世界の主要な脆化予測式による国内監視試験データの予測
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カテゴリ: 第16回
世界の主要な脆化予測式による国内監視試験データの予測
Embrittlement predictions of Japanese surveillance data using the typical embrittlement trend curves in the world
電力中央研究所
橋本資教
Yoshinori HASHIMOTO
Member
電力中央研究所
野本明義
Akiyoshi NOMOTO
Member
Abstract
Irradiation embrittlment prediction of Japanese surveillance data and MTR irradiation data was performed by using five different embrittlement trend curves, RG.1.99R2, ENOY, E900-15, EDF2010 and JEAC4201-2007[2013 addendum] (JEAC4201-2013). The comparison result showed that the prediction by JEAC 4201-2013 brought more appropriate prediction results than those by the other curves.
Keywords: Irradiation embrittlement, Reactor pressure vessel steel, Embrittlement trend curve (ETC), Neutron irradiation, Ductile-brittle transition temperature
ー 背景
軽水炉プラントで用いられている原子炉圧力容器の健全性評価では,圧力容器の評価対象位置,評価対象時期に おける照射脆化を評価する必要がある。しかしながら, 実験的に脆化量を知ることのできる監視試験は試験片数が られているため,脆化評価は照射脆化予測法を 用して実施される。脆化予測法は米国,フランス,ロシア等で開発されており,各国のプラントの炉型,使用鋼材, 運用状況に合わせた予測法が用いられている。我が国では日本電気協会技術規程「原子炉構造材料の監視試験方
これまでに世界各国で圧力容器鋼に関する中性子照射脆化予測法が開発されてきた。照射脆化予測法は、主に統計論に基づく予測法と機構論に基づく予測法に大別される。
統計論に基づく予測式
統計論に基づく予測式は、中性子照射に 脆化の向を再現する式の形を選択し,係数を実験結果で校正して得られたもので,材料の化学組成の項と照射量の項の積として記述される。
法」JEAC4201 に脆化予測法が定められており,1991 年
?T41J ? [CF ][FF ]
(1)
にJEAC4201-1991 で初めて国内脆化予測法が取り入れられ,その後 2007 年および 2013 年の改訂を経て,現在はJEAC4201-2007[2013 年追補版](以下、JEAC4201-2013)
が用いられている[1]。現在国内脆化予測法の見直しを検
しているが,それにあたり, の の脆化予測法について知るとともに,国内監視試験,試験炉データに 対する脆化予測を行い,国内 予測法の特性および予測性を把握することが重要である。そこで本発表では、ま ず各国の照射脆化予測法を調査し,それらによる国内監視試験・試験炉照射データに対する予測性能を評価した。
ここで、?T41J は脆化量(oC)、CF は化学組成による項、FF は照射条件による項である。代表的な統計論に基づく予測式は以下のものである。
RG 1.99R2(米国)[2]
ASTM E900-15(米国)[3]
機構論に基づく予測式
機構論に基づく予測式は、照射脆化に関する知見を反映して式が構成されており、下記のよ に記述される。
?T41J ? ?TMD ? ?TCRP
(2)
ここで、?T41J は脆化量(oC)、?TMD は ト ス
2 世界の予測式の
による脆化量への寄与分(oC)、?TCRP は Cu チ析出物
( ラスター)による脆化量への寄与(oC)を表す。代表的な機構論に基づく予測式は以下のものである。
EONY(米国)[4]
EDF2010( 国, ?TCRP の 考 )[5]
2.3 JEAC4201-2013
JA201-2013 は2007 年に当時の照射脆化に関する 知見を反映して開発されたJEAC4201-2007 の予測法を、その後の監視試験データ、特に高照射量のデータを用い て式の係数を 適化し予測性を向上されたもので、現行のJEAC4201 における照射脆化予測法として採用されている[1]。JEAC4201-2013 では、照射による材料中のミロ組織変化を予測した後、ミ ロ組織から機械特性を予測するモデルを採用している。照射脆化の要因となるミ
ロ組織変化は溶質原子 ラスターと ト スの形成であり、以下の式で計算できる。
ていると考えられる。
ー 予測 の
予測法
計算
に使用
す
るパ
ラメ
ータ
ー
適用可能なCu範囲
照射量
中性子束
照射温度
Cu
Ni
P
Mn
鋼種分類
RG1 99R2
(米国NRC)
0
0
0
母材 溶接金属
制限なし
9 1
(ASTM)
0
0
0
0
0
0
材鍛造材溶接金属
制限なし
ONY
(米国代替PTS評価
ルール)
0
0
0
0
0
0
0
材鍛造材溶接金属
制限なし
2 1
(フランス)
0
0
0
0
0
母材(鍛造材) 溶接金属
?0 1 wt %
JEAC4201
2 13
0
0
0
0
0
なし
?0 25 wt %
参考文献
?T41J
?(3)
原子炉構造材の監視試験方法 JEAC4201-2007[2013
ここで、?T41J は脆化量(oC)、?TMD は ト スによる脆化量への寄与分(oC)、?TSC は溶質原子 ラスターによる脆化量への寄与(oC)を表す。
3 国内監視試験データの予測
米国およびフランスの軽水炉に関する規格若しくは規制等に採用されている予測法を予測性能評価の候補として選定した。表 1 に選定結果を示す。選定した予測式およびJEAC4201-2007 [2013 年追補版] (JEAC4201 - 2013)を
用いて、国内監視試験データ脆化量を予測した。データ に対する予測性能を比較し、以下のよ な結果を得た。
国内監視試験データ、国内国プロ試験データに関しては JEAC4201-2013 が他国の予測法よりも予測残差の標準偏差が も低いことが分かった。
他国の脆化予測法は国内監視試験データに対して、特に高照射量域で過小評価になる 向があることも明らかとなった。
以上より、JEAC4201-2013 による脆化予測は、の予測法による結果との比較においても、国内圧力容器鋼の脆化予測に対しては同等以上の予測性能を有し
年追補版],(一社)日本電気協会, 電気技術規定, 原子力編, 2013.
U.S. Nuclear regulatory commission, Regulatory guide 1.99, revision2,” Radiation embrittlement of reactor vessel materials”,1988.
ASTM E900-15,” Standard Guide for predicting radiation-induced transition temperature shift in reactor vessel materials”,2015.
E.D.Eason, G.R. Odette, R.K. Nanstad, T. Yamamoto, “A physical based correlation of irradiation-induced transition temperature shifs for RPB steels”, ORNL/TM-2006/530,2007.
P. Todeschini, Y. Lefebvre, H. C-Bossennec, N. Rupa, G. Chas, C. Benhamou,” Revision of the irradiation embrittlement correlation used for the EDF RPV fleet", Proceedings of Fontevraud 7: contribution of Materials Investigations to Improve the Safety and Performance of LWRs, SFEN, Paris, paper #A084-T01, 2010