浜岡原子力発電所5号機における制御棒駆動水系配管溶接継手の漏えい事象に関する原因調査について

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カテゴリ: 第15回
浜岡原子力発電所 5 号機に‘ける制御棒駆動水系配管溶接継手の漏えい事象に関する原因調査について Investigation on leakage point of welding part of control rod drive system piping of Hamaoka NPS unit5. 中部電力(株) 服部 宗仁 Munehito HATTORI Non-Member 中部電力(株) 今井 富康 Tomiyasu IMAI Non-Member 中部電力(株) 黒野 晃平 Kouhei KURONO Non-Member 中部電力(株) 江上 次孝 TsugitakaEGAMI Non-Member 中部電力(株) 丹羽 勇太 YuutaNIWA Non-Member Abstract In this research, research into the causes of the event of piping micro leakage of Hamaoka Nuclear power plant Unit 5 was carried out .Due to main condenser tube damage in May, 2011, seawater flowed into the reactor and other facilities of Unit 5. After that, piping purification was carried out and kept filled with water. Crevice corro- sion was confirmed at the leakage piping and it was estimated to happen at purification process. The leakage piping would not be cleaned sufficiently in the purification process. Three factors were found to be related to corrosion of stainless steel. Chloride ion by seawater, piping weld and influence of internal deposits. Lateral spread inspection is also carried out for places having similar conditions. Keywords: SUS weld metal cladding, corrosion, sea water intrusion, condenser pipe break 1 序論 2017 年 2 月中部電力浜岡原子力発電所 5 号機 (以下、5 号機)(定格電気出力 138 万 kW)のタービン建屋において、空調用ダクト上面 2 箇所が変色している事およびダクト直上の制御棒駆動水系配管溶接継手下部がそれぞれ変色し、水滴が付着していることを確認した。当該配管を調査した結果、溶接継手(以下、継手)からの漏えいである事を確認し た。 5 号機においては、経済産業大臣からの運転停止要請「浜岡原子力発電所の津波に対する防護対策の確実な実施とそれまでの間の運転の停止について」 を受け、2011 年 5 月 14 日に発電を停止し、原子炉減圧操作中に発生した復水器細管の損傷により原子炉施設内に海水が混入する事象が発生している。 漏えいを確認した配管も海水混入時の経路であり (海水混入時 温度約 40 °C、塩化物イオン濃度 (以下 Cl一濃度)5340 ppm)海水混入を踏まえてすきま腐食の発生・進展を防止するために定めた水質浄化の目標値である Cl一濃度 10 ppm 以下を満足す るよう、配管内の水を脱塩水に置換して満水状態で保管していた。 本稿では、海水混入による影響も考慮した原因調査について報告する。 2 漏えい箇所状況‘よび保管状況 漏えい箇所 漏えいを確認した配管周辺の系統概要を、以下に Fig.1 として示す。 Fig.1 System outline Fig.1 の継手①、②において な漏えいおよび、変色部(滴下痕)を確認した。また系統の上流側に当たる継手①の変色部は約 10 cm であり、継手②については約 5 cm であることを確認した。以下に Fig.2 として漏えいを確認した継手①および滴下した空調用ダクトの上面図を示す。 