我が国におけるナトリウム冷却高速炉の安全研究の成果と方向性

公開日:
カテゴリ: 第15回
我が国におけるナトリウム冷却高速炉の安全研究の成果と方向性 Outcome and Direction of Safety Research for Sodium-cooled Fast Reactors in Japan 日本原子力研究開発機構 久保 重信 Shigenobu KUBO Non Member 日本原子力研究開発機構 神山 健司 Kenji KAMIYAMA Non Member 九州大学 守田 幸路 Koji MORITA Non Member Severe accidents of sodium-cooled fast reactors (SFRs), which is called core disruptive accidents (CDA), are categorized into typical accident phases, i.e., initiating phase, transitions phase, and material relocation and cooling phase. In recent years, experimental data are accumulated and safety analysis codes are developed focusing on the later phases of accidents. This is because achievement of in-vessel retention (IVR) utilizing superior characteristics of sodium coolant is one of the important objectives of safety design and evaluation for SFRs. In this connection, a series of out-of-pile and in-pile experiments, EAGLE-3, and related tests using the MELT facility are being conducted to clarify the phenomena on molten fuel discharge and cooling. Studies on debris sedimentation and bed formation behaviors are also performed. Fast-reactor safety analysis codes, SIMMER, are developed to enhance its capability to be applicable to the later phase of accidents. This paper describes outcome and direction of safety research for SFRs in Japan, especially focusing on IVR. Keywords: Sodium-cooled Fast Reactor (SFR), Reactor Safety, Severe Accident, In-vessel Retention (IVR), Core Disruptive Accident (CDA) 1 はじめに 高速中性子を主体とした臨界体系である高速炉は、通 常運転状態において炉心が最大反応度体系にないことか ら、冷却材の喪失、燃料凝集等を仮想した場合、過大な反 応度が印加される可能性がある。このため、ナトリウム冷 却高速炉(SFR: Sodium-cooled Fast Reactor)の開発の初期から炉心崩壊事故(CDA: Core Disruptive Accident)に着目した安全評価がなされるとともに、関連する安全研究がSFR の開発 で れている。 が では、実験炉「常 」、原型炉「もんじゅ」の安全 査において仮想的なCDA によって発生する機械的エネルギーの格納性が取り扱 れており、これまで、CDA の過程で生じうる多くの現象について実験的知見を得るとともに、解析評価コードが 整備されてきた。また、これらの を活用して、原型炉 「もんじゅ」を対象にレベル 1 およびレベル 2 の確率論的リ ク評価(PRA: Probabilistic Risk Assessment)が実 され、CDA 事象推移とその影響が体系的に分析できるようになってきている[1][2]。「もんじゅ」以降の実証炉および実用炉については、実用化戦略調査研究および実用化研究開発において、先進ループ型炉(JSFR: Japanese SFR)の設計概念が創出されている。JSFR では、シビアアクシデントの防止と緩和に関する設計対策が取り入れられており、その設計対策の有効性を示すための試験研究が進められている[3][4]。 本稿では、SFR のCDA 関連の安全研究の方向性について るとともに、これまでの研究 を概 し、 がにお る最 の研究 について する。 