東海再処理施設 動力分電盤内制御用電源回路の分離による 給電系の安全性向上

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カテゴリ: 第17回
東海再処理施設 動力分電盤内制御用電源回路の分離による給電系の安全性向上 Improving the safety of the power supply system by separating the power supply circuit for control in the power distribution board in Tokai reprocessing plant 日本原子力研究開発機構 後藤翔 GOTOSHO Member 日本原子力研究開発機構 青木賢二 AOKIKENJI Non-Member 日本原子力研究開発機構 森本憲次 MORIMOTOKENJI Non-Member 日本原子力研究開発機構 坪井雅俊 TSUBOIMASATOSHI Non-Member 日本原子力研究開発機構 礒﨑尚彦 ISOZAKINAOHIKO Non-Member 日本原子力研究開発機構 古川竜一 FURUKAWARYUICHI Non-Member 日本原子力研究開発機構 北川修 KITAGAWAOSAMU Non-Member 検査開発株式会社 深谷康弘 FUKAYAYASUHIRO Non-Member In order to confine radioactive materials inside the building, buildings, hot-cells and vessels are maintained at a lower air pressure than the atmospheric environment in Tokai Reprocessing Plant. For this purpose, air exhausters are continuously operated. However, during the periodic maintenance of the electric substation in September 2011, the incident in which the vessel ventilation including the spare machine of the highly radioactive liquid waste storage tank have not been started. In this paper, the cause of this incident and the detail of its countermeasures are discussed. Keywords: Tokai reprocessing plant,Power distribution board,Power supply circuit for control 1. 緒言 東海再処理施設では、建家内に放射性物質を閉じ込めるため、排風機の連続運転により、建家、セル、槽類等を負圧状態に維持している。2011 年 9 月に実施していた特別高圧変電所の定期点検において分離精製工場内の高放射性廃液貯槽の槽類換気系排風機が予備機も含めて停止した事象が発生したことから、原因と再発防止対策の内容について報告する。 2. 東海再処理施設の電気設備について 東海再処理施設の給電系統 図 1 に東海再処理施設の給電系統の概要図を示す。東海再処理施設が設置されている核燃料サイクル工学研究所への電力会社からの送電は、2 系統の送電線により 154 kV で特別高圧変電所で受電している。 東海再処理施設内の各変電所及び開閉所では、特別高圧変電所で 6.6 kV に降圧された電気を 2 系統の送電線で受電している。各変電所及び開閉所では、さらに 400 V に降圧し、2 系統で各施設内の動力分電盤に給電している。また、一部の変電所及び開閉所には、外部からの送電が停止した場合に備えて非常用発電機を設置している。