新検査制度への取り組み状況(実例と課題)

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カテゴリ: 第17回
新検査制度への取り組み状況(実例と課題) Efforts and issues of Kansai Electric Power for new regulatory inspection system for nuclear power plant 関西電力株式会社 桝本 晋嗣 Shinji MASUMOTO Member The new regulatory inspection has been fully operational since April 2020, and several inspection findings have been published so far. In this paper, the views of the utility on these cases have been introduced, as well as the status of our efforts and issues related to the new inspection system, which is a beneficial and effective system for improving the safety of nuclear power plants. Keywords: Risk-informed and Performance-based regulatory inspection, CAP, Reactor Oversight Process, ROP 1.はじめに 原子力規制検査(新検査制度)は2020 年4 月に本格 運用が開始され、これまでの1 年間(2020 年度)の運用で特定された検査指摘事項は原子力規制庁サイトで公表 されている。 本稿では、当社の美浜発電所、高浜発電所、大飯発電 所が受けた検査指摘事項に対する事業者の受止めおよび 課題および改善点、また、検査指摘事項以外の原子力規 制検査に関する課題について述べる。 2.検査指摘事項の実例について 各発電所は原子力規制庁の現地検査官を主とした「日 常検査」および本庁検査官を主とした「チーム検査」を 受けており、2020 年度に美浜発電所は2 件、高浜発電所は4 件、大飯発電所は1 件の検査指摘事項(重要度/深刻度はいずれも緑/SLⅣ)を受けている[1]~[5]。(第4 四半期分の見込み含む)(表1 参照) 美浜発電所に対する検査指摘事項 日常検査(検査ガイド「作業管理」)の指摘事項として「美浜発電所3号機 不適切な保全による海水ポンプ自動停止」(第1 四半期)、チーム検査(検査ガイド「品質マネジメントシステムの運用」)の指摘事項として「美浜発電所3号機 管理区域入域時間の不適切な管理の多発」(第4 四半期)の合計2 件の指摘事項を受けた。 連絡先:桝本 晋嗣 〒919-1141 福井県三方郡美浜町郷市13 号横田8 番関西電力株式会社 原子力事業本部 発電グループE-mail: masumoto.shinji@a3.kepco.co.jp 高浜発電所に対する検査指摘事項 日常検査(検査ガイド「作業管理」)の指摘事項として「高浜発電所3号機 2次側配管の異物管理対策不備による蒸気発生器伝熱管の損傷事象」(第2 四半期)、 「高浜発電所4号機 保守管理不備により発生したスケールによる蒸気発生器伝熱管の損傷事象」(第4 四半期)、日常検査(検査ガイド「火災防護」)の指摘事項と して「高浜発電所3,4号機 不適切なケーブル敷設による火災影響軽減対策の不備」(第4 四半期)、チーム検査(検査ガイド「空気中放射性物質の管理と低減」)の指摘事項として「高浜発電所 A 廃棄物庫における不適切な放射性廃棄物の収容による管理区域境界の線量率 (目安値)超過」(第4 四半期)の合計4 件の指摘事項を受けた。 大飯発電所に対する検査指摘事項 日常検査(検査ガイド「火災防護」)の指摘事項として「大飯発電所3,4号機 不適切なケーブル敷設による火災影響軽減対策の不備」(第4 四半期)の1 件の指摘事項を受けた。 