2 安全研究の方向性 福島原子力発電所事故を教訓として、 が では、シビアアクシデントの防止と緩和を法令上の規制対象とした原子力発電所の安全性に関する新たな基準(新規制基準) が策 された。 的にも、 防 の状態 分において第3 の設計基準事故(DBA: Design Basis Accident)を超えたシビアアクシデントを含む設計拡張状態(DEC: Design Extension Condition)を設 することで、シビアア クシデントの発生防止と影響緩和の方策を設計上考慮す る方向性が示されている。 低圧シ テムであるSFR では、ガードベッセル等の静的機器を設 ることで、 の冷却材 えい時にも原子炉容器内のナトリウム液位を保持することができる。さらに、崩壊熱に対して大気(空気)を最終ヒートシンクと する除熱源が確保できれば、受動的な冷却材の自然循環によって長期の冷却性を技術的に確立できる可能性が高い。このため、このようなSFR の 徴を活かして、大規模な地震や津波等の災害や長時間の電源喪失を考慮しても機能喪失しない十分な多重性と多様性を備えた崩壊熱除去設備を構築していくことが重 である。さらに、炉心損傷の防止対策として、動的な原子炉停止系に加えて、受 動的な制御棒の挿入機構等を備えることが考えられている。その上で、炉心損傷の影響緩和対策として、炉心損傷時に大規模な機械的エネルギー放出(エナ テ ック )を防止するために、冷却材のボイド化に伴う正の反応度を抑制するとともに、溶融した燃料を炉心外へ排出す ることで 臨界を 避し、損傷した炉心を原子炉容器内で保持?冷却する、所謂、IVR(In-vessel Retention)を 立させる設計方策を講じることが、放射性物質の格納機 能を確保する上で有効かつ合理的な考え方となる。 燃料インベントリが大きい大型炉において 臨界を避するためには、設計対応によって溶融燃料を早期に炉心外に流出させ、原子炉容器底部で燃料デブリを保持冷却する必 がある。 えば、JSFR では内部ダクト付燃料集合体(FAIDUS: Fuel Assembly with Inner Duct Structure)概念の採用や原子炉容器底部でデブリを保持冷却するための多段受 皿(コアキャッチャー)の設 が検討されており、IVR にお るこれらの有効性を評価する必 がある。このため、機構論的見地からこれら ?冷却過程(炉心 の溶融燃料が 方のプレナム へ流出移し、燃料からの崩壊熱が冷却材の自然循環によって除去される過程)の 量的な評価手法を構築するための実験的研究と解析技術の整備が重 となる。 DBAの安全評価では保守的な 論的評価を用いるのに対して、DEC ではリ ク情報を活用した最適評価(BE: Best Estimate)を うことが、発生確率が めて小さく事象進展のシー ン が広範?多岐に たるシビアアクシデントの発生防止や影響緩和の諸対策の効 を総合的に評価する上で有用な方法である。すな ち、DEC の代表的な状態をPRA によって得られる情報を して選 することで合理的な安全設計が可能となり、設計対策の有 効性の判断にも PRA の知見を活用することができる。PRA のうち、レベル1 PRA では、シビアアクシデント発生防止対策の全てもしくは部分的失敗によって炉心損傷 に至る重 な事故シー ン を し、炉心損傷 度(CDF: Core Damage Frequency)が評価される。また、炉心損傷から環境への放射性物質の放出までを扱うレベル 2 PRA では、炉心損傷に関する事象進展の解析結 や関連する実験的知見に基づく工学的判断によって現象論的 イベントツリーの分岐確率が与えられる。このため、評価 対象とするSFR に適用可能な分岐確率を検討するための技術的基盤を整備することが重 となる[5][6]。 3 シビアアクシデントに関する研究成果 JSFR では、炉停止機能喪失(ATWS: Anticipated Transient without Scram)事象による炉心損傷に対して、炉容器の健全性を 持し、損傷した燃料物質を炉容器内に保持?冷却することで事故を終息させるIVR がその安全設計において追求されている[7]。 ATWS 事象は、起因事象発生後、炉心損傷に至るまでの事故進展の違いにより、 次冷却材流量減少時反応度抑制機能喪失事象(ULOF: Unprotected Loss-of Flow)、制 御棒異常引抜時反応度抑制機能喪失事象(UTOP: Unprotected Transient Overpower)および除熱源喪失時反応 度抑制機能喪失事象(ULOHS: Unprotected Loss of Heat Sink)に分類される。これらの事故事象において、CDF が比較的高い ULOF は、炉心損傷に至までの時間的余裕が比較的小さく、原子炉冷却材バウンダリおよび格納容器バウ ンダリの健全性への影響が最も厳しいことから、ATWS の代表事象として選 されている。 ULOF は、事象進展に応じて、起因過程、 移過程、炉心 張過程および ?