日立グループの福島廃止措置ロボット
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カテゴリ: 第16回
日立グループの福島廃止措置ロボット
Robots for decommissioning of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant
日立GE岡田 聡Satoshi OKADANon member
In Fukushima Daiichi Nuclear Power Station, new robots were carried out for various investigations and removal debris and decontamination by remote control under the high radiation environment. For these needs, Hitachi group developed various robots and applied to Fukushima Daiichi actual plant. In this presentation, robots applied to the Fukushima Daiichi are introduced.
Keywords:Robot, Nuclear Power Station, Radiation, Decontamination, Double arm Heavy duty robot, Underwater ROV, Shape changing robot.
1 諸言
福島第一原子力発電所の廃止措置では、高い放射線環 境下において遠隔操作で調査を実施するロボット、除染やガレキの撤去を行う作業ロボット等が必要である。この うなニー に対し、 グ ー では、 ロボットを開発し、現場適用を進めてきた。本発表では、震災後新たに開発し、実際に福島第一に適用したロボットを紹介する。
2 双腕小型重機型ロボット「ASTACO-SoRa」
遠隔操作ロボットの適用ニー に対し、 グ ー では、原子力災害対応用小型双腕重機型ロボット
「 」を開発し[l]、適用を進めている。
に、 の を示す。このロボットは、幅 980mm のコンパクトなボディーに2本のアームを搭載することに り、建屋内での自由度の高い作業を可能とした。また、2本のアームは高さ約 2.5m まで到達でき、アーム 本当たりl50kg、両アームで合計300kg の重量を持ち上げることが出来る。
更に、2本のアーム先端には、つかみ具、切断具、回転具、カメラ付き長尺アームの着脱を可能にし、広汎な作業に対応している。
運転操作は、遠隔操作盤から無線にて行う。 2に遠隔操作盤の外 を示す。遠隔操作盤は、ロボットに搭載した6台のカメラ映像を切り替えながら、同時に5つの モニタに表示可能である。また、6台のカメラにはそれぞれLED照明を搭載しており、暗闇となる原子炉建屋
内でのガレキ撤去作業等へ対応可能とした。本体にはカメラの他に放射線線量計、温度/湿度計、酸素/水素濃度計、及び、赤外線カメラを搭載している。これらのセ ンサ情報は、遠隔操作盤へ常時表示され、本体周辺の建屋内環境をモニタリング可能とした。
の開発に り福島第一原子力発電所の原子炉建屋内における放射線環境でもコンクリート片等のガレキ除去を遠隔操作にて行うことが可能となった。
1「ASTACO-SoRa」の
2「ASTACO-SoRa」の遠隔操作盤
3 使用済燃料プール内の調査用ROV
4号機の使用済燃料 ー から燃料を取り出すためには、 ー 内に堆積しているガレキの状態を把握し撤去する必要があった。そこで ー 内のガレキをマッピングする調査を実施した。調査は、水中 V( em tely
per ted vehicle)に り実施した。 3に開発した V、
4に調査結果を示す[2]。この Vを使用するに当たり、
ー 内部の放射線線量率が不明であったため、耐放射線性の弱いカメラユニットを交換しやすい構造に改造し、 故障時のメンテナンス性を向上した。また、 ー 水の透明度が低いことが想定されていたため、広範囲用にハロゲン照明、局所用に LED 照明を搭載し、操作者の負担軽減を った。
