核融合原型炉ブランケット冷却管渦電流探傷試験における プローブ方式によるきず検出性能比較
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カテゴリ: 第17回
核融合原型炉ブランケット冷却管渦電流探傷試験における プローブ方式によるきず検出性能比較
Influence of probe types on detection capability of eddy current testing to blanket cooling tube of fusion prototype reactor
東北大学
加子 瑞騎
Mizuki KAKO
Student-member
東北大学
葛 玖浩
Jiuhao GE
Non-member
東北大学
冨澤 拓真
Takuma TOMIZAWA
Non-member
量研機構
野澤 貴史
Takashi NOZAWA
Non-member
東北大学
遊佐 訓孝
Noritaka YUSA
Member
Abstract
This study investigated the influence of probe types on the detection capability of eddy current testing technique against the flaws on F82H steel. Three surface slits were fabricated in F82H specimens with a thickness of 10 mm. The slit depth is 0.5, 1, and 3 mm. The slits were detected by pancake probe, vertical pancake probe, uniform probe, and plus point probe. The signal to noise ratio of used probes was calculated and compared. The greatest signal to noise ratio was plus point probe, followed in order by vertical pancake probe, uniform and pancake probe. Even the signal to noise ratio against the slit depth 0.5 mm of pancake probe was 13.5, 10 times bigger than noise. All slits could be detected with all probes.
Keywords:
ECT, SN ratio, Ferromagnetic, RAFM, Fusion reactor
1.緒言
磁場閉じ込め型核融合炉におけるブランケットの役割の一つに、核融合反応により発生したエネルギーを熱エネルギーとして外部に輸送するというものがある。現状我が国の核融合原型炉においては、ブランケット内部に多数の冷却管を設置することで熱輸送を行う設計となっており、それらの破断は冷却水漏えいに直結しうるため、適切な検査による信頼性の担保が重要である。
当該冷却管に対する非破壊検査としては加圧水型軽水炉に用いられる蒸気発生器用伝熱管(PWR-SG)にて実績のある[1]渦電流探傷試験(Eddy Current Testing : ECT)が有望と考えられる。しかしながら、原型炉冷却管材料候補である F82H[2]鋼に対する ECT の適用性評価研究報告は限定的である[3]。F82H 鋼は強い磁性を有しており、非磁性材料製の PWR-SG に対するECT の知見が直接適用できる
連絡先: 加子 瑞騎、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-01-2、東北大学大学院工学研究科
量子エネルギー工学専攻、
E-mail: mizuki.kako.r7@dc.tohoku.ac.jp
わけではない。一般的にECT のきず検出性能はプローブ方式に大きく依存するため、今後検出限界等の評価を行うにあたり、プローブ方式が F82H 鋼のきず検出性能に及ぼす影響を定量的に把握しておくことは重要であるといえる。
そこで本研究ではF82H 鋼に発生したきずをECT で検出する際にプローブ方式が検出性能に及ぼす影響を調べるために、スリット付与F82H 鋼平板試験体に対して4 種類のプローブ方式でECT を行い、プローブごとのきず検出性能を比較した。
2.材料と手法
試験体
本研究では放電加工により導入した矩形スリットを有するF82H 鋼平板を用いた。F82H 鋼平板の厚さは10 mm、加工したスリットは、長さ、幅がいずれも 10 mm と 0.5
mm、深さが0.5, 1, 3 mm の3 体である。
渦電流探傷試験
渦電流探傷試験は、
標準比較方式パンケーキプローブ(外径3.2 mm、内径
1.2 mm、高さ0.8 mm)、
標準比較方式パンケーキプローブ垂直型(外径5 mm、内径1.6 mm、高さ1 mm)、
一様渦電流プローブ(励磁コイル: 一辺 10 mm 矩形、検出コイル: 外径6 mm、内径2 mm、高さ1.2 mm)、
差動型プラスポイントプローブ(一辺 5 mm 矩形コイル)
の 4 種類の渦電流探傷プローブを用いて行った。測定においてはプローブを自動 XY ステージに取り付け、試験体のスリット加工した面及び雑音測定のためのその反対面の測定を行った。測定におけるリフトオフは1 mm、周波数は 100 kHz、測定範囲は 30 mm×60 mm の範囲である。渦電流探傷装置はアスワン電子株式会社製aect-2000N を用いた。
2.3 信号処理
プローブを2次元的に走査させて信号を収集した後、リフトオフ変化に起因する雑音を除去するための信号処理を行った。より具体的には、測定範囲長軸方向の両端5 mm の信号の最小二乗平面近似したものを、測定信号から差し引くことで、プローブの移動に伴って生じたリフトオフ変化による信号変化を補正した。
各プローブ方式におけるきず検出性能の比較は、次式で算出される信号対雑音(Signal to noise : SN)比を用いた。
???ず信号
認できた。
図1 スリット深さと信号対雑音比の関係
4.結言
ブランケット冷却管材料候補である F82H 鋼平板に対するECT 測定時のプローブ方式が及ぼす影響を評価した。最も検出性が優れていたのは差動型プラスポイントプロ ーブであり、長さ10 mm、深さ0.5 mm の矩形人工スリットに対する SN 比は約 50 であった。ただし、SN 比が最も低かった標準比較方式パンケーキプローブであってもSN 比は十分に1 よりも高く、磁性に起因する雑音によりきず検出能が顕著に低下するというほどのものではなか った。ただし、想定される伝熱管の厚みからは実際にはよ り浅いきずが検出対象になると考えられ、今後0.5 mm 未 満の深さのきずを対象にした同様の評価が必要であると
=
??√雑音振幅の2 乗平均
(1)
いえる。詳細は当日発表する。
ここできず信号はスリットからの信号の最大振幅とし、雑音振幅の2乗平均の算出には全測定点の測定値を用いた。
3.結果
各プローブ方式における SN 比を図 1 に示す。すべてのプローブ、すべてのスリット深さでSN 比は10 以上であった。プラスポイントプローブでは最も浅い0.5 mm のスリットに対してもSN 比が約50 となっており、F82H 鋼の磁気特性に起因する雑音はステンレス鋼の溶接部などからのものと比べると顕著に小さいものであることが確
参考文献
H. Huang et al., NDT&E International. Vol.36, Issue.7 pp.515-522 (2003).
H. Tanigawa et al., J. Plasma Fusion Res. Vol.87, No.3 pp.167-171 (2011).
加子他, 日本非破壊検査協会 東北支部 第8回 支
部会・講演会, オンライン, 2021/4/16
謝辞
本研究は原型炉研究開発共同研究(02K074)にて得られた成果の一部である。