3.検査指摘事項に対する受止めおよび課題 3.1「美浜3号機 不適切な保全による海水ポンプ自動停止」 本事象は保安規定75 条(非常用 DG2基要求)に対するLCO 逸脱判断に端を発した指摘事項である。海水ポン プ等は動的機器であり、安全設計要求から、単一故障(偶発故障等)を想定してh機器を設置しており、今回の事象発生後の待機側の海水ポンプへの切り替え操作としては、 保安規定で規定している手順通りの速やかな対応を実施 しており、LCO 逸脱事象に対する事業者のパフォーマンスとしては問題なく対応したものと考えている。 しかしながら、検査の結果としては前述の通りであり、本件は原子力規制検査の本格運用の初期段階に発生した事象であったことも要因の一つと考えられるがコミュニケーションを始めとした2つの課題があると考えている。 (課題1:事実確認に係るコミュニケーション) 現場での検査官との議論では、事象発生時の系統状況として、使用済燃料ピット(SFP)冷却系は能動的に停止させていた系統状態でありリスクは十分低く維持されていることや流量計の電極への異物付着の発生確率の低さ等の説明を幾度も行ったが、検査報告書に反映されるまで議論をし尽くすことが出来なかった。事業者から説明を行った事項の例を次に示す。(例:①事象発生時には使用済燃料ピット内ではラックの取替作業を実施していたことから、作業安全の観点からピット水の変動を抑制すべく、使用済燃料ピット冷却ポンプを能動的に隔離し停止状態にさせており、実質的に SFP 冷却系が必要ない系統状態であったこと。②SFP 冷却系を能動的に隔離する前(および毎定検の燃料取り出し前)には、全ての海水ポンプおよび非常用ディーゼル発電機の機能喪失を仮定した SFP 冷却全停状態での SFP 温度上昇を評価しており、保安規定制限値(65℃)までの到達時間は10 日以上の余裕があったこと(今回はプラントが約10 年間の長期停止状態であった)。③潤滑水流量計の工場調査[6][7]の結果、 流量計配管内部の対角に位置する2か所の電極に同時に絶縁物等が付着して初めて流量低下が発生すること(1 か所のみ付着するだけでは流量指示値の低下が小さく海水ポンプトリップに至らない)。④潤滑水流量計(更新後の使用期間の10 年)の運転経験上、指示値の低下事象に よるポンプトリップは経験しておらず、発生確率が極めて低いこと。等々) この現場での議論の経験を踏まえ、課題1に対する改 善案としては、第1回検査制度に関する意見交換会合に おいて「締めくくり会議の意見聴取の場で聴取が不足し ないよう,必要に応じて事業者意見の提出も可能な運用 とするなど,十分なコミュニケーションが図れるよう」に 要望し、2020 年度中に制度として改善・反映いただいた。 (課題2:SFP 冷却系停止時に関する評価) 特に長期停止プラントの SFP 冷却系の停止事象に関するリスクについて、我々事業者の全ての活動状況を把握 されたうえで、安全裕度(マージン)が低下しているかの 観点で、検査の重要度を判断されるためには、特に課題1 の②SFP 冷却全停時の水温評価は検査官がフリーアクセスで容易に確認できるような状態での管理が望ましい。 今回の事象においては、検査報告書に記載のとおり「使 用済燃料ピットの水温の変化はなかった」ことから、今後、 軽微事例の判断基準の一つの例として、安全裕度(マージン)の低下量を参考にした軽微/緑の判断基準を「気付き事項のスクリーニングガイド」に反映されることで、より合理的な検査運用になると考えている。 具体的には、事業者が SFP 温度上昇を予め計算して把握していることを前提とし、制限温度までの到達時間余 裕の10%未満でSFP 冷却が復旧できた場合は軽微とし、10%以上の時間を要した場合は緑として判断するのが合理的と考える。(設計余裕からのマージンの減少割合の基 準を10%とする。) なお、10%の数値の根拠については、米国の10CFR50.59 (変更、検査及び試験)[8]を活用できると考えている。 