保全遺産第3号 原子力設備の検査用水中遊泳ビークル

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カテゴリ: 第17回
保全遺産第3号 原子力設備の検査用水中遊泳ビークル The Third Maintenance Heritage Underwater Inspection Vehicles for Nuclear Power Plants 東芝エネルギーシ ステムズ株式会社 土橋健太郎 Kentaro Tsuchihashi Member 東芝エネルギーシステムズ株式会社 石橋文彦 Fumihiko Ishibashi Member 東芝エネルギーシステムズ株式会社 上野聡一 Souichi Ueno Member 日立 GE ニュークリア・エナジー株式会社 今野隆博 Takahiro Konno Member 日立 GE ニュークリア・エナジー株式 会社 永島良昭 Yoshiaki Nagashima Non-member Abstract Underwater inspection vehicles for nuclear power plants were selected as the third maintenance heritage. Hitachi- GE Nuclear Energy, Ltd and Toshiba Energy Systems & Solutions Corporation have been working on miniaturization and weight reduction of vehicles for many years, and enabling visual inspection of narrow space and bottom of the nuclear reactors, which were not accessible with the conventional hanging cameras. This article describes the developed vehicles by each company and their contribution to maintenance technologies. Keywords: Vehicle, Underwater, Visual inspection, Nuclear, 1.水中遊泳ビークルの活用 原子力発電所(BWR)の原子炉圧力容器は、シュラウド、ジェットポンプなどの炉内構造物を内蔵してお り、構造は複雑かつ狭隘である。そのような条件下にあ る炉内構造物の検査対象箇所は、水面下15m から30m にも及ぶ離れた所に位置している。炉内の目視検査では オペレーティングフロアから作業員がカメラを原子炉内 へ投入することで行うが、作業員から離れた狭隘な部位 へのアクセスや位置決めは熟練の作業員をもってしても 困難である。このため検査時間が膨大となっていた。 このような課題を解決するため、1990 年代から潜水式の水中遊泳ビークルが開発され、原子炉内検査に適用さ れてきた。 連絡先: 土橋健太郎 〒235-8523 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8 東芝エネルギーシステムズ株式会社 E-mail:kentaro1.tsuchihashi@toshiba.co.jp 水中遊泳ビークルを実機に適用するためのキーポイン トは、狭隘な部位にもアクセスできる小型形状であるこ と、離れた位置にいる作業員にとって操作が容易なこと である。各社が開発した水中遊泳ビークルは片手で持つ ことができるまでに小型化/軽量化(厚さ200mm 程度、重量1.5kg~3kg)され、上下、左右、前後に推進可 能な構造を実現している。 既に、国内の多くの沸騰水型原子力発電所(BWR) の炉内点検に適用されており、国内の加圧水型原子力発 電所(PWR)及び海外のBWR での適用実績もある。水中遊泳ビークルの適用によって炉内検査を大掛かりな 工事なしに実施することができるようになり、定期検査 の期間短縮に大きく貢献しているとともに、水中遠隔作 業であるため作業者の被ばく低減にも貢献している。 また、近年ではこれらの開発成果を応用し、さらに小型化した水中遊泳ビークルが福島第一原子力発電所の格 納容器内部調査にも活用されている。 2.各社ビークルの特徴 東芝エネルギーシステムズ株式会社 東芝エネルギーシステムズ株式会社の水中遊泳ビーク ルは1993 年に開発して以来、壁に沿うフラット型ビークル、クローラを備えた走行式ビークル、水中遊泳型ビ ークルなど、検査対象に合わせた形状及び機能を持つ水 中ビークルを開発、適用してきた[1]。 水中遊泳ビークルの写真を図1に、各諸元を表1に示 す。本ビークルは主に原子炉内及び炉底部(シュラウド サポート下部など)にアクセスするために開発された。 操作性を高めるため中性浮力化しており、4 機のスラスタで上下、左右、前後に遊泳する機能を備えている。本 体内部には上下にチルトが可能なCCD カメラと、照度が調整できる照明が内蔵されている。駆動機構やカメラ をコンパクトに納めた構造によって表1に示す小型な寸 法を実現し、炉底部などへの遠隔アクセスを可能にし た。また、中性浮力化された耐放射線性カメラを水中遊 泳ビークル下部に取り付けて目視検査を行うことで、高放射線部位まで検査可能とできる。 さらに、貯水タンク内部の塗膜検査など原子炉内以外 の箇所でも適用され、定期検査期間短縮に寄与している。 図1 東芝エネルギーシステムズ株式会社所有水中遊泳ビークル外観 表1 各諸元(東芝エネルギーシステムズ株式会社) 寸法 W:120mm、L:185mm、H185mm 質量 1.5kg 日立GE ニュークリア・エナジー株式会社 日立GE ニュークリア・エナジー株式会社においても適用対象や用途に応じて様々な水中遊泳ビークルを開発 し、実機に適用している。炉心支持板を通過し原子炉底 部にアクセス可能な水中遊泳ビークルを基本型として、 超音波探傷スキャナや検査対象に押し付けるためのレグ 機構を備えることで機能や検査対象の拡充がなされてい る。また、シュラウドサポート下面を検査するためにさ らに小型化したM 型と呼ばれる水中遊泳ビークルを開発、適用している[2]。 M 型ビークルの写真を図2に、各諸元を表2に示す。M 型は圧力容器内壁下面の狭隘な隙間を通過できる小型形状でありながら、FRP(Fiber Reinforced Plastic)を用いたシェル構造を採用し、軽量化と耐水圧性能を両立している。また、本ビークルも4 機のスラスタを備え、3 次元的な遊泳動作が可能である。M 型の適用によりシュラウドサポート下面の検査では、従来制御棒駆動機構ガイドチューブを全周にわたり取り外して行っていたが、1/4 周当たりに1 本取り外すことで検査が可能になった。 図2 日立GE ニュークリア・エナジー株式会社所有水中遊泳ビークル(M 型)外観 表2 各諸元(日立GE ニュークリア・エナジー) 寸法 W:169mm、L:162mm、H155mm 質量 2.1kg 3.まとめ 本稿では保全遺産第3号への登録を機に、各社が開発 した水中遊泳ビークルの実機適用実績を振り返った。遺産に認定頂いた保全学会殿に謝意を示すとともに、原子力発電プラントの稼働率向上に貢献してきた技術を今後も維持・発展させ、原子力事業に貢献していきたい。 参考文献 湯口康弘 他、“炉内水中遠隔操作ビークル”、東芝レビュー、2002、Vol.57 No.8. 鈴木正憲、“原子力発電プラント水中検査用ROV の開発”、日本ロボット学会誌、2004、vol.22 No.6 pp.697-701
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