手元画像解析と機械学習に基づく妨害破壊行為検知手法の開発
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カテゴリ: 第15回
手元画像解析と機械学習に基づく妨害破壊行為検知手法の開発
Development of Sabotage Behavior Detection by Hand Image Analysis and Machine Learning
東京大学
町 和之
Kazuyuki DEMACHI
Member
東京大学
陳実
Shi CHEN
Member
東京大学
堀智之
Tomoyuki HORI
Member
In this research, a new method was developed to identify the “hand behavior” of malicious sabotage behaviors. The Convolutional Neural Network (CNN) and the Long Short Term Memory (LSTM) were applied for analysis of the time-series data of hand behavior images and identification of hand behavior.
Keywords: Nuclear Security, Insider Sabotage, Convolutional Neural Network, Long Short Term Memory, Hand Behavior Identification, Deep Neural Network, Time-Series Data Analysis
1 緒言
1991 年のソビエト連邦崩壊に伴う核技術者の大量放
をきっか に現 まで発 を る核セキュリティ件は、今日でも世界のどこかでほぼ 3 日に 1 回の頻度で
きている[1]。2016 年3 22 日のベル ー・ リュ
セルの同時多発テロでは、その 2 日後に同国テアンジュ原子力発電所で警備員が殺害され通行パスが盗まれると いう、末遂ではあるものの世界初の原発テロである可能 性のある 件が発 した。このように世界では核テロ・原発テロの可能性が現実の酋威として裔まりつつある。原子力発電所の核セキュリティ酋威の中でもっとも警 戒すべきは、安全システムの知識をもちかつ内部へのア
クセス権を有する内部酋威者による妨害破壊行為である。 核セキュリティ対策は「予防」→「検知」→ 遅延」→「対抗」の 4 つの手段から成る。内部酋威者対策として我が国では 上 制度 人ルールが されているが、これらはいずれも予防手段であり、深層防護の観点からはさらに、実 に予防手段を り てテロ行為にれた場合を想定し、内部酋威者による妨害破壊行為を確実に検知するための手段も確立する必要がある。とくに検知に失敗した場合には、その後の手段である遅延・対抗も発動することができない。このことからも、妨害破壊行為の検知手段の開発は急務である。
しかしながら現状の検知手段は、原子力発電所内に設置されたCAS(Central Alarm Station, 中央警報ステーション)に送られてくる発電所内監視カメラ画像に対する、
要求により原子力施設の核セキュリティ
人の目による目視監視しかない。一方、原子力発電所で は、原子力規制庁により核セキュリティのレベルが引き 上げられたことにより監視カメラの大幅な増設が予定さ れている。増設された の監視カメラ画像を人の CAS 要員の目視監視のみに頼って検知することは
に と るを ない。とくに内部酋威者による妨害破壊行為は、発覚を防ぐために通 作業に偽装されて行 れる可能性も裔く、CAS 監視員の目視監視のみによる検知はさらに なものになると考 られる。
この解決には、CAS 要員による目視監視を補助するための、第 1 スクリーニングとしての妨害破壊行為自動検知システムの開発が必要である。すな ち、多 の監視カメラ画像の第 1 スクリーニングにより妨害破壊行為を自動検知してアラームを発報し、さらにCAS 監視員が目視で第 2 段階目の確認をするという仕組みである。第 1 スクリーニングによって検知見逃しの可能性が下がると ともに、第 2 スクリーニングである目視との組み合により誤検知の可能性も下がることが期待できる。
原子力発電所の安全に 大な を る妨害破壊行為には、
ケー ルの切断/短絡
禁止スイ チのON/OFF
回路盤への改造工作
USB メモリ モバイル機器を用いたコンピュータシステムへのウィルス混
爆発物による機器の破損
破壊具による機器の破損
などが考 られる。これらのうち、i. ~ iv. は手 動作が支配的であり、v. , vi. は全 動作が支配的である。前述のように内部酋威者は 2 人ルールによって いを監視し
ていることから、全 動作v., vi.は明白な妨害破壊行為であっては察知され すく、実現が であると。一方、i.
~ iv. の手 動作が支配的な妨害破壊行為は、いずれも通
作業に偽装して実施することが容易なものであり、全
動作v., vi.に比べて実現の可能性が裔い。このため、第1 スクリーニングシステムにとって 要な検知対象としては手 動作を選択することが妥当である。さらには、偽装された妨害破壊行為の検知には従来のように通 行動との乖離度を指標とする異 検知手法では不 分であり、手 動作を可能な限り細分化して識別する手法でのみ可能であると考 られる。
そこで 研究では、多 の監視カメラ画像から妨害破壊行為を検知するための第 1 スクリーニングシステムのなかでも、特に 要な、手 動作の細分化自動検知手法を開発することを研究目的とする。
2 手法
2 1 手元状態画像のラベル化とリアルタイム同定
研究では、監視カメラ画像から手指の曲がり状態(= 手 状態)を識別する手法として、Fig. 1 に示す深層学習の一種である CNN(Convolutional Neural Network, 畳み込みニューラルネ トワーク)[2,3]を用いた。
Fig.1 Convolutional Neural Network [1]
まず、Fig.2 に示すような 3 次 Hand モデル[4]を用いて五指を3 段階で曲げた場合の手 状態を35 = 243 に細分化し、さらに?=0~180deg, ?=0~360deg の範囲で視角を20deg ずつ変 て1状態あたり296 のサンプル画像を作成 し、これを前述のCNN の学習用データとした。
Fig.1 Three stated of a hand by 3D hand model [2]
学習後のCNN に手 動作の動画を 力することで、Fig. 3 に示すような手 状態ラベルの時系列データをリアルタイムで ることができる。
Fig.3 Time-series data of hand state obtained by CNN
2 2 LSTM による手元動作のリアルタイム識別
手 状態ラベルの時系列データからの手 動作識別には、Fig.1 示した CNN と、Fig.3 に示す LSTM(Long Short-Term Memory) [5]の2 種類の手法を用いた。すな
ち、妨害破壊行為として想定する10 種程度の手 動作度動画を 力として2.1章のCNNにより手 状態ラベル時系列データを学習用のデータセ トとして CNN および LSTM を学習した。2.1 章の CNN と 2.2 章の CNN またはLSTM を結合することにより、監視カメラで撮された手 動画が何の動作をしているのかを、リアルタイムで識別することが可能となった。
3 結言
提案した手法により、10 種の手 動作について94%以上の 解 での識別に成 した。結 の 細については学会当日の発表の場で紹介する。
参考文献
Incident and Trafficking DataBase (ITDB), Fact Sheet
2016 by IAEA,
https://www-ns.iaea.org/downloads/security/itdb-fact-shee t.pdf
Y. LeCun, et al., Neural Computation, Vol. 1, No. 4, pp. 541-551 (1989)
Y. LeCun, et al., Proc. of the IEEE, Vol. 86, No. 11, pp. 2278-2324 (1998)
Dennis Haupt, My Rigged and Animated 3d Hands, https://3dhaupt.com/ (2017)
Sepp Hochreiter and Jurgen Schmidhuber, “LONG SHORT-TERM MEMORY”, Neural Computation Vol. 9, No. 8, pp. 1735-1780 (1997)