50.59 にはNRC の事前承認なしで施設等の軽微な変更が行うことができる条件として、改造工事における事前認可の要否基準((i)保安規定の変更に該当せず、(ii)FSAR で既に評価した事故の発生確率・影響が有意に増加しない場合には事前認可は不要)が規定されている。また、関連文書のNEI96-07[9]に「有意とは事故の発生確率が10%を超えないこと」とあることから、今回の SFP 冷却系の軽微の判断基準としては、発生確率の上昇は制限温度までの到達時間の減少と比例するものであると考え、10%を超えないものは事業者の活動に完全に一任して軽微とし、10%以上は有意な影響ありとして、検査報告書に記載される範囲(緑)として設定することが有用と考えられる。3.2「美浜3号機 管理区域入域時間の不適切な管 理の多発」 当社ルールに定める線量計着用を確認するゲート(以 下「ADD ゲート」という。)を通過せずに3号機の管理区域に入域した事象である。担当課から CR 起票しておらず、協力会社から起票された CR の改善提案に対しては採用が困難であることから別の対策を検討し処置を実施 していた。CAP 会議では再発を防止するための是正処置について審議していなかった案件である。 協力会社から起票された CR「ADD ゲート未通過によるエラー処理多発」では、設備の改善提案が報告されてい たが、当面の是正処置としては、入域ルートの見直しを行 い、協力会社へ周知することを対策として実施し完了さ せた。対策後はエラー数が減少し、一定の効果が得られた ものの対策後の2020年8月以降2021年1月まで にも複数件再発していたことから、減少はしているものの、根本的な再発防止とはなっておらず是正対策としては不十分であることを検査官から指摘されたものである。 入域未処理エラー発報時は、都度、放射線管理専任者が当該の入域者に状況を聞き取って入退出情報を登録処理していた。ADD は、入域未処理の有無に拘わらず、携行 した時点で立入制限時間が設定されており、立入時間が制限に近づいた場合には警報を発出する。このため、誤って立入制限時間を超えるおそれはなく、これまでに制限時間を超えて管理区域内に滞在していた事実は確認されていない。また、従業員はADD を着用しており、過度の被ばく及びその可能性もなかったことから、見直した入域ルートの周知のみの対策にとどまっていたものである。 (課題:CR の積極的な起票) 検査官の指摘を踏まえ、速やかに更なる設備改善(ADD ゲートを通過しないと管理区域に入域できないよう是正) に着手し既に実施済であるが、事業者として、担当課がCR を起票し、CAP 会議・スクリーニング会議において是 正処置を審議し、組織としての対策を講じていれば、更なる改善の早期実現に繋がった可能性はあると考えている。 ADD ゲートはADD の不携帯防止を目的に設置されたものであり、ADD ゲート未処理エラー発報時において結果的には被ばく上の問題が生じていない事象である が、更なる改善の早期実現を達成するために、都度CR を起票することを推進していくことも必要と考えてい る。CR を元にCAP 会議等で対策を審議することによ り、最適な対策の検討および適切な資源の投入について 組織的に対策を検討することが可能になると考えられる ため、都度のCR の起票を推進していく。 「高浜3号機 2次側配管の異物対策不備によるSG 伝熱管の損傷事象」及び「高浜4号機保守管理不備により発生したスケールによるSG 伝熱管の損傷事象」 技術基準規則に基づき事業者が自ら定めた保全指針に 従って、高浜3、4号機は毎定検、蒸気発生器の伝熱管全 数(SG1基あたり約3000 本以上)について非破壊検査を実施しており、その結果、技術基準規則における有意な指 示(発電用原子力設備規格 維持規格による減肉率2 0%以上)を検出したことから、法令報告対象となったも のである。 これらの事象を踏まえ、2次側の異物対策不備および 稠密性状スケールによる伝熱管損傷の発生防止として、 異物対策の徹底ならびに継続的なスケール性状監視およ び(必要に応じて)薬品洗浄によるスケールの脆弱化を図 ることとした。 