島根原子力発電所の構成管理に係る取り組みについて
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カテゴリ: 第17回
島根原子力発電所の構成管理に係る取り組みについて
Configuration management efforts in Shimane Nuclear Power Station
中国電力株式会社
高田輝和
Terukazu TAKADA
Member
中国電力株式会社
荒芝智幸
Tomoyuki ARASHIBA
中国電力株式会社
竹丸義寛
Yoshihiro TAKEMARU
中国電力株式会社
宮道秀樹
Hideki MIYADO
中国電力株式会社
生田祐基
Yuki IKUTA
Abstract
Shimane Nuclear Power Station has established a procedure manual for configuration management in line with the introduction of the Nuclear Regulatory Inspection in April 2020. We have also introduced a new system to carry out operations related to configuration management.
This paper describes the Shimane Nuclear Power Station configuration management efforts.
Keywords: Shimane Nuclear Power Station, configuration management, Nuclear Regulatory Inspection, ROP
１．はじめに
島根原子力発電所では，2015 年のWANO ピアレビューにおいて，AF（I 要改善事項）には至らなかったものの，エンジニアリング部門において多くの構成管理
（Configuration Management）（以下，「CM」という。）に 係る観察事項が示され，エクセレンスとのギャップを認 識することとなった。また，調達先の多様化による設計 情報の自主管理範囲の拡大といった問題に対応するため， CM 高度化に係る検討を続けてきた。一方，2019 年12 月25 日に制定された「原子力事業者等における使用前事業者検査、定期事業者検査、保安のための措置に係る運用 ガイド」[1]において，CM に関する内容が記載されるなど，規制機関においてもCM が重要視されている。
島根原子力発電所は，2020 年4 月に「構成管理手順書」を制定するとともに，新たに開発した構成管理情報システム（Configuration Management Information System）（以下，
「CMIS」という。）の運用を開始し，CM 業務を実施している。
本書では，島根原子力発電所のCM に係る取り組みについて紹介する。
２．業務プロセスの改善
CM は，図1 の三要素の均衡を保ち，発電所の構築物， 系統及び機器が設計で要求したとおりに製作・設置され， 運転・維持（保全）されていることを常に確認，保証する仕組みである。
CM に係る海外のベストプラクティスとして，AP-929
（INPO）やIP-ENG-001（DOWG）等の分析を行い，業務プロセスの改善を行った。
図1 CM 三要素均衡モデル
連絡先：荒芝 智幸
〒730-8701 広島県広島市中区小町4 番33 号
中国電力株式会社 電源事業本部（原子力設備）
E-mail: 364482 @pnet.energia.co.jp
パッケージ管理の導入
原子炉施設の工事を実施する場合，原設計から変更が必要な場合や，部品仕様の変更など，様々な工事があるが，変更の程度に応じた効率的なCM が実施できるよう， 図2 のとおり，工事毎に適用するパッケージを決定して， 業務を進めている。
例えば，原設計から変更する場合は，変更パッケージ の適用工事に分類され，基本情報の他に設計計画書，工 事・購入計画書といった設計管理に必要な帳票をCMIS で作成することが可能であり，これらの帳票を使用して 業務を進めることで設計管理に合わせてCM についても実施できるようにしている。
※：必要に応じて仮設パッケージ，図書パッケージを適用する。
図2 適用パッケージ選定フロー
業務プロセスの改善
新たな工事が発生した場合，既存の設備，手順書，評 価結果に対して影響がないか等，CM の観点で確認する必要がある。これまでは，工事担当課が一連の業務の中 で確認していたが，より実効性のある確認とするため， 設計の進捗や工事内容に応じて関係各課も交えて会議体 で確認する運用に変更している。具体的な会議体は以下 のとおり。
