志賀原子力発電所における安全性向上の取り組み

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カテゴリ: 第15回
志賀原子力発電所における安全性向上の取り組み Safety Improvement Measures at Shika Nuclear Power Station 北陸電力株式会社 谷出 信一Shinichi Tanide In order to enhance the safety of Shika Nuclear Power Station, we take various countermeasures against earthquake, tsunami and other natural disasters based on the lessons learned from Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Accident. We also take safety improvement measures which meet the new regulatory requirements. We make every effort to make the severe accident like Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Accident never happen. Keywords: Safety Improvement Measures、 natural disasters、 design basis accidents、 enrichment of training 1 はじめに 志賀原子力発電所では、福島第一原子力発電所の事故 を教訓に、地震と津波、自然現象や電源確保などに対す るさまざまな強化策に加え、新規制基準を踏まえた「安 全向上施策」を実施するなど、二度と同じような事故を 起こさない決意のもと、全力で取り組んでいる。 今回、志賀原子力発電所の安全性向上の取り組みとし て、設計基準対策となる地震、津波等の自然現象に備え た対策と運用管理面の対策について、各々の対策概要を 次項以降にて説明する。 図1 志賀原子力発電所における主要な対策 2 志賀原子力発電所の安全向上施策 設計基準対策 設計基準対策として、地震、津波、自然現象、内部火 災、内部溢水の影響評価を行い、さまざまな対策を実施 している。 地震対策 0基準地震動の策定 発電所敷地周辺の各種地質調査を実施し、活断層(将 来活動する可能性のある断層等)において地震が発生した場合の揺れの大きさを評価し、地震動を策定している。 また、敷地周辺の地質調査を実施してもなお、発生する可能性のある地震をすべて評価し得るとは言い切れないことから、震源と活断層を関連づけることが困難な地震についての観測記録を収集し、揺れの大きさを評価し、基準地震動を従来600 ガルから1000 ガルに見直している。 0耐震設計 発電所の設備が今回見直した基準地震動による揺れ に耐えられることを再評価し、評価結果に基づき、補 強部材の追加等の耐震工事を実施している。 配管 連絡先:谷出 信一、〒925-0141 石川県羽咋郡志賀町高浜町二 13-21、原子力本部原子力部原子力発電運営チーム、 E-mail: tanide.shinichi@rikuden.co.jp 図2 配管、サポートの補強例 津波対策 0基準津波の策定 敷地周辺の地震のほか、地すべり等の地震以外の要 因を組み合わせて最大となる津波を評価し、基準津波の想定高さを従来5.0mから7.1mに見直している。 0耐津波設計 基準津波による想定津波高さ(7.1m)は発電所敷地高さ(11m)を 回るものの、防 (高さ m、 さ約700m)、防 壁(高さ m、取水ピット及び放水ピットの周囲)、水密扉を自主的に設置し、敷地内及び 建屋内への浸水を防止している。 図3 津波対策の概要 図4 防潮堤 図5 水密扉 自然現象対策 想定し得る自然現象(竜巻、森林火災等)による発電 所への影響評価を実施している。 0竜巻対策 本 で に発生した竜巻の規 ?最大風速等を考慮し、最大風速69m/sの竜巻を基準竜巻と設定している。