海外原子力発電所の長期運転への対応動向について

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カテゴリ: 第16回
海外原子力発電所の長期運転への対応動向について Status of Long time operation in overseas nuclear power plant 日本エヌ・ユー・エス株式会社日本エヌ・ユー・エス株式会社 大久保友輝夫中村理恵 Yukio OHKUBO Rie NAKAMURA Member Member Abstract Now, 22% of the world’s nuclear power plants are operating beyond 40 years. By 2020, about 30% of the world’s nuclear fleet will be 40 years old. Long time operation (LTO) of existing plant is a key objective in many countries. We need to understand anticipate and mitigate the degradation in nuclear power plants. IAEA have made the guidelines about long time operation and opened PLIM conference once in 5years.In the United States, industry and NRC/DOE have started research program on the subsequent license renewal to maintain NPPs as high performance electrical source, its program is possible to operate beyond 60 years. Keywords: License Renewal, Degradation, Long time operation, LTO, beyond 60, 1.海外原子力発電所の運転状況 現在、世界の原子力発電所では長期運転に向けた対応 が められており、世界 の原子力発電所であるススのベツナウ1号機は、1969年に運開し、現在、運転50年目である。国際原子力機関(IAEA)によると、現在、世界で451 基の原子炉が運転しており、そのうち全体の約22%である99 基は40 年を超えて運転を継続している(図1参照)。 世界の原子力発電所は、1960 年代から建設が始まり、1970 年代、1980 年代と各国にて建設ラッシュとなった。日本が有している軽水炉である沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)に加えて、世界では、ロシア型加圧水型原子炉(VVER)、ガス冷却炉、カナダ型重水炉(CANDU)等、多くの種類の原子炉が運転している。また、近年は、AP1000、欧州型PWR(EPR)といった大型新型炉の新規建設が んでいる状況である。 世界の長期運転に関する規制枠組みは、大きく分けて2 つあり、一つ目が米国を代表とする運転認可申請による運転延長であり、もう一つは、フランス等の欧州で主流 である定期安全レビュー(PSR)による運転延長である。 前者は、運転認可取得時に認可期限が決められており、 その期限を超える場合に延長申請を行う方法である。後者は10 年毎にプラントの健全性を確認することにより、 その後の10 年の運転を認める方法である。米国では、運 転認可期間を40 年と定めているが、これは なでの制限ではなく、原価焼却期間、独占禁止法の面から定められた期間である。 2000 年代に入ると、各国原子力プラントで、当初の運転認可期間または設計寿命である40 年(VVER 等の一部のプラントでは30 年)を超えるプラントが現れた。電力需要の増加に対応するにはこれらの発電所の運転継続が必要であるため、1990 年代後半になると、各国規制機関は長期運転(LTO)を実施するための規制枠組みを構築した。 IAEA が集計したデータによると、40 年を超える運転を実施しているプラントの計画外のプラント停止数が、極端に少ないことがわかる。これは40 年超運転に向けて各プラントにて改造工事、機器取替等を実施したからであると考えられる(図2 参照)。 連絡先 大久保 友輝夫、〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-5-25 日本エヌ・ユー・エス株式会社 エネルキ,ー ユニットE-mail okubo-y@janus.co.jp 以上の経年劣化管理レビュー(AMR)表から構成されている。2018 年12 月末に改 1 がIAEA のHP にて公開された。また、SS No.26(SALTO;Safe Long Time Operation)には、IAEA によるプラントの長期運転に向けた準備状況に対するヒアレビューの要領が示されている。 プラント数 図1 運転期間別のプラント数 図3 LTO に関するIAEA 発行ガイダンス 停止回数/年 図 運転期間別の 外プラント 数 .IAEA のLTO に関する活動 LTO に関するIAEA ガイダンス類 IAEA はLTO に関する を行っており、その一つとして、ガ ダンス類の作成・整備が挙げられる。