冷却過程に分類できるが、IVR が される設計方策(Fig. 1)が講じられる場合は、炉心 張過程( 臨界によって損傷炉心 で発生した熱エネルギーが機械的エネルギーに変換される過程)への進展が 避されることになる。 って、以 では、炉心張過程を除く過程について、これまでの研究 を概するとともに、 が にお る最 の研究 について する。 起因過程 健全状態にある燃料 ンが 損することで 方向の物質移動による反応度 ードバックを伴って 損が進展し、燃料集合体のラッパ管が 損するまでの炉心損傷の 初期段階を起因過程と呼ぶ。これまで、試験燃料 ンを事故条件に して、その 損挙動および 損後の移動挙動を観察する炉内試験(CABRI, TREAT)が多く実 されて おり[7][8][9]、その知見に基づいて解析コードが整備されている。日欧 協力で実 されたCABRI 試験では、燃 料 ン仕様、過渡条件等をパラメータとした多くのデータが蓄積されており、これをベー に整備されたSAS4A コードを用いることで、起因過程の評価が概ね可能となってきている。米 で開発された本コードは、日欧協力のもと酸化物燃料バー ョンの改良整備が実 されている。 損後の燃料は、その程度は出力を含む過渡条件や燃料 ン仕様に依存するものの、分散傾向を示すことが明らかになっている。これは、炉心損傷過程において大きなの反応度効 をもたらす。 的に、中型ないし大型のSFR 炉心では、全炉心でのナトリウムボイド反応度は正であるが、 損後の燃料分散を含めた の反応度効 に打ち消される程度に正値を抑制する炉心設計を うことで、起因過程にお る大規模な機械的エネルギーの発生を防止できることが明らかとなっている。 遷移過程および再配置過程 起因過程において 発臨界に伴う大きな出力上 がな れば、燃料分散によって、 旦、炉心の核的状態は未臨界となるが、炉心を構 する燃料集合体の多くで冷却材が沸騰し喪失するとともに分散した 損燃料によって冷却材流路が閉塞される。このため、十分な炉心冷却ができ なくなると、 移過程と呼ばれる炉心溶融が進展する過程へと移 する。この過程では、溶融炉心物質が燃料集合体間を移動できるようになるため、全炉心規模での物質 移動に伴う反応度変化によって 臨界が発生する可能性に着目する必 がある。 これまで、 移過程で生じる現象を対象に、燃料集合体内の 損進展とラッパ管の 損による燃料集合体外への溶融進展(SCRABEE、SIMBATH、MOL7C)、炉心周辺 への溶融燃料の侵入と固化(TRAN-B、BLOCKER、THEFIS 、 GEYSER )、 溶融燃料プ ールの運動(SCRABEE/BF2)、制御棒 内管等からの燃料流出 (CAMEL、EAGLE)、炉心から流出する燃料による炉心外のナトリウムプール中の溶融燃料とナトリウムの熱的相互作用(FCI: Fuel-Coolant Interaction)による圧力イベント(FRAG、FARO/TERMOS、MFTF、THINA、MELT)、 または、周囲から炉心へ 流入してくるナトリウムによる圧力イベント等に着目した試験(CORECT、MELT)が 実 され、多くの実験的知見が蓄積されている。また、炉心内の物質と温度分 の変化に伴う過渡的な反応度および出力変化を解析するために、炉心構 物質の熱流動、固体構 物の溶融等の応 および核動 性を結合させた解析コードSIMMER が開発されている。上記の試験データに基づく物理モデルの検証整備に加えて、3 次元コードSIMMER-IV が開発されており、また、 年の計算機能力の大幅な向上もあって、より詳細な解析が可能となってきている。 移過程にお る 臨界の可能性および最終的に安な冷却状態に移 するまでの 過程において重 な現象は、炉心からの燃料の流出であり、 に、ナトリウムを内 する テ ールダクト構 を通じての流出現象に着目した研究が実 されている。 の炉心設計においては制御棒 内管、早期の燃料流出を 進するための設計概念として、前 の FAIDUS が検討されており、それらの有効性を見通し、 量的な評価を可能とするための研究開発が進められている。EAGLE-1 および EAGLE-2 試験は、内部ダクトからの溶融燃料流出挙動の把握を主眼として実 され、FAIDUS の有効性を示すとともに、高温融体接触による テ ールダクト壁の 損挙動、ダクト内部での流出挙動、 部のナトリウムプレナムでのFCI 挙動について多くの実験的知見が得られている[10][11]。 内部ダクト壁の 損挙動 EAGLE-1 の炉外試験および炉内試験の分析結 から、高温融体接触時に テ ールダクトの外壁面は 10 MW/m2 を超える高い熱流束に されることが判明している。この熱流束は、融体にアルミナを用いた炉外試験よりも二酸化ウランと テ ールの混合融体を核加熱条件 で用いた炉内試験のほうが高い。 テ ール製の内部ダクトは、この高い熱流束によって内部のナトリウムによる冷却効 が卓越することはなく短時間で 損する。このため、融体は大きく温度低 して流動性を失うことなくダクト内に侵入する。