放射光X線を用いたアルミニウム単結晶の 変形・再結晶中のその場観察

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カテゴリ: 第17回
放射光 X 線を用いたアルミニウム単結晶の変形・再結晶中のその場観察 In-situ Observation during Deformation and Recrystallization of Aluminum Single Crystal using Synchrotron Radiation 量研機構(QST) 城鮎美 AyumiSHIRO Member 原子力機構(JAEA) 菖蒲敬久 TakahisaSHOBU Member 徳島大学 岡田達也 TatsuyaOKADA Non-member Abstract Deformation and recrystallization mechanisms are worthy of a note as the controls in properties of metallic materials. In this study, deformation and recrystallization of aluminum single crystal were in-situ observed using synchrotron X-rays, and the recrystallization behavior was obtained. The specimen was deformed with plastic strain of 8 %, and was heated at 753 K. after 6 minutes from heating, the diffraction from subgrains were appeared in the diffraction pattern of the initial crystal. The subgrains coexisted with the initial crystal only for 30 seconds, and then the diffraction spots of the initial crystal disappeared due to recrystallization. Finally, the diffraction spots of the subgrain remained. Keywords: Single Crystal, Aluminum, In-Situ Observation, Deformation, Recrystallization 1.はじめに 変形、再結晶の研究は古くから盛んに行われてきたが、 本研究は、その中でも粒界をもたない、単純な系であるアルミニウム単結晶を利用した研究に着目した。再結晶とは、変形により加工硬化した材料をある温度以上に加熱すると、新しい結晶方位を持った、転位密度が非常に低い再結晶粒が発生・成長する現象を指す。これまでの研究では表面すべり帯の観察による活動すべり系の特定や、TEM を用いた内部転位組織観察、SEM/ECP 法による変形組織と再結晶粒の方位関係の評価などが行われてきた [1][2]。それら定性的な評価が進む一方、金属単結晶における応力・ひずみといった定量的な評価は、測定の難し さなどから研究が進んでいなかった。 近年、我々は高エネルギー放射光 X 線を利用し、アルミニウム単結晶粒内の応力・ひずみ分布測定を行い、弾塑 性変形、および、再結晶後の内部ひずみ分布と結晶性との 相関を明らかにした[3][4]。高エネルギー放射光X 線は、指向性の高さ、透過力の強さなどから、金属材料の内 連絡先: 城 鮎美、〒679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都 1-1-1、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、E-mail: shiro.ayumi@qst.go.jp 部の観察に適している。本研究では高エネルギー放射光X 線と二次元検出器を組み合わせ、変形・再結晶中のアルミニウム単結晶内部のひずみ、および、結晶方位のその 場観察を行った。 2.実験 測定試料 測定試料は縦型電気移動炉を用いたブリッジマン法に よって育成した純度99.999 mass%(5N)アルミニウム単結晶であり、引張方位は<111>である。試験片はモールド から取り出した後、300℃で1 時間焼鈍を行い、王水によってエッチングを施した。試料形状を図1 に示す。 Fig.1 Schematic illustration of Al single crystal specimen. 測定条件 実験は大型放射光施設 SPring-8 に設置された、原子力機構専用ビームラインBL22XU 実験ハッチ 3 で行った。X 線のエネルギーは30 keV である。光軸上にインライン高温引張負荷装置を設置し、下流側に 2 次元検出器Pilatus300Kをセットした。光学系の概略図を図2 に示す。カメラ長は引張試験時:約190 mm、再結晶時:約170 mm、測定時間は 10 Hz、高温引張負荷装置の揺動範囲は±15 ° であり、1 °/ 1 sec で揺動を行った。 Fig.2 Schematic diagram of the optical system. 4 中の Al 400 の回折スポットを X 方向に切り出し、1 次元化したデータを図 5 に示す。図 5 より、回折スポットが大きく 3 つに分かれていることがわかる。同じ試験片を 4 軸回折計+0 次元検出器の組み合わせで精密測定をした結果、1 結晶粒内が3 つの領域(亜結晶)に分かれていたことから、図 5 の回折スポットの割れはそれぞれ亜結晶に該当していると考えられる。独立していたスポットの割れは時間の経過、つまり、引張が進行するにつれて ブロード化していき、最終的には非常にブロードなスポットへ変化していく。3 つのスポットについてひずみ、半価幅を解析した結果、引張変形時の現象は 3 つの段階に分類することができた。 段階①:0 - 2 %・・・ピークシフト。 段階②:2 - 5 %・・・ピーク強度の減少。 段階③:5 - 8 %・・・ピークプロファイル形状のブロード化。 3.測定結果および考察 3.1 引張その場測定 インライン高温引張負荷装置により、ひずみ速度 3.0×10-4/s で荷重60 MPa まで変形し、8 %の塑性変形を与 えた時の応力-ひずみ線図を図 3 に示す。