Fig.2 Leak point & Dropping point (Left: No.①, Right : Duct corroded point ) 漏えい後の確認において、脱塩水置換時の Cl一濃度はベント弁において 0.1 ppm 末満であったのに対し、漏えいに伴い水抜きを実施したところドレン弁 において 4.9 ppm まで上昇していることを確認した。また、漏えいが確認された継手以外の配管では外観点検の結果漏えいが無いことを確認した。 系統の保管状況 漏えいが確認された継手(Fig.1 の継手①、②)に 関しては 2013 年 12 月まですきま腐食が発生・進展する がある Cl一濃度 10 ppm を超える値であることを確認した。Fig.3 および Table 1 に漏えい配管の保管状況を示す。 A 期間では Cl一濃度が 10 ppm を大きく上回っており海水の影響を受けている期間であると推察する。 B 期間では、脱塩水にて置換を実施した事によりCl一濃度が低下している事が確認できる。また、Cl一等の海水成分を処理する系統の負荷軽減を考慮し、F102 弁(Fig.1)を隔離弁として設定した。一方 で、制御棒駆動水系側から脱塩水置換を実施した が、F102 弁周辺に空気抜きの弁が無いことから上流の配管において空気溜まりが存在したと推定した。 C 期間では、水抜き後乾燥保管を実施しなかった ため溜まり水があったと推定した。その後、6 月の水張り時において復水系側からクラッドや Cl一が持ち込まれるリスクを防ぐために隔離位置をB 期間と F102 弁とした。また、水張り時の圧力は脱塩水置換時よりも低い圧力条件で行っているため、B 期間よりも広い範囲において湿潤環境の溜まり水があったと推察した。そのため十分な洗浄がなされて いない溜まり水において Cl一濃化が進んだ状態で長 期間保管されていた が い。 D の期間が今回漏えい原因となる 小な孔を確認した時期である。 Fig.3 Transition of environmental condition Table 1 Transition of environmental condition of leak piping 水位 期間 Clー濃度 (ppm) A 満水 (滞留水) 2 ヶ月 5,340 B 空気溜まり有 (滞留水) 3 ヶ月 2 ヶ月 水張り時 水抜き時1,300 水張り時67 水抜き時 C 水抜き (溜まり水) 24 ヶ月 D 満水 (滞留水) 38 ヶ月 水張り時0.1 末満 水抜き時4.9 3 漏えい箇所調査 非破壊試験を用いた調査結果 漏えいが確認された継手①、②および継手間の配 管母材部、漏えいが確認されていない下流継手③~ ⑥について実施した非破壊試験の結果をTable 2 として以下に示す。 Table 2 Survey result (Nondestructive inspection) 調査箇所 外 面目 試験 試験結果 内 面目 試験 継手① 漏えい有り 指示有り 腐食有り 継手間配管 ①②間母材 健全 腐食無し 継手② 漏えい有り 指示有り 腐食有り 継手③ 健全 健全 腐食無し 継手④⑤⑥ 健全 健全 継手①、継手②については、継手下部の漏えい箇所から海水由来成分(Cl一、カルシウムイオン等) を確認した。また、配管の内面状況の確認を実施したところ、腐食が確認された箇所にはクラッド堆積 (鉄成分由来の堆積物)を含む溜まり水が確認された。この時、クラッドの堆積 は上流側から減少していく傾向が確認された。箇所別のクラッド は以下の通りであった。 継手① > 継手①と②間の配管 > 継手② > 継手③ となっていた。また、継手③についてはクラッドの堆積が確認されなかった。 漏えい継手の詳細観察結果 継手①を切断し腐食箇所の断面観察を実施した。 以下に断面観察により確認された漏えい経路概要をFig.4 として示す。また、漏えい継手の SEM(Scan- ning Electron Microscope)結果を Fig.5 として以下に示す。 Fig.4 Welded joint No.① (Outline of leakage route) Fig.5 SEM result 漏えい継手の詳細観察より以下の事を確認した。 (ア) 配管内 面 継手上にクラッドの堆積を確認した。ま た、溶接熱影響部(以下、HAZ 部)と考えられる箇所に腐食孔を確認した。また、腐食進展に伴う配管内 面と腐食間の肉薄化による配管内 面の外力起因のひびも確認した。 (イ) 配管材内部 内 面 HAZ 部の腐食孔を起点とし、腐食孔直下から溶接金属に向け壺状の腐食が進展し た後に、溶接金属部から外 面側へ進展している事を確認した。また、外 面近傍では細な樹枝状の腐食と腐食孔を確認した。 (ウ) 配管外 面 材を用いた外 面 後、SEM 観察により、溶接金属部に樹枝状の腐食と腐食孔を確認した。 