この高い熱流束が発生する 因の つとして、溶融 テ ールがダクト壁に直接接触することが考えられる。溶融燃料がダクト壁に接触する場合、ダクト表面で燃料が固化しクラ ト が形 され、伝熱が抑制される傾向にある。 方、溶融燃料と テ ールの混合融体がダクト壁に接触する場合、混合割合に応じて溶融 テ ールがダクト壁に直接接触するため、その部分でダクト壁の溶融が進展し、ダクトを早期に 損させる可能性がある。SIMMER-III コードにこれらの現象 を扱うモデルを取り入れることで、EAGLE-1 の試験結を良く 現できることが示されている[12]。 ダクト内での流出挙動 内部ダクト壁 損後、ダクト周囲の融体がダクト内に侵入して内部のナトリウムと接触しナトリウムが蒸発するが、EAGLE-1 および EAGLE-2 ではこの時の大きな圧力イベントは観測されていない。これは、融体侵入直後に発生するナトリウム蒸気がダクト内を 張することにより液相ナトリウムがダクト内から排除され、融体とナトリウムとの実効的な接触面積が小さくなるためと考えられる。またこのことにより、融体とナトリウムとの熱交換量が大きくならないため、融体は固化して閉塞を形 することなく 部のナトリウムプールへと流出する(Fig. 2) [13]。 SIMMER-III コードでは、 つの計算セル内で つの流体 分を扱う には、体積率の大きな 分を連続 とし、他の 分は分散 として扱い、2 分間の相対速度によって分散 に 義される流体の液滴径を している。EAGLE-1 の炉外試験に対してこのモデルを適用すると、融体のダクト内侵入時にお る冷却材への熱移 量および蒸発量を過大に評価して、発生圧力は試験結 に比て過大に評価される結 となる。そのため、融体のダクト内侵入時の液滴径を大きく設 することが、同試験結を適切に 現するために有効であることが示されている。また、SIMMER-III コードは、ダクト出口からプレナム部へ流出する融体と冷却材との接触境界面積についても過大に評価する傾向にあり、その結 、ダクト出口にお る冷却材蒸発を過大に評価する。そこで、試験結 に基づき、融体が 砕距離に するまでは融体は柱形状を 持するようモデルを改良することで、融体のプレナム部への流出挙動に関する試験結 が 現できるようになった。こ のように、冷却材を内 するダクトを通じた融体流出挙動を適切に評価するためには、融体と冷却材との接触面積に関するモデルの改良を っていくことが重 である。さらに、SIMMER-III コードでは、流体と構 壁面との運動量交換が固液 相流の流動状 を反 してモデル化されていないため、同コードを用いたEAGLE-1 の炉外試験解析では試験では生じていなかった流路での閉塞が形されることになる。このため、流路内部の流動状 に応じた運動量交換モデルに改良することで、閉塞が形 されることなく融体が流出した試験結 を 現できるようになった[14][16]。 また、溶融燃料の流出経路は、炉心、燃料および原子炉構 設計に依存して、直径、長さ、壁面厚さ、流出方向および流出先に関して様々な仕様が存在する。そのため、流出経路構 が溶融燃料の流出挙動に与える影響を把握する必 がある。前 の FAIDUS では、燃料の流出先を上部冷却材プレナムとする設計も検討されている。この場合、炉心燃料内に蓄積された核分裂生 ガ が燃料溶融によって放出され、これが初期の上向き流出の駆動力となり、その後 FCI によるナトリウム蒸気圧によって継続的な上方燃料流出が生じる。EAGLE-2 での試験を通じて、これらの挙動が把握されている[11]。制御棒 内管は、直径、長さ、厚さが FAIDUS の内部ダクトとは異なるとともに、その内部に制御棒集合体の挿入衝撃を緩和し、冷却材流量を調整するための構 を有している。これら流路内構 仕様の違いが燃料流出挙動に与える影響を把握するための試験がEAGLE-3 において実 されている[17]。 ナトリウムプール中のFCI 挙動 溶融燃料が柱状にナトリウムプール中へ侵入する場合、 二つの着目 が存在する。 つは FCI が生じた に生じる最大圧力あるいはナトリウム蒸気がなし得る最大仕事 エネルギーであり、もう つは、事故後冷却過程の評価およびコアキャッチャーの設計条件となる、柱状溶融燃料 の 砕距離と微粒化挙動の評価である。FCI による機械的エネルギー発生可能性については、過去に多くの研究が なされている。 的なSFR のULOF を起因とした事象進展においては、溶融燃料とナトリウムの接触界面温度 は、最小膜沸騰温度よりも低く、溶融燃料が微粒化して蒸気膜に れた状態でナトリウムと大規模に混合することはないため、 壊的な圧力イベントは生じ難い(Fig. 3)。 方で、この溶融燃料とナトリウムの液ー液接触状態は、柱状の溶融燃料に 砕効 をもたらし、ナトリウムプール中への侵入距離を めることになる[18][19][20]。 EAGLE 炉外試験では、 10 kg のアルミナを さ1.3 m のナトリウムプールに落 させ、 砕距離と微粒化したアルミナの粒径分 が測 されている。 