巡視点検高度化を目指した移動プラットフォーム開発

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カテゴリ: 第17回
巡視点検高度化を目指した移動プラットフォーム開発 Autonomous mobile platform for advanced patrol inspection 東芝エネルギーシステムズ(株) 川端 俊一 Shunichi KAWABATA Member 東芝エネルギーシステムズ(株) 上田 紘司 Koji UEDA Non-member 東芝エネルギーシステムズ(株) 笹川 憲二 Kenji SASAGAWA Non-member 東芝エネルギーシステムズ(株) 菅沼 直孝 Naotaka SUGANUMA Non-member 東芝エネルギーシステムズ(株) 坂本 直弥 Naoya SAKAMOTO Member 東芝エネルギーシステムズ(株) 尾崎 健司 Kenji OSAKI Member 東芝エネルギーシステムズ(株) 渋谷 真人 Masato SHIBUYA Non-member (株)東芝 平山 紀之 Noriyuki HIRAYAMA Non-member (株)東芝 山下 道生 Michio YAMASHITA Non-member Abstract Due to the increase in aging social infrastructures and the shortage of human resources with the declining birthrate and aging society, labor saving in patrol and inspection work is required. The purpose of this work is not only to reduce the load of patrol and inspection but also to provide new services such as digitization of inspection data. We have developed autonomous four-wheel robot and drone as mobile platforms that can patrol on behalf of workers. The robot can take pictures of the target equipment while passing the waypoints on the map created in advance. An operation test was conducted to confirm the effectiveness of the autonomous patrol and inspection in the indoor and outdoor environments. Keywords: Autonomous patrol and inspection, four-wheel robot, drone, GPS-denied environments, 1.はじめに 近年、老朽化した社会インフラ設備の増加や少子高齢化に伴う人材不足を背景に、プラントなどでの巡視点検業務の省力化が求められている。例えば、通常無人でオペレーションされている水力発電所や地熱発電所、変電所などでは定期的な巡視点検の負荷を軽減することを目的とした省人化だけでなく、点検データを記録・管理し、設備の状態把握や分析による予防保全などにも活用する取り組みが進められている。このようなスマートな O&M の実現のために、ロボット技術や AI 技術などを応用した各種ソリューションを「エネルギーシステム向け IoT プラットフォーム(TOSHIBA SPINEX)」として開 発・統合してきた[1] 。そのなかで人に代わって巡 視点検経路を自動で巡回し、点検対象設備の画像を取得するために有効な手段として、自律走行ロボットと屋内自律飛行ドローンを開発している。本報告では、自動巡視点検を可能とする自律走行ロボットと GPS の使えない屋内における点検を可能とする自律飛行ドローンについて報告する。さらに、施設内の同一フロアにおいて種類の異なる複数台のロボットによる運用を見据え、自律走行ロボットと自律飛行ドローンを同一の運行管理システムを用いた動作確認結果について報告する。 Fig.1 Four-wheel robot 2.自律走行ロボット 巡視点検の自動化のための移動プラットフォームとしては、対象となるエリアにロボットの走行の妨げとなる段差や配管等の障害物がない場合は、重量物の積載が可能で多くのセンサー類が搭載でき、長時間の安定した移動が可能であることを特徴とする自律走行ロボットが有効である。Fig.1 に開発した自律走行ロボットの外観、Table1 に仕様をそれぞれ示す。この自律走行ロボットは設定した時刻になると、Fig.2 に示す動作例のように自動的に充電ステーションを出発して、あらかじめマップ上に位置を登録した点検対象を順に巡って撮影し、充電ステーションに戻り、撮影した画像や取得したデータをサーバにアップロードすることができる。また、路面等の影響によって自律走行ロボットの停止位置が計画した位置とずれた場合でも、自律走行ロボットに搭載したパンチルトカメラによってこのずれを補正して点検対象が画角から外れることなく撮影できるようにした。さらに、屋外での巡視点検が可能なように、防塵・防滴で照明を搭載した自律走行ロボットも開発した。Fig.3 は屋外で自律走行し模擬点検対象を巡視点検する試験の様子である。これにより、屋外の舗装されていない場所や夜間、雨天でも設定した経由点を自動巡回できること、夜間も点検対象を撮影できることを確認した。 Table 1 Specifications of the four-wheel robot Item Value Size W445 × D540 × H780-1430 mm Weight 30 kgf Sensors Pan-Tilt-Zoom camera Thermographic camera 360-degree camera Battery Approx. 4 hours Fig.2 Example of patrol inspection Fig.4 の 1~3 にパンチルトカメラで撮影したアナログメータ、デジタルメータ、油面計の画像をそれぞれ示す。画像からアナログメータの指針位置、デジタルメータの数値、油面計の位置を確認することができる。また、Fig.4 の 4 はサーモカメラで撮影した画像であり、パンチルトカメラでは確認することができない模擬点検対象の中央部に取り付けた発熱体の位置を確認することができる。