九州電力の内的事象レベル1PRAの基盤整備に向けた活動支援について
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カテゴリ: 第15回
九州電力の内的事象レベル1PRAの基盤整備に向けた活動支援について
Status of activities aimed at infrastructure development for Internal events level 1PRA of Kyushu Electric Power Co.,Inc.
ニシム電子工業(株)
太田
幸一
Kouichi
OHTA
Non-Member
ニシム電子工業(株)
皿本
治
Osamu
SARAMOTO
Non-Member
ニシム電子工業(株)
野瀬
正一
Shoichi
NOSE
Non-Member
ニシム電子工業(株)
寺尾
憲親
NorichikaTERAO
Non-Member
ニシム電子工業(株)
石井
照央
TeruoISHII
Non-Member
ニシム電子工業(株)
山田
俊一
ToshikazuYAMADA
Non-Member
九州電力(株)
山田
真也
ShinyaYAMADA
Non-Member
九州電力では、リスク情報を活用して自主的・継続的に原子力発電所の安全性向上を図る取組みを開始することとしており、ニシム電子工業は内的事象レベル 1PRA の基盤整備について支援している。ここでは、ニシム電子工業が行っている内的事象レベル 1PRA の基盤整備に向けた活動概要として、目的、成果、活動例等を紹介する。
Keywords: Safety Improvement, Risk Monitor, Probabilistic Risk Assessment,Component Failure Rates
はじめに
近年、原子力発電所においては、リスク情報を活用し
たパフォーマンスベースの規制の導入が検討されており、九州電力においても、リスク情報を活用して原子力発電 所の安全性向上を自主的・継続的に図る取組みを開始す ることとしている。この取組みに関して、ニシム電子工 業は、内的事象レベル1PRA の基盤整備に向けて支援しており、本稿では、その活動例を紹介する。
停止時リスクモニタ運用支援
九州電力は、原子力発電所の定期点検期間中の機器の状態(運転/待機/隔離)を反映したリスクを評価するツールとして、停止時リスクモニタを利用しており、ニシム電子工業は活用方法の提案、評価結果の分析を実施している。停止時リスクモニタには、炉心損傷頻度、重
要度指標等を計算しグラフ表示する機能が備わっている。図1に九州電力における停止時リスクモニタの活用事例 を示す。
図1 停止時リスクモニタ活用例(イメージ)
停止時リスクモニタは、
・定検工程のリスク改善
・関係各部署ヘリスク情報の周知・共有
・重要機器ヘの注意喚起表示
に利用され、安全性向上のための活動に寄与している。
連絡先:太田 幸一、〒812-8539 福岡市博多区美野島一丁目2 番1 号、ニシム電子工業(株) 保守サポート本部 原子力サポート部
E-mail: ohta@nishimu.co.jp
設備改造に伴うリスク影響評価
安全性向上評価PRA モデルを用いて、定期検査中に予定されている川内原子力発電所1 2 号機の設備改造に伴うリスクヘの影響や有効性を定量的に評価した。以下に評価した項目を示す。
・海水ポンプの取替によるリスク影響評価
・安全系交流母線の給電多重化工事に伴うリスク影響評価
.プラント個別機器故障率の整備
機器故障率の整備状況
これまで実施されてきたPRA においては、解析に必要なパラメータである機器故障率には、国内一般機器故障率[1]、[2]が適用されていた。一方、日本原子力学会のパラメータ推定に関する標準[3]では、プラント個別の機器故障率の適用が推奨されている。また、電力中央研究所原子力リスク研究センターの技術諮間委員会からもプラント個別機器故障率を適用すべきとのコメントが挙がっている。これに対応するため、原子力施設情報公開ライブラリー(NUCIA)[4]にて公開されている故障実績データを用いて、プラント個別機器故障率を試算した。
なお、これらの状況を受け、九州電力においては、プラント個別機器故障率の評価のため、機器の故障実績データ等の収集が現在進められ整備中である。
推定方法
プラント個別機器故障率は、ベイズ統計により推定する。本推定方法では、事前に得られている機器故障率を確率分布(事前分布)として設定し、これとは別に個別プラントの故障実績データから求められる尤度関数を用いて、ベイズの定理により、プラント個別機器故障率を求める。
試算条件
川内原子力発電所1 号機のPRA モデルで使用されている49 機種について試算した。事前分布には国内一般機器故障率21 ヵ年データ(1982 年度~2002 年度)、故障実績にはNUCIA で公開されている2003 年度~2010 年度のデータを用いた。
試算結果及び整合性確認
プラント個別機器故障率を試算した結果の例を表1 に示す。結果については、ベイズ統計により推定したプラント個別機器故障率と、尤度に用いた故障実績データとの整合性を確認した。
表1 プラント個別機器故障率試算結果
事前分布
尤度データ(2003,... 2010)
ベイズ更新結果
国内一般故障率
(1982 年度,... 2002 年度21 ヵ年49 基データ)
推定 デマン デ
回数(d)
故障件数
機種
故障モード
平均値[1/d]
EF
川内1号
川内1号
平均値[1/d]
EF
非常用DG
起動失敗
1 5E-03
8 7
875
0
4 9E-04
5 4
電動ポンプ
起動失敗
8 0E-05
16 9
782
0
5 4E-05
14 7
ター ン 動ポンプ
起動失敗
1 6E-03
49 6
91
0
5 1E-04
36 1
ファン/ブロア
起動失敗
1 1E-04
13 8
667
0
7 8E-05
12 0
電動弁
開失敗
4 7E-05
51 7
1718
0
1 8E-05
41 0
閉失敗
9 7E-06
19 8
1718
0
8 0E-06
18 9
教育
九州電力におけるリスク評価担当者を対象に、ニシム電工業にて、基礎教育(起因事象、FT、ET 等)、実践教育(停止時リスクモニタの活用法)を実施している。
まとめ
リスク情報を活用した原子力発電所の安全性向上の取組みに関して、内的事象レベル 1PRA の基盤整備に向けた活動状況を紹介した。
今後は、九州電力における新検査制度対応や設備改造等に伴うモデル更新など、PRA の運用を支援することで更なる安全性向上対策の実施に貢献していく。
参考文献
“故障件数の不確実さを考慮した国内一般機器故障率の推定(1982 年度~2002 年度21 ヵ年49 基データ)”、2009、(中)日本原子力技術協会
“故障件数の不確実さを考慮した国内一般機器故障率の推定(1982 年度~2010 年度29 ヵ年56 基データ)”、2016、(一社)原子力安全推進協会
“原子力発電所の確率論的リスク評価用のパラメータ推定に関する実施基準 2015”、2016、(一社)日本原子力学会
ニューシア原子力施設情報公開ライブラリー、
http://www.nucia.jp/ (一社)原子力安全推進協会