再処理施設向け オンライン分析技術の開発

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カテゴリ: 第16回
再処理施設向けオンライン分析技術の開発 二菱重工業掬 石田 仁美 Hitomi ISHIDA Member 二菱重工業掬 松原 龍一 Ryuichi MATSUBARA Non-Member 二菱重工業掬 中村 真司 Shinji NAKAMURA Non-Member 二菱重工業掬 志戸本 さつき Satsuki SHITOMOTO Non-Member Abstract An analysis system capable of monitoring chemical components in real time was constructed by combining an on-line monitoring technique of chemical components based on spectroscopic analysis and a new spectral analysis technique. By using this technology, it is possible to shorten the analysis time and reduce the amount of waste liquid without requiring sampling or remote analysis operations. Keywords: on-line, monitoring, partial least squares はじめに 再処理施設では,各工程から採取した高線量の分析試 料を気送管等により分析設備へ移送して分析し,分析結果をモニタリングすることにより,プラントの運転管理および保全に寄与している。この化学分析は,熟練したスキルを持つ分析員が遠隔機器等を用いてバッチ処理に て実施しており,分析員の被爆低減,分析作業効率化や廃液量の低減が課題である。 再処理施設における主要な分析項目としては,U,Pu が られる。 ,U 分析については,一 的に高 液体クロマトグラフ(以下 HPLC)を使用しているが,クロマトグラフ分析は 1 試料当たりの分析時間が長くなることに加え,分析に移動相を使用するため,放射性物質で汚染された廃液が く発生するデメリットがある。 また,Pu 分析には一 的に分光光度計やα スペクトロメータを使用しているが,U 分析と 様に分析処理時間の短縮や廃液量低減等において課題がある。 ,上記課題に対し,試料サンプリングや分析員による遠隔処理操作を必要とせず,分析時間短縮や廃液量低減を可能とし,リアルタイムで連続モニタリングが可能なオンライン分析技術を開発したため,その検討結果を紹介する。 オンライン分光分析技術の開発概要 分光分析 物質が光を発光,吸収する際のスペクトルは,その物 質またはその物質に含まれる元素の種類に特有のものになる。スペクトル強度はその物質または元素の量と関係 があり,得られる物質スペクトルから成分元素を定性的あるいは定量的に分析することを分光分析という。 スペクトル統計解析(部分最小二乗法 PLS) 分光分析では,複数の含有成分に対するスペクトルを に 時取得可能であるが, 時にスペクトルの重や波長シフトが発生し分析精度が低下する課題がある。そこで, ,スペクトル 計解析(化学データ 量解析 部分最小二乗法(PLS partial least squares))を適用した。Fig.1 に従来法(検量線法),Fig.2 に開発法(スペクトル 計解析)による適用イメージを示す。部分最小二乗法を適用する事で,スペクトルが重なり合う複数成分の分析精度を向上させることが可能となる。 Fig.1 検量線法の適用イメージ (赤破線1 点の波数位置で検量線を作成) 連絡先 石田 仁美,〒652-8585 神戸市兵庫区和田崎町一丁目1番1号 三菱重工業昨 原子力事業部新型炉?原燃サイクル技術部 燃料サイクル技術課 E-mail: hitomi_ishida@mhi.co.jp (2) プローブ式 Fig.2 スペクトル 計解析の適用イメージ 図 (赤面積の全領域波数で検量線を作成) モニタリング分析 分光分析に用いられる光源や分光器と測定部との間を光ファイバーケーブルで接続するとともに,測定対象となる溶液の流路(系 配管等)に測定部を配置し,光源や分光器と測定部を分離した装置形態とすることでオンライン分光分析が可能となる。測定部には,常に溶液が接液し,その溶液中に一定の光を透過させることができ るよう測定窓やミラーを配置し,溶液中の含有成分に応 じた吸収スペクトルを連続的に取得する。また,オンライン分光分析とスペクトル解析手法を組合せる事で,リアルタイムでモニタリング可能な分析システムの構築が可能となる。(Fig.3 ) 再処理施設への展開 装置概要 再処理施設のようなプロセス系設備にオンライン分 光分析装置を適用する場合,①フローセル式,②プロ ーブ式,のような適用が考えられる。(Fig.3)このうち,フローセル式についてはバイパスラインの増設が必要 となり,系 が複雑化する一方,プローブ式はフランジ施工等のみで設置可能であり,系 の単純化が可能である。 (1) フローセル式 Fig.3 オンライン分光分析設置の適用例 スペクトル統計解析の適用検討 Pu 模擬物質の選定 測定対象成分として,U(VI)とPu(N)を設定した。U(VI)は350"'-500nm になだらかな吸収ヒークを有するが,その他領域に定量に適した吸収ヒークがない為, この波長領域にて定量評価を行う必要があるが,この領域でPu(N)の吸収ヒークと重複している(Fig.4)。