光地震計による水槽の微小地震応答の検知と設置用専用ロボットの開発
公開日:
カテゴリ: 第16回
光地震計による水槽の微小地震応答の検知と設置用専用ロボットの開発
Development of micro-earthquake response detection by optical fiber seismic vibrometer with a water tank and a specially designed robotic system
日本原子力研究開発機構
西村
昭彦
Akihiko Nishimura
Member
白山工業
森下
日出喜
Hideki Morishita
日本原子力研究開発機構
山田
知典
Tomonori Yamada
白山工業
吉田
稔
Minoru Yoshida
日本原子力研究開発機構
田川
明広
Akihiro Tagawa
Member
Abstract
For decommissioning of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station, installation of an optical fiber seismic vibrometer using a specially designed robotic system was demonstrated. A water tank with 4.5m diameter and 5m depth was used as a demo-plant of tank type critical assembly. Micro-earthquake response of a water tank was detected by the optical fiber seismic vibrometer. Vibration characteristic of the window of the water tank was monitored by laser Doppler interferometer.
Keywords: Remote Sensing, Robot, Seismic Vibrometer,, Decommission, Oprical Fiber, Laser Monitoring
1 はじめに
福島第一原子力発電所(1F)の廃止措置の長期化が避けられない。現在まで炉心への注水が継続され、放射線に
する ルの 等により、核燃料デブリの溶出と半壊した建屋の風化が進行している[1]。廃止措置作業では、RPV やPCV の長期健全性が重要視されているが、
線 なため、 健全性の を行 ことも である。そのため、遠隔センシング技術とドローン?ロボット等を組み わせた対応が不可欠である。しかしながら、1F は 線 に加えて注水による水環境や倒壊物による障
のため、ドローン?ロボットの 用に しても めて挑戦的な状況にある。
本研究では、楢葉遠隔技術開発センターに設置された5m 水深の水槽を活用して、パルスレーザーを光源とした光 震計の試作機のテストを行なった。また、レーザー遠隔計測により水槽の観測窓の水圧による振動特性の 化を捉えた。ここでは、令和元年より開始した研究開発
ロ ェクトの可能性について述べる。
2 高線量下の極限環境の模擬試験
1F の炉心内部には8 年以上も冷却水が注水されている。
連絡先:西村 昭彦、〒319-1106 茨城県那珂郡東海村白 2-4、日本原子力研究開発機 、
E-mail: nishimura.akihiko@jaea.go.jp
炉心内部を 100℃以下の状態に冷却した後も冷却水注水が継続され、核燃料デブリからはFP とアクチノイドの溶出が続く。即発性の劣化として、135Cs、137Cs、90Sr からのy線とf3線によりロボットに搭載されるCPU は動作不良を る。 スは する。また、 発性の劣化として、水分子や窒素分子からは硝酸が し、スイッチやリレーなどの接点は腐食が進行する。さらにゴムや
ステ ック の 分子は に が され してゆく。長期的にはFP からの多価イオンによりステンレスの不動態膜にも腐食が る。このよ な過酷な1F 環境での長期にわたる廃止措置の安全性を向上するため、
1) 原子炉 の 体、2) ? 食 の光 震計、3) センサ設置用ロボット等、の3つの要素技術の開発を経て総 試験を実施した。
原子力機 は、楢葉遠隔技術研究開発センターに設置 された水中ロボットの操作技術を開発する試験水槽を活用し、タンク の臨界試験装置の 体とした[2]。水槽の直径は 4.5m、水深は最大 5m であり、水槽本体周囲には内部の様子を観察するための窓が設けられている。原 子力機 では震災後直ちに光ファイバの活用を 手した。パルスレーザー発光による1F現場での元素分析の有用性 を唱え、核不拡散の検証技術として開発を進めていたLIBS技術と伝熱管内壁の検 補修技術として開発した複
光ファイバ技術の を 唱した。現在では1F に設
技術論文「光地震計による水槽の微小地震応答の検知と設置用専用ロボットの開発」
