沸騰水型原子炉の重大事故時における化学スプレイの噴霧が安全系ケーブルの絶縁性能に及ぼす影響
公開日:
カテゴリ: 第16回
沸騰水型原子炉の重大事故時における化学スプレイの噴霧が安全系ケーブルの絶縁性能に及ぼす影響
Influence of Chemical Spray Injection during Severe Accident Conditions in Boiling Water Reactors on Insulation Performance of Safety-related Cables
原子力規制庁長官官房技術基盤グループ
原子力規制庁長官官房技術基盤グループ
皆川武史Takefumi MINAKAWAMember
池田雅昭Masaaki IKEDANon-member
早稲田大学平井直志Naoshi HIRAINon-member
早稲田大学大木義路Yoshimichi OHKINon-member
Some safety-related cables installed in boiling water reactors in Japan are likely to be exposed to an aqueous solution of sodium hydroxide (NaOH) during a severe accident (SA). For examining the integrity of cables insulated with flame-retardant ethylene propylene diene rubber (FR-EPDM) and those insulated with silicone rubber (SiR), cable samples were subjected to the test that simulated a SA. Namely, after the cables were pre-aged to simulate the degradation induced in the normal operating conditions, they were irradiated by gamma rays and subsequently sprayed with a NaOH solution with a pH of 13 for 168 h in saturated steam at 171 °C. It was found that the insulation resistance per meter during the steam exposure is higher than 107 Om in the FR-EPDM cable. In contrast, a dielectric breakdown was observed in the SiR cable during the steam exposure. Visual observation conducted afterward indicates that the breakdown was caused by depolymerization of the SiR insulation.
Keywords: nuclear power plant, boiling water reactor, severe accident, cable, ethylene propylene diene rubber, silicone rubber, aqueous solution of NaOH, chemical spray, electrical insulation resistance
はじめに
原子力発電所で使用されているケーブルは、機器へ電 力を供給する機能や機器の監視・制御信号を伝達する機 能を する。 の安全系 ケーブルは(以下「安全系ケーブル」)は、重大事故等対処設備として使用されてお り、万 、重大事故(以下「SA」)が発生した場合においても、絶縁性能を維持することが求められる[1]。国内の 沸騰水型原子炉(以下「BWR」)では、SA 発生時において、原子炉格納容器内に存在する放射性よう素の発電所 外への放出量を 減することを目的として、原子炉格納容器内に水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を注入する格 納容器pH 制御設備を設置するとしている[2-5]。これらのことから、重大事故等対処設備に該当する原子炉格納容 器内のケーブルは、通常運転時の使用条件による経年劣 化を経たのちに、SA の麻温蒸気条件下においてNaOH 水溶液を噴霧される過酷な環境において絶縁性能を維持す ることが必要である。
著者らは、これまで、国内の原子力発電所で重大事故等 対処設備として使用される安全系ケーブルに対し、SA 環境を模擬する試験を実施するとともに、蒸気暴露中に絶 縁抵抗測定を行い、ケーブルの SA 模擬環境条件下にお
る絶縁性能を して た[6, 7]。
本報では、BWR のSA 時のNaOH 水溶液の噴霧が、安全系ケーブルの絶縁性能に与える影響を した結果について報告する。
試験方法
2 1 試料
国内のBWR においては、安全系ケーブルとして、難燃エチレンプロヒレンジエンゴム絶縁特殊クロロプレンゴ ムシースケーブル(以下「FR-EPDM ケーブル」)及びシ
リコーンゴム絶縁ガラス編組シースケーブル(以下「SiR ケーブル」)が使用されている[8]。このうち、FR-EPDM ケーブルは重大事故等対処設備として使用されている[8] が、SiR ケーブルが同設備として使用されているという情報はない。Table 1 に本研究で用いたケーブルとその概要を示す。本研究では、これらのケーブルの新品末劣化 品を試料として用いた。
2 2 試験方法
国内では、原子力発電所の原子炉格納容器内等に布設されている安全系ケーブルの健全性評価手法は、米国電 気電子学会規格IEEE Std 383-1974[9]に基づ 作成された電気学会推奨案[10]及び同案に代わる試験手法として提案されているJNES ガイド[11]があり、いずれも設計基準事故(以下「DBA」)を想定した健全性評価で用いられて いる。電気学会推奨案[10]及び JNES ガイド[11]の試験の主な試験項目及び試験の流れをFig. 1 に示す。
本研究では、FR-EPDM ケーブル及びSiR ケーブルに対し、JNES ガイド[11]の手順を参考として通常運転時相当の劣化を 与した後、SA を模擬する放射線条件及び麻温・麻 の蒸気条件に暴露した。また、FR-EPDM ケーブルについては、電気学会推奨案[10]の手順を参考として通 常運転時相当の劣化を 与した後、同様に SA を模擬する試験を行った。これらの試験で模擬する SA の継続期間については、SA 対 の 性評価において な とも7 日間(168 時間)評価することが要求されていること[12] を踏まえ、168 時間とした。また、SA を模擬する蒸気暴露中に、NaOH 水溶液を噴霧しながら、ケーブルの絶縁抵抗を継続的に測定した。なお、耐電 試験については実施中であり、本報に含まれていない。以下に各試験項目の条 件について詳し 述べる。
2 2 1 経年劣化の模擬と放射線暴露
2 2 1 1 JNES ガイドを参考とした試験
JNES ガイド[11]を参考として、ケーブルの通常運転時の熱及び放射線による経年劣化を模擬するため、長さ 2.5m の末劣化の FR-EPDM ケーブル及び SiR ケーブル各1 本をガンマ線照射施設内に設置した恒温槽に入れ、100°C で Table 2 に示す期間加熱しながら、100Gy/h の線量率で60Co ガンマ線を照射(以下「同時劣化」)した。劣化処理時間は、先行研究においてJNES ガイドの試験方法に基づ DBA を模擬した試験に合格したケーブルの 長劣化処理時間とした[13]。その後、SA 時の放射線条件を模擬するため、室温において60Co ガンマ線線量率10kGy/h で照射(以下「事故時照
Table 1 Names, materials, structures, and lengths of the tested cables
Name
Material (I: Insulation,
J: Jacket)
Struc
ture
Length (m)
Nominal external diameter
(mm)
Nominal conductor size
(mm2)
Number of cores
Nominal insulation thickness
(mm)
FR-EPDM
cable
I: Flame-retardant ethylene propylene diene rubber
J: Polychloroprene
rubber
11.5
2.0
3
0.8
2.5
SiR cable
I: Silicone rubber J: Glass brading
10.5
2.0
3
1.1
2.5
Accident simulation (Radiation exposure at 10kGy/h or less)
Accident simulation (Radiation exposure at 10kGy/h or less)
Accident simulation (Steam exposure)
Accident simulation (Steam exposure)
Voltage withstand test
(Equivalent to IEEE Std 383)
Voltage withstand test (JIS C 3005: 2000)
IEEJ Method [10](b) JNES Guide [11]
Radiation aging (10kGy/h or less)
Pre-aging (Simultaneous thermal and radiation exposure at 100oC and 100 Gy/h)
Thermal aging (121oC)
Fig. 1 Test procedures of the IEEJ Method [10] and the JNES Guide [11].
