廃炉作業用多核種高除染性空気浄化システムの開発 (4)乾式フィルターの除染性能の高性能化

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カテゴリ: 第15回
廃炉作業用多核種高除染性空気浄化システムの開発 (4)乾式フィルターの除染性能の高性能化 Development of a high efficiency multi-nuclide aerosol filters for radiation protection during a process of cutting core debris (4) Improvement for Wet-Type Filter 北海道大学 奈良林直 TadashiNARABAYASHIMember 北海道大学 渡邊優太 Yuta WATANABE 日本原子力発電 藤井拓也 Takuya FUJII 北海道大学 石井 亮憲 AkinoriISHII 北海道大学 千 葉豪 GoCHIBA 東北大学 佐藤修彰 NobuakiSATO 北海道大学 増田隆夫 TakaoMASUDA By using the FCVS technology, we had started to develop a high decontamination air cleaning system to remove multi-nuclides for radiation protection to conduct decommissioning the Fukushima NPP. High efficiency multi-nuclide aerosol filters for radiation protection during a process of cutting core debris has been developing at Hokkaido University. A plasma cutter, laser cutter, wire cutter, drilling machine, etc., will be used and will generate aerosols. Therefore, the air cleaning system should be needed for removing core debris. In order to develop an air clean up system, a metal fiver filter test was conducted. Measured DF were analyzed using FE-SEM and particle diameter analyzer was used to breakdown DF for each diameter range, It is possible to develop the high efficiency filters by mulch layer filters. Final filter system will be consisted, such as a wet-type aerosol filter, multi-stage metal fiber filters and a silver zeolite to remove organic iodine. Keywords: Decommissioning , Radiation protection, Multi-nuclide aerosol filters, Filtered venting system, Severe Accidents, Core debris, Silver Zeolite, 1.緒論 福島第一原子力発電所の廃炉においては,原子炉建屋や格納容器内の汚染は深刻で,廃炉作業を実施するためには,作業者の被曝低減と敷地外の放射性物質の漏洩防止を徹底しなくてはならない.原子炉建屋は排風機で負圧に維持し,排気中に含まれる放射性物質を除去する高除染性空気浄化システムの設置が必須で, しかも長期運転する必要がある.福島第一原子力発電所の取り出し工法は現在,検討中で,機械式切断や破砕する工法と,プラズマやレーザ加工による高温融解して切断する手法がある.更に格納容器内壁面には多量の放射性物質が付着していると考えられ,これを除染するために用いるドライアイス・ブラスト除染などでは,多核種の粉塵やエアロゾルの発生が不可避である.米国Zion 発電所の廃炉作業では,プラズマカッターなどの熱が入る作業は格納容器内の線量が上がり断念し,ワイヤカッターに切り替えた.しかし,福島第一原子力発電所の廃炉作業では,遠隔加工が容易なレーザ切断工法もオプションとして残すべきと考える. 本研究は,いずれの工法に対しても必要となる,空気浄化システムであり,炉内や格納容器内の状況把握から燃料デブリ取出しに至るまでの全工程で作業員の被曝低減と周辺地域への放射性物質の飛散防止に貢献することを目的とする. 2. 乾式フィルターの性能評価式 メタルファイバーフィルターを用いて乾式フィルターの性能を評価するために、性能評価式を以下のように定義した。粒径分布に対応して除染係数 DF を計算すると、比較的粒径が大きい場合はフィルターの出口には粒子が1粒も出ないことが多く、DF がゼロ割により∞となるため、通過率CF を(1)式で定義する。出口での粒子の質量が少なくなると CF は小さくなる。フィルター通過後の粒子分布測定に基づく i 番目の代表粒子径ごとに次式で計算される質量の総和を求め、出口質量を予測し、除染係数DF の計算を行った。 (1) (2) (3) (4) ここで、 はi 番目の粒径範囲におけるCF を表す。とは通過粒子と投入粒子のi 番目の粒径範囲で の質量を表し、 とはその総質量を表す。 は j個のフィルターでの複合フィルターでのi番目の粒径範囲でのCF である。CFi の関数形を測定すれば、フィルターの性能予測が可能となる。また、実機で使用する際には、使用後に放射性粒子を含んだフィルターを 処理しなければならないことを考えると、用いるフィルター質量は少なくすることが求められる。そのため、最も高いDF 値を記録した複合フィルターを基準として、最終的に高い DF 値と用いるフィルター質量の少なさを両立する複合フィルターを作成した。 3. 乾式フィルター性能評価実験 図 1 にWF-2の充填率を変化させたときの CF 値を示す(WF-線径-充填率-投入枚数)。粒径によらず充填率は高いと CF は小さい値を示すようになる。粒径が小さい範囲において CF は大きい値を示しており、細かな粒子ほどフィルターを通過しやすいが、粒径が小さいと質量は微小である。図2 はWF-2 とWF-12 を1 枚ずつ充填率1%で組み合わせた複合フィルターによるCF の予測値と実測値の比較である。得られたCF より、フィルターを通過した粒子の総質量を計算し、表1 に示すDF の予測値と実測値を得た。 実測値が予測値より低くなり、得られた値に差があるため、実験作業中に発生した実験誤差をここで考えられる。