砕距離は、柱状の融体とプール液体との接触界面に作用する流動 安 性に基づいたモデルの予測値よりも大幅に短く、融体とプール液体の液ー液接触に伴う局所的な圧力イベン トの影響を示唆している[21]。 液ー液接触を伴う条件 での 砕距離を評価するためのモデルの検討が進められている。低融 金属融体の水プールへの侵入挙動および、溶融アルミのナトリウムプ ールへの侵入挙動に関する実験から、柱状の融体表面で の局所的な冷却材の沸騰が柱状の融体 砕に影響している可能性が示されている。この観察結 に基づき、実験で得られた 砕距離の測 結 を推 する新たな実験式が検討されている。この式では、柱状の融体の慣性力と周囲 のプール液体の とのバラン から 出された の実験式に無次元サブクール度を加えることで熱的な効 が考慮されている。この式は、異なる物性を持つ低融 金属ー水、アルミーナトリウムの組み合 せに対して適用できるが、二酸化ウランーナトリウム系の FARO/ TERMOS 試験に対しては過少評価となっており、更なる検討が必 である[22]。 前 のように、 部に流出する燃料を含む溶融物の砕距離は熱的相互作用によって大幅に短くなる。しかし ながら、流出先のナトリウムプールが浅く、溶融物の流 出量に対してナトリウムの量が十分でない原子炉容器内 構 設計では、柱状に流出した溶融物が高いエンタルー保持したまま直接堆積場所に到 し、構 物に熱的な 荷を与える可能性がある。そのような状 にお る発生圧力や堆積場所で溶融物が広がる挙動についても研究 が れている。最 れた模 物質を用いた基 試験では、低融 金属を水中のプレート上に落 させ、プレート上で広がる挙動が観察されている。溶融物はプレ ート上を広がるものの、液ー液接触条件にあるため、堆 積物の表面で蒸気泡が発生し、融体はポーラ な状態で固化する。この研究は、現在、予備的な検討の段階にあ るが、今後、段階を踏んで炉内試験も実 する予 である[24]。 冷却過程 SFR の つかの設計 では、コアキャッチャーが原子炉容器底部に設 されており、そこに形 されるデブリベッドの冷却性に関する実験的研究が れている。また、デブリベッドの冷却性に関する物理モデルが開発さ れており、実験結 に基づいた検証がなされている。開発された物理モデルを実機条件に適用することで、デブリ ベッドの冷却限界およびその種々の物理 性(デブリの大きさ、デブリベッドの空隙率、ベッド高さ等)への依存性が明らかにすることができる。 デブリベッドの冷却性を評価するためには、デブリベ ッドの構 粒子の粒径分 や体積高さを与える必 がある。そのためには、コアキャッチャー直上のナトリウムプ ールでの燃料の微粒化とコアキャッチャーへの堆積挙動 を評価する必 がある。また、非均質に堆積したデブリベッドが内部のナトリウム蒸気の圧力によって し坦化する挙動(セル レベリング: Fig. 4)が知られている。九州大学では、これらの挙動に関する実験的研究および解析モデル開発に取り組んでいる。 部プレナムに柱状に侵入した溶融燃料は、前 で た 砕、微粒化プロセ を経て沈降し堆積するため、原子炉容器の 部プレナムのような広い空間では広い範囲に分散して堆積するとともに、堆積高さに分 が生じることが予想される。このようなデブリの堆積およびベッド形 挙動やベッド内部のナトリウムの沸騰によってベッドが 坦化しデブリが するセル レベリング挙動の 性を模 物質を用いた試験によって把握する研究が実 されている。これらの試験では、模 物質として、様々な粒径と形状を持つ固体粒子(アルミナ、 ルコニウム、 、 、 テンレ )を用い、堆積デブリによって形 されるベッドの高さおよびセル レベリングによるベッド高さの経時変化を表す実験式が得られている。これらの結 は、実機評価を うための物理モデル開発および検証に役立てられる[25][26]。 実機評価に適用するための解析ツール整備については、 SIMMER コードをベー として、 的アプローチと微 的アプローチの つの検討を っている。前者については、デブリベッドを つの流体 分として扱い、粒子間の接触や衝突を粒子粘性および粒子圧力としてモデル化している。後者では、離散 法(DEM: Distinct Element Method)を適用して、個々のデブリ粒子間の相互作用を直接モデル化している。これにより、オイラー座標系であるSIMMER コードとラグラン ュ座標系であるDEM を結合させたハイブリッド法によって、冷却材の沸騰を含む流動場の挙動とデブリ粒子の運動を結合させた解析が 可能となっている。現実的な計算時間で実機評価を可能とする が前者の利 であり、より詳細な物理現象を現できる が後者の利 である。これらを組み合 せることで、機構論的な解析評価手法として整備されることになる[23]。 4 まとめ DBA を超える DEC は、 は裕度確認のための評価と位 付 られていた。しかしながら、 年の原子炉設計では、予めDEC を想 し対策を講じる方向にあり、設計段階から炉心損傷の影響を緩和するための方策を取り入 れ、その有効性を評価するための安全研究の重 性が増 している。