東海第二発電所 運転期間延長に係わる原子炉圧力容器の検査

公開日:
カテゴリ: 第16回
東海第二発電所 運転期間延長に係わる原子炉圧力容器の検査 Reactor pressure vessel inspection for extension of operation period at Tokai No. 2 power station 日本原子力発電 中間 昌平 Shohei NAKAMA Member 日本原子力発電 竹内 公人 Kimihito TAKEUCHI Member 日本原子力発電 林田 貴一 Kiichi HAYASIDA Member Abstract At Tokai No. 2 Power Station, a special inspection is conducted in line with the application for approval of extension of operating period. In particular, for reactor pressure vessels, ultrasonic flaw inspection is performed on the base metal part of the trunk which has not been inspected during the conventional in-service inspection. For water supply nozzles, we are conducting eddy current flaw detection inspection for low alloy steel, which is the first in Japan. As a result of these inspections, no defects were found in the reactor pressure vessel, and it was confirmed that there was no significant deterioration even in 40 years of operation. Keywords: Reactor pressure vessel, Extension of operation period, Special inspection, UT, ECT, MVT-1 1 はじめに 原子力発電所の運転期間は,原子炉等規制法において, 運転を開始した日から起算して40年とされているが, その満了に際し,延長しようとする期間などを記載した 「運転期間延長認可申請書」に「特別点検結果報告書」, 「劣化状況評価書」,「保守管理に関する方針書」を添付して原子力規制委員会に提出し,原子力規制委員会の認可を受けることで,1回に限り20年を上限として延長が可能とされている。 東海第二発電所では,運転期間延長認可申請に合わせて特別点検を実施している。とくに原子炉圧力容器については,従来の供用期間中検査で検査していない胴部の母材部に対して超音波探傷検査を実施している。また,給水ノズルについては,国内初となる低合金鋼に対する渦流探傷検査を実施している。これらの検査の結果,原子炉圧力容器に欠陥は確認され ,40年間の運転においても有意な劣化がないことを確認した。 〒110-0005 東京都台東区上野五丁目2 番1 号日本原子力発電株式会社 発電管理室 E-mail: shouhei-nakama@japc.co.jp 2 特別点検 対象の機器・構造物,その対象の部位,着目する劣化事象及び点検方法は,「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」[1](以下,「運用ガイド」という。)に定められている。本報告では,母材及び溶接部, 給水ノズルコーナー部,制御棒駆動機構(以下,「CRD」という。)スタブチューブ,CRD ハウジング,中性子束計測ハウジング,差圧検出・ほう酸水注入ノズル及びドレンノズルに対する点検結果を説明する。 母材部及び溶接部 点検の概要 原子炉圧力容器については,建設時に母材と溶接部に対して超音波探傷試験(以下,「UT」という。)を実施し, 割れその他の有害な欠陥がないことを確認している。また,運転開始 は供用期間中検査として溶接部に対するUT を実施しており,割れその他の有害な欠陥は認められていない。 今回の特別点検では,これまでの供用期間中検査では試験対象としていない母材部分まで試験範囲を広げ,割れその他の有害な欠陥の有無を炉心領域全域にわたって確認した(図1)。 点検方法 試験対象は図 1 に すとおり,炉心に装 された集合体の有効長の範囲とし,母材部と周方向溶接継手,長手方向溶接継手,低圧注水管台周辺(溶接部含む),計装管台周辺,ジェットポンプライザーブレースパッド部(ジェットポンプライザーブレースアーム溶接部含む),照射試験 ブラ ットパッド部とした。