制御開始より 7.8 分で目標応力に到達した。純アルミニウムA1050-O は 0.2 %耐力が 30 MPa であることから、本研究においても30 MPa に相当する、機械的ひずみが2.97 %に達した地点より、塑性変形が始まったと考えられる。 333331 222 Direct beam 422 400 311 60 D-8_stress-strain curve 50 40 Stress, MPa 30 20 10 Fig.4 X-ray diffraction pattern of Al single crystal. 0 012345678 Strain, % Fig. 3 Stress-strain curve of Al single crystal. 図 4 に測定した 2 次元データを積算した結果を示す。今回はAl 311 からAl 440 までの角度範囲を測定した。図 Fig.5 Line profile of Al 400 diffraction spot. これらの現象より、各段階では以下のような事象が起 きていると考えられる。 段階①:弾性から塑性変形への移行。 段階②:すべり系の働きがメインで起こり、移動・ 集積した転位がセル壁を形成。 段階③:すべり系ではなく、転位の集積がメインで 起こり、段階②で形成されたセル壁にさらに転位が 蓄積。 また、観察したAl 400、および、Al 422 の回折スポットか ら算出した変形負荷中の格子ひずみの変化を図6 に示す。Al 422 もAl 400 と同様に回折スポットが3 つに分かれていたが、そのうちの 1 つを解析した結果を図 6 に示している。測定の結果、8 %塑性変形中の弾性ひずみは最大で約3000 × 10-6 であった。これまでの研究において、8 %塑性変形後、除荷した試験片では、残留ひずみ、残留応力の分布がランダムであり、残留ひずみの値が100 × 10-6 程度と極めて小さいという結果が得られている[3]。これらの結果より、負荷中の弾性ひずみの値は除荷時の残留ひずみに比べて一桁大きいことが明らかになった。また、亜結晶ごとにひずみの状態が異なっており、Al 400 の亜結晶1、2 は引張ひずみであるのに対し、亜結晶3 は圧縮ひずみ状態から引張ひずみに移行していた。以上の結果より、 異方性がなく、粒界を持たないアルミニウム単結晶であっても、引張変形下においては亜結晶ごとに弾性ひずみの状態が異なることが明らかになった。 3.2 再結晶その場測定 8 %塑性変形した試験片を、図7 に示す条件で焼鈍を行 い、再結晶させた。図 8 に加熱開始から保持過程でその場測定を行った結果を示す。 4000 3000 2000 Lattice strain, x10 -6 1000 0 -1000 -2000 -3000 -4000 012345678 Applied strain, % Fig.6 Relationship between applied strain and lattice strain. Fig.7 Annealing conditions. Fig.8 X-ray diffraction pattern of three states. 加熱当初~6.1 分後:図 8 (a)に示すように塑性変形状態である。全体的に回折スポットが丸く、大きい。 6.1~6.6 分後:加熱を始めてから6.4 分後に母材と異なる位置にスポットが発生した。図8 (b)では、丸実線が母材、丸点線が再結晶粒からの回折スポットを 示している。再結晶粒からの回折スポットは、塑性 変形した母材に比べて小さく、細い。この結果から も、母材と再結晶粒は結晶性が明らかに異なってい ることがわかる。母材と再結晶の共存状態は約0.5分 程度であった。 6.6~7.1 秒後:図 8 (c)に示すように、(a)の初期状態と明らかに異なった結晶方位を示しており、完全に 再結晶した状態となった。 図 8 (b)においては、同じタイミングで両スポットが観察されていることから、再結晶現象は母材がゆっくり結晶方位を変えていくのではなく、母材中で再結晶粒が新 しく発生し、30 秒以下の速さで母材を侵食していくことが明らかになった。 4.結論 本研究では変形・再結晶中のアルミニウム単結晶内部 のひずみ、および、結晶方位のその場観察を行った。得ら れた結果は以下のとおりである。 8 %塑性変形中のその場測定の結果、変形段階が3 つに分類できた。また、2 次元検出器を利用した測定でも、亜結晶が確認できた。 アルミニウム単結晶は、引張変形下では亜結晶ごとにひずみの状態が異なっていた。 8 %塑性変形した試験片を480℃で加熱すると、加熱開始から6.4 分後に再結晶粒が発生する。母材と再結晶粒は約0.5 分間共存状態にある。 参考文献 田上稔、樫原恵蔵、岡田達也、猪子富久治、“<112> アルミニウム単結晶の多重すべりと再結晶の関係”、 日本金属学会誌、65、2001、pp. 517-523. 田上稔、樫原恵蔵、岡田達也、猪子富久治、“液体窒素温度および室温で引張変形した<111>アルミニウム単結晶の変形組織と再結晶”、日本金属学会誌、65、2001、pp. 672-679. Ayumi Shiro, Tatsuya Okada and Takahisa Shobu, “Internal Residual Stress Measurements of Tensile- Deformed Aluminum Single Crystals using Synchrotron Radiation”, Journal of Solid Mechanics and Materials Engineering, Vol. 7, No. 1, 2013, pp. 79-91. Ayumi Shiro, Tatsuya Okada and Takahisa Shobu, “Tensile deformation and recrystallization of aluminum single crystals with sub-grained structures studied by synchrotron X-ray radiation”, Mechanical Engineering Journal, Vol. 7, No. 2, 2020, DOI: 10.1299/mej.19-00634.
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