主なガ ダンスとしては、以下の3 つがある。(図3 参照) ?Safety Guide SSG-48 LTO のための経年劣化管理 ?SRS No.82 国際 GALL 報 改 1(2018 年12 月) ?SS No.26 SALTO ガ ラ ン)(2014 年) Safety Guide SSG-48 には、原子力発電所の経年劣化管理とLTO についての基本 な考え方や方針が示されており、SRS No.82(IGALL;International Generic Aging lessons Learned)は、水冷却炉を対象とした 新の経年劣化管理をまとめた であり、84 の経年劣化管理プログラム(AMP)、28 の期間限定経年劣化解析(TLAA)、2100 行 IGALL 1990 年後半以降、運転開始時からの経年劣化管理の重要性が唱えられていたため、IAEA にてIGALL の策定が検討された。 2008 年から2 年間、IGALL の策定方針、骨子、計画について検討が行われた。2010 年9 月に運 グループ会議が行われ、AMR 表、AMP の情報の一部の案について、参加加盟国の合意が得られ、2010 年12 月より特別予算プロジェクトが開始された。その後、更に に細かい議論を行うため、WG1(機械)、WG2(電気・計装)、WG3( 構造 )に分かれて作 を行うこととなり、各ワーキンググループで作成したAMR 表、AMP、TLAA 等を運 グループ会議にて諮り、SRS No.82 を2015 年4 月に発行した。 このIGALL は ビング として、少なくとも5 年毎に更新することとなっている。2016 2017 年にかけて、IGALL Phase3 会議が開催され、その内容を反映したSRS No.82 の改 1 は2018 年末に発行された。 さらに、2018 年より開始されたPhase 4 では、これまでのWG1 WG3 に加えて、WG4(規制)、WG5(長期停止・建設長期化・廃止措置開始までのNPP における経年劣化管理)が追加されている。 SALTO ピアレビュー IAEA は、2003 年から軽水炉の長期運転の安全面に関 するSALTO プログラムを実施しているが、その一部として、各国の要請に応じて特定のプラントに対する長期運 転の安全面のレビューを行なっている。これはSALTO ヒアレビュー・サービスを呼ばれている。 このSALTO レビューを受けるメ ットとして、以下が挙げられる。 ? IAEA 基準に対する 合性がレビューされる。 ? IAEA 基準に 合するための改善事 の を受けることができる。 ?発電所の運転 やスタッフが、原子力安全や 経年化管理の専門家と議論する機会が得られる。 ?公衆の信頼性を めることができる。 ?運転認可期間更新あるいは長期運転の手続きとして できる。 また、SALTO ヒアレビューは4 段階に分けて実施され、詳細は以下の通りである。 0ステップ1; IAEA の安全基準 SALTO レビューの方法に関するワークシ ップあるいはセ ナーの実施。 0ステップ2; Pre-SALTO ッシ ンの実施。長期運転期間に入る2 7 年前に実施する。約8 日間のレビュー。0ステップ3; SALTO ッシ ンの実施。このSALTO ッシ ンのチームには、外部の専門家が含まれる。専門家は、 ンタビュー、サ トのウォークダウン、提出された のレビュー、事 者との議論、 示唆の提示を行なう。約8 日間のレビュー。 0ステップ4; SALTO フォローアップ ッシ ンの実施。ステップ3 のSALTO ッシ ンで 出された に関して、それらがどのように改善されたか、または改善策が 捗しているかをフォローアップする。4 日間のレビュー。 PLIM 会議の開催 IAEA は、原子力発電所の寿命管理に関する国際会議(PLIM 会議)を5 年に一回開催している。この会議は、第1 回が2002 年に ンガ ーの タ ストで、第2 回が2007 年に中国の上海で、第3 回が2012 年に米国ユタ州ソ ルトレ クシティで開催され、第4 回が2017 年11 月にフランスの ヨンで開催された。この第4 回PLIM 会議 では、IAEA 加盟国39 カ国、4 組織から327 人が参加者 として参加し(展示、サポートスタッフを含めると約420 人)、10 件の基調講演、約110 件の発表、28 件のポスター発表が行われた。 このPLIM 会議の目 は以下とされている。 ・原子力発電所の安全運転におけるPLIM の役割を強調する。 ・経年劣化管理 PLIM プログラムの に関する国内・国際 な 策、規制施策、 に安全 化についての情報交換の場を提供する。 ・経年劣化、経年劣化管理、 に長期運転の安全性の側面に関連する重要な要素 良好事例を提供する。 ・評価手法を含めたPLIM プログラムの経済 影響を特定する。 ・IAEA 加盟国が各国PLIM プログラムに 新の を反映することを する。 米国の に関する活動 3.1 る運転 L 米国の原子力発電所の運転認可は、1954 年原子力法により、40 年までの期間に対して発 すると定められているが、認可期間 後はこれを更新してもよいとされている。米国原子力規制 会(NRC)は、40 年の運転認可が しても運転を続けることができるよう規制の整備を め、原子力発電所の運転認可更新(LR)に関する規則(10CFR Part 54)を作成した。 