中性子照射 化に対する健全性評価上厳しい箇所は,炉心領域の胴であり,東海第二の胴内表面での中性子照射量は,2016 年 11 月時点で 3.26X1017 n/cm2(E>1 MeV)程度,運転開始 60年時点で5.35X1017 n/cm2(E>1 MeV)程度と評価している。なお,実際の探傷は,炉心領域を十分カバーできるよう,炉心領域にかかる低圧注水管台や計装管台を含めて実施した。 母材部については自動探傷及び手動探傷(垂直法,フェ ーズドアレイ法0゜,士45゜)を原子炉圧力容器 面から実施した。それぞれの領域は,東海用ベッセルスキャナー の可動範囲に まる長方 のブ ックに分割して行った。それぞれのブ ックに対する探傷範囲は試験装置の走行 を設定することに ,探傷開始 に原子炉水出入口管台にレーザー 計を設定し確認した。 図1 試験範囲(母材部及び溶接部) 原子炉圧力容器内表面のクラッド部については内部の欠陥,アンダークラッドクラッキング(以下,「UCC」という。)に対して有効なフェーズドアレイ法 0゜及び士45゜のUT を実施した。 点検結果 原子炉圧力容器 面からの点検及びジェットポンプライザーブレースアーム溶接部の点検により,原子炉圧力 容器母材部(クラッド含む),原子炉圧力容器溶接継手(胴 の周継手,胴の長手継手)及びジェットポンプライザーブ レースアーム溶接部において,DAC20%を超 る反射波が検出されているが, JEAC4207-2008「軽水型原子力発電用機器の供用期間中検査における超音波探傷試験規程」[2](以下,「JEAC4207-2008」という。)「表-2712-1 UT 指 エコーの分類」に照らして,割れその他の有害な欠陥と判定されるものは無かった。なお,製造時の溶接においてできた融合不良と評価しているものが一部あるが,溶接規格(JSME S N 1-2007)[3]の判定 を満 し, 規格に づく評価を行い割れ等の有害な欠陥でないことを確認した。 て,建設時に実施した 射 試験,UT 及び 去の供用期間中検査のデータとの比較・検証を行い,異常のないことを確認した。 給水ノズルコーナー部 点検の概要 給水ノズルコーナー部は設計上,疲労損傷が発生しないよう,表面は応力集中部が出来ないように適切なR 工を施す配慮がなされている。建設時には給水ノズルコーナー部に対して磁粉探傷試験(以下,「MT」という。) を実施して,表面欠陥がないことを確認している。 供用期間中検査では給水管台に対して UT を実施しているが,表面試験を行っていない。給水ノズルコーナー部は,原子炉圧力容器の低合金鋼部において比較的疲労累積係数の高い 状変化部位となっていることから,給水ノズルコーナー部表面に対して表面試験を実施することとした(図2)。 点検方法 給水ノズルコーナー部に対する渦電流探傷試験(以下, 「ECT」という。)は,JEAG4217-2010 「原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針」[4] ( 以下, 「JEAG4217-2010」という。)を 用して実施した。 給水ノズルコーナー部の全数を試験対象として選定している。給水ノズルコーナー部として, 規格(JSME S NA1-2008)[5]の表 I -2500-4( 目 3.20 カ - D)に記載されている原子炉圧力容器管台内面の の部分を対象に,この範囲の給水ノズルコーナー部内表面を試験対象範囲とした。 国の運用ガイドでは 探傷試験(以下,「PT」という。) 及び MT の適用も認められているが,気中での 射境が厳しいことから水中 境での自動探傷が可能な ECT を適用した。 ECT で探傷及び に 用した装置については, JEAG4217-2010 にて要求されている事 に対し,それぞれ適合していることを予め確認し 用した。ECT で用いたプ ーブには相互誘導 標 比較方式パン ーキコイルを採用した。給水ノズルコーナー部は曲率半径が小さく探傷性を確保することが難しいことから, 状に沿うようコイルを配置した専用プ ーブを適用した。 点検結果 給水ノズル全数6 箇所で フトオフ信号,表面うねり信号, 状信号が検出されているが,い れもJEAG4217-2010 において欠陥信号以 の要因として分類されており,割れに起因した欠陥信号は検出されなかった。 図2 試験範囲(給水ノズルコーナー部) CRDスタブチューブ CRDハウジング中性子束計測ハウジング 差圧検出・ほう酸水注入ノズル ドレンノズル 点検の概要 CRD スタブチューブの原子炉圧力容器 付け溶接部は,インコ ル 182 等により製 されており,応力腐食 割れ(以下,「SCC」という。)