再処理施設における分析/試験由来の高放射性固体廃棄物の処理技術
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カテゴリ: 第16回
再処理施設における分析/試験由来の高放射性固体廃棄物の処理技術
Treatment technology of highly radioactive solid waste generated by experimental tests and sample analysis in reprocessing facilities
日本原子力研究開発機構
後藤
雄一
YuichiGOTO
(Member)
日本原子力研究開発機構
稲田
聡
SatoshiINADA
(Non-Member)
日本原子力研究開発機構
久野
剛彦
TakehikoKUNO
(Non-Member)
閻E&E テクノサービス森英人EitoMORI(Non-Member)
Abstract
Test equipment,containers,and analytical wastes,generated by experiments using spent fuel pieces in hot cell of Operation Testing Laboratory and by analysis of highly active liquid wastes in hot analytical cell line of Tokai Reprocessing Plant,are treated as highly radioactive solid wastes.These wastes are stored in specific shielded containers called waste cask and then transport to the storage facility.The treatment of these highly radioactive solid wastes have been carried out for 40 years with upgrading waste taking out system and transportation device.As a results,automation of several procedures have been achieved utilizing conventional equipment,and work efficiency and safety have been improved.
Keywords:Highly radioactive solid waste, reprocessing facility, hot shielded cell
1 諸曰
東海再処理施設の分析所では、プロセスの運転管理や核燃料物質の計量管理を目的とした分析作業及び使用済 燃料の溶解試験を行っており、これらの作業で発生した 高放射性 廃棄物は、 きの 器に り 管施設へ運搬している。線量 の高い放射性試料の分析作業については、高放射性、中放射性の2 種類の分析セルライン(遠隔操作型 き気密ボックス)で実施しており、それぞれ工程分析用と計量分析用が設置され、計4 基の分析セルラインにて構成されている。各分析セルラインには、それぞれ5~8 台の気密ボックスが設置されており、この中でマニプレータに る各種分析作業が行われている(図l)。また、分析所には、再処理プロセスに係る試験を実施するため、重量コンクリート壁に囲まれ、ステンレス鋼のライニングが施された試験セルも設置されている(図2)。これらのセル内で発生した試料瓶、器具 等の廃棄物は、廃棄物カスクと呼ばれる専用の 器に収納されたのち、セルからの取出し、 管施設への搬
連絡先:後藤 雄一、〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33、核燃料サイクル工学研究所 再処理廃止措置技術開発センター 施設管理部 分析課
電話:029-282-1111、E-mail: goto.yuichi@jaea.co.jp
出がなされる。本作業については、約40 年間実施してきているが、今後、東海再処理施設の廃止措置への移行に伴い、廃棄物の搬出作業が増加することが予想される。 本件では、これら廃棄物取出し機構の構造、廃棄物の収納?取出しを含めた搬出方法及びこれまでに実施した 作業の 、 性の のための取出し機構、運搬機器等に係る様々な技術開発?改良について報告する。
図1 分析セルライン
図2 試験セル
2 分析セルラインからの廃棄物取出し
2 1 構造?取出し方法
分析セルラインの気密ボックス内から発生した試料瓶等の高放射性 廃棄物は、気密ボックスの背面部にあるコンベアベルトを介して、分析セルラインの端部にある廃棄物取出し機構を用いて取り出される。高放射性
廃棄物は、分析セル用 器(以下、「 器A」という)内のダブルカバー式コンテナに収納されたのち、吊 り げ機構及び回転機構に りコンテナ蓋が取 けられ、密閉収納される(図3)。この時、廃棄物取出し機構は、吊 り げ機構の先端部に取 けられたセルドアのリップシールとダブルカバー式コンテナのリップシールとでセル ポートを挟み込む形で、ダブルシール法l)に り双方で気密状態を 持する状態となる(図4)。その後、押し げ機構を下降させダブルカバー式コンテナを 器A 内に
収納し、 器A をスライドさせて取り出す構造となっている。当初におけるこれら一連の作業は、電動ホイストに る 器A の積み替え、ハンドル操作に る各機構の動作を手動で実施してきた。
図3 廃棄物取出し機構の概要図(改良前)
図4 ダブルシール法の概要図
2 2 課題及び改良
分析セルラインにおいて、当初 り実施してきた廃棄物取出し機構に る 器A の取出しは、各機構の操作を て手動に るハンドル操作にて実施してきた。しかし、 、下降、回転といった各操作後の 位置での停止は、作業者の感覚に依存する割合が高く 性的であ
り、各機構での不具合が頻発していた。また、 器A の重量は、約l.5tあり、廃棄物取出し機構からの取出し後に る手押し台車への積み替え、移動は、作業者の労カの負担となっており、作業 の観点からも改善する必要があった。これらのことから、廃棄物取出し機構の自動 及び 器A の搬 方法の改善について、調査、検討を積み重ね改良を実施した。
