九州電力㈱川内原子力発電所2号機におけるSG取替について

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カテゴリ: 第15回
九州電力㈱川内原子力発電所2号機におけるSG取替について Steam Generator Replacement in Sendai Nuclear Power Station Unit 2 九州電力株式会社 江島 和愛Kazuchika EJIMA 後藤 憲治Kenji GOTOU 福倉 久雄Hisao FUKUKURA 下野 政隆Masataka SHIMONO 中村 直人Naoto NAKAMURA In Sendai Nuclear Power Station Unit 2 of Kyushu Electric Power Co., Inc, flow-induced vibration of steam generator resulted in tube wear at support location of anti-vibration bars in the past. But steam generator integrity has been ensured thanks to established repair solutions. Integrity of steam generator can be ensured further on by continuing periodic inspection and maintenance; however for decreasing dose exposure during maintenance and ensuring long term reliability, Kyushu EPCO decided to replace steam generators of Sendai unit 2 as a part of preventive maintenance strategy. Keywords:Sendai Nuclear Power Station, Steam Generator, Replacement 1.はじめに 国内における加圧水型軽水炉(PWR)の主要機器 である蒸気発生器(SG:Steam Generator)(図-1)は過去各部に損傷を経験しており、都度適切な補修 方法により健全性を確保しつつ運用していたが、更 なる信頼性向上等の観点から、運転経験からの設計 保全として取替を実施することとした。 なお、取替 SG を含め当社はすべて三菱重工業 (MHI)製の SG を採用している。 以下に主要な設計改善点および取替工事の概要を示す。 原子炉格納容器 改善を踏まえた SG 取替への取組みがなされてきた。当社においても、玄海 1 号機(廃止プラント)、同 号機および川内 1 号機についてはそれぞれ最新設計の SG への取替を実施することで、補修作業時の被ばく量低減や工事費の低減、電力安定供給に対応 するとともに、地元や一般社会の方々に対する社会 的信頼性を確保する取組みを行ってきた。 当社川内原子力発電所 2 号機の SG は設計世代として比較的新しい設計であるが、振止め金具部にお 制御棒 加圧器 水 主蒸気管 主給水管 蒸気発生器 SGブローダウン管 ける摩耗減肉に対する伝熱管へのプラグ施工や、伝 熱管材料が取替前川内 1 号機の材料と同様であること等を踏まえ、長期的な信頼性確保を図るべく予防 連絡先:中村 直人、〒810-8720 福岡市中央区渡辺通2-1-82、九州電力㈱原子力発電本部原子力 燃料1次冷却材ポンプ 原子炉容器 1次冷却材管 経年対策グループ、E-mail:Naoto_Nakamura @kyuden.co.jp 図-1 PWR 主要系統概要 2.取替 SG の設計改善点 取替 SG はプラント出力に対する基本性能は同一 振止め金具の形状を図-3 に示す。 今回の取替 SG では、既設 SG の初期型振止め金具から下記の改善を図った設計を採用している。 とする考えであるが、過去の損傷を踏まえた最新設 計としている。 SG における設計改善の主たる目的は、伝熱管における IGA( Intergranular Attack: 粒界腐食損傷)、PWSCC(Primary Water Stress Corrosion Cracking:1 次冷却材環境下における応力腐食割れ)等の腐食損 傷、および摩耗損傷に対する信頼性向上を図るもの 振止め金具 下段保持金具 上段保持金具 伝熱管 振止め金具保持金具 管支持板 管支持板 伝熱管 であり、IGA や PWSCC に対しては材料、環境、お よび応力低減に関する改善が必要である。