「原発裁判と社会」第三報 火山灰の原発への影響と対策

公開日:
カテゴリ: 第16回
原発裁判と社会 第三報 火山灰の原発への影響と対策 Nuclear Power Trials, Issue and Arguments No.3 Safety Assessment of Nuclear Power Plant under Volcanic Ash 0大阪大学 中村 隆夫 Takao NAKAMURA Member 電源開発株式会社 岩田 吉左 Kichisa IWATA Japan is one of the countries with abundant active volcanos, and intensive research activities have been carried out for a long time on various volcanic phenomena including volcanic eruption. Furthermore, nationwide observation system of the volcanic activity has been established, and multiple countermeasures against volcanic disasters are being adopted. In nuclear power plant, the licensees are required to evaluate the impact of volcanic ash and develop the countermeasures based on the technical knowledge accumulated up to date to ensure safety. This paper focuses on the outline of this activity. Keywords: volcanic ash, volcanic phenomena, safety assessment, nuclear power plant, defence in depth 1 はじめに 最近の原子力発電所(以下、発電所)の運転差止裁判では、火山現象に対する安全性が大きな争点の一つとされ一躍社会の関心を集めた。発電所は、これまで火山活動の影響のおそれがない 点を選定するとともに、島第一原子力発電所事故以降は万一に備えて火山現象の影響を評価することにより、安全性を確認してきた。 本稿では、火山現象に対する発電所の安全確保の考え方、影響評価の方法やそれに基づく発電所の設計及び運転上の対応について、特に広範囲に影響が及ぶおそれのある火山灰を中心に解説する。 2 火山に対する発電所の安全確保の考え方 外部事象に対する安全確保の考え方 発電所が安全を確保するためには、バウンダリィ 能、冷却 能、 能等の 要な安全 能が や 、火山現象等の外部事象の影響により失われることのないよう、深層防護の考え方に基づきその不確かさに備えていかなる場合にも対処できるように対応を検討しておくことを基本とする。 火山現象に対する安全確保の考え方 火山現象に対する安全確保の考え方は、「火山現象から屋外設備を防護する」とともに、建屋内設備については 連絡先: 中村隆夫、〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1 大阪大学大学院工学研究科 オープンイノベーション教育研究センター、E-mail: nakamura@see.eng.osaka-u.ac.jp 「建屋内に火山現象の影響を及ぼさない」ことにより、 要な安全 能の喪失を防ぐことにある。具体的な手段としては、発電所を安全に停止し長期的に維持・冷却するために必要な屋外設備を防護するとともに、建屋内への火山現象の影響の を防止することが必要となる。3 火山影響評価の流れ 火山影響評価の流れを以下に示す。 (ステップ 1)既往の文献をもとに評価対象となる火山を選定する。 (ステップ2)文献調査、 形調査、 質調査結果等をもとに供用期間中に噴火する恐れのある火山を選定する。 (ステップ 3)活動を考慮する火山の火山現象が発電所に与える影響を評価する。(火山灰は影響範囲が広いため、 全ての発電所で考慮が必要であり、必ず評価を行う。) (ステップ ) 火山現象の影響評価 ( 、 、塞などの影響因子)を整理し、詳細設計及び運転段階での対応可能性を評価する。 4 立地段階における火山影響評価 調査対象の火山および火山現象選定の考え方 調査対象の火山 日本は繊維有数の火山国であり、110 の火山が活火山に選定されている。調査対象の火山は、活火山に加えて第四紀(約 260 万年前以降)に活動のあった火山を対象とする。 調査対象の火山現象 調査の対象となる火山現象は下記の通りである。 ・火山灰(軽石を含む)・火山弾 ・火砕流及び火砕サージ ・溶岩流 ・火山ガス・岩屑なだれ ・火砕泥流・新火口形成 Fig.1 Volcanic hazards 火山噴出物の既往最大到達距離 火山現象の影響評価においては、その 安として我が国における第四紀火山の火山噴出物等の既往最大到達距離が用いられる。調査の対象となる噴火には,我が国で発生したカルデラ噴火も含んでいる。 火山灰については噴火規模によっては非常に遠距離まで到達することから、噴出源と敷 との距離による調査対象火山の設定は行わない。 火山影響評価の方法 火山が「活動の可能性を考慮する火山」か否かは当該火山の活動履歴を踏まえ、最大休止期間と最新噴火からの 過期間との 等により判断する。 「活動の可能性を考慮する火山」とされた火山について、供用期間中に当該火山が噴火した場合に火山噴出物が敷 に到達する可能性を火山現象ごとに検討する。 火山噴出物が敷 に到達する可能性のある場合には、 「原子力発電所の安全性に与える影響を考慮する火山現象」とする。 火山灰については、噴出源に関わらず、敷 および敷 近に降下した既往の火山灰と 度の火山灰が降下すると評価する。 5 発電所設備等に関する火山影響評価 設備に対する影響評価を行う火山現象として、火山灰 (軽石を含む)と火山ガスを選定する。 設備設計および運転上の対応の基本方針 火山灰等が発電所敷 に到達した状況において、下記 の要件を達成することを 的として、発電所の設備設計および運用上の配慮について検討する。 ・プラントを安全に停止し、高温停止状態から冷温停止状態に移行し、かつ冷温停止状態を維持する。 ・使用済み燃料貯蔵プールの冷却 能を維持する。 設備等の具体的対応方針 プラントの安全停止に関わる系統および使用済み燃料貯蔵プールの冷却に関わる設備を整理し、火山灰の影響を受ける設備を選定する。設備の選定に当たっては、安全 能を直接果たす 能を有するいわゆる直接系に加えて、電源供給設備等の間接系も対象とする。 設備の 能維持の評価に当たっては、除灰作業等、運用面での対応を期待できるものとした。降灰時は作業環境としては劣悪であるものの、体 、装備を整え、十刀な訓練を積む前提において屋外作業は実施可能と判断した。 6 火山現象の不確かさへの今後の取り組み 我が国の火山についてはこれまで な研究がなされてきており、歴史時代の噴火記録を調査し、堆積物の刀析から火山灰等の到達範囲や噴火規模を推定している。 噴火頻度についても過去の噴火の痕跡から推定するが、数千年~数十万年のオーダーになる。また、噴火規模も マグマだまりの状況から推定するが、噴出量は噴火形態 によるため、火山灰の到達範囲は噴煙高さ、風向・風速 等に大きく影響される。 このため、火山噴火の頻度やその規模の推定については不確かさが大きく、 、火山灰に対する定量的な評価方法を確 していく必要がある。 参考文献 原子力規 委員会 原子力発電所火山影響評価ガイド (平成29 年11 月29 日改正) JEAG 625-2015 ”原子力発電所火山影響評価技術指針” 日本電気協会 (2016 年) 中村隆夫 か 火山現象に対する原子力発電所の安全確保について, 日本原子力学会和文論文誌Vol.13,No.3,p.75-86(201 ) [ ] 中村隆夫 か 火山現象に対する原子力発電所の安全確保について(その2), 日本原子力学会和文論文誌Vol.15,No. ,p.173-182(2016) (令和元年6 月10 日)
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)