シビアアクシデント対策に関連する設計?評価においては、安全研究の に基づいて物理的な事象進展を 量的に評価することで、過度な保守性を排除した合理的な検討を うことが重 である。 が では、SFR の実用化に向 てシビアアクシデント時の IVR のための設計?評価技術を確立するための研究開発が 力的に進められている。この は、第4 世代原子力シ テムに関する ォーラム(GIF: Generation IV International Forum)で検討されている第4 世代 SFR の安全設計クライテリア(SDC: Safety Design Criteria)[27]およびガイドライン(SDG: Safety Design Guideline)[28]の構築にも活用されることになる。 高速炉開発の歴史において、 に、酸化物燃料の SFR の安全研究は、 的にも幅広く進められてきており、年は事故事象後半の損傷炉心物質の および冷却性に関する課題に着目した研究が展開されている。これらの研究 は、次世代SFR の安全設計の合理的な設計につながることが期 され、今後も 力的に実 していくことが重 である。 参考文献 K. Aizawa et al., “Application of probabilistic safety analysis to an LMFBR plant”, Proc. 4th Int. ENS/ANS Conf., Topic-III, Part 1, Geneva, Switzerland, June 1-6, 1986. S. Kondo et al., "Integrated analysis of in-vessel and ex- vessel severe-accident sequences," Proc. 1990 Int. Fast Reactor Safety Mtg., Snowbird, Utah, U.S.A., August 12- 16, 1990. S. Kubo et al.,” Safety design approach for JSFR toward the realization of GEN IV sodium cooled fast reactor”, Proc. Fast Reactors and Related Fuel Cycles: Safe Technologies and Sustainable Scenarios (FR13), Paris, France, March 4-7, 2013, IAEA-CN-199-150. Y. Chikazawa et al., “Design study on measures to prevent loss of decay heat removal in a next generation sodium- cooled fast reactor”, Proc. 2017 Int. Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP 2017), Fukui and Kyoto, Japan, April 24-28, 2017. K. Kurisaka et al., “Development of Level-1 PSA method for sodium-cooled fast reactor”, PSAM Topical Conf. in Tokyo (PSAM2013), Tokyo, Japan, April 15-17, 2013. R. Nakai et al., “Development of severe accident evaluation technology (Level 2 PSA) for sodium-cooled fast reactors (1) Overview of evaluation methodology development,” Proc. 2009 Int. Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '09), 9117, Tokyo, Japan, May 10-14, 2009. I. Sato et al., “Safety strategy of JSFR eliminating severe recriticality events and establishing in-vessel retention in the core disruptive accident”, J. Nucl. Sci. Technol., Vol. 48, No. 4, 2011, pp. 556-566. G. Kussmaul et al., ‘‘The CABRI project - Overall status and achievements,’’ Proc. Science and Technology of Fast Reactor Safety, Guernsey, UK, Vol. I, May 12-16, 1986, pp. 103-108. M. Haessler