原子炉恒久停止から廃止措置までのリスクについて

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カテゴリ: 第17回
原子炉恒久停止から廃止措置までのリスクについて Nuclear power plant risk after permanent shutdown to decommissioning 三菱重工業株式会社 田中太 Futoshi TANAKA Member 三菱重工業株式会社 和地永嗣 EijiWachi Non-member For the planning of decommissioning and the establishment of appropriate safety control during its activity, risk assessment to understand the potential accident scenarios during decommissioning is essential. The decommissioning phase following permanent shutdown involves a complex process such as dismantling of equipment and facilities, demolition of building and structures. The decay heat and management of spent fuels also change by time during decommission. In comparison to nuclear power plants at operation, the risk of significant offsite effects is more unlikely, but more care must be taken in the risk assessment to capture the changes in activities and plant status during decommissioning. This article describes the general characteristic of radiological risk of nuclear power plants during the decommissioning. Keywords: Risk Assessment, Safety Assessment, Decommissioning, Spent fuel accident 1.背景 廃止措置は燃料の状態及び保管方法が期間とともに変 化するだけでなく工事の進捗に伴い機器及び建屋の状態 や解体作業も変化する。公衆安全及び作業員被ばくの観 点からのハザードも廃止措置の進捗に伴い変化すること から、リスクの管理された適切な作業計画を立てるため には廃止措置中の各フェーズに応じたリスクプロファイ ルを把握することは重要である。 確率論的リスク評価(PRA)が運転炉のリスク評価に広く使用されている。PRA では事故シナリオやその発生頻度についての詳細な情報が得られる半面、評価を実施するためには設計・手順・運転実績データ等の細かな情報が必要であり、また評価作業も煩雑である。廃止措置時に想定される事故は、その影響の大きさ、発生頻度、事故シナリオの複雑さ、事象に対する知識量等の観点で様々であるため、そのすべてに対しPRA を実施することは合理的ではない。廃止措置の各フェーズの特徴を理解したうえで、その特徴に応じたリスク評価手法を適用することで合理的なリスク評価が可能になる。廃止措置のリスクの特徴とリスク評価手法について紹介する。 田中 太 〒652-8585 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町 1 丁目1 番1 号、三菱重工業㈱ 原子力セグメント 炉心・安全技術部 信頼性評価技術課 E-mail: f_tanaka@mhi.co.jp 2.廃止措置のリスクの特徴 廃止措置が進捗し放射性物質や使用済燃料が移動また は安全な形態で保管されるとサイト外への放射性物質の 放出リスクは低減する。廃止措置段階の公衆被ばくリス クは運転炉と比較して一般的には低いが、使用済燃料の 崩壊熱がキャスクでの保管が可能な状態まで低下した以 降はさらに公衆被ばくリスクは低下し、その後は解体作 業に伴う作業員の被ばくリスクが重要になる。廃止措置 におけるリスク推移のイメージを図1に示す。 使用済み燃料が使用済燃料ピット(SFP)に保管されている期間と使用済み燃料がSFP から移送された以降の解体作業期間でリスクの特徴を次に示す。 Fig.1 Example of overall radiological risk profile during the defueling and dismantling periods[1] 使用済燃料ピットへの燃料移送中及び燃料保管中のリスク 使用済燃料がSFP に保管されている期間では使用済燃料の冷却機能が喪失することにより燃料が損傷し放射性物質が放出されるリスクがある。 原子炉停止以降にSFP から燃料を取り出すまでの期間における核分裂生成物(FP)放出リスクについては、海外BWR プラントを対象に行われたリスク研究[2]によると、炉心からの燃料取り出し後ではそのFP 大量放出頻度(LRF)は低減するものの、早期大量放出(LERF)の割合は増加する結果が得られている。また、燃料損傷への寄与の大きな起因事象として地震事象と火災事象が挙げられている。 米国NRC で実施されたプラント停止から1 年程度経過した使用済燃料を対象としたSFP 内燃料のリスク研究 [3]によると、使用済み燃料の損傷とFP 放出に至る主要な 起因事象は地震事象と重量物落下事象である。プラント 停止から長期間経過した使用済燃料の崩壊熱は低くSFP の冷却機能喪失から燃料損傷までの時間余裕が1 週間以上あるため、地震や重量物落下等によりSFP または燃料が直接損傷するような事故シナリオ以外による燃料損傷 リスクは小さいとされている。 プラント停止直後ではプラント運転中の燃料取替時と 同様のリスクレベルやプロファイルが想定されるが、使 用済燃料の崩壊熱が時間とともに低下すると、外部電源 喪失や冷却機能喪失などの燃料損傷までの時間余裕が長 く、事象によるリスクは低減する。その結果、全体とし てリスクは低減するものの、地震事象や重量物落下など 発生頻度は低いものの使用済燃料の冷却機能の回復が難 しい事故によるリスクが相対的に高まる。 解体作業中のリスク 解体作業は機器及び建屋の状態、工事の内容や環境が 変化する複雑な作業である。この期間のリスクを把握す るうえでの重要な特徴の例を表1に示す。解体作業中に 想定される事故は様々であり、影響の種類及びその大き さ、発生頻度、関連する設備や手順等がそれぞれ異な る。多種多様な事故によるリスクを評価するためには、 まずは想定されるハザードを幅広く拾い上げたうえで簡 易的な評価により影響と発生頻度を概算し、重要なハザ ードを特定する手順が有効である。HAZOP、チェックリスト等を活用して影響及び頻度の観点で有意なハザー ドを抽出することが推奨される[1]。 Table1 Example of characteristics during commissioning 観点 解体作業中リスクの特徴 ハザード 公衆安全に係わるハザードよりも作業員の安 全に係わるハザードの重要性が増す。 廃止措置のフェーズや作業内容によりハザー ドは変化する。 作業経験や知見 運転炉では保守を主体としたルーチン作業が 主であるのに対し、廃止措置段階では常に新 しい作業が発生しまた作業者も変わるため、 作業に対する経験や知見が比較的浅い。 先行のリスク研究[4]の例では、生体遮蔽の解体作業時の手順で発生しうる人的過誤事象についてHAZOP 手法、機械故障についてFMEA を用いて作業員被ばくに至りうる事象を抽出している。そのうえで、一般産業界 の事故発生事例や機器故障率データに基づき事故発生頻 度を推定し、生体遮蔽解体作業時の事故による作業員被 ばくリスク評価を行い換気設備や集塵装置の故障にとも なうリスクが支配的であるとの分析している。 3.まとめ 原子炉恒久停止から廃止措置完了まで使用済燃料の管 理状態や工事の進捗に伴い、リスクプロファイルは変化 する。既存研究から得られる知見や簡易的なリスク評価 によって、廃止措置の各フェーズでリスク評価上重要と なるハザードを抽出し、重要度に応じたリスク分析やリ スク管理を行うことが重要である。 参考文献 IAEA“Safety Assessment for Decommissioning” IAEA Safety report series No.77, 2013 Davide Mercurio, et.al., “Decommissioning Level 2 Probabilistic Risk Assessment Methodology for Boiling Water Reactors”, 13th International Conference on Probabilistic Safety Assessment and Management (PSAM 13), 2~7 October, 2016 US NRC,“Technical Study of Spent Fuel Pool Accident Risk at Decommissioning Nuclear Power Plants”, NUREG-1738, 2001 Hyngjun Kim, et. al., “Safety Assessment Framework for Nuclear Power Plant Decommissioning Workers’’, IEEE Access Volume 7, 2019
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