検査制度の信頼性とステークホルダーの関与

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カテゴリ: 第17回
検査制度の信頼性とステークホルダーの関与 Trust of nuclear oversight process and stakeholder involvement 東京大学/マトリクスK 近藤寛子Hiroko KONDOMember Abstract The key successful factor of ROP in terms of trust was stakeholder engagement.The examples of stakeholder engagement for the ROP in the U.S and Japan are discussed. Keywords: ROP, NOP, stakeholder 1.信頼性の代表事例「米国ROP」 米国のROP(アールオーピー)は2000 年に開始された制度で、今年で21 年目を迎えた息の長い制度である。長期運用が続く理由の一つに、制度に対する関係者 の関与と制度に対する信頼を挙げることができる。 日本の新検査制度は、ROPを参照し、制度設計され 運用されているが、開始間もない同制度が今後効果的に 運用されるための要素として本稿では、制度に対する関 係者の関与について論じる。 2.パブリックミーティングを活用したROP 開発開始 ROPの特徴は、規制当局、産業界に加え、第三者、 パブリック等が関わりながら開発・運用されていること にある。制度に対する問題意識や狙いも、専門性も立ち 位置も異なる多様ステークホルダーを効果的に関与させ るために、NRCが活用したのがコミュニケーションで ある。その代表的な施策が「パブリックミーティング」 である。「パブリックミーティング」には、規制委員によるファシリテートのもと、NRCからの各部門職員を はじめ、業界団体、事業者、自治体、第三者などが参画 し、検討が行われた。 連絡先:近藤寛子、〒105-0003 東京都港区西新橋1-2-9- 14F 合同会社マトリクスK/東京大学 E-mail: hiroko.kondo@n.t.u-tokyo.ac.jp 例えば、ROP開発時に委員長を務めていたジャクソン元委員長は、自らのミッションを「チェンジマネジメ ントのリーダ」ととらえ、ステークホルダーを巻き込み、耳を傾け、コミュニケーションを積極的に展開し た。パブリックミーティングを、変化から成果を生み出 すメカニズムとして活用したことにより、NEIが提示 した、ROPの原型となる ”Regulatory Oversight Model “の採用や、PIの整備などがスピーディに進められ た。もう一つの特徴は、ステークホルダーの関与を通じ たROPの開発経緯が記録に残されている点である。検 査ガイドIMC0308 には、「NEI が提示したオーバーサイトプロセスの改善案は、IRAP(注記. NRC 内の業務改革チーム)の提案と根本的かつ理念的に異なる。それは、 放射性核種放出へのバリアを維持し、事象を最小化し、 システムが意図した機能を発揮できるような、事業者の パフォーマンスと紐づくアプローチだった。」と、産業界の具体的な関与が明示されており、これは、NRCの 理念の一つ「明確さ」を体現したものと言える。 3.日本の新検査制度の検討過程 日本における新検査制度の検討は2016年頃から進 められた。NRA が開始した新検査制度の検討はいくつかのユニークさがある。例えば、制度検討の初期から米 国NRC へ半年間にわたる職員派遣を数回にわたり行うなど、制度の参照先となるROPについて理念から実際 の運用状況まで徹底した理解に努めており、制度開発・運用体制に対する組織的コミットメントを垣間見ること ができる。 もう一つの例が、ステークホルダーの関与である。N RAは、産業界、専門家を招聘した検討会合や作業部会 を多頻度開催し、制度検討を進めている。ステークホル ダーの関与機会は、「中央」(規制機関が立地する東京の 意)でNRAが主催する会合にとどまらない。学協会主 催のシンポジウム等の公開会合に積極的に出向き、検査 制度の状況説明やステークホルダーとの意見交換に取り 組んでいる。 図1 NRA(規制庁)による新検査制度に関する外部での対話 (2018 年) 3.同時期にリリースされた産業界の RIDM 戦略 NRA が検査制度改革を進める同時期に、産業界で は、RIDM(Risk informed decision making)戦略が2018 年に策定され、2020 年には改訂版がリリースされるなど自主的安全性向上への取り組が続けられている。検査制度の両輪と呼ばれる事業者側のRIDM の課題と成果について、今後もわかりやすい情報発信が期待される。 4.まとめ 日本において、検査制度は本運用開始から1 年たらずであり、効果的な運用のためには、事業者を始めとする ステークホルダーが関わり、運用状況をチェックし、問 題提起や改善提言していくことが期待される。 参考文献 [1] 一般社団法人日本原子力学会 原子力安全部会新検査制度の効果的な実施に関する検討ワーキンググ ループ「原子力規制委員会第19 回会合検査制度の見直しに関する検討チーム提出資料」2020
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