et al., ‘‘The CABRI-2 programme - Overview on results,’’ Proc. Int. Fast Reactor Safety Mtg., Snowbird, USA, Vol. II, 1990, p. 209. A.E. Wright et al., ‘‘Fast reactor safety testing in TREAT in the 1980s,’’ Proc. Int. Fast Reactor Safety Mtg., Snowbird, USA, Vol. II, Aug. 12-16, 1990, p. 233. K. Konishi et al., “The EAGLE PROJECT to eliminate the recriticality issue of fast reactors - Progress and results of in-pile tests -”, Proc. 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS5), Jeju, Korea, Nov. 26-29, 2006, NTHAS5-F001. K. Kamiyama et al., “Experimental studies on the upward fuel discharge for elimination of severe recriticality during core-disruptive accidents in sodium- cooled fast reactors”, J. Nucl. Sci. Technol., Vol. 51, No. 9, 2014, pp. 1114-1124. J. Toyooka et al., “Improvements to the SIMMER code model for steel wall failure based on EAGLE-1 test results”, Proc. 10th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS10), Kyoto, Japan, Nov. 27-30, 2016, N10P1116. K. Kamiyama et al., “Experimental study on fuel- discharge behaviour through in- core coolant channels”, J. Nucl. Sci. Technol., Vol. 5, No. 6, 2013, pp. 629-644. Y. Tobita et al., “Development of the evaluation methodology for the material relocation behavior in the core disruptive accident of sodium-cooled fast reactors”, J. Nucl. Sci. Technol., Vol. 53, No. 5, 2016, pp. 698-706. K. Kamiyama et al., “Development of an evaluation methodology for fuel discharge in core disruptive accidents of sodium-cooled fast reactors”, J. Energy Power Eng., Vol. 8, 2014, pp. 785-793. K. Matsuba et al., “A recent experimental program to evidence in-vessel retention by controlled material relocation during core disruptive accidents of sodium- cooled fast reactors”, Proc. 10th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS10), Kyoto, Japan, Nov. 27-30, 2016, N10P1100. S. Kondo et al., “Experimental study on simulated molten jet-coolant interactions,” Nucl. Eng. Des., Vol. 115, 1995, pp. 73-84. Y. Abe et al., “Fragmentation behavior during molten material and coolant interactions”, Nucl. Eng. Des., Vol. 236, 2006, pp. 1668-1681. S. Nishimura et al., “Fragmentation mechanisms of a single molten