そのためU(VI)由来の350"'-500nm のなだらかな吸収ヒークをターゲットとしつつ,この吸収ヒークと重なり合う吸収スペクトルを有する成分を用い,スペクトル 計解析の適用性を検討した。本試験では,Pu(VI)と 様な波長帯に広く吸収ヒークを持ち,かつ450"'-500nm の範囲でU(VI)の吸収ヒークと重複するNd(ill)をPu(N) の 物質として 定した。[1] [2] [3] Fig.4U(VI),Pu(N)の吸収スペクトル[4] 0.30 0.25 0.20 吸光度[-] 0.15 0.10 0.05 0.00 440450460470480490500510 波長[nm] Fig.5U(VI),Nd(ill)の吸収スペクトル 試験条件 スペクトル 計解析の適用性を検証するため,U(VI)とPu(N)の 物質であるNd(ill)の2 成分について,任意の濃度で供試液を調製した。それぞれの成分濃度は, U(VI)とNd(ill)の吸収ヒークが有意な 化量となる重なる範囲で設定した。また,様々な溶液をターゲットとす る場合,溶液の酸濃度も 化することが想定されるため, 各調製液について酸濃度も 化させ,それぞれの吸収スペクトルを取得した。 吸収スペクトルの測定には,可 領域の光源として一 的な重水素+ハロゲン光源と,可 領域の波長を検出可能な分光器(波長範囲190"'-1100nm)の組合せた分光分析装置を適用した。 予備試験(濃度変動時の吸光度に及ぼす影響特性把握) Nd 濃度を 動させた時のU の特徴ヒーク(469nm U とPu の重複を )における吸光度の 動 況をFig.6 に示す。Nd 濃度が基準濃度から±10%程度 動した場合, U の特徴ヒークの吸光度は3.4"'-18.4% 動する事を確認した。 様にU 濃度や酸濃度を 化させた時の他成分に与えるスペクトル 動を確認し,スペクトル 計解析のベースデータとした。 0.30 0.25 0.20 吸光度[-] 0.15 0.10 0.05 0.00 440450460470480490500510 波長[nm] Fig.6Nd(ill)濃度 動時のU(VI)濃度の吸光度 動 スペクトル統計解析を用いた試験結果 U(VI), Nd(ill)及び酸濃度を 化させた5 条件に関し, スペクトル 計解析にて設定濃度に対する相対誤差を評価した。尚,スペクトル 計解析に関しては,部分最小二乗法で評価した場合と,更にスペクトル前処理(波長範囲の設定,中心化処理等)を実施した場合の両方に関 して評価を実施した。結果をFig.7 に示す。U(VI),Nd(ill) 共に,スペクトル 計解析で適切なスペクトル前処理を 実施する事で,相対誤差は大幅に低減し,U(VI)は3%以下,Nd(ill)は1.1%以下と高精度な濃度測定を行える事を確認した。 20 15 相対誤差[%] 10 5 0 20 15 相対誤差[%] 10 5 0 Fig.7 U(VI)及びNd(ill)のPLS 解析における相対誤差 再処理施設適用のメリット 作業時間の削減 本技術の適用により,配管を流れる試料をオンライン で連続的に自動測定でき,分析員による分析操作が不要となるため,分析時間を大幅に削減可能である。U 分析の場合,従来のHPLC 法では約1 時間かかるが,本技術を適用すると,1 当たりの測定時間は1 分未満となる。 また,従来は複数の成分をそれぞれ個別に分析していたが,本技術により 時分析が可能となるため,さらに分析時間を削減できる。 安全性の向上 高線量領域での試料のサンプリング,および分析設備での遠隔機器を使 たバッチ処理での分析操作が不要となることにより,分析員の被曝可能性が低減し,安全性の向上が図れる。 廃液の低減 配管中の流体を直接オンライン分析するため,使用済試料としての廃液が発生しない。また,分析操作が不要 となるため,試薬添加も不要となり,廃液を削減できる。特に,従来のU 分析で移動相を使用するために発生していた放射性物質で汚染された廃液も削除出来る。 まとめ 分光分析とスペクトル 計解析を組み合わせ,光源や分光器と測定部を分離した装置形態とすることで,溶液中の複数成分について,成分毎に定量可能なオンライン分析技術を開発した。 また,Pu の 物質としてNd を採用し,U とNd の混合試料を用いてスペクトル 計解析による分析を行 た結果,従来測定よりも相対誤差を大幅に低減できる事を 確認した。更に,再処理施設に適用した場合に,分析作 業時間の削減,安全性の向上,廃液量の低減を達成できる目処を得た。 尚,本技術により,分析対象項目をリアルタイムで連続的にモニタリング可能となるため,プラントの運転管理や保全において,寄与できるものと考える。 引き続き,実機適用に向けたスペクトル 計解析モデルの妥当性検証や適用機器の耐久性評価等を行 ていく予定である。 参考文献 LEE M. H. et. al., "Absorption spectroscopic properties for Pu(III, IV and VI) in nitric and hydrochloric acid media", J Radioanal Nucl Chem, vol.273, No.2, p375-382, 2007 MENDOZA P G, et.al., "Interference study of the Pu(III) spectrophotometric assay.", Vol.152, No.1, p207-218,1991 三宅泰雄 他訳, “カッツ?シーボーグ アクチニドの化学”, 朝倉書店, p314, 1962 "再処理プロセス?化学ハンドブック 第3 版", 日本原子力研究開発機構, JAEA-Review, 2015-002, 2015
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