「原発裁判と社会」第二報 裁判の技術論?外的事象の判断

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カテゴリ: 第16回
原発裁判と社会 第二報 裁判の技術論ー外的事象の判断 Nuclear Power Trials, Issue and Arguments No.2 Technical Issue - External Events- 福井工大 堀池寛 Hiroshi Horiike Member O法政大学 宮野廣 Hiroshi MIYANO Member 国際原子力法学会 鈴木孝寛 Takahiro Suzuki Member 日本原燃 田中治邦 Harukuni Tanaka 横浜市大 村田貴司 Takashi Murata 原発の運転差し止め裁判の課題を調査してきた。裁判では、原子力規制委員会が認めた審査の合格に反論し、運転の差し止めを請求する訴訟が多発し、判決は様々な判断を示している。本検討会では、何 が技術的課題なのかを明確にして、裁判で説明しきていない技術的論点について、正論を示すことを 狙って活動している。本報告では、特に外的事象、自然災害を対象に、どのような判断が示され、そこにどのような論点があるのか明確にした。 We have investigated the issue of the nuclear power plant injunction trial. The court may have argued against the “passed examination” conclusion accepted by the NRA. Many lawsuits have been filed to stop the operation of nuclear power plants. Judgments in court show various decisions. In this study group, we aim to clarify what technical issues are and to show positive theories about technical issues that have not been explained in court. In this report, we have clarified what judgments are shown, particularly for external events and natural disasters, and what issues are there. Keywords: Case of lawsuits, Claiming to suspend the operation, Technical Problem of Nuclear Plant Safety はじめに これまでの議論では、‘原発運転差止仮処分裁判” における、技術論として、リスク論として残余のリスクの適用の課題や地震動評価での課題、設計基準とそれを超える地震動への対応について議論してきた。本報告では、社会とのつながりの大きい外的事象への対応について検討する。 外的事象とは 原子力発電所は、施設内部で発生する火災、配管の破損などによる浸水被害などの内部ハザードや地震や強風、火山などの自然ハザード、航空機落下 や意図的な不法行為、情報セキュリティも含めた人為ハザードなど、発電システムの事故につながりうる様々なハザードの脅威にさらされている。このような施設内外において発生する可能性がある事故の誘因となりうる事象のことをハザードと呼ぶ(表1ー1参照)。これらの事象は、それぞれが単独で発生することもあれば、同時に発生することもある。例えば、地震後の津波の襲来や、火災の発生などに 代表されるように同時に発生する場合には、大きな事故につながる可能性が高くなる。 ハザード評価では、施設がどの程度の規模の大 きなハザードに見舞われる可能性があるかを分析する。PRA(Probabilistic Risk Analysis)と言われる確率論的ハザード評価は、確率値を用いてその可能性を定量的に分析する手法であり、これによ り、非常にまれにしか発生せず経験が少ないハザードに対して可能な限り主観を排した形で客観的な分析を行うことができる。 特に外的ハザードは、様々な要素に不確かさがあり、大きく、PRAによるリスク分析で、その影響を評価することが有用である。 社会への影響と原子力への対応 これまで言葉として「絶対安全はない」と認識されつつも、”リスクが残ることに納得感がない”というのが多くの市民、裁判官の思いでもあった。「安全」というのは「リスク」が ”あってはならない” との 立場である。しかし、最近の判例(広島高裁仮処分 決定ー2017 年12 月13 日ー)では「頻度が著しく小 さく、しかも破局的噴火をもたらす噴火によって生じるリスクは無視し得るものとして容認するというのが我が国の社会通念ではないか」と安全確保限界が示された。 科学的には、リスクはゼロにはならない。そこで、リスクと言う言葉、リスクの理解が重要となる。「リスク」とは、‘将来にある好ましくないことが起きる可能性”であり、「原子力安全」についてのリスクは、放射性物質が放出されてその健康影響を又ける可能性である。そこで、‘社会通念にいう安全の概念” との関係が重要となり、社会通念で認められているリスクとの関係が示されれば納得されるのである。社会で正確に理解されているわけではないが、どの程度のリスクが「安全」という社会通念で得られている状態のリスクであるのか、そこに一つの論点が ある。理解を共通化する光明が見えたと言えるのではないか。 しかし一方、裁判では「安全」の技術的判断は、原子力規制委員会が行うものであるとしている。しかし、原子力規制委員会は「安全」という判断を回避していることから、裁判では、個別課題ごとに規制の要求を満たしているかどうかを判断することになる。原子力規制委員会は、審査基準を満たしている状態が、”技術論として安全と言う‘と明確に宣言することが必須と言える。 まとめ 社会においても、また裁判においても、リスクへの理解がなされていないことが最も重要な課題となっていると言える。
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