copper jet penetrating a sodium pool - transition from thermal to hydrodynamic fragmentation in instantaneous contact interface temperatures below its freezing point -,” J. Nucl. Sci. Technol., Vol. 47, No. 3, 2010, pp. 219-228. K. Matsuba et al., “Experimental discussion on fragmentation mechanism of molten oxide discharged into a sodium pool”, Mech. Eng. J., Vol. 3, No. 3, 2016, 15- 00595. K. Matsuba et al., “An empirical correlation to predict the distance for fragmentation of simulated molten-core materials discharged into a sodium pool”, Proc. 11th Int. Topical Meeting on Nuclear Thermal-Hydraulics, Operation and Safety (NUTHOS11), Gyeongju, Korea, Oct. 9-13, 2016, N11A0089. Y. Imaizumi et al., “Fundamental experiments of jet impingement and fragmentation simulating the fuel relocation in the core disruptive accident of sodium-cooled fast reactors”, Proc. 2017 Int. Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP 2017), Fukui and Kyoto, Japan, April 24-28, 2017. K. Morita et al., “A new empirical model for self-leveling behavior of cylindrical particle beds”, J. Nucl. Sci. Technol., Vol. 53, No. 5, 2016, pp. 713-725. MD A.R. Sheikh et al., “Sedimentation behavior of mixed solid particles”, J. Nucl. Sci. Technol., Vol. 55, No. 6, 2018, pp. 623-633. L. Guo et al., “Numerical simulations on self-leveling behaviors with cylindrical debris bed”, Nucl. Eng. Des., Vol. 315, 2017, pp. 61-68. 「第4 世代ナトリウム冷却高速炉の安全設計クライテリア」 別専門委員会, “第4 世代ナトリウム冷却高速炉の安全設計クライテリアの構築”, 日本原子力学会誌, Vol. 55, No. 10, 2103, pp. 587-591. 第4 世代ナトリウム冷却高速炉の安全設計ガイドライン研究専門委員会, “第4 世代ナトリウム冷却高速炉の安全設計ガイドラインの構築 : 安全アプローチ及び設計条件に関するガイドライン”, 日本原子力学会誌, Vol. 57, No. 10, 2105, pp. 667-671. Fig.1 ULOF sequence and design measures to achieve IVR Initial melt ejection ? Sodium vaporization Massive melt FCI pressure buildup, duration through a local opening and void expansion Progression of duct failure discharge through the voided duct of this pressurization was so short that overall discharge did not hinder significantly. Fig.2 Melt discharge process through an inner duct Fig.3 Contact mode between molten jet and coolant Fig.4 Self-leveling behavior of debris bed
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)