浜岡原子力発電所5号機 ディーゼル発電機(B)排気管伸縮継手破損事象に関する原因調査について
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カテゴリ: 第16回
浜岡原子力発電所5号機 一`ーゼル発電機(B)排気管伸縮継手破損事象に関する原因調査について
Investigation on breakage of the exhaust pipe expansion joint of diesel
generator (B) of Hamaoka NPS unit5
中部電力
和泉
佑哉
YuyaIZUMI
Non-Menber
中部電力
尾西
重信
ShigenobuONISHI
Member
中部電力
小野
貴栄
TakahideONO
Non-Menber
中部電力
黒野
晃平
KouheiKURONO
Non-Menber
Abstract
In June 2018, the leakage of gases around the exhaust pipe attached to emergency diesel generator of Hamaoka Nuclear power plant Unit 5 and the breakage of an exhaust pipe expansion joint were found. As a result of investigation, we estimated that the cause of the event were the hit marks on the bellows of the expansion joint and low cycle fatigue caused by usual operation of the generator. It was estimated that the hit marks were made when the expansion joint was installed to the exhaust pipe. This paper shows the outline of the event and investigations about the cause of breakage of the exhaust pipe expansion joint.
Keywords: emergency diesel generator, expansion joint, fatigue fracture
1 序論
2018 年6 月、施設定期検査中の中部電力浜岡原子力発電所5 号機の非常用ディーゼル発電機(以下、「D/G」とする。)(B)の定期試験を行っていたところ、排気管付近から排気の漏えいを確認した。漏えいに関する調査を実施 するため、D/G(B)を待機除外とし、保安規定で定める運転上の制限からの逸脱を宣言した。
排気管漏えい箇所の詳細な調査を実施した結果、排気管伸縮継手の1 つにベローズの破 が認められた。破した排気管伸縮継手とその破片の一部をFig.1 に示す。その後、破 した排気管伸縮継手の破片によるD/G(B)への影響評価、当該排気管伸縮継手以外の排気管伸縮継手の 点検、当該排気管伸縮継手の取替え、試運転を実施した後、D/G(B)の定期試験にて確認項目が判定基準を満足していることを確認し、運転上の制限逸脱からの復帰を判
した。
本稿では、本事象の概要 よ 原因調査について報告する。
連絡先 和泉 佑哉、
〒437-1604 静岡県御前崎市佐倉5561、
中部電力株式会社浜岡原子力発電所保修部原子炉課
E-mail: Izumi.yuuya@chuden.co.jp
Fig.1 The broken exhaust pipe expansion joint & fragments of the broken bellows
2 排気管伸縮継手の破損状況
ベローズの復元および外観観察
回収した破片の外観を観察し、周方向または軸方向の割れが一致する破片をつなぎ合わせることで、ベローズ の復元を実施した。復元したベローズの外観観察を実施 した結果、 箇所(180 付近 よ 110 付近)に な円弧状の打痕あり、いずれもその中心部に鋭角な凹みが認められた。(以降、180 付近の打痕を打痕A、110 付近の打痕を打痕B と定義する。)