観測された粒子のうち、粒径が大きく個数が非常に少ないものを外部から付着した異物として考えその粒子を除外して再度CFを計算しなおすこととした。得られたDF とフィルター質量を勘案して、NF-20 を1 枚とWF-30、WF-12、WF-8 を一枚ずつ充填率1%で作成した複合フィルターが、最も条件を満たすものとなり、最終的に得られたDF は約67500 となった。 Fig.1 CF for each particle size -1 Fig.2 CF for each particle size-2 Table.1 Test result of past mass and DF results 実測値 予測値 フィルターを通過した総質量(g) 0.012 0.003 DF 3086 12347 Fig.3 Filter composition-6 Fig.4 Filter composition-10 このときのフィルター質量と各DF 値は表2 のようになった。このときのフィルターの構成は、条件6 が図 5、条件10 が図4である。 Table.2 Improved test result of past mass and DF results DF 投入した硫酸バリウム質量(g) フィルター総質量(g) 条件6 75155 75.2 121.1 条件10 67506 67.5 61.582 3. 湿式・乾式統合フィルター実験 以上のWF やNF を用いた乾式フィルターシステムの上流に、湿式フィルターを直列に接続した湿式・湿乾統合フィルターシステムを用いて DF の測定を行った。実験装置全体は図5 に示すシステム構成をしており、湿式フィルターの手前から粒子を供給した。そのまま直列に湿式フィルターと乾式フィルターをつなげると湿った空気が流れ込み、乾式フィルターが過度に湿る可能性があるため、図6のように、湿分分離器を用いる事でそれを防止した。湿式フィルターシステムは水中で粒子を含んだ空気を気泡にして攪拌させることによって空気中の粒子を除去する。このときの乾式フィルターのテスト部を図7 に示す。各部の圧力データと風速、空気と温度の時間変化も記録した。 Fig.5 Integral filter system test facility Fig.6 Integral filter system test facility Fig.7 Dry-type filter test section 測定は湿式フィルターに注水を開始するのと同時に開始し、水位が十分上昇したところで送風機の電源 を入れて送風を開始した後、測定開始から90 秒経過時点で粒子の投入を開始した。粒子は100g のみ投入した。この湿式フィルターと乾式フィルターの組み合わせを 条件9 とした。 実験後のHEPA フィルターは、ミストセパレータでは除去し切れなかった湿度の高い空気が乾式フィルター内に流れていたことによって水分を多く含み、重量が大幅に増加していたために12 時間ほど乾燥させた。その後電子天秤を用いて重量の化分を測定し DF 値を算出したところ、DF=3460 となった。 最下層の部分まで粒子が届いており、NF-20 はその除染性能をより発揮することが出来た。またの結果から、複数の線径のフィルターを用いて複合フィルターを作成する際にはなるべく多くの種類の線径のフィルターを用いる事が目詰まりを防止する上で重要であることが改めて分かった。 Table.3 Improved test result:Run 6 and Run 10 これより実機で用いる際には条件 10 がこれまでの条件 1~10 の中で最も適していると考えられる。DF 値は最大で75155 まで上昇させることが出来た。実機で使用した際、湿式フィルターで発生する放射性粒子を含んだ汚染水は、ALPS などの汚染水処理システムで処理する。DF 値をDF=75155 からDF=67506 とわずかに減少したもののほぼ一定を保ちながら、用いたフィルターの総質量を121gから62gまで減少させることが出来た。これより複合フィルターの性能を大幅に向上させることが出来た。 4.実機フィルターシステムの検討 図 7 に示す多核種高除染性空気浄化システム試験装置のフィルターの1辺の長さが20cm であったので、実機のフィルターの1辺の長さを 80cm とすると、LFA/LFT=4.0 となり、試験装置の整流ダクトの形状を相似とする場合、 試験装置の 4 倍の大きさにすれば良い。全体のシステム 構成は、図 8 に示すようになる。格納容器(PCV)内の汚染された空気を吸引して、PCV 内を負圧に維持すると共に、浄化した空気を原子炉建屋に供給する。システムで浄化した空気は線量を監視しながら大気へ放出する。空気浄化試験装置の整流ダクトの高さは約130cm であるので、130cm×4=510cm。高さ約5m の装置となる。湿式フィルターのスクラビングプールの内径は4 倍とするが、高さ方向は重力支配であるので、飛沫が飛ばない十分な高さがあれば良く、高さ約3.5m とした。図9 に多核種高除染性空気浄化システムの実機3D-CAD 図を示す。 例えば2000m3/h 浄化空気 吸引 AgX フィルタ ヨウ素または希ガスなど特定の核種用フィルター 多層乾式フィルタ 湿式 フィルタ ファイバーフィルター汚染廃棄物 多核種汚染水処理システムで処理 Fig. 8 System concept of the high efficiency multi-nuclide aerosol filters. 空気 吸込口 Fig. 9 Multi-nuclide aerosol filters by 3D CAD. 5.結言 得られた吸着実験データを分析して、評価解析モデルを作成し、フィルターシステムの総合除染係数とフィルターの圧力損失を予測可能とした。システム構成は、湿式フィルター+乾式フィルター+ヨウ素フィルター+他の核種用の専用フィルター+被曝線量評価システムという構成になった。本公募事業の成果を集大成したものであり、放射性物質をその検出限界以下まで除去できる。空気流量調整のためには、空気送風機 (ブロワー)の電源はインバーターで可変にしておく必要がある。なお、フィルターの圧力損失は、試験結果より、最大で12kPa 程度であることが確認された。メタルファイバーフィルターによる乾式フィルターの上流に湿式フィルターを設置することにより、メタルファイバーフィルターの目詰まりを防止しつつ、湿式フィルターによる放射性物質の除去により、長期の多核種除去のフィルターシステムが長期に亘って運転可能である。以上のように、本研究により、乾式フィルターベントシステムに必要な高い除染係数と目詰まりに強いフィルターを開発し、設計に必要な性能予 測を可能とした。 参考文献 奈良林直、佐藤修彰、「銀ゼオライトを用いた高除染性フィルターベントシステムの開発と可視化実験」、エネルギーレビュー(2014,11). 奈良林ら、多核種高除染性空気浄化システム開発による作業被曝低減化研究(1)全体計画、保全学会学術講演 会、I-2-2-4 、(2016)。
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