（１）変更要求検証会
工事内容に応じたCM の管理程度を設定するための会議体であり，適用パッケージの選定等について審議する。 本会議は，発電所で実施する全ての工事を対象としている。
（２）設計キックオフミーティング
設備の改造を伴う工事（変更パッケージ適用工事）に ついて，関係課を特定するための会議体であり，設計・開発活動の実施内容の確認や所掌等を決定する。
（３）影響評価レビューミーティング
工事担当課および関係課による工事内容の確認をするための会議体であり，影響評価の検証および役割分担， 影響を受ける設備，図書，許認可手続き等について確認 を行う。
３．構成管理情報システム（CMIS）の導入
プラントの構成情報を相互に紐づけ，整合性・追跡性 を確保することを目的としたシステムとして，Intergraph 社のSmartPlant を採用している。
このシステムでは，図3 のとおり機器情報，設備図書， パッケージ等を紐づけることができ，図書の検索性の向上に寄与している。また，工事の影響範囲を特定するための補助ツールとして活用している。
図3 CMIS 上での紐づけ管理
４．CM に係るパフォーマンス指標（PI）
CM に係るパフォーマンス指標（performance indicator）
（以下，「PI」という。）については，2017 年に米国で開催されたCMBG において，米国原子力発電事業者の具体的なPI が報告されている。この他に，原子力安全推進協会の「原子力発電所のコンフィグレーション管理に関するガイドライン」において，PI の具体例が示されている。
島根原子力発電所では，これらの情報を参考にしつつ，
「構成管理手順書」に定めているCM 業務管理プロセスが適切に実施されているかを監視するため，2020 年4 月より表1 に示すPI を採取している。約1 年分のデータが採取できたことから，得られたデータをもとにPI の項目および算出方法の変更が必要か検討しているところである。
表1 島根原子力発電所で採取しているCM に係るPI
No
PI
1
計画した設計および工事の完了件数
2
CM に関する不適合の件数
3
一時的な変更の仮設パッケージ登録件数
4
工事完了状態における仮設パッケージ未完了件
数
5
計画外で発生した設計および工事の件数
５．運用を通じて見えてきた課題
2020 年4 月に制定した「構成管理手順書」に基づき， 約1 年間CM 業務を実施してきたが，運用を通じて以下の課題が確認されている。
（１）足場設置，仮置き物品の設置に係る運用について設備の状態や使用環境等を一時的に変更する場合，工 事毎に仮設パッケージを起票してCM を実施することとしている。足場設置や仮置き物品を設置する場合も仮設パッケージを起票してCM を実施することになるが，設
備からの離隔，固定方法等のルールは定めているものの， 地震時に対する仮設足場の強度確認及び倒壊した場合の設備への影響確認等，リスクを事前に確認する視点や方法について明確に定まっていないこともあり，安全上重要な設備の周りに足場や仮置き物品が設置されている状
況を複数回検査官に指摘されている状況である。
これについては，安全上重要な設備の周りに足場や仮置 き物品を設置しないように，図4 に示す設備ガードの設置を検討するとともに，設備の影響確認の方法等につい ても検討を進めていく。
図4 設備ガード（案）
（２）CM に係るPI について
CM に係るPI を約1 年間採取してきたが，「CM に関する不適合の件数」は，2020 年度の1 年間で5 件しかないことを確認している。
不適合が発生した場合には，当該不適合に最も関連す ると考えられるプロセスコードを1 つのみ付与する運用としているため，CM に関連する不適合であったとしても，主要因として別のプロセスコードに割り当てられて いる場合には，カウントすることができない。
監視したいパフォーマンスを確実にPI としてカウントするための方策について検討していく必要があり，その他のPI についても，必要があれば項目，算出方法を変更するなど，引き続き，運用面も含めた改善を進めていく。
６．まとめ
島根原子力発電所のCM に係る取り組み状況を紹介した。
パッケージ管理の導入等の業務プロセスの改善やCMIS の活用については，運用を開始したばかりであり， 運用後に得られた気づき・課題をもとに更なる高度化を
検討している段階である。
設計要求，物理構成，施設構成情報の三要素の均衡を 保ち，プラントの安全性を維持・向上するべく，CM の高度化に引き続き取り組んでいく。
参考文献
[1] 原子力規制委員会“原子力事業者等における使用前事業者検査、定期事業者検査、保安のための措置に 係る運用ガイド”，令和元年 12 月 25 日