一方で、事象発生後の対策としては有意な指示を検出した伝熱管の両端を施栓することで供用外とする対策を講じることが、合理的な解決策であることは論を待たない。原子力規制検査におけるSDP 判定としては、減肉した伝熱管が通常運転時の内外差圧の 3 倍(3ΔPNO)を維持できるかどうかにより判定がされるが、これは基本的には減肉率により一意に評価が可能であることから、今回のように3ΔPNO を維持できる減肉率であれば、即座に重要度は「緑」と判定可能であるため、今後、伝熱管に有意な指示(緑の範囲に収まる減肉率、PWSCC を含む)が発生した場合は、原因によらず是正処置である伝熱管の施栓に対する手続き(「設計および工事計画」届出)を速やかに実施できるような運用となることを期待している。 (課題1:リスクインフォームド/パフォーマンスベー ス(RI/PB)の検査対応) 米国においては、蒸気発生器の伝熱管の有意な指示(緑レベル)が発生した場合、事業者が事象発生報告書(LER) に原因や減肉率等を記載してNRC に提出し、それをNRC が検証している。いくつかのLER および検査報告書を確認したが、LER の内容を報告書に逐一転記するというような重複した評価結果を載せるようなことは行っておらず、合理的な対応で完了している模様。ただし白レベルの事象が発生した場合は、相当に NRC も関与された評価 (検査)がされており、RI/PB として理想的な検査の形になっているため、原子力規制検査においても合理化の余 地は大きいと考えられる。 (課題2:新知見の場合の取扱い) 本事象のうち稠密性状スケールによる摩耗減肉は、こ れまで国内外で先行事例が確認されておらず、新知見に 相当するものであるが、検査報告書(案)では「スケー ルが伝熱管外面に摩耗減肉をもたらすことは合理的に予 測可能であったことから、パフォーマンス劣化に該当す る。」と評価されている。しかし、本事象の原因調査によってはじめて、稠密性状を有するスケールは伝熱管に 損傷を与えうるということが明らかになったものであり、過去の保守管理で得た知見から今回の事象を予測す ることが「合理的に」可能だったかは、見解が分かれる 部分と認識している。 同報告書(案)でパフォーマンス劣化を「関西電力は、平成8年の高浜発電所3号機のSG伝熱管の抜管調 査において、伝熱管の上部ではポーラスで厚いスケール が、伝熱管の下部では稠密で薄いスケールの存在を確認 していたにもかかわらず、SG伝熱管の下部で発生した 令和元年度の法令報告事象(高浜発電所3、4号機SG 伝熱管外面の異物による摩耗減肉)の調査の際に、伝熱 管の上部から採取したポーラスで厚いスケールを用いて 伝熱管の摩耗試験を行った結果、稠密なスケールによる 伝熱管外面の摩耗減肉の可能性を見逃した。」と説明しているように、平成8年に得た知見をもとに予めスケー ルによる摩耗減肉の可能性を導き出せていれば本事象を 回避できたことは否定できないが、一方で、スケールは マグネタイト(酸化鉄)粒子の集まりであり構造上脆い というのが当時からの一般的な知見であり、稠密/ポー ラスの性状の違いがそもそも脆い構造体であるスケール の耐摩耗性(伝熱管の摩耗減肉のしやすさ)に大きく寄 与するという知見は国内外において認められていなかっ たと認識している。 そのため、本件のように、新しく得られた知見が過去 に遡っても「合理的に」予測できたものと取り扱われる と、既往知見の範囲で十分な保守管理を行っていたとし ても、結果として知見が不十分なために生じた設備トラ ブルは、原因の如何によらずパフォーマンス劣化と判断 されるため、今後の規制検査では、これまでの取組みが 当時の科学的知見に照らし合わせても問題なかったかと いう「合理的な」視点が持たれることを期待する。 (課題3:速やかな関係法令手続き) 蒸気発生器伝熱管に損傷が生じた場合、事業者は損傷 の原因調査および対策検討(施栓の他、今回であれば異 物管理の充実やスケール性状監視等)を行い、その結果 を原子力規制委員会へ報告する。