一方、Fig.5 に示すように日中は計器カバーに太陽光の反射や映り込みが生じる場合や、雨天時は水滴の付着により、値の読み取りが困難なケースも確認されており、今後の課題となっている。 Fig.3 Outdoor type four-wheel robot Fig.4 PTZ camera (1-3), Thermographic camera (4) Fig.5 Sunlight reflection and raindrop adhesion 3.自律飛行ドローン 点検対象が高所にある場合や巡視経路に段差や配管等の構造物があるような場合など、走行型のロボットによる自動化が難しい場合がある。このような場所を対象とした巡視点検の自動化では、移動プラットフォームとして無人航空機(UAV:ドローン) が選択肢として考えられ、プラント保全分野での活用が報告されている[2]。しかし、点検対象や巡視経路が建屋内やトンネル内にある場合など、衛星電波を基にした GNSS による自己位置の特定が利用できない場所(非 GPS 環境)では、ドローンの自己位置推定が課題となり、環境に複数のビーコンを設置して自己位置を推定する方法[3]や、LIDAR ベースの SLAM による自己位置推定方法[4] [5]が利用されているが、巡視ルート周辺の環境に対して変更を加える必要や、装置重量によりドローンが大型化し飛行時間が短くなるなどの影響があり巡視点検用途においては適用可能な場所が限られる。 本研究では、360°カメラの広範囲の映像によって安定した自己位置推定が可能な Visual-SLAM を使った自律飛行ドローンを開発した。開発したドローンの外観を Fig.6 に、仕様を Table2 にそれぞれ示す。Visual-SLAM に利用する 360°カメラはドローンの上部に搭載しドローン周辺の広範囲の映像を取得できるようにした。巡視点検は、あらかじめ用意した 3 次元マップにおける 3 次元座標と方向の組み合わせによって設定した経由点を順にたどるように自動飛行し、前方に搭載したカメラによって点検対象を撮影することによって実施する。Fig.7 に示すような屋内にて自律飛行試験を実施し、ドローンの幅約 700mm に対して幅約 1600mm の模擬通路を通過可能で、自己位置推定及び飛行制御による位置決めのずれ量が±450mm 以内の精度を有していることが確認できた。また、Fig.8 に示すようにドローンに搭載した USB カメラにより約 1.5m 先のメータの指針と文字盤の数値を読み取ることが可能であることを確認し、開発したドローンによる非 GPS 環境における巡視点検が可能であることを確認した。 今後は充電ポートへの自動着陸やマップ生成時か らの環境変化への対応機能などを実装し、無人環境における継続的な自動巡視点検の実現に向けた開発を進める。 Fig.6 Autonomous flight drone Table 2 Specifications of the autonomous flight drone Item Value Size 450mm (Wheelbase) 700mm (W/D) Weight 3.7 kgf Sensors 360-degree camera Tracking camera USB-Camera Battery Approx. 10 min 4,200 mAh, LiPo Fig.7 Indoor flight test Fig.8 Inspection image using USB camera 4.ロボット運行管理システム 開発した自律走行ロボットと自律飛行ドローンを施設内の同一フロアにおいて統一的に管理するために、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」で仕様策定された AMR-IF (Autonomous Mobile Robot Interface)[6]による運行 管理システムを採用した。本システムは巡視点検計画を立案する保守担当者に対して Web ベースの操作インターフェイス(Web UI)を提供し、経由点や点検対象の座標、経由点の巡回順序、巡視開始日時などを設定する機能を持つ。運行管理システムを用いて自律走行ロボットと自律飛行ドローンの巡視点検動作試験を実施した様子を Fig.9 に示す。Web UI では Fig.10 に示すように、同一マップ上で走行ロボットとドローンの動作中における現在位置やバッテリー残量等を含む状態量を確認することができるとともに、撮影画像などのデータ閲覧も可能である。 Fig.9 Robot operation control system Fig.10 Robot operation control system 5.まとめ プラントなどの巡視点検によるデータを記録・管理し、設備の状態把握や分析に活用するスマートO&M の取り組みに対して、発電所や変電所等の巡視点検を無人で実施可能な自律走行ロボット、自律飛行ドローンを開発した。また、ロボット運行管理システムにより、異なる種類・複数の自律移動型のロボットの管理を可能とした。今後、発電所や変電所等、実際に稼働しているプラントなどへの適用を図っていく。 参考文献 渋谷、辻 “持続可能なエネルギーシステムを実現するスマート O&M”、 東芝レビュー、 Vol.75, No.3、2020、pp.25-28. 経済産業省 “プラントにおけるドローン活用事例集 Ver3.0”、2021 大門雅尚、堀川三好、岡本東 “BLE ビーコンを用いたマルチコプターのハイブリッド型航法システム (モバイルネットワークとアプリケーション)”電子情報通信学会技術研究報告117(71)、pp.143-150、2017 鈴木、“非 GPS 環境における小型無人航空機の自律制御”、計測と制御 56、18-23、2017 Garrett Hemann, Sanjiv Singh and Michael Kaess, “Long-range GPS-denied Aerial Inertial Navigation with LIDAR Localization”, Conference Paper, Proceedings of (IROS) IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp. 1659 - 1666, October, 2016 NEDO、(株)東芝 “自立型移動ロボット向けインターフェースの仕様を策定し、サンプルソフトウェアを公開”、NEDO ニュースリリース、30 Mar. 2020
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