腐食の特徴は継手②においても 様であり、配管内 面、配管材内部、配管外 面および直下ダクト 面の変色部にて、海水由来成分を確認した。 腐食時期の推定 腐食が発生・進展した時期について Table 1 より 考察する。 A 期間 去の文献において Cl一濃度 19,000 ppm(人工海水)、温度 50 °C における SUS304 の腐食発生までの期間は、0.66 年(約 7.8 ヶ月)であることが確認されている。[1] そのため漏えい発生配管においては、海水混入後の約 2 ヶ月については、文献の試験環境と して低い Cl一濃度 5,340 ppm であり つ、常温であったことから、本期間において腐食の発生には至らないと推察した。 B 期間 海水混入に伴う漏えい配管以外の配管点検において、当該箇所と 等の環境において有意な腐食がないことを確認しているため、当該配管についても腐食が発生・進展する は低い。また、空気抜き用のベント位置が他工程により適切な場所を選択することが難しく、十分な浄化がされていない事が推測されるが、A 期間と 等の条件であり、Cl一濃度の急激な上昇が起こる が低いため腐食の発生には至らなかったと推察した。 C 期間 配管内の水抜きの実施により、溜まり水お よびクラッドが残っていることを確認した。B 期間において浄化されなかった Cl一がクラッドを有する溜まり水にて濃化したとすると、ク ラッド下においてすきま腐食が発生・進展 し、貫通に至る が い。 D 期間 満水保管中では、復水器等の大 のクラッドが堆積していた箇所を除き、クラッドはすきま 構造を形成しないこと、および浄化目標であるCl一濃度 10 ppm 以下を満足していることから、腐食の発生・進展はないと推察した。 以上より、C 期間中の溜まり水環境下にて Cl一の濃化が進 、堆積したクラッド下において、すきま腐食が発生・進展した が も い。また、Fig.2 の変色部は、漏えい確認時に滴下が確認されていないことから、水張り時の配管内加圧時の漏えい により形成されたと推定した。 4 推定原因 漏えいが確認された箇所および配管の管理状況、体積検査および継手の詳細結果を総合的に判断すると漏えいに至る腐食の要因は単一要因ではなく、複数要因の重畳により発生したと推定した。以下に要因を示す。 ?ステンレス鋼の継手 ?海水混入による Cl一の混入 ?溜まり水内のクラッド堆積 腐食を確認したのは、局部腐食(すきま腐食)の感受 が いステンレス鋼の継手(HAZ 部を含む) であった。ステンレス鋼は海水混入の影響としてすきま腐食の発生・進展が懸念される。漏えい配管については、浄化 程において十分浄化できていない箇所が存在したことにより、長期の水抜き期間中に溜まり水内の Cl一が濃化したものと推測する。ま た、クラッド堆積 が多い上流ほど腐食が大きく、クラッド堆積が無い部分については腐食が確認されていない。これらの事を考慮すると、水抜き期間にCl一が濃化しクラッドとステンレス鋼のすきまにお いてすきま腐食が発生・進展した結果、漏えいとなったと推察した。 以上より、複数要素の重畳により漏えいに至る腐 食が発生と推定した。 5 腐食の進展防止対策 当該部については、引き続き浄化目標である Cl一濃度 10 ppm 以下を維持監 することにより、すきま腐食の進展を防止することが出来るため、調査時に切断を実施した箇所を新たな配管で復旧した後、水質の維持を実施する。 6 類似箇所への展開 これまでの調査結果より、継手①、②について は、水抜き時の Cl一濃度および期間が長いことから、 もすきま腐食が発生・進展しやすい箇所であることを確認した。そのため調査展開についても、 環境である Cl一濃度 10 ppm 以下を満足しない状態で水抜き期間を経験し、溜まり水およびクラッド堆積の が いステンレス配管の継手の点検を実施している。 7 まとめ 5 号機の制御棒駆動水系配管溶接継手からの漏えい事象の原因調査を実施した。本事象におけるステンレス配管の腐食は、海水混入に起因する Cl一が、溜まり水内で濃化し、クラッド堆積によるすきま構造が継手に形成されたことより腐食が発生・進展したと推定した。そのため漏えい配管と の環境条件を有する箇所について点検を実施している。また、漏えい箇所については、今後 を実施し管内の水質を Cl一濃度 10 ppm 以下に維持することにより腐食の発生・進展を防止する。 参考文献 [1] 松橋 亮、松橋 , “50°C 人口海水中での 各種ステンレス鋼(板厚 5 mm)の腐食発生時間と板厚貫通期間の評価例’, 第 167 回腐食防食シンポジウム、2010、p.20
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