その後、規制委員会に て了承が得られ次第、対策を実施するという流れとなる が、前述の通り原因によらず実施する施栓においても、 規制委員会の了承が得られない限り、工事の着手が認め られないため、プラントの起動工程も施栓工事に係る期 間分遅延することとなる。 そのため、今後は、必ず実施する施栓工事に係る法令 手続きは先行して進めることができようにする等、合理 的な運用がなされることを期待する。 「高浜発電所 A 廃棄物庫における不適切な放射性廃棄物の収容による管理区域境界の線量率 (目安値)超過」 検査官により確認された事象であり、本件の原因は、表 面線量率が最大1.4mSv/h の200L ドラム缶をA 廃棄物庫内の内壁の近傍に配置した際、必要な遮蔽等を講じてい なかったことである。必要な遮蔽等は工認(参考資料)で表面線量率0.3mSv/h 以上のものを収容するとき等は、必 要に応じて、遮蔽等の適切な措置を講じて、管理区域の外側で放射線量率が6.25μSv/h(当時の管理区域設定目安であり、現在では 2.6μSv/h が目安)以下になるようにする と記載していたが、適切な措置が講じられていなかった。廃棄物庫のドラム缶の収容、庫内移動および点検管理は協力会社に委託しており、2017 年以前は内壁の近傍に高線量ドラム缶を収容した場合の措置について共通認識を持っていたものの、2018 年以降は過去の当該線量実績が1μSv/h 未満であったこと等から認識が希薄になっており、ドラム缶を配置した後に境界線量の確認を実施していなかった。また、週1回の点検においては、当社の要求する全周測定ではなく、各壁面に対し各1点の計4点のみの測定で、境界の線量率を網羅できると誤って認識してしまっていた。そのため、正確な線量率を認識することができず、管理区域設定の目安基準の超過に気付けなかった。今回の検査官からの指摘がなければ、状況は継続していた可能性がある。 なお、本事象に伴う A 廃棄物庫外側での作業者の被ばく状況について評価した結果、いずれも0.1mSv 未満であった。また、発電所敷地境界における線量率は当社が直接 測定しており、当該2か月間においても有意な変動はな く影響はなかった。今回の検査指摘により、協力会社に委 託している業務について、再発を防止するための作業手 順の明確化等の対策が必要と認識した。 (課題1:区域管理の不備に関する評価) 本事象については、工認に記載された放射性廃棄物の 収容条件が確認されていなかったこと等から検査指摘事 項に該当すると判断されており、当社としても再発防止 に向けて取り組んでいくが、一方で、「検査気付き事項の スクリーニングに関するガイド(GI0008_r0)」の軽微事例集では、一般的な取扱いの考え方として、区域管理又は被 ばく管理に不備や要件への不適合があったが、「深刻な計 画外又は意図しない個人被ばくが見込まれる状況にない 場合には軽微とすることができる」と記載されており、ガ イドにおいてスクリーニングの考え方や根拠がより明確 に示されることが望ましい。(なお、米国マイナー事例集(IMC0612 App.E)においては、計画外被ばく線量が10 ミリレム(0.1mSv)を超える可能性がない場合はマイナーとされている。) (課題2:基本となる事業者活動の徹底) 定常的な日常管理で変化に乏しい事項に対しては、注 意すべき事項に対しての意識が希薄になりがちであるこ とから、自らの業務の内容や結果を振り返る業務の棚卸 を定期的に実施することが必要かつ課題であると考えて いる。 「高浜3,4号機 不適切なケーブル敷設による火災影響軽減対策の不備」及び「大飯3,4 号機 不適切なケーブル敷設による火災影響軽減対策の不備」 2020 年度第2四半期の原子力規制検査において、他社の発電所に不適切なケーブル敷設による火災影響軽減対策の不備にかかる検査指摘事項が報告され、当社にて水平展開した結果、他社同様に、耐火隔壁を設置したケーブルトレイから露出したケーブルが一部確認されたものである。