浜岡原子力発電所の安全対策について

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カテゴリ: 第17回
浜岡原子力発電所の安全対策について Safety measures of Hamaoka Nuclear Power Station 中部電力株式会社 渡辺 哲也 Tetsuya WATANABE Member 松本 和之 Kazuyuki MATSUMOTO 津村 真吾 Shingo TSUMURA Based on the fact that Hamaoka Nuclear Power Station is located in the hypocenter area of the Nankai Trough giant earthquake, we have voluntarily made efforts to improve safety, such as seismic margin improvement work, even before the occurrence of the Tohoku-Pacific Ocean Earthquake. Furthermore, after the Fukushima Daiichi accident, we have voluntarily continued risk reduction activities such as tsunami countermeasures and severe accident countermeasures. This time, we will introduce the outline of the safety improvement measures of Hamaoka NPP and the result of the PRA evaluation of them. Keywords: Hamaoka NPP, Safety Improvement Measures, Probabilistic Risk Assessment (PRA) 1.はじめに 浜岡原子力発電所が南海トラフ巨大地震の想定 震源域に立地していることから、当社は、東北地方 太平洋沖地震の発生以前より地震・津波対策を重要 な課題と捉え、耐震裕度向上工事などの安全性向上 に取り組み、福島第一原子力発電所の事故後も、新 規制基準を含め最新の知見を反映させることで発 電所の安全性向上に努めてきた。 ここでは、浜岡原子力発電所においてこれまでに実施してきた安全対策の概要を紹介するとともに、 リスクを定量的に示すことができる確率論的リス ク評価(以下、「PRA」という。)を用いて、その効果を評価した結果を紹介する。 2.安全性向上への取り組み 地震・津波対策 図1 安全性向上・リスク低減に向けた施策連絡先: 松本 和之 〒461-8680 名古屋市東区東新町1番地、 中部電力(株)原子力部 安全技術グループ E-mail: Matsumoto.Kazuyuki@chuden.co.jp 地震対策としては、2005 年、阪神・淡路大震災を契機に議論が進んでいた「耐震設計審査指針」の改訂に先駆け、規制基準に基づく基準地震動 S2(600 ガル)に対し、自主的に耐震裕度向上のための目標地震動を 1,000 ガルに設定し、配管・電路類のサポート増強工事、排気筒の補強工事などを実施した。 また、この際1,2号機の廃止も決定している。 東北地方太平洋沖地震後の 2012 年には、内閣府が発表した南海トラフ最大クラス地震を踏まえて、 基準地震動の設定を 1,200gal まで引き上げ、更なる配管・電路類サポート増強工事や取水槽周辺の地盤改良工事などを実施した。 津波対策としては、福島第一原子力発電所事故から 4 ヶ月後の 2011 年 7 月には、巨大津波に対応するための海抜 18m、総延長約 1.6km におよぶ防波壁の設置を決め、速やかに工事を進めた。また、2012 年に公表された内閣府の津波断層モデルを最新知 見として評価を進め、防波壁の高さを 22m へ嵩上げを行った。 更なるリスクへの対策 当社は、最新の知見を踏まえながら地震・津波対策を行うとともに、津波が防波壁を越流することを想定して多層化した津波対策を行っている。 ここからは、浜岡原子力発電所で採用した安全対策のうち、福島第一原子力発電所の事故の進展を踏 まえた全交流電源喪失、注水機能喪失、および除熱機能喪失に対する安全対策を紹介する。 