米国では、1998 年のCalvert Cliffs-発電所でのLR 申請を初め、その後多くのプラントが更新申請をし、60 年までの更新認可を取得した。現在は、運転プラント99 基中、94 基が60 年運転までの更新認可を取得した。 LR に関する代表 なガ ラ ンとして、 NUREG-1800 運転認可更新申請の 準審査 針 (SRP-LR)Rev.2 とNUREG-1801 経年劣化に関する知見報 (GALL) Rev.2 があり、前者はNRC 審査官 の審査 針で、後者は一般 な経年劣化メカニズム、AMP、TLAA をまとめたものである。 3.2 る の運転 SL 米国では、更新認可を取得したプラントが94 基あり、現在は2 回目の運転認可更新(SLR)に関する対応を、 NRC、EPRI、産 界組織NEI、各事 者にて めている。このSLR は、運転期間を60 年から80 年に延長するものである。 SLR に関する規制ガ ダンスとして、2017 年7 月10 日にNRC が、NUREG-2191 GALL-SLR 、NUREG-2192 SRP-SLR を公表した。2019 年5 月時 では、以下の通り6 基がSLR を申請している。またこの他に7 基のプラントが今後申請する予定であることを表明している。 0SLR 申請プラント;6 基 Turkey Point-3,4 (PWR) (2018 年1 月31 日申請) Peach Bottom-2,3(BWR) (2018 年7 月10 日申請) Surry-1,2(PWR) (2018 年10 月15 日申請) また、SLR に関する検討 研究は現在も継続して実施されている。以下に、NRC の検討内容、研究事 を示す。 RPV 炉内構造 の劣化 ?ステンレス鋼 溶接部に対する照射誘起応力腐食割れ(IASCC)と破壊靱性 ? オーステナ ト系ステンレス鋼の破壊靱性 ? 廃止措置中であるス ンZorita 発電所から入手した、 フルエンス環境(50dap)に晒されたステンレス鋼プレートに対する試験 ? Zorita 発電所から入手したステンレス鋼溶接部の破壊靱性 RPV の中性子照射脆化 ?フルエンス環境におけるデータ収集 ?中性子照射脆化のさらなるメカニズムの解明 ?米国産 界全体の中性子照射脆化のデータの蓄積計画策定 コンク ート構造 の劣化 コンク ート構造 の劣化事象の内、運転の長期化に伴い特に発生が懸念されるアルカ シ カ反応(ASR)に対して、以下の対応を めている。 ?設計基準 件での、ASR によるコンク ートの構造性能が受ける影響の評価 ?ASR とコンク ート骨 の関連性の研究 ?米国エ ル ー (DOE)とテ シー大 にてアルカ シ カ反応の共同研究を実施 ケー ル劣化と状態監視 ?温、放射線 湿度環境下で経年劣化したケー ルサンプルに対して、試験を実施する予定。試験は経年劣化したケー ルだけでなく、新しいケー ルでも実施し、結果を比較。 ?ケー ルに対して80 年運転までの健全性の評価方法を検討 ?ケー ルの経年劣化に対して、原子力以外の産 界のAMP が原子力発電所に できるかの検討 まとめ 世界の原子力発電所の20%以上が、40 年を超える運転期間に入っている。IAEA では、長期運転に関するガ ダンスの整備、ヒアレビュー等を行い、原子力発電所の安全な長期運転を している。一方、米国では、60 年を超える運転に対する準備を めており、2017 年にNRC からSLR に関するガ ラ ンが公表され、2019 年5 月時 で6 基がSLR の申請を行い、審査中である。 参考文献 IAEA PRIS(Power Reactor Information System), “Operational Reactors by Age”. Ki-Sig Kang, PLIM Technical Head Division of NENP Department of Nuclear Energy,"IAEA Contributions to Plant Life Management and Long Term Operation", 23/10/2018. IAEA, “Safety Reports SeriesNo.82 Ageing Management for Nuclear Power Plants: International Generic Ageing Lessons Learned”, 2015. IAEA, “Services Series 26 SALTO Peer Review Guidelines”, 2014 The Atomic Energy Act of 1954. NUREG-1801, Vol.1, Rev.2, “Generic Aging Lessons Learned (GALL) Report; Summary”, December 2010. NRC Technical Report, “Review of Aging Management Programs : Compendium of Insights from License Renewal Applications and from AMP Effectiveness Audits Conducted to Inform Subsequent License Renewal Guidance Documents”, June 15, 2016.
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