米国同様のSDP による判定により、ケーブルの定量的な露出量および確認されたケーブルの火災区画は火災の自動感知及び消火設備によって防護された区画であることから、重要度が判定されたものである。なお、これら露出ケーブルに対する耐火措置完了も確認されている。 (課題:多数のケーブルの継続的な維持管理) 発電所には多数の安全系機器に対するケーブルが敷設さ れており、今回の水平展開で必要な耐火処置を実施した が、今後もケーブルの一部露出がないように現場の施工 状態を維持管理していく必要がある。 表 1 検査指摘事項一覧(2020 年度、関西電力分) (重要度/深刻度はいずれも緑/SL Ⅳ)[[1]~[5]より転記] No 件名 概要 1 美浜3号機 長期停止中のプラントにおいて、A 海 不適切な保全によ 水ポンプ潤滑水流量指示低下によりA る海水ポンプ自動 海水ポンプが自動停止した。流量計の 停止 電極部清掃を定期的に行っているが、 設置環境及び使用環境が適切に考慮さ れておらず、使用済燃料ピット等の熱 除去に用いられる海水ポンプが自動停 止した。なお、使用済燃料ピットの水 温変化はなかった。 2 美浜3号機 管理区域に入域する際、誤ってADD ゲ 管理区域入域時間 ートを通過せず入域した事象が2020 年 の不適切な管理の 4 月から2021 年1 月までに多数発生し 多発 ていたが、事業者はCR を起票しておら ず、CAP 会議等で再発を防止するため の是正処置について審議されない等、 組織的な改善が行われない状態が継続 していた。 3 高浜3号機 高浜発電所3号機第24回定期検査に 2次側配管の異物 おいて、3基ある蒸気発生器のうち2 管理対策不備によ 基から、外面からの減肉率が20%を超 る蒸気発生器伝熱 える伝熱管が計2本(B-SG、C-SG 各1 管の損傷事象 本)発見された。 4 高浜4号機 高浜発電所4号機第23回定期検査に 保守管理不備によ おいて、3基ある蒸気発生器のうち2 り発生したスケー 基から、外面からの減肉率が20%を ルによる蒸気発生 超える伝熱管が計4本(A-SG1 本、C- 器伝熱管の損傷事 SG3 本)発見された。 象 5 高浜発電所 A 廃棄物庫外周の管理区域境界の線量 A 廃棄物庫におけ 率測定を実施したところ、目安値であ る不適切な放射性 る2.6μSv/h を超える3.3μSv/h を確認し 廃棄物の収容によ た。工認に規定する適切な遮蔽等の措 る管理区域境界の 置を講じておらず、目安値を約2か月 線量率(目安値) 間超過していた。 超過 6 高浜3、4号機 他サイトの指摘事項と同様な不備がな 不適切なケーブル いか、事業者が高浜3,4号機を対象 敷設による火災影 に水平展開して調査した結果、電線管 響軽減対策の不備 と耐火隔壁が施行されたケーブルトレ イの間で耐火隔壁から露出したケーブ ルがあることを確認した。なお、確認 された露出ケーブルの火災区画は火災 の自動感知及び消火設備によって防護 されている。 7 大飯3、4号機 他サイトの指摘事項と同様な不備がな 不適切なケーブル いか、事業者が大飯3,4号機を対象 敷設による火災影 に水平展開して調査した結果、電線管 響軽減対策の不備 と耐火隔壁が施行されたケーブルトレ イの間で耐火隔壁から露出したケーブ ルがあることを確認した。なお、確認 された露出ケーブルの火災区画は火災 の自動感知及び消火設備によって防護 されている。 4.検査指摘事項以外に関する課題について 検査指摘事項以外の原子力規制検査に関する課題につ いては、事業者にとってもより良い制度になるよう、今後 の規制庁との意見交換会合等で議論を重ねていく。 検査報告書の記載について 四半期報告で継続案件となった検査継続案件の結果 について、翌四半期以降の報告書では、「パフォーマンス 劣化を確認した当該案件については、検査による事実確 認等を実施した結果、検査指摘事項に該当しないと判断 した。」旨のみを記載されている。「パフォーマンス劣化あ り」の状態は事業者としては改善が必要な状態であると 認識していることから、何がパフォーマンス劣化であっ たのかを明示されることにより改善に繋げやすくなると ともに、第三者からも検査の状況が見えることになり信 用を得ることにも繋がることから、報告書の活用の幅が 一層向上するものと考えられる。 