女性の現場進出を助ける取り組み~カプラ接続治具~

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カテゴリ: 第17回
女性の現場進出を助ける取り組み~カプラ接続治具~ 六ヶ所エンジニアリング(株) 植村 真紀 Maki UEMURA 六ヶ所エンジニアリング(株) 木村 昭仁 Akihito KIMURA 六ヶ所エンジニアリング(株) 齊藤 明博 Akihiro SAITOU 六ヶ所エンジニアリング(株) 家口 英克 Hidekatsu KAGUCHIMember 日本原燃(株) 山本 好郎 Yoshirou YAMAMOTO 日本原燃(株) 外﨑 雅貴 Masaki TONOSAKI 近年、保全現場への女性進出が増加しているが、女性に限らず体格や筋力の差異によっては作業が困難な場合もあり、作業の進捗を遅らせることも見受けられる。そこで本研究では、体格や筋力の差異を補うため の治具を考案し、これまで困難であった作業を可能にするとともに、身体的負荷の軽減・作業時間の平準化 を実現することでダイバーシティおよびインクルージョンへの道を拓くことを目的とする。 キーワード 女性活躍、治具、作業時間、ダイバーシティ、インクルージョン 1.はじめに 女性の社会進出により保全現場にも女性がみられるよ うになった。当社でも男女の区別なく施設の巡視や点検 業務に女性作業員が従事している。しかしながら実際の ところ体格や筋力の違いから、作業の実施が困難な場合 がある。困難という理由で他人にその作業を任せてしま うというのであれば、それは本当の意味で責任をもって 仕事をしているとは言い難い。 困難であった作業を容易にこなし、身体的負荷の軽減 を実現するための治具を考案し現場に適用することで、 一般に男性よりも体格や筋力に違いのある女性作業員で も現場で安全かつ自信をもって活躍を目指す事例を紹介 する。 2.背景・従来の状況 背景 六ヶ所再処理施設の放射線管理区域内において、純水 供給ホース接続による水封作業を行っている。配管へのホース接続の際に、押し込むだけで接続可能なソケットとプラグを接続する「カプラ」と呼ばれる継手を使用し ているが、バルブ構造が両路開閉型であるため、口径が大きくなるほどソケットを押し込む力が必要である。作 業場所も狭く中腰となり力を入れる姿勢を取れないため接続に力と時間が必要となり、非力な作業員には困難な作業となっていた。 連絡先:植村 真紀、〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所村尾駮字上尾駮22-258、六ヶ所エンジニアリング株式会社、E-mail: maki_uemura@r-e-c.co.jp 作業環境 水封対象配管プラグの先端からラック天井までの距離 が200 mm、隣り合う配管までの距離が150 mm の狭所 (図1)で作業を行う。 プラグの先端からラック天井まで200 mm ソケット 配管間150 mm プラグ 図1 水封対象配管 プラグ先端が床上630 mm の高さにあるため、中腰姿勢で前方のプラグへ手を伸ばし作業者の肩の高さほどの 位置でソケットをプラグに押し込み接続する必要があ る。ホースを接続するという単純な作業ではあるが、肩の高さから下方向への押し込みは最も力が入りにくい姿 勢のひとつであること[1]、数本の連続した接続を行うことから身体的負荷が大きかった。 3.コンセプト 上記の背景をもとに、女性作業員が狭所で取り扱いや すく、ソケットを押し込む際にかかる身体的負荷の軽減 を目指した治具を検討し、製作した。1 台で複数口径のカプラに対応する市販のカプラ接続治具はあるが、今回 は現場で女性作業員が困難さを抱えている最大口径40A の接続に対象を特化し、サイズ、重量、操作性そして放 射線管理区域で使用するため除染のしやすさを考慮し製 作した。 4.カプラ接続治具 サイズ・重量・操作性 材質は、除染しやすく耐食性に優れたSUS304 を選定した。治具のサイズは狭所でのホース接続操作を考慮 し、上部空間に支障なく作業ができる長さと、隣り合う 配管に接触しない距離に収まる幅の最小限とした。 治具は、40A のソケットとプラグを挟み込む構造 (図2,3)をしており、ホルダー部分で押し込む力を伝えるため、その「力」に耐えうる強度とした。また、治 具全体の重量は片手で持った時に重いと感じることがな く作業ができる1 kg 程度[2]を目標とし、軽量化を実現するため強度に無関係な箇所を薄肉成形加工した。身 体的負荷を軽減するためにテコの原理を利用したレバー を採用することで、操作性がよくなり容易な接続が可能 となった(図4)。 ソケット 差が治具を使用することによってどう変化するかを検証 した。結果を図5 に示す。 接続時間の測定は、治具がない場合と治具を使用した場合で1 人3 回ずつ行い、接続できない場合は60 秒とした。握力を筋力の指標とした[3]。治具がない場合、握 力50 kg 以上の人は接続時間が10 秒程度であり50 kg 以下では接続できない人や接続できても20 秒から30 秒かかった人が多く見られたが、治具を使用することで全員接続することができ、握力に関係なく接続時間は10 秒以下に短縮された。以上の結果から、治具を使用することにより筋力に関係なく誰がやっても接続可能なこと、作業時間が平準化されることが確認できた。 5.今後の取り組み カプラ接続治具の他にも、ウィルキーに替わるバルブ開閉治具、サンプリング容器のキャップオープナーなど 数点考案し製作している。実際の現場作業に適用するに はまだ至っていないが、保全現場と製作部門で協力し、 今後も身体的負荷軽減の取り組みに向けて継続していき たい。 6.まとめ プラグ 図2 カプラ接続図図3 治具ホルダー部分 ホルダーの両側に取り付けたレバーを引き下げることによりソケットを押し込む。 六ヶ所エンジニアリングでは、職場環境を「多様な人 材を受け入れる」という意味のダイバーシティから「受 け入れた後、その人々の個性を活かす」意味のインクル ージョンへと変えていくことを目指している。女性作業員が不便さや苦痛を我慢せずに業務を達成したいという 声から始めた取り組みは、少子高齢化の影響が進む保全現場にとって、性別だけでなく年齢、体格そして体力差 に左右されることない職場環境づくり、ひいては生活の 質(QOL)向上へも繋がり、より質の高い保全業務に資 (押し込み前)(押し込み後) 図4 カプラ接続治具操作イメージ 効果 作業時間の平準化 男性15 名、女性10 名に対して、現場状況を再現した実物大模型でホース接続を行い、筋力による接続時間の 図5 治具使用によるホース接続時間の変化 する。今後も様々なギャップを補完する治具を製作し、 インクルージョンの実現へ向けて取り組んでいきたい。 参考文献 門松誠、“作業負担評価精度向上のための機器操作 および保守作業における作業特性の解明” 2016 pp.33-44. 東京都立大学機関リポジトリみやこ鳥https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/ 一般社団法人 人間生活工学研究センター[HQL] データベースサイト「手に取った時の重さ感」 文部科学省(2005)新体力テスト 有意義な活用のために(第5 版)、ぎょうせい:東京.pp.56-75.
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