各施設内の動力分電盤では建家換気系排風機、セル換気系排風機、槽類換 連絡先:後藤 翔 319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33、核燃料サイクル工学研究所 再処理廃止措置技術開発センター 施設管理部 施設管理課 電話: 029-282-1111、e-mail:goto.sho @jaea.go.jp 気系排風機のほか、ポンプ、加熱器等の負荷設備に給電している。このうち、排風機やポンプ等の機器については、万一の機器故障等に備え、予備機が設置され、1 号系及び 2 号系の給電系統に振り分けている。 図 1.東海再処理施設の給電系統概要図 再処理施設の給電設備の構造 排風機などの負荷設備へ給電する動力分電盤は、主にモーターコントロールセンタ型であり、受電部と配電部で構成されている。図 2 に、東海再処理施設に設置されているモーターコントロールセンタ型 の動力分電盤の例を示す。 機器を保護するサーマルリレー等の電気部品から構成されている。また、図 4 に示すようにユニットは抜き差しが容易に行え、保守性を考慮している。 配電部 ユニット挿入前 図 2.モーターコントロールセンタ型動力分電盤の例 受電部では 1 号系及び 2 号系の 2 系統を独立して受電し、1 号系及び 2 号系の配電部に給電している。 配線用遮断器 電磁接触器 ヒューズ 漏電リレー 配電部 ユニット挿入後 万一、1 系統の給電が停止した場合においても母線連絡用遮断器が自動投入され、負荷を制限したうえで 1 号系及び 2 号系の配電部に給電するシステムと 補助継電器 サーマルリレー なっている。 図 3 に動力分電盤の単線結線概要図を示す。 動力分電盤 図 4.配電部ユニット挿入前後 動力分電盤と制御用電源回路の関係 動力分電盤内の制御用電源回路は、配線用遮断器、電磁接触器、変圧器、ヒューズ等の電気部品で構成されている。また、各負荷設備を起動・停止させるため、機器制御回路内の電磁接触器の作動に必要な電源(100 V)を供給するものであり、1 号系及び 2 号系に共通となっていた。 図 5 に、動力分電盤と制御用電源回路の関係概要図を示す。 図 3.動力分電盤の単線結線概要図 配電部には、負荷設備毎に機器制御回路を組み込んだユニットが差し込まれている。機器制御回路は、起動・停止信号により開閉する電磁接触器、負荷設備の短絡発生時に当該回路を遮断して他の機器を保護するための配線用遮断器、負荷の過電流を検知し 変電所から400V供給 図 5.動力分電盤と制御用電源回路の関係概要図 3. 制御用電源回路の分離を実施した経緯 槽類換気系排風機の停止事象 特別高圧変電所の定期点検のため、東海再処理施設において受電系統の切替えを実施したところ、切替え後に自動起動するはずであった分離精製工場の槽類換気系排風機が起動せず、起動しなかった場合に自動起動するはずの予備機も起動しない事象が発生した。直ちに受電系統の点検を実施したところ、換気用動力分電盤に設置されている槽類換気系排風機へ電源を供給しているプロセス用動力分電盤内の制御用電源を供給するためのタイマーの故障を確認した。応急処置として故障したタイマーをバイパスし、槽類換気系排風機を起動して閉じ込め機能が復旧した。 槽類換気系排風機が停止した原因 槽類換気系排風機の運転機及び予備機が自動起動しなかった原因は図 6 に示すように、分離精製工場では、換気用動力分電盤に設置されたタイマーにより、換気用動力分電盤以外の動力分電盤に制御用電源を供給する制御をしており、プロセス用動力分電盤に係るタイマーが故障したことから、プロセス用動力分電盤に制御用電源が供給されず、一旦停止した排風機(運転機)の系統の電磁接触器が「閉」状態とならなかったことから運転機が自動起動しなかった。さらに、制御用電源回路が 1 号系及び 2 号系で共通であったことから、運転機と異なる系統へも制御用電源が供給されず、電磁接触器が「開」状態となったままであったことから、予備機も自動起動しなかった。 4. 動力分電盤内の制御用電源回路の分離 対策 槽類換気系排風機の停止事象を受け、再発防止のために調査を行ったところ、1 号系及び 2 号系の建家換気系排風機、セル換気系排風機等の負荷設備への給電に共通した制御用電源回路を使用していた。当該制御用電源回路を構成する部品に不具合が発生した場合、建家換気系排風機、セル換気系排風機等の負荷設備が停止し、施設の安全機能に影響を及ぼすおそれがあることが分かった。 