故障原因と保全活動の関係性を考慮した保全活動スケジューリング

公開日:
カテゴリ: 第15回
故障原因と保全活動の関係性を考慮した保全活動スケジューリング Maintenance Scheduling Considering Relationship between Failure Cause and Maintenance Type 東京理科大学 伊藤真理 Mari ITO Non-member 東京理科大学 鈴木正昭 Masaaki SUZUKI Member In order to realize reasonable and effective maintenance of nuclear power plants, it is essential to optimize aging management from the viewpoint of safety and efficiency. We propose maintenance scheduling model considering that effective maintenance activities are different for each failure cause. Our model creates a schedule that minimizes the number of maintenance activities while ensuring the reliability of functions important to safety. In this paper, we formulate the maintenance scheduling model as a mathematical programing model and show the results of numerical experiments. Keywords: Plant life management, Maintenance scheduling, Operations research, Mathematical programming, Optimization 1.はじめに 原子力プラントの合理的で効果的な保全の実現のためには,安全性と効率性の観点から経年劣化管理を最適化することが不可欠である.著者らの一人はこれまでに, 機器の故障原因と保全活動の種類との関係性を考慮した上で,原子力プラントの安全上重要な機能の信頼性と保全活動による影響を評価する手法を提案している[1].そこでは,例えば動的機器の故障率評価においては,各故障モードに対する故障率を原因別故障率に分解して表現し,それらの時間依存性を考慮する.そして,種々の保全活動による故障確率の低減/増加を評価する.その 際,故障原因によって有効な保全活動が異なることをモデル化する.これにより、個々の保全活動と安全上重要な機能の信頼性との関係性を合理的に評価することができる.一方で,文献[1]では保全計画変更に対する機能信頼性の感度評価の例として,機器の分解点検間隔の変更による炉心冷却機能の喪失確率への影響を示している が,最適な分解点検間隔を導出するものではない. 本研究では,故障原因によって有効な保全活動が異なることを考慮した保全活動スケジューリングモデルを提案する.本稿では,安全上重要な機能の信頼度を担保し 連絡先: 伊藤真理、〒278-8510 千葉県野田市山崎 2641、東京理科大学、E-mail: mariito@rs.tus.ac.jp つつ,保全活動回数が最小となるスケジュールを生成するモデルを示す. 2.保全活動スケジューリングモデル ここでは炉心冷却機能,原子炉冷却材圧力バウンダリ機能といった安全上重要な機能を構成する機器に対し て,いつ,どの順序で,どの機器のどのような保全活動を行うかを決定する保全活動スケジューリングを数理計画問題として定式化する. 記号の定義集合 I : 故障原因 i の集合 J : 機器 j の集合 T : 時点 t の集合,t = 1, 2, … , ? 定数 入 i j : 機器 j の故障原因 i の故障率U* : 注目する機能の不信頼度の許容値決定変数 x i j t : 時点 t で機器 j の故障原因 i に対して有効な保全活動を行うとき 0, それ以外 1 ? i j t : 時点 t での機器 j の故障原因 i の累積故障率 u i j t : 時点 t での機器 j の故障原因 i に起因する不信頼度 U t : 時点 t での注目する機能の不信頼度 の不信頼度の時間変化をそれぞれ示す. 保全活動の適切な組み合わせによって,機能の不信頼度を許容値以下に制限した上で保全回数を削減する解が得られている. 定式化 max ∑(∈. ∑)∈- ∑*∈, ??)* (1) ?? ? ???, ∀??∈ ?? (2) ??)* = 1 - (1 - ??),*<=), ∀??∈ ?? ∀??∈ ?? ∀??∈ ?? (3) ??)= = ??),∀??∈ ?? ∀??∈ ??4) , 式(1)は,保全回数の最小化を意味している.制約式(2) は,当該機能の不信頼度を許容値以下に制限する制約である.制約式(3)は,各時点での各故障原因に起因する不信頼度を,(4), (5)は累積故障率をそれぞれ示す.制約式(6)はバイナリ変数制約,制約式(7), (8)は非負制約である.なお、制約式(5)は非線形であり,後述の数値実験の際には線形化している. 3.数値実験 実験条件 ここでは提案するスケジューリングモデルの検証のため、電動弁1 台に対して保全活動スケジュール作成を行なった結果を示す.いま例として電動弁の開閉機能に注目すると,故障原因として摺動部固着,モータ絶縁劣 化,計装・制御機器劣化,消耗品劣化があり(I = 4),各々の原因別故障率をそれぞれ ??= 4.69E-09 [/h], ??= 4.69E-10 [/h], ??= 8.44E-09 [/h], ??= 4.69E-10 [/h]と設定し た.各々の故障原因に対して有効な保全活動の種類を, 摺動部固着に対しては分解点検,モータ絶縁劣化,計 装・制御機器劣化,および消耗品劣化に対しては取替とした.スケジュール作成対象期間を50 年とし,開閉機能の不信頼度の許容値を U * = 1.00E-03 と設定した. 結果 求解に用いたソルバーはIBM ILOG CPLEX 12.6.3,計算機はIntel Core i5-6200U@2.30GHz, 8GB RAM であり, 650 変数900 制約に対してCPU 時間約1 秒を要した. 本数値実験の条件では,最適保全スケジュールとして摺動部固着に対して約12 年間隔で分解点検を,計装・制御機器劣化に対して約8 年間隔で取替を,消耗品劣化に対して29 年時点に取替を実施するものが得られた. 図1 に原因別累積故障率の時間変化を,図2 に開閉機能 ??)* = ??),*<=??),*<= + ??) , ∀??∈ ?? ∀??∈ ?? ??= 2, … , ??(5) ??)* ∈ {0, 1} ∀??∈ ?? ∀??∈ ?? ∀??∈ ??(6) ??)* ? 0, ∀??∈ ?? ∀??∈ ?? ∀??∈ ??(7) ??)* ? 0, ∀??∈ ?? ∀??∈ ?? ∀??∈ ??(8) 図1 原因別累積故障率 図2 開閉機能の不信頼度 4.おわりに 故障原因によって有効な保全活動が異なることを考慮した保全活動スケジューリングモデルを開発した.い つ,どの順序で,どの機器のどのような保全活動を行うかを決定する保全活動スケジューリングを数理計画問題として定式化し,安全上重要な機能の不信頼度を許容値以下に制限する制約下で保全活動回数が最小となるスケジュールを作成した.提案モデルの検証のため、電動弁1 台の開閉機能に対して保全活動スケジュール作成を試行し,所望の解が得られることを確認した. 今後,単一機器のみでなく,配管等の静的機器を含む複数機器,サブ機能および機能を構成する機器全体へとスケジューリング対象の拡大を進める.また,保全活動コスト等をモデルに反映する. 参考文献 M. Demachi, H. Miyano, S. Arai, M. Suzuki, T. Itoi, A. Yamaguchi, K. Murakami, and M. Matsumoto, “Maintenance index for system safety assessment for aging nuclear power plant”, E-Journal of Advanced Maintenance 7(3), 199--205, 2015.
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)