この他、破片やベローズ残存部分に摩耗の痕跡や有意な腐食は認められなかった。
打痕A は、破 している の 中心に している。
裂の特徴については、周方向の 裂は打痕A 近傍を除
山部に 裂が進展していること、打痕A 近傍を含む軸方向の 裂は比較的直線状に並んでいること、 よ 打痕A は打痕中心部に鋭角な凹みがあり、それに沿って裂が発生していることを確認した。
Fig.2 The reconstruction of the broken bellows & appearances of the hit marks on the bellows
破片の破面観察
回収した破片のうち、破 の著しい打痕A 近傍、溶接部近傍 よ 裂の進展が い下流側(山8)の破片について、光学顕微鏡及 走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて破面観察を実施した。
代表として、破片No.11 よ No.1 の破面観察画像をFig.3 に示す。打痕A 近傍である破片No.11 は 傷がく、全体的に破面がつぶれていたため、破面観察画像か ら有益な情報は得られなかった。一方で、破片No.1 疲労破壊の特徴であるストライエーション状模様が確認された。
溶接部近傍に いては、溶接起因の劣化を示す特徴は認められなかった。
Fig.3 SEM result (left : No.11, right : No.1)
3 要因分析調査
当該排気管伸縮継手のベローズが破 した原因究明の
ため、設計、製作、施工運転管理、保守管理、経年劣化
よ 運転経験の反映の観点に ける破 要因を抽出し、要因分析調査を実施した。
その結果、施工 よ 経年劣化の観点に破 要因の可能性があることを確認した。
施工に関する要因調査
上記2.1 で確認された打痕を起点にベローズが破 した可能性があることから、ベローズに打痕を与える可能 性のある作業の有無を調査した。その結果、2008 年の当該ベローズの取替作業以降に当該ベローズを覆う保温材を取外した実績はなく、打痕を与える可能性はないこと を確認した。また、排気管伸縮継手の取替作業については、打痕が付くことを防止する対策が明確化されて らず、当社社員が取替え作業に立ち会った記録もないことから、排気管伸縮継手の取替え時に打痕を生じさせた可能性がある。
経年劣化に関する要因調査
D/G の起動、停止時の排気管の熱伸縮によりベローズに繰り返しひずみが付加されることで生じる低サイクル疲労(以下、「熱疲労」とする。)により、ベローズが破
する可能性があることから、D/G の起動・停止回数と設計上の繰り返し寿命回数を比較した結果、D/G の起動・停止回数は設計寿命回数よりも少ないことを確認した。
一方で、破面観察より疲労破面が確認されていること から、低サイクル疲労が発生した可能性は否定で ない。4 事象発生の推定メカニズム
初期き裂発生の推定メカニズム
要因分析調査の結果より抽出した「過去の取替え作業時の打痕」 よ 「熱疲労」がそれぞれ単一で破 要因となった可能性、または つの要因が複合し、破 要因となった可能性があることから、破 の起因となる初期
裂発生の可能性を確認した。
単一要因 過去の取替え作業時に生じた打痕
排気管伸縮継手のベローズはステンレス鋼製であり、ステンレス鋼は一般に室温に いては外力による割れは発生しがたいこと、また、排気管伸縮継手のベローズに打痕が生じる外力を付与した結果、割れがないことを確認した。以上より、打痕が初期 裂の単一要因ではない。
単一要因 熱疲労
本事象時に けるD/G(B)の起動、停止回数は、設計で想定されている繰り返し寿命には至っていないことを確
認した。またD/G(B)運転中の当該排気管伸縮継手の収縮量は設計で想定されている収縮量に比べて小さいことを 確認した。以上より、熱疲労が初期 裂の単一要因ではない。
複合要因 過去の取替え作業時に生じた打痕 よ熱疲労
当該排気管伸縮継手のベローズに打痕が生じたことで、熱伸縮によって発生するひずみが打痕部近傍に集中し、設計で想定したひずみを えた可能性がある。
以上より、過去の取替えの作業時に生じた打痕 よ熱疲労が複合し初期 裂を発生させた可能性がある。
初期き裂発生推定メカニズムの検証
打痕 よ 熱疲労の複合要因により初期 裂が発生することを検証するため、構造解析 よ 繰り返し疲労試験により検証を実施した。
構造解析