材料につ いては伝熱管の耐応力腐食割れ性向上、環境につい ては管支持板管穴形状の改善、応力低減については 伝熱管の管板部拡管方法改善、また摩耗損傷に対し ては振止め金具の改善等がある。これらの設計改善 は国内の新設プラント SG や取替 SG において順次適用され十分実績のある設計となっている。 取替 SG の既設 SG からの主な改善点を図-2 に示す。 図-2 取替 SG の主な改善点 振止め金具の改善 伝熱管 U 字管部の流体力による振動を抑制するための振止め金具は、国内のトラブル事象を受け、1, 2 号機共に図-3(既設 SG)に示す 2 本組の取替型 振止め金具への交換を平成 3 年に実施している。この取替型振止め金具は現地据付状態での取付工事で あり、実機への搬入性を考慮した設計となっている。 (既設SG)(取替SG) 図-3 振止め金具の形状 振止め金具の本数および挿入深さの変更 振止め金具の組数を 2 本組から 3 本組みに増加させ、かつ下部振止め金具の挿入深さをより深くする ことで、伝熱管の支持点数を増加させ、流力弾性振 動発生に対する裕度を向上させた。 振止め金具の材質変更 従来の 600 合金に Cr メッキを施した材料から、伝熱管材料との組み合わせに対して、より耐摩耗性に 優れたステンレス鋼に変更した。(平成 3 年の振止め金具取替においても導入済) 伝熱管の材料改善 従来の SG の伝熱管は MA600 合金(通常の焼鈍: Mill Anneal を行った 74Ni-16Cr-9Fe 合金)であった。その後、 耐食性向上を図るため特殊熱処理 (Thermal Treatment)を施した TT600 合金が開発された。 さらに、優れた耐応力腐食割れ性を有する材料として、従来の 600 合金と比較し、Cr 含有量を増し Ni 含有量を低減した 690 合金(60Ni-30Cr-9Fe 合金)に特殊熱処理を施した TT690 合金が開発され順次採用されており、取替 SG もこの設計を採用している。 なお、TT690 合金は、熱伝導率が低下するが、伝熱面積を増加させることにより、取替前と同じ伝熱 能力を補償している。これに伴い、伝熱管の直管長 が長くなるため、管支持板の枚数を 7 枚から 8 枚に変更している。 管支持板の管穴形状改善 当初設計の SG では丸穴(ドリル穴)の管穴形状とし、2 次冷却材の循環用としては別に管穴と管穴 の間に循環穴を設けていたが、伝熱管と管支持板と の間の狭隘な隙間を少なくして2次冷却材中の不純 物が濃縮しにくくなるよう、従来の管穴に循環穴の 機能を持たせた四つ葉型管穴(BEC:Broached Egg Crate)が開発された(既設 SG 採用済)。この管穴の伝熱管との接触部は平面(Flat Land)となっており、不純物がさらに濃縮しにくくなっている。その後、 強度に対する裕度改善を図った改良型 BEC が開発されており、取替 SG も改良型 BEC を採用している。 管穴形状を図-4 に示す。 四つ葉型(既設SG)改良四つ葉型(取替SG) 図-4 管支持板の管穴形状 管台溶接部の材質変更 1 次冷却材出入口管台異材継手部材料として従来の 600 系ニッケル基合金(入口管台の溶接部のみ補修により 690 系ニッケル基合金)から、SCC に対する感受性が低くより耐食性に優れた材料である 690 系ニッケル基合金が順次採用されており、取替 SG もこの設計を採用している。図-5 に管台溶接部について示す。 図-5 1 次冷却材出入口管台形状 3.取替工事の概要 PWR の SG は図-1、6 に示すように、1 次側は 1 次冷却材管と、2 次側は主給水管・主蒸気管の大口径配管の他、SG ブローダウン管等の小口径の配管と接続されていることから、これらの配管と切離し、取替 SG 設置後に再接合が必要となる。 本工事においては、作業安全・被ばく低減等の観点から様々な取り組みを行うこととしている。 図-6 2 次側大口径配管 取替工事の基本手順 取替 SG は発電所構内の岸壁に接岸した輸送船から海上クレーンにより水切りし、所定の仮置き保管 場所に保管する。原子炉格納容器(CV:containment vessel)内より旧 SG 搬出後に取替 SG をそれぞれ専用の輸送車両により運搬する。取替工事主要フロー および工事概要を図-7 に示す。 