調査の結果、 ー 内の瓦礫の状況を把握でき、瓦礫撤去、燃料取り出しの作業を完遂することができた。
以下の調査作業を可能とした。①キャットウォーク上を走行し、任意位置にてマストを上方に伸張してSIC上部の構造物である六空破壊装置ベロー 六空破壊弁、トーラスハッチ等の機器類を調査。②昇降マストに水平方向に伸縮するアームを搭載し、キャットウォーク手摺を回避して照明付パン・チ ト・ ームカメラを吊り下ろすことで、気中I水中の壁面貫通部を目視調査。③アーム機 構先端に超音波ソナーを吊り下ろすことで、トーラス室内に滞留している濁水中で壁面貫通部近傍の流れの有無を調査。壁面貫通部の調査の結果、調査対象とした貫通部では流れは確認されなかった。
Size:W509mmXL550mmXH826mm
5 S/C上部調査ロボット「テレランナー」
3 使用済燃料プール内調査 用 水中ROV
4 使用済燃料プール内の瓦礫調査結果
4 原子炉建屋地下階調査
4 1 トーラス室内の気中調査用ロボット
原子炉建屋のトーラス室内に流入する滞留水の有無、 その箇所等を確認するために、気中お び水中から調査を実施した。サ レッションチェンバ(SIC)上部調査を目的としたロボット「テレランナー」を開発した[3]。
5に、ロボットの 要を示す。テレランナーは、クローラを備えた移動機構にマスト機構を搭載することで、
4 2 トーラス室内の水中調査用ロボット
原子炉建屋のトーラス室水中壁面貫通部の えいを確認するために、当該部へのアクセス性と えい確認手段を備えた水中遊泳ロボット「げんごROV」を開発し、目視調査を実施した[3]。 6にロボットの外 を示す。げんごROVはスラスタ5台(前後進用2、昇降用 、左右移動用 )を備え、前後にパン・チ ト・ ームカメラを搭載し、水中で対象部位の 察が可能な装置である。
ズ:W420mmXL480mmXH375mm
6 水中遊泳調査ロボット「げんごROV」の
また、トーラス室水中壁面調査を床面走行ロボット
「トライダイバー」を用いて実施した[3]。 7に、ロボットの 要を示す。トライダイバーはクローラ機構及び上下移動用スラスタ4台、水平方向移動用スラスタ2 台を備え、水中カメラのほか調査デバイスである超音波 ソナーを搭載し、光学的に流れの検知が困難な場合でも、流れの検出が可能な仕様とした。現地調査の結果、トライダイバーから3m離れた貫通部の形状確認が出来ることを確認した。
想定される燃料デブリ
8 PCV の概要とPMORPH の適用対象
既設貫通口(X-6ペネ)
サ ズ W480mmxL650mmxH350mm
水中 遊泳型調査ロボット「トラ ー」の
また、げんご V から放出したトレーサの流れをトライダイバーで計測する組み合わせ調査の結果、貫通部へ吸い込まれる方向へのトレーサの移動がなく、対象とした貫通部に流れはないと判断することができた。
5 格納容器内部調査
5 1 調査の概要と適用対象
に、原子炉 器 P V 内部調査の 要と形状変化型ロボット PM PH の適用対象を示す[4]。事前の分析結果に ると、 号機の場合、燃料デブリはペデスタ 外に広がっている可能性があるため、ペデスタ
の外側の調査を優先的に実施することとされた。 に示す うに、PM PHは、P Vの 貫通孔であるX l00B ペネに通した内径l00mm のガイドパイ から挿入し、ガイドパイ 通過後、グレーチング上を走行して 階の調査(Bl 調査)と、調査ポイントでグレーチング隙間からセンサを降下する地下階の調査(B2 調査)を実施した。
5 2 B1調査用ロボット「PMORPH1」
9に、20l5 年 4 月に実施した、l 号機のl 階グレー
チング上調査(Bl 調査)に用いた、PM PHl の外 を示す
[5]。( )はガイドパイ 通過時の形状、(b)はグレーチン グ上を走行し調査を実施する時の形状である。PM PHl は、2つのクローラの中間に、調査用のカメラを搭載し ている。このカメラは、コ型の状態で前方を向き、また、 上下のチ ト機構を搭載しており、P V 内の構造物の状態を目視にて調査可能である。また、グレーチング上の環境を調査するため放射線線量計と温度計を搭載している。
調査の結果、線量率や温度の分布を把握するとともに、
構造物に きな破 が無いことが分かった[ ]。
a プ内 ( 型)
b 平面 (コ型)
g PMORPH1 の