廃棄物取出し機構に設置される吊り げ機構、回転機構、 器A の搬 については、基本構造は現状のままとし、分析セルラインの外に電動モーターを設置するとともに、故障時には手動でも駆動できる うハンドルを設置した。また、各機構停止位置には、リミットスイッチ(LS)を設け停止位置の精密 を図った(図5)。押しげ機構については、既設の構造では、インナーケースシ ャフト部に斜め方 にカが作用しスムーズに動作しないことが されたため、シリンダーを設置し、 に降する う改良した(図6)。
図5 廃棄物取出し機構の概要図(改良後)
図6 押し上げ機構の概要図(改良前後)
2 3 自走搬送台車の考案?製作
器A を搬出する機器として、専用の自走搬 台車を考案し、設計、製作を行った(図7)。設計に際しては、既設の廃棄物取出し機構との取り合い、 器A の法、重量(約l.5t)を考慮した車 形状(重量バランス)と
し、必要な剛性、駆動カ(パワーモーター適用)を備えさせた。また、電動ホイストを使用せずに廃棄物取出し機構から 器A の積み替え作業を可能とするアームを設けた。さらに、 降、 動作には、位置、 度等を
するためのサーボモーターを 用し、 動時のスローアップ運転、停止時のスローダウン運転を行う機能を取り入れた。 器A の移動は、自走搬 台車に
器A を搭載したままの状態で廃棄物取出し機構や 管場所まで移動できる構造とするため、床面に誘導レールを埋設し、プログラミングに り自走する仕様としたことで、一連の動作を自動 できる設計とした(図8)。
図7 自走搬送台車の概要図
図8 自走搬送台車
2 4 改良の効果
分析セルラインからの廃棄物の取出しは、 器A への収納までは従来通りであるが、 器A の搬 及びその他の各機構(吊り げ、押し げ、回転機構)の動作から停止までの操作は、操作盤に り て自動 がなされた。さらに、リミットスイッチを設けたことに り、停止位置の精度は し、故障リスク、調整作業はほぼ解消された。廃棄物取出し機構からの 器A の積み込み、積み下ろしは、今回新たに製作した自走搬 台車を用いることで、従来6 人で実施してきた作業は、4 人程度に削減でき、作業時間は約20 分の短 が図れた。また、
電動ホイストの使用はなくなったことから、手足の挟まれ等の危険リスクは軽減され、 性が した。
器A の搬 については、予め搬 ルートをプログラミングすることで 器A を目的 まで自走で搬 することで手押し台車に る重量物の運搬はなくなり、性と作業 の に繋がった(図9,l0)。
図9 廃棄物取出し機構への自走搬送
図10 廃棄物取出し機構への積みおろし替え
3 試験セルからの廃棄物取出し
3 1 構造?取出し方法
小型試験設備試験セル内で発生した高放射性 廃棄物は、廃棄物缶に収納後、セル内に設置された水密性器内にて密閉し、チルターを用いて搬 台車へ搭載する。廃棄物の取出しは、専用台車に搭載された 器(以下、
「 器B」という)とセル背面のセルポートをビニルバッグに り連結させ、閉じ込めを維持したまま3 分割のSUS 棒の接続に り、試料搬入装置を介して水密性器が搭載された搬 台車を引き出し、 器B 内に収納する(図ll)。その後、 器B 内とセルポートを接続するビニルバッグを分離することに って取出しを行う構造となっている。
図11 廃棄物取出しの概要図(改良前)
発生のリスクが低減できた。また、専用台車においては、車輪 をカバーすることで作業員が車輪への接触を防止でき、 性の が図れた。さらに、ケーブルにる給電からバッテリー搭載型にしたことに り、走行範囲に 限はなく、作業場所に るコンセントの差し替えがなくなり作業 の が図れた(図l3)。
3 2 課題及び改良
試験セルにおける 器B 専用台車は、200V 用の壁コンセントからの給電に り稼働するため、走行範囲に
限(ケーブル長さ30m)があるとともに、走行中に台車の車輪に作業員の手足が接触する危険性があった。また、セル内からの廃棄物の取出しは、3 分割のSUS 棒の接続に
り引き出しているが、試験セルとの連結に り、試験セル内の負圧の影響でビニルバッグ内が収 した状態となり、SUS 棒の接続の際にビニルバッグの挟み込み、損傷に る汚染発生のリスクが伴う作業であった。これらのことから、作業性、 性について検討し、改良を実施した。
器B 専用台車の基本構造は、現状のままとし、台車の車輪へ作業者が接触しない う台車 を覆ううにカバーを設置した。また、ケーブルに る給電を廃止し、台車にバッテリーを搭載した。SUS 棒に る廃棄物の引き出しにおいては、試験セルからの負圧の影響を緩 和するため、作業部には、作業用ボックスを設置し、 横には、作業用のグローブを取り けるためのポートを2 箇所設置した(図l2)。
図12 試験セル廃棄物取出しの概要図(改良後)
3 3 改良の効果
小型試験設備からの廃棄物の搬出は、 器B 後部に作業用ボックスを設置したことに り、作業スペースが拡大し、グローブを取 けたことでSUS 棒の脱着、水密製 器の搬 台車の引き出し等、作業性は大幅に したとともに、収 したビニルバッグ内作業に る汚染
図13 輸送容器B の全景
4 結曰
東海再処理施設の分析所における分析セルライン及び小型試験設備試験セルからの高放射性 廃棄物の取出し、搬出について、特徴に応じた作業方法を検討し、設備の改良を実施した。改良に際しては、設備の故障、作業員への負担、災害リスクを低減することを目的に、これまでの経験を踏まえ、基本設計は変更せず、従来法を 活かした設備の自動 及び精度 、 性、作業性を考慮した取出し機構の改良、新たな自走搬 台車の製作を行った。その結果、作業に係る人員の削減及び時間の 短 が図れ、さらに人カに る重量物の運搬は軽減され、本改良に って、これまでの課題は解消され、作業と 性が した。今後、再処理施設の廃止措置にけて、廃棄物の発生量も増加することが予想されることから、本件に る改良は、廃止措置の促進が期待される。
参考文献
l) 「遠隔操作技術」研究専門委員会編集: “高放射性物質取扱施設設計マニュアル”, 日本原子カ学会, l985, pp79-83.