品質マネジメントシステムの検査報告書は、根拠に 基づき報告書を作成するとなっているが、一部の記載に おいては「要員に対する理解を阻害している可能性があ る」との記載があり、このような「可能性がある」だけで は根拠(事実)に立脚したものとは言い難く、改善の余地 があると考えられる。また、最終的に「軽微」と判断する ような事項については、現地での検査期間中に重要度に 関する議論を行い、効率的な検査となるような対応が望 ましい。 内部監査に関する記載として、「監査で検出される 「重大な不適合」及び「軽微な不適合」が、過去5年を遡 ってもなく、「改善要望事項」及び「良好事例」が数件あ る程度であり、課題の抽出に寄与するような監査となっ ていなかった。」とあるが、この記載では、他の仕組み (日々のCAP 等)で十分に見つけられているため監査で見つけるような不適合がそもそも存在していないのか、 あるいは監査で検出されるべきだが検出できなかったの かが不明であり、検査としての表現の改善が必要と考え られる。 安全文化や品質目標に関する観察事項を記載されているが、特に安全文化については横断領域的な要素を多く含むことから、原子力規制検査として直接的な指摘は考えにくい。米国 ROP の横断領域の考え方を参考とし、まずは安全上(監視領域)に関する問題を起因とした基本検査で確認がなされるような取り扱い(制度設計)とすることで、より合理的な検査になると考えられる。 原子力規制検査は、米国の制度を参考に導入したも のであり、国際的水準と不合理に乖離しない運用が維持 されているか、検査報告書等を元に第三者による定期的 な検証が必要と考える。 5.まとめ 2020 年4 月より本格運用が開始された原子力規制検査のこれまでの1年間で判明した当社の検査指摘事項の実 例に対して、制度上の課題や事業者として改善すべき事 項(検査官とのコミュニケーションの充実、CAP の低い閾値での入力拡充、基本となる事業者活動の徹底の必要 性等)を紹介した。また、検査指摘事項以外について、 原子力規制検査の報告書に対する課題を紹介した。 今後、更により良い検査制度となるように規制と技術 的な議論を実施していくとともに、当然のことながら、 事業者の安全確保の活動の質を向上させていくことが重 要であると強く認識しており、CAP 活動の充実を軸として改善活動を継続的に実施していく。 参考文献 原子力規制委員会”関西電力株式会社 美浜発電所令和2年度(第1四半期)原子力規制検査報告書”令 和2年8月 原子力規制委員会”関西電力株式会社 高浜発電所令和2年度(第2四半期)原子力規制検査報告書”令 和2年11月 原子力規制委員会”関西電力株式会社 美浜発電所令和2年度(第4四半期)原子力規制検査報告書(原 子力施設安全及び放射線安全に関するもの)(案)”令和3年4月 原子力規制委員会”関西電力株式会社 高浜発電所令和2年度(第4四半期)原子力規制検査報告書(原 子力施設安全及び放射線安全に関するもの)(案)”令和3年4月 原子力規制委員会”関西電力株式会社 大飯発電所令和2年度(第4四半期)原子力規制検査報告書(原 子力施設安全及び放射線安全に関するもの)(案)”令和3年4月 美浜発電所3号機 A海水ポンプの自動停止に伴うディーゼル発電機の運転上の制限の逸脱について、令 和2 年04 月16 日、(実用炉の監視に関するもの、被規制者等との面談概要・資料) 美浜発電所3号機 A海水ポンプ潤滑水流量系工場調査結果について、令和 2 年 09 月 15 日(実用炉の監視に関するもの、被規制者等との面談概要・資料) NRC 10 CFR50.59“Changes, tests and experiments” [9]NEI 96-07,rev.1 ” Guidelines for10 CFR 50.59 Implementation”
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