考えられる。ACPD 信号は、負荷を増加させた場合には増加しており、電位差法が 常である事が確認できた。
2 定荷重試験中の交流電 差と時間の関係
図 3 は、2770 時間に たって DO=0.2 ppm の模擬BWR 環境における Kmax=35MPa?m 及び Kmax=43 MPa?m での試験後の試験片の破面形態を示す。き裂先端は全て 309L クラッド材部に位置している。破面の一部に粒内割れ状の破面が観察されたが、詳細な SEM 観察結果によればこの破面上にはストライエーションが観察されており、この部分は、応力比 0.7 の環境中予き裂によるき裂進展部と判断される。本試験片の環境中予き裂先端部には、定荷重試験における SCC 割れはどの領域でも観察されなかった。すな ち、本試験片の予き裂先端部は、309L クラッドに位置しており、予き裂先端部には、全く定荷重き裂進展(SCC)の痕跡が認めらず、この条件下で
は、309L クラッド材には SCC が発生・進展しない。
3 D0=0 2ppm BWR 環境下で 2770 時間試験後の破面
図 4 は、K=50MPa?m の一定負荷期間で DO=0.2 ppm の環境で 450 時間試験後のき裂先端部を示す。き裂はすでに低合金鋼/309L 境界に達し、低合金鋼に侵入している。き裂先端は鈍化・開口しており、き裂先端が定荷重試験開始時にすでに侵入し、定荷重試験中に進展せず、鈍化したと推定される。
4 K=50MPa.fm、450 時間試験後の 部
3 まとめ
309L はDO=0.2 ppm の模擬 BWR 環境において
Kmax =43MPa?m まで SCC 進展しない。
溶融境界部は、DO=0.2ppm、K=50MPa?m では
SCC き裂進展に免疫的であった。
参考文献
[1Jhttp://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_rel ease/press/3258691_21432.html
[2]日本原子力学会、2017 年秋の大会、於)北海道大学、”原子炉圧力容器内面の腐食に関する討(1)材料 ”