廃止措置段階に移行した東海再処理施設において、各施設の管理区域を解除するまでは放射性物質の閉じ込め機能を維持するために、建家換気系排風機、セル換気系排風機等は連続運転を行う必要がある。放射性物質の閉じ込め機能の維持ができなくなるリスクを低減するために、制御用電源回路を構成する部品に不具合が発生した場合も建家換気系排風機、セル換気系排風機等の負荷設備が停止しないように 1 号系及び 2 号系に共通となっていた制御用電源回路の分離作業を図 7 に示すように実施した。 変電所から400V供給 プロセス用動力分電盤 変圧器 400V/100V 制御用電源回路 (開)④排風機等が動くには電磁接触器が「閉」になることが必 ×要だが、「閉」にならなかった ★1 凡例 1号系 機器制御回路 2号系 ★1 M M M M 排風機 図 6. 槽類換気系排風機等が停止した仕組み 図 7.制御用電源回路分離後の概要図 設計条件 制御用電源回路は以下の条件で設計した。 ① コストを考慮し、ユニット毎に制御用電源の変圧器を設置する方法ではなく、系統毎に独立した制御用電源回路ユニットを設置する ② 工事中も建家換気系排風機、セル換気系排風機、槽類換気系排風機等の運転が継続出来、現場での工事を短期間で実施可能とするため、予め制御用電源回路の電気部品を組み込んだユニットを動 力分電盤配電部ユニットに差し替える。 ③ 使用する配線用遮断器、変圧器、電磁接触器、ヒューズ、電線等は、特注品ではなく、保守性を考慮し、調達が容易な一般市販品を選定する。 ④ 火災防護の観点から使用する電線は難燃性のものとする。 ユニットの製作・工事の方法 図 8 に示す工事フローに従い、制御用電源回路を組み込んだユニットを製作し、既設動力分電盤 に設置した。また※印の点に留意し、工事を実施 した。 表 1.工事の実施状況 :実施済み施設 対象施設 実施予定年度 ・トラブル事象を受けて改善 ・高放射性廃液を保有する3施設 分離精製工場・高放射性廃液貯蔵場・ガラ ス固化技術開発施設(3施設) 2013年度 ・工事を実施する予定の施設 分析所・廃棄物処理場・第三低放射性廃 液蒸発処理施設・放出廃液油分除去施設・廃溶媒処理技術開発施設・高放射性 固体廃棄物貯蔵庫(6施設) 2019年度 第二スラッジ貯蔵場・ウラン脱硝施設(2施 設) 2021年度 廃溶媒貯蔵場・焼却施設・アスファルト固化処理施設・アスファルト固化体貯蔵施 設・第二アスファルト固化体貯蔵施設・第二低放射性廃液蒸発処理施設・第二高放射性固体廃棄物貯蔵施設・クリプトン回収 技術開発施設(8施設) 2022年度以降 ・電線 工場現地 ・電線 ・変圧器 ・電磁接触器 ・ヒューズ 資材入手 機器入手 加工・組立 仕 搬入 ※作業手順、送排風機の切替手順について社内専門家によるチェック 【既設動力分電盤】 配線加工 6. 結言 建家換気系排風機、セル換気系排風機、槽類換気系排風機等に電源を供給する動力分電盤において、1 号系及び 2 号系で共通となっていた制御用電源回路を系統毎に分離し、独立した回路にした。 これにより、制御用電源回路を構成する電気部品に万一故障が発生した場合でも、部品交換が安全かつ容易に行えるようになった。さらに、予備機を含めた建家換気系排風機、セル換気系排風機、槽類換 凡例 仕:仕様確認 :据付・外観検査 作:作動試験 ※:工事を実施するに (停電) (停電) もう一方の系統 ※槽類換気系排風機等が片系 運転(予備機がない状態)とな 据付 るため短時間で終了させる 据 作 ※槽類換気系排風機等が片系運 転(予備機がない状態)となるため短時間で終了させる 気系排風機等が停止することがなくなり、放射性物質を建家内に閉じ込める機能が喪失するリスクが低減させることができ、再処理施設の安全性を向上させることができた。 今後も電気設備の高経年化を踏まえた改善を継続することにより、東海再処理施設の安全性の維持向上に努めていきたい。 当たっての留意事項 図 8.動力分電盤制御用電源回路の工事フロー 5. 工事の実施状況 動力分電盤の制御用電源回路の分離工事は、19 施設(21 箇所の動力分電盤)のうち 11 施設(12 箇所 の動力分電盤)で実施した。残り 8 施設(9 箇所の 動力分電盤)は 2022 年度以降に実施する予定である。表 1 に工事の実施状況について示す。
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