置可能な 可搬のLIBS 装置を完 させている。さらにパルスレーザーによる ズマ発 を活用して、燃料デブリの微 サン リングや遠隔からの加振とレーザードッ ー干渉法による表面振動? 位計測技術の応用を進めている[3]。
Fig.1Demonstration of an Optical Fiber Vibrometer Installation by a Prototype Robot at a Water Tank of the JAEA-NARAHA Center
また白山工業は、位相をシフトさせた光パルスを干渉 させることにより、電子部品を用いない精密な光 震計を開発した[4]。光 震計のセンサ部分は光部品のみで
され、光ファイバで伝 される光パルスの干渉計測により微 な振動を捉える。センサ本体は密閉され、内部の干渉計を するヽ ーなどの精密部品は雰囲気 スの腐食から保護されている。電子部品を使用していないため 線 下でも誤動作の懸念はない。京都大学?桜島火山観測所の野外実験では広帯域 震計と同程度のノイズレベルであることが確認されている[5]。さらに光 震計を 線 で障 物のある1F の現場に、無人で設置するためのロボットの開発も行った。
Fig. 1 にロボットによる光ファイバ 震計の設置試験の様子を示す。ロボットの駆動系は 部と後部の 駆動ユニットが可動リンクで された対称 とし、中央の可動リンク部分に レベーターを設けて 震計のセンサ部分を設置する 式とした。駆動系 部には光ファイバ収 ド ムを搭載し駆動系後部にはロボット駆動系のモータに給電するための電源ケーブルを収 したド
ムが搭載されている。この基本設計により障 物の踏破性能が飛躍的に向上するとともに、光ファイバの敷設と電源ケーブル 収を障 物との干渉を最 限に抑えることが可能となった。
3 試験結果要点
楢葉遠隔技術開発センターでの試験実施中の2019 年4 月17 日2 時34 分に宮城県沖を震源とするM3.8 の微震が発 した。この最大震度1 の微 な 震による水槽の応答を光 震計は捉えた。また深夜、試験棟の空 機等が停止し最も振動ノイズの無い状態での微動も観測し ている。これらの 果、水槽上部では、水槽基部より100 倍から1000 倍以上も振動が増幅されていることや、微動によっても水槽固有の卓越周波数の抽出が可能なことが分かってきている。
水槽の観測窓は水位により圧力を受けることでその振動特性が 化する。レーザードッ ー干渉法による観測窓の表面振動? 位を測定の 果、観測窓は水位の低い場 は 和振動体として減衰振動するが、水位が5m では長 つの周波数をもつ減衰振動に 化することが明した。また、ステンレス製の水槽本体も水位 化の圧力に応 て振動特性が 化するとい 果が得られた。4 1F への適用
今後の 1F の廃止措置計画に対して本試験 果は
示唆に富んでいる。半壊した 1F の原子炉建屋は震に対して建設時の設計 力が低下した可能性があり、健全性確認のために 線 下の 1F 建屋への震計の設置が望まれる。
また、今後の廃止措置において炉心への注水の停止とペデスタル内部の乾燥処理が必要となる。この際に炉内の水位監視としてレーザー遠隔計測が有用となる。
参考文献
TEPCO Web Site, http://www.tepco.co.jp/fukushima/review/
JAEA-Fukushima Web Site, https://naraha.jaea.go.jp/
[3]A. Nishimura, T. Yamada, et al., ‘Collaborative R and D for advanced remote analysis using pulse laser ablation and related technologies’ , F-06, HOTLAB2017, 第57 ット
ボ?遠隔操作会議, 17-22 Sep, Mito, Japan, 2017.
http://hotlab.sckcen.be/en/Proceedings
M. Yoshida,, et al., ‘Real-time displacement
measurement system using phase-shifted optical pulse interferometry: Application to a seismic observation system’, Jpn. J. Appl. Phys. , Vol. 55, No. 2, (2016), 022701.
T.Tsutsui,, et al., ‘Feasibility Study on a Multi-Channeled Seismometer System with Phase-Shifted Optical Inter- ferometry for Volcanological Observations’,Journal of Disaster Research Vol.14 No.4,2019