排気管伸縮継手のベローズに生じた打痕と破 の関係を確認するため、ベローズに生じた打痕を円弧状の形状 で模擬した解析モデルを作成して構造解析を行い、ベロ ーズに生じるひずみ量を算定するとともに、算出したひ ずみ量を用いて疲労破壊に至る繰り返し回数を評価した。
その結果、ベローズ健全部と比較して打痕近傍(構造不連続部)でひずみ量が増 することを確認した。また、疲労評価結果より、一定の打痕形状の場合、150 回程度の繰り返し回数で疲労割れが発生することが確認された。 当該排気管伸縮継手は取付け後から約160 回の起動・停止でベローズの破 が発生したことから、この打痕形状の場合と比較すると、繰り返し回数が よそ一致する結果が得られた。
繰り返し疲労試験
打痕が付いた排気管伸縮継手のベローズと繰り返し変
による破 の因果関係を確認するため、排気管伸縮継手のベローズに打痕を付与した試験体を用いて繰り返し疲労試験を実施し、割れの発生状況を確認した。
ベローズの取替え作業時の作業員の行動を分析した結果、打痕は排気管伸縮継手が落下し、突起物と接触して付いた可能性が高い。このため、突起物を模擬した金属製の棒に実機から取外した排気管伸縮継手を落下させ、試験体に打痕を付与した。
材料強度試験機を用いて、排気管伸縮継手の軸方向の
変 量にて、繰り返し疲労試験を実施し、打痕部の割れや変形を観察した結果、打痕部の周辺に割れが発生することを確認した。
初期き裂の発生 破損に る の推定メカニズム
当該排気管伸縮継手の初期 裂の発生は、構造解析よ 繰り返し疲労試験の結果も踏まえ、組立時の打痕と熱疲労の複合要因により発生したものと推定した。また、復元した当該排気管伸縮継手の外観観察及 破面観察の結果と併せ、初期 裂の発生から破 に至るまでのメカニズムを以下のと り推定した。
取替え作業時に生じた打痕近傍にて、熱伸縮によるベローズの変 の繰り返しによる応力集中により初期 裂が発生した。
初期 裂は、当該排気管伸縮継手の内圧の影響を受けることにより、軸方向に進展するとともに、周期 的な内圧の変動によって発生する振動により周方向へ進展し、破 した。
Fig.4 Mechanism of breakage of the exhaust pipe expansion joint
5 事象の原因
当該排気管伸縮継手のベローズに生じた打痕は、 さや生じた箇所、D/G(B)室に ける作業エリアの状況から、2008 年の排気管伸縮継手の取替え作業に いて、当該排気管伸縮継手を他機器に接触させたことにより生じた可能性が高いと推定した。この原因は以下のと りである。
現場作業要 の不備
現場作業に ける作業要 に いて、ベローズを取扱う際の注意点の記載がなく、また、取替え作業時の適正工具の使用を含めた作業手順が明確でなかった。
薄肉部材に打痕が与える影響に関する力量不足 排気管伸縮継手のベローズは薄肉部材であり、熱伸縮
によって発生するひずみが打痕部近傍に集中しやすいという認識が現場作業員に乏しかった。
6 再発防止対策
本事象の発生要因が「組立時に ける打痕」 よ 「熱疲労」の複合要因で発生したものであると推定したこと を踏まえ、以下の再発防止対策を行う。
打痕が付くことを防止する対策
a 記録確認としていた排気管伸縮継手取付け後の外観確認を当社社員の立会項目とする。
b 現場作業要 に打痕の発生を防止するための手順を追加する。
c 排気管伸縮継手のベローズの取扱いに関する注意点を作業要 に記載、取付け作業前等の打合せ時にける注意喚起 よ 教育により、薄肉部材に対して打痕が与える影響に対する意識の向上を図る。
打痕などの偶発事象を早期に検知するための対策保温材を取外して排気管伸縮継手の外観点検を定期的
に行い、打痕等の異常が発生していないことを確認する。
打痕などの偶発事象に起因して排気管伸縮継手に破
が発生した場合の対策
保温材の形状を変更することで、 易に排気管伸縮継手の外観点検が可能となるようにする。また、伸縮継手の予備品を確保することで、D/G の早期復旧を図れるように対応する。
7 とめ
浜岡原子力発電所5 号機D/G 排気管伸縮継手破 事象の原因調査を実施した。本事象は、「組立時に ける打痕」
よ 「熱疲労」の複合要因により打痕部近傍に初期裂が発生し、初期 裂が排気管の内圧により進展し破したものであると推定した。今後、再発防止対策を確実に行うと共に、 裂の進展に関して当社が推定したメカニズムを実証するための検討を進める。