に対する 受性があることが られていることから,溶接時に 応力が発生するCRD スタブチューブとCRD ハウジングの溶接部,CRD スタブチューブ,中性子束計測ハウジング及び差圧検出・ほう酸水注入ノズルの原子炉圧力容器 付け溶接部にウォータージェットヒーニング(以下,「WJP」という。)を施工及び計画している。 供用期間中検査は,原子炉圧力容器 面からの漏 い検査(VT-2)により漏 いの有無を確認している。また, 原子炉圧力容器内面側から CRD スタブチューブ,CRD ハウジング,中性子束計測ハウジング及び差圧検出・ほう酸水注入ノズルについて供用期間中検査にて目視試験 (VT-3)を実施している。 しかし,CRD ハウジング内面,中性子束計測ハウジングの内面については定期的な試験計画は無い。また,ドレンノズルについては目視試験として原子炉圧力容器内側近傍の試験実績がある(VT-3)。 今回の点検ではこれまでの試験範囲を拡張して原子炉圧力容器の機器範囲であるノズル第一溶接 までの範囲について,腐食による劣化事象がないことを目視試験により確認した(図3)。 図3 試験範囲(CRDスタブチューブ CRDハウジング中性子束計測ハウジング 差圧検出・ほう酸水注入ノズルドレンノズル給水ノズルコーナー部) 点検方法 CRD ハウジング内面及び中性子束計測ハウジングに対するECT では,JEAG4217-2010 に 拠し, 度の20%以上の指 部に対して サージュ波 を確認することにより欠陥信号成分の有無を確認した。ECT で探傷及び に 用した装置については,JEAG4217-2010 にて要求されている事 に対し,それぞれ適合していることを予め確認し 用している。 CRD ハウジングと CRD スタブチューブとの溶接部, CRD スタブチューブの原子炉圧力容器 付け溶接部に対する MVT-1 では 規格に従い 0.025 m幅のワイヤ (1 ミルワイヤ),ドレンノズルに対する VT-1 では 0.8 mの黒 がそれぞれ識別可能な手法により試験を行っており,試験 で視認性を確認している。 点検結果 CRD ハウジング及び中性子束計測ハウジング内面に対するECT では,割れに起因した欠陥信号は検出されなかった。溶接部については,0.025 m幅のワイヤが識別可能な目視試験(MVT-1)により,割れ状の欠陥がないことを確認できた(図4)。ドレンノズルについては,0.8 mの黒 が識別可能な目視試験(VT-1)により,腐食がないことを確認できた。 図4 CRDスタブチューブ外面MVT-1画像 3 まとめ 原子炉圧力容器については,これまで,供用期間中検査において定期的に実施するとともに,インコ ル182 等で発生が予想されるSCC についても適正な保全を計画・ 実施してきた。今回これらの現状保全に ,特別点検の実施により得られた 見は以下のとおりである。 ・母材及び溶接部 今回,点検可能な炉心領域の全てに対して UT を実施した結果,母材及び溶接部(クラッド含む)において,割れその他の有害な欠陥が無いことが確認できた。 ・給水ノズルコーナー部 従来,ノズルコーナー部の体積試験として UT を実施しているが表面試験は実施していない。今回,ECT を実施した結果,有意な欠陥は確認されなかったことから,疲労による割れを生じていないことが表面試験においても確認できた。 CRD スタブチューブ,CRD ハウジング,ICM ハウジング,差圧検出・ほう酸水注入ノズル 今回,各対象部位の溶接部(熱影響部含む。)の目視試験(MVT-1),CRD ハウジング,ICM ハウジング内面の溶接熱影響部のECT を実施した結果,有意な欠陥は確認されなかったことから,各対象部位において応力腐食割れを生じていないことが確認できた。 ・ドレンノズル 今回,ノズル第一溶接 までの範囲において目視試験(VT-1)を実施した結果,腐食を含む有意な欠陥は確認されなかった。 参考文献 実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド(平成29 年9 月20 日 原規規発第1709202 号) 日本電気協会JEAC4207-2008 軽水型原子力発電用機器の供用期間中検査における超音波探傷試験規程 日本機械学会 発電用原子力設備規格 溶接規格 (JSME S N 1-2007) 日本電気協会 JEAG4217-2010 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針 日本機械学会 発電用原子力設備規格 規格 (JSME S NA1-2008)
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)