図-7 取替工事主要フローおよび工事概要 取替工事における各種技術 1 次冷却材管の切断・復旧 2 カット工法 次冷却材管の切断・復旧では廃棄物量の低減、 および作業量低減による被ばく量低減を考慮し、川 内 1 号機でも実績のある 2 カット工法を採用する。 (図-8 参照) カット工法の採用においては、3 次元光学寸法計測方法により取替前 SG のノズル位置をあらかじめ計測し、工法の成立性を確認している。また、取替 SG のノズル先端部の加工は、現地の計測結果を基に工場において加工している。 図-8 1 次冷却材管の切断工法 切断・復旧 配管の切断は川内 1 号機でも採用している遠隔操作による機械式(最終押切工法)による。また、溶 接施工法は超狭開先 TIG 溶接法とし、開先加工および溶接は切断工法同様に遠隔操作による工法を採用 し、被ばく低減を図る。(図-9 参照) 図-9 1 次冷却材管切断・復旧 配管除染 1 次冷却材管との切断後には、被ばく量低減の観点から、配管内面の除染を実施する。除染は川内 1 号機でも実績のある物理的な粒子の衝突によるアルミナブラスト除染とする。川内 1 号機の実績では、十分な除染効果を得ることができた。(図- 10 参照) 図-10 1 次冷却材管除染の概要 揚重設備 CV 内のポーラクレーン 本工事において容量、揚程が不足することから、補助トロリをポーラクレーン上に一時的に追設しSG の吊上げ、吊下げを行う。(図-11 参照) ・定格荷重:370t(SG 本体と治工具に余裕を考慮した容量) 図-11 揚重設備概要図(CV 内) 水切り用海上クレーン 発電所構内の岸壁に接岸した輸送船から取替用 SG を水切りする計画であるが、揚重設備としては海上 クレーンを使用する。(図-12 参照) ・吊上げ荷重:700t 図-12 揚重設備概要(岸壁) CV 内移動 CV からの SG 搬出および搬入は既設の機器搬入口より実施することから、CV 内~屋外まで連続した搬出入レールを設置し、ウィンチにより横引きする。 CV 内は原子炉キャビティ上に耐荷重を考慮した作業用床を設置し作業エリアを確保する。(図-7、13 参照) 図-13 揚重設備概要(CV 外) 被ばく低減 工事の実施においては、作業に伴う被ばく量の低減は重要であり、当工事においても過去の経験を踏 まえた対策を実施する。(図-14) 図-14 被ばく低減対策 1 次冷却材管内面除染 3.2.1 c.参照 配管内の水漲り 作業エリアの空間線量率低減のため配管内に水漲 りする。 自動遠隔装置の採用 3.2.1 b.参照 遮へいプラグ設置 新 SG 据付時の 1 次側水室内における作業時の被ばく量低減のため、1 次冷却材管内に遮へいプラグ (ステンレス製)を設置する。 その他 1 号機の工事実施から、約 10 年経過後の工事となることから、装置のメンテナンスと綿密なトレーニ ング、また、各作業ステップにおいては、1 号機の経験を踏まえた作業工法等(玉掛け、ハンドリング 架台改良等)の改善を行うことで、工事に万全を期 すとともに、作業効率化を図ることによる被ばく量 低減を図る。 旧 SG の保管 CV より搬出した旧 SG は、構内に設置している固体廃棄物貯蔵庫(鉄筋コンクリート製保管庫)を今 回の工事対応として拡張したエリアに保管する。工 事に伴い発生する廃棄物のうち、サポート等の付属 設備については、保管容器に収納し SG 同様に拡張した保管庫に保管する。また、工事に伴い発生する 一般廃棄物は既存の固体廃棄物貯蔵庫内にドラム缶 等に収納し保管する計画である。 なお、旧 SG は搬出前に CV 内にて開口部に対して鋼板の蓋で溶接・密閉するとともに、表面に汚染 がないことを確認したうえで搬出する。表面には長 期的な防錆対応として塗装を行う。 4.運転における改善 SG の健全性を維持するにあたっては、2 次側器内への鉄成分の持ち込みを抑制することが有効である ことがわかっており、その対応として 2 次側系統の高 pH 運転を導入する計画である。 また、合わせて、2 次側器内の持ち込み鉄成分の除去として、SG 管板上面の高圧水洗浄や、器内全体をターゲットとする化学洗浄を適切に組み合わせ、 健全性を維持する。 5.むすび SG の取替により、電力安定供給、地元や一般社会に対するさらなる社会的信頼性向上につながると考 えられるが、安全への取り組みについては、ここで 満足するものではなく、確実な保全、運用を一つ一 つ積み重ねるとともに、新たな知見があれば積極的 に取組む等、今後も安全、安定運転に向けた活動を 継続していく。
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