5 3 B2調査用ロボット「PMORPH2」
に、20l7 年 3 月に実施した、l 号機の地下階調査(B2 調査)に用いた、PM PH2 の外 を示す[7]。PM PH2 は、PM PHl の調査用カメラに えて、地下にセンサユニ ットを降下させるためのウインチを搭載している。また、センサユニットにはカメラと線量計を搭載した。
調査の結果、地下の 下物や堆積物の状況を把握するとともに、床面に近づくほど、線量率が高くなることが 明らかとなった[8]。
a プ内 ( 型)
b 平面 (コ型)
c センサユニット詳細
1o PMORPH2 の
おわり
福島第一原子力発電所の廃止措置に向け、 遠隔ロ
ボットを開発した。本発表では、小型双腕重機型ロボット「 」、 ー 内部の調査用水中 V、SIC 上部調査ロボット「テレランナー」、トーラス室内調査用の水中遊泳ロボット「げんご V」、床面走行ロボット「トライダイバー」、 器内調査用の形状変化型ロボット
「PM PH」を紹介した。これらのロボットに り、建屋内状況調査、ガレキ撤去、等の作業を進めることができ、廃止措置推進に寄与することができたと考える。
謝辞
本発表で紹介したロボットのうち、SIC上部調査ロボ
ット「テレランナー」、水中遊泳調査ロボット「げんご V」、水中走行遊泳型調査ロボット「トライダイバー」、 器内調査用の形状変化型ロボット「PM PH」は、資源エネ ギー庁の補助事業である平成24年度発電用原子炉等事故対応関連技術開発費補助金、平成25 年度発電用原子炉等廃炉・安全技術開発費補助金、平成 25 年度補正予算
「廃炉・汚染水対策事業費補助金」等に り開発したものである。
また、小型双腕重機型ロボット「 」の開発にあたっては 200 年~20l0 年度に実施された NED 委託事業「戦略的先端ロボット要素技術開発 ロジェクト」に り培われた技術的なノウハウも活用されている。
参考文献
[l] GE ニュークリア・エナジー株式会社,“原子力災害対応用小型双腕重機型ロボット『 』を開発”,20l2.l2.7, GE ニュークリア・エナジー 株 HP,
http IIwww.hit chi hgne.c .jpInewsI20l2I20l2l 207.html
[2] 岡田 聡 “原子力発電所で活躍するロボット技術の変遷~通常運転時の定期点検用から廃止措置用まで~”,20l8.l0.3l, 本ロボット学会 ロボット工学セミナー
[3] I ID ” 福島第一原子力発電所 建屋内で活躍するロボットについて その3 水中遊泳ロボット げんご V & 床面走行ロボット トライダイバー
~ ロボットが撮影した2 号機のトーラス室 水中の内部映像 ~” I ID HP,
http IIirid. r.jpIrese rchIgeng r v_trydiverI
[4] 製作所, GE ニュークリア・エナジー株式会社,“福島第一原子力発電所での燃料取り出しに向けた調査用の水中走行遊泳型ロボット・形状変化型ロボットを開発”,20l4.3.l0, 製作所HP,
http IIwww.hit chi.c .jpINewIcnewsIm nthI20l4 I03I03l0e.html
[5] I ID,”東京電力福島第一原子力発電所 号機の
器内部調査の実施前模擬訓練に関する見学会” I ID HP, http IIirid. r.jpI_pdfI20l50203.pdf
[ ] 東京電力株式会社,“ペデスタ 外側_l 階グレーチング上調査 B 調査 の現地実証試験の結果について”,東京電力HP,20l5.4.30
http IIwww.tepc .c .jpInuIfukushim npIh nd ut sI20l5Iim gesIh nd uts_l50430_0l j.pdf
[7] I ID,” 原子炉 器内部調査用ロボット
「PM PH(ピーモ フ)」” I ID HP,
http IIirid. r.jpIwp c ntentIupl dsI20l7I02I2 0l70203_2l.pdf
[8] 東京電力株式会社,“ 号機原子炉 器内部調査について”,東京電力HP,20l7.3.27,
http IIwww.tepc .c .jpInuIfukushim npIh nd ut sI20l7Iim geslIh nd uts_l70327_l4 j.pdf