風圧や飛来物の衝突等といった竜巻による発電所への影響を評価し、竜巻防 対策を実施している。 0森林火災対策 森林火災が発生しても、建屋周辺まで火災が到達しないよう、敷地内建屋周辺にある樹木の伐採、モルタル吹 けやコンクリート舗装を実施し、延焼を防止する防火帯( さ2.8km、幅 24m以上)を整備している。 図6 防火帯のイメージ 図7 防火帯 図8 防火帯(モルタル吹付状況) 火災対策 火災により原子炉施設の安全機能が損なわれることが ないよう、3つの深層防 の概念(火災の発生防止、感知及び消火、影響軽減)に基づく火災防 対策を実施している。 0火災の発生防止 ?可能な限り不燃性材料又は難燃性材料を使用。 ?蓄電池室に水素検出器を設置。0感知及び消火 火災を早期に感知できるよう、異なる種類の感知器を組み合わせて設置(煙感知器、熱検知器等)。 消火活動が困難な場所の消火のため固定式消火設備を設置。 0影響軽減 延焼による被害拡大を防止するため、耐火壁、防火ダンパの設置ならびに配管貫通部、ケーブルの耐 火処理等を実施。 図9 ケーブルトレイの耐火処理 内部溢水対策 内部溢水(建屋内での配管破断等による漏水)が発生 しても重要な機器が浸水しないよう、配管貫通部のシー ル補強や扉の水密化等の内部溢水対策を実施している。 図10 配管貫通部のシール補強 図11 扉の水密化 外部受電系統の強化 原子炉の安全停止に必要な電力を受電するため、発電 所の受電系統を3ルート5回線確保するよう新たに供給ルートを整備し、外部電源の信頼性を向上させている。 1つの変電所での故障により発電所への電気の供給が 停止しないよう、2つの変電所と接続し供給できるよう に整備している。 規 が小さく、より早く復旧可能な赤住線(66kV)から受電できるよう、資機材や作業手順を整備している。 図12 外部電源の概要 図13 送電鉄塔 運用管理面の対策 緊急時対応要員の確保 年間(夜間?休 を含む)を通じて、緊急時に必要な要員を迅速かつ確実に確保できるよう、体制を構築して いる。また、衛星携帯電話の追加配備による連絡手段の 強化、ヘリコプタによる移動手段の確保等による対策を 実施している。 図14 ヘリポート(発電所敷地内) 緊急時対応訓練の実施 発電所の非常用電源が喪失した場合の復旧対応手順を 整備し、対応能力の維持?向上を図るため、照明が消灯 し暗闇を想定した対応訓練や厳冬期?夜間における実働 訓練といった、さまざまな状 を想定した訓練を りし実施している。また、訓練結果を踏まえ、対応手順や 訓練内容を継続的に改善している。 図15 夜間の電源接続訓練 運転訓練シミュレータの機能向上 フルスコープ運転訓練シミュレータ(実際の中央制御 室内と同様の配置や操作機能を持ち 運転員が操作する環境を 擬した施設)を整備し、運転員の運転操作能力及び異常時の対応能力の向上させるため、通常のプラン ト運転操作訓練に加え、福島第一原子力発電所の事故等 を 擬した異常時の対応訓練を継続的に実施している。運転訓練シミュレータで 擬可能なプラント状態は、炉心形状を維持した範囲に加え、燃料損傷モデル、圧力 容器損傷モデル、格納容器損傷モデルを追加することに より、燃料溶融、リロケーション、圧力容器損傷、格納 容器損傷といった状態まで 擬できるよう 擬範囲を拡 大させ、機能を向上させている。 図16 運転訓練シミュレータ 運転訓練シミュレータを活用した訓練 拠点となる緊急時対策所と中央制御室の連携能力を向上させるため、運転訓練シミュレータのプラント挙動(設 備状態やパラメータ変化の様子)を緊急時対策所の大型デ スプレ にリ ルタ ムで し、中央制御室の運転員と緊急時対策所の発電所員が連動して活動を行う訓練を実施している。 また、東京電力ホールデ ングス株式会社、中部電力株式会社と運転訓練シミュレータを用いた対応訓練を共 同で実施しており、訓練での交流を通じ、相互に切磋琢 磨しながら運転員の技術力の維持?向上を図っている。 図17 共同シミュレータ訓練 3 おわりに 私たちは、今後も福島第一原子力発電所と同じような 事故を二度と起こさない強い決意のもと、一層の自覚と 責任を持ち、安全最優先で、志賀原子力発電所の安全対 策を進めていきます。
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