修正コンター法を用いた溶接残留応力分布の測定

公開日:
カテゴリ: 第17回
修正コンター法を用いた溶接残留応力分布の測定 Measurement of Weld Residual Stress Distribution using the Modified Contour Method 大阪府立大学大学院 加藤拓也 Kato TAKUYA Student-member 大阪府立大学大学院 沖見優衣 Okimi YUI Non-member 大阪府立大学大学院 生島一樹 Ikushima KAZUKI Non-member 大阪府立大学大学院 柴原正和 Shibahara MASAKAZU Non-member Abstract Welding is an indispensable technology for large steel structures in recent years. However, weld residual stresses in welded joints cause a reduction in brittle fracture strength and fatigue fracture strength, so a simple method to measure residual stresses has been developed by improving the contour method. In the proposed method, the residual stress can be measured even if the cut is made asymmetrically, whereas in the conventional method the cut has to be made symmetrically. Keywords: Stress measurement, modified contour method, residual stress 1. 緒言 近年の大型鋼構造物において溶接は必要不可欠な技術である。しかしながら、溶接継手に発生する溶接残留応力は脆性破壊強度、疲労破壊強度の低下を招く。さらに部材 が薄板の場合には溶接残留応力によって座屈変形が発生 し、組み立て工程に大きな影響を与えるため溶接部近傍 に生じる残量応力分布を測定できる技術が求められてい る。本研究では比較的簡便に溶接継手の残留応力の測定 を行う方法としてコンター法に注目した。コンター法は 測定対象の部材を2分割し、切断面の弾性変形を測定す ることで切断面全体の応力分布の2次元マッピングが可 能な手法である。測定方法の簡便さやコストの面から基礎的な継ぎ手に対してコンター法を適用した事例が数件 報告されているものの、従来のコンター法では分割した 2つの部材の合成が等しくなるように左右対称に切断す る必要があり、実構造物レベルの試験体でのコンター法 の適用事例は少ないのが現状である。そこで本研究では、2つの部材の剛性の違いを考慮し、非対称に部材を切断 した場合にも適用可能な修正コンター法を提案し、実構 造物の残留応力測定に適用した際の測定結果と FEM 解析での結果の比較を行う。そして、構造物の任意の位置での残量応力測定を簡便に実現可能な手法の構築を目指す。 連絡先: 加藤 拓也、〒599-8531 大阪府堺市中区学園町 1番1号、航空宇宙海洋系専攻 柴原研究室、E-mail: t_kato@marine.osakafu-u.ac.jp 2.提案手法 従来のコンター法では、Fig.1(a)のように部材の切断面は左右の部材の剛性が等しくなるように左右対称に切断しなければならない。測定対象をFig.1(b)のように左右非対称に切断した場合、左右の部材の剛性が異なるために弾性変形量に違いが出る。このため左右で剛性の違いを考慮した両切断面形状の釣り合い位置を算出することで左右非対称な切断での残量応力の測定が可能になると考えられる。本研究では残差力に基づく修正変位法を用いて切断面の釣り合い位置を算出する。Fig.2 に示すように左右の部材の弾性変位量??, ??は左右の剛性の違いにより異なる。このために残差力R は(3.1)式で表される。修正変位量????????を(3.2)式のように算出し、(3.3), (3.4)式で左右の変位量の修正を行うと左右での力が釣り合う。 R = ???? - ???? ・・・(3.1) ????????= ???(?? + ??) ・・・(3.2) ??? = ?? - ?????????・・(3.3) 1 ??? = ?? + ?????????・・(3.4) 2 (a)左右対称(b)左右非対称Fig.1 弾性変形量の分布 Fig.4 回転軸受けのモデルと溶接位置 [MPa] 800 622 444 266 88 -88 -266 444 622 -800 Fig.2 残差力による修正変位の算出 Fig.5 切断後の試験体 Fig.6 熱弾塑性解析による残留応力分布 Fig.3 変位の修正による反力の釣り合い このように左右の変位を修正することにより、Fig.3 のように左右非対称な切断を行った場合に左右の剛性の違いにより一致していなかった反力が変位を修正することで一致しており、切断面の釣り合い形状が算出されることで部材の残量応力分布の測定が可能となる。 適用事例 提案手法の適用結果をFig.7(b)に示す。測定対象はプロペラなどの回転計の軸受けを模擬した試験体です。Fig.4 のように試験体を溶接し、Fig.5 のように左右非対称に切断を行い切断面の形状を測定し従来のコンター法と修正コンターを適用し算出した残留応力分布がFig.7(a, b)となります。この試験の結果とFig.6 の熱弾塑性解析による残留応力分布を比較すると従来のコンター法では分布のばらつきが大きいのに対して、修正コンター法で算出した残留応力分布は滑らかな残留能力の分布となっており、熱弾塑性解析の結果と良好に一致していることが確認できます。また、溶接部周辺において高い引っ張り残留応力が発生していることが確認できます。 従来法(b)提案手法 Fig.7 残留応力の測定結果 結言 本研究では、実構造物の残留応力の測定を目的とした修 正コンター法を提案し、提案手法を回転軸受けを模擬し た試験体の残留応力に適用した。その結果以下の知見が 得られた。 形状の複雑な構造物を左右非対称に切断した際にも 残留応力測定を可能とするために、残差力に基づく 修正変位法を用いたコンター法の高度化を実施した。 建機構造体の回転軸受けを模擬した試験体を対象と し、従来のコンター法と提案手法である修正コンタ ー法を用いて残留応力の測定を実施した。その結 果、従来法では分布が大きくばらついているのに対 して、提案手法では溶接部近傍に高い引っ張り残留 応力が発生していることが確認できた。またこの結 果は熱弾塑性解析の結果と良好に一致していた。 参考文献 Prime, M. B. and DeWald, A. T. : The Contour Method, Practical Residual Stress Measurement Methods, pp. 109- 13, 2013 Ramy, G. and Murakawa, H. : Validation of the Contour Method Considering the In-plane Displacements at the Cut Surface, Transactions of JWRI, Vol. 43, No. 2, pp. 53-63, 2014
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)