日本保全学会の保全遺産 原子力発電所のピーニングによる 応力腐食割れ抑制技術

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カテゴリ: 第17回
日本保全学会の保全遺産 原子力発電所のピーニングによる応力腐食割れ抑制技術 The SCC Protect Technology by Peening in NPS 日立 GE 今野 隆博 Takahiro KONNO 保全学会員 東芝 ESS 石橋 文彦 Fumihiko ISHIBASHI 保全学会員 三菱重工 沖村 浩司 Koji OKIMURA 保全学会員 Abstract. The SCC Protect Technology by Peening is registered in The Maintenance Heritage by JSM We introduce The SCC Protect Technology by Peening in NPS Keywords: Maintenance Heritage,SCC,Stress Corrosion Cracking,Peening Technology 1.保全遺産とは 日本保全学会では、2019 年度から保全学の発展、普及、社会への貢献を推奨することを目的に、歴史に残る 保全技術関連遺産でありかつ人類の文化的遺産である保 全遺産を認定する制度を設けている。 保全遺産の内容としては、以下の種類を設けており、 認定件数は毎年1~2件としている。 (1)保全技術が産業・人類の福祉に重要な貢献をし た機器、プラント、システム (2)保全技術の発展に重要な貢献をした技術資料 (3)保全技術に関係した建造物、構造物、展示館等 の所蔵品のどの歴史的な事物 2020 年度は、以下の3つが保全遺産に登録された。 (1)原子炉容器用自動超音波探傷装置A-UT マシン (2)原子力発電所のピーニングによる応力腐食割れ 抑制技術 (3)原子力設備の検査用水中遊泳ロボット(水中ビ ークル) 2.原子力発電所のピーニングによる応力腐 食割れ抑制技術 ウォータージェットピーニングについて 炉内機器の残留応力を改善するウォータージェット ピーニング (WJP: Water Jet Peening) 原子力発電プラントの炉内機器に発生する応力腐食割 れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)は、材料表面の引張残留応力が一因である。 WJP は、キャビテーション噴流を利用して、炉内機器表面の引張残留応力を圧縮残留応 力に転換し、SCC の発生を抑制することができる。 WJP の特徴 WJP は、使用媒体が水のみのため、供用期間中の原子炉内に異物を持ち込むことがなく、炉水を満たしたま ま、施工できるので被ばく線量の低減が可能といった, 原子力発電プラントの炉内機器に適用する上で好適な特徴を持つ。 WJP の高度化、適用実績 WJP は、1999 年に国内BWRの炉心シュラウドの溶接部に初めて適用され、その後、2001 年には国内PWR の炉内計装筒管台内面にも適用された。 以降、水中遠隔操作施工技術等の高度化を進め、日立GE及び三菱重工の原子力建設、BWRとPWRの予防 保全プラントに幅広く適用されており、多くの国内及び 米国原子力プラントへの適用実績がある(図1、2参照)。 本技術は、原子力発電所保全技術の保全遺産としての 価値が大いにある。 レーザピーニングについて レーザピーニング(LP)の原理 LP はレーザ光を用いて金属表層に圧縮残留応力を付与する技術である。パルス時間幅数ns、出力数GW/cm2 のレーザ光を金属材料に照射すると高圧のプラズマが発 生する。このプロセスを水中で行うことで、水の慣性に よってプラズマの膨張が妨げられ、材料中に衝撃波が伝 播する。その際、材料に塑性変形が生じて、表層に圧縮 残留応力を形成する技術である。 LP の特徴 LP もWJP と同様に水中で行うため、炉水を抜くことなく施工が可能であり、工期短縮や作業員の被ばく低減 に効果的である。また、レーザ光を用いるため、照射位置や出力などの時間的かつ空間的な制御が可能である。 従って、施工対象範囲を正確に照射することができ、範 囲外の構造物へ影響を与えることがない、という利点を 持つ。 LP の高度化、適用実績 1999 年の初適用以来、国内軽水炉プラントの保全工事に適用されてきた。適用初期はオペレーティングフロア (オペフロ)にレーザ発振器を設置し、光ファイバーに よって施工対象までレーザ光を伝送する方式で国内原子 力プラント向けに適用された。その後、小型発振器を本 体に組み込むことでオペフロへの装置設置が不要なポータブル方式(図3)が開発され、米国原子力プラント向 けに適用されている。さらに原子炉内以外では疲労強度改善を目的としてタービン翼にも適用実績がある。上記実績から本技術は、保全遺産としての価値が大いにある。 3.まとめ WJP とLP に関しては、日立GE[1]、三菱重工[2]及び東芝ESS[3]の論文発表として、十分な発表実績があり、また、各著名な学術学会での表彰としても、十分な受賞実績がある。 図1 BWR シュラウドサポート用WJP 装置所有機関:日立GE ニュークリア・エナジー㈱ 図2 PWR 炉内計装筒管台用WJP 装置所有機関:三菱重工業㈱ 図3 BWR 炉底部用ポータブル LP 装置所有機関:東芝エネルギーシステムズ㈱ 参考文献 日立GE製WJP、日本機械学会「M&M2009 材料力学カンファレンス・2009 年7 月24 日~26 日」 三菱重工製WJP、ASME「Proceedings of the ASME Pressure Vessels & Piping Division Conference PVP2012 」. 東芝ESS製LP、日本機械学会「ポータブルレー ザピーニングシステムの開発及び実用化」
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