全交流電源喪失対策に関し、福島第一原子力発電所事故では、地震および津波の襲来により、外部電 源、バックアップとなる非常用ディーゼル発電機や 直流電源を喪失し、安定的な原子炉の冷却機能が失 われた。浜岡原子力発電所の外部電源は、27.5 万V が1ルート2回線、50 万Vが2ルート4回線から構成される冗長性のある構成であるが、外部電源と非 常用ディーゼル発電機が全て使用不可となる想定のもとで対策を行っている。主な対策としては、海抜 40m の高台に免震建屋を建設し、ガスタービン発電機(3,200kW×6台)を設置した。また、蓄電池容量の増強(8hr→24hr)や、交流電源車、直流電源車といった可搬設備を配備することなどによる電源 強化を図っている。 注水機能喪失対策については、前述の通り電源 対策の強化を図ることで、福島第一原子力発電所 事故で経験した電動駆動の高圧・低圧注水ポンプ (HPCS・LPCSポンプ)の電源喪失や、原子炉の蒸気を利用するタービン駆動の高圧注水ポンプ (RCICポンプ)の制御用蓄電池の枯渇への備えとしている。また、既設の補給水ポンプ(MUWCポンプ)を原子炉注水のための非常用注水ポンプ(原子炉低圧代替注水系)として活用するために配管改造を行った。さらには常設の注水設備が使用できなくなった場合に備えて、注水ポンプ車といった可搬設備を新たに配備した。水源についても、新たに9,000m3の緊急時淡水貯槽を高台に設けることなどで敷地内に7日分以上の水源を確保した。 除熱機能喪失対策については、東北地方太平洋 沖地震によって屋外にある海水系機器冷却水設備 (RCWSポンプ)が被災したことを踏まえ、緊急時海水取水設備(EWSポンプ)を防水構造の建屋内に 新たに設置した。また、代替熱交換器設備、格納容器代替スプレイ設備といった可搬設備を備えるとともに、格納容器からの最終除熱手段としてフィルタベント設備を新たに設置した。フィルタベント設備は、炉心損傷に至る前の除熱手段として運用するが、万が一、炉心溶融に至った場合での使用を考慮し、粒子状の放射性物質の量を1,000分 の1に抑えることが可能な設備とした。 3.安全対策の効果の PRA による確認 安全性向上対策について、内的事象を対象としたPRA により、対策を反映する前後の炉心損傷頻度を比較することにより効果を確認した。対策反映前は、設計基準対象施設のみに期待し、アクシデントマネ ジメント対策[1]に期待しないモデルにて、反映後は2.に示す原子炉低圧代替注水系、ガスタービン発 電機、フィルタベント設備などの対策に期待すると ともに、アクシデントマネジメント対策として整備 した対策の効果にも期待することとしたモデルを 用いて評価を実施した。 ※1: 配管の破損等により原子炉冷却材が漏えいする事象 ※2: 原子炉圧力容器に接続された系統に設置された複数の弁が誤って開いた状態になることにより、低圧設計部分が過圧されて破損し、原子炉冷却材が漏えいする事象 図2 安全性向上対策等の反映前後の PRA の結果 例えば「全交流動力電源喪失」の事故シーケンスでは、ガスタービン発電機の設置や蓄電池容量の増 強、非常用ディーゼル発電機の復旧を考慮すること などにより、炉心損傷頻度は約1億分の1に低減している。 また、安全性向上対策を整備した状態に対応する炉心損傷頻度は、設計基準対象施設のみに期待した場合に対応する 2.9×10-6 /年 から 3.8×10-9 /年 へと約 1,000 分の1程度低減することを確認した。なお、PRA モデルについては、現在の設計情報を もとに設定したものであるが、今後、新たな知見な どを踏まえた対策の見直しや策定する操作手順、保 全計画に応じた反映を行うとともに、さらに、国内 外の知見を反映して評価方法の見直しに取り組ん でいるところである。 4.まとめ 浜岡原子力発電所の安全対策について、内的事象PRA を用いて効果を確認した。 引き続き、プラント再稼働に向けて確定するプラント情報を反映するとともに、国内外の知見を反映 して評価方法を見直した PRA を整備し、継続的な安全性向上に活用していく所存である。 1992 年当時の原子力安全保安院の要請に基づき自主的に整備した次の対策;原子炉停止機能向上、代替注水 手段、原子炉減圧の自動化、耐圧強化ベント、電源融通。
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