射」)を行った。国内BWR の運転期間延長認可申請の劣化状況評価書では、事故発生後7 日間の積算線量は
大 640kGy とされている[8]。これらを踏まえ、事故発生後7 日間の線量は示俗を含めて800kGy とした。2 2 1 2 電気学会推奨案を参考とした試験
電気学会推奨案[10]を参考として、長さ 2.5m の末劣化の FR-EPDM ケーブル1 本を供試体として、Table 2 に示すように、121°C で532h の熱劣化を行った。劣化処理時間は、国内の BWR に布設されているケーブルの評価において、60 年間の通常運転時の経年劣化を模擬で る条件として示されている試験条件である[14]。その後、通常運転時及び SA 時の放射線条件の模擬は、60Co ガンマ線線量率 10kGy/h で連続して行った。国内の BWR の運転期間延長に際するケーブルの評価においては、通常運転時の積算線量は 132kGy、SA 時の積算線量は 640kGy[14] とされており、これらの合計は、772kGy となる。また、DBA を想定した健全性試験において、通常運転時とDBA 時の線量の合計を模擬する試験の線量は 1010kGy とされている[14]。これらを踏まえ、放射線照射の線量を1010kGy とした。
Table 2 Conditions of pre-aging and accident test and insulation resistance measurement
Cable name
Pre-aging
Radiation exposure (kGy)
Steam exposure
Insulation resistance measurement result
Referenced standard
Temp. (°C)
Test time
(h)
Chemical spray
FR-EPDM
cable
-
0
171
168
-
> 107 Om
- (Untreated)
-
800
171
168
-
> 107 Om
6.2.2 of IEEE383 [15]
100 °C and 100 Gy/h for 6,990 h
800
171
168
-
> 107 Om
JNES Guide [11]
121 °C for 532 h
1010
171
168
-
> 107 Om
IEEJ Method [10]
-
0
171
168
Applied
> 107 Om
- (Untreated)
-
800
171
168
Applied
> 107 Om
6.2.2 of IEEE383 [15]
100 °C and 100 Gy/h for 6,990 h
800
171
168
Applied
> 107 Om
JNES Guide [11]
121 °C for 532 h
1010
171
168
Applied
> 107 Om
IEEJ Method [10]
SiR cable
-
0
171
168
-
> 107 Om
- (Untreated)
-
800
171
168
-
> 107 Om
6.2.2 of IEEE383 [15]
100 °C and 100 Gy/h for 6,241 h
800
171
168
-
> 107 Om
JNES Guide [11]
-
0
171
168
Applied
Measurable until 159 h
- (Untreated)
-
800
171
168
Applied
Measurable until 95 h
6.2.2 of IEEE383 [15]
100 °C and 100 Gy/h for 6,241 h
800
171
168
Applied
Measurable until 38 h
JNES Guide [11]
2 2 1 3 その他
上記以外に、IEEE Std 383 の 6.2.2 節[15]に基づ 経年劣化の模擬を行わずに事故時照射のみ行った長さ2.5mの ケーブル 1 本並びに経年劣化の模擬及び事故時照射を行わない新品末劣化ケーブル 1 本を準備し、2.2.2 の蒸気暴露に供試した。
2 2 2 蒸気暴露
Fig. 2(a)に示すように、本研究で試験した2 のケーブルが使用されていると考えられる国内の BWR では、SA 時の原子炉格納容器内の 麻温 は、事故発生直後の短期間の温 ヒーク及び のプラントの初期の温 上昇を除 と、概ね 170°C 以下で推移する[16-19]。また、Fig. 2(b)に示すように、 大 力は 0.640MPaG である[16-19]。本研究では、これらの条件を保守的に模擬する試 験として、温 171°C の 蒸気による蒸気暴露を 168 時間行った(以下「試験条件1」)。さらに、同様の蒸気暴 露中において、実プラントにお るスプレイ溶液を模擬する pH 13 の NaOH 水溶液を蒸気暴露容器内に噴霧
(以下「化学スプレイ」)する試験を行った(以下「試験 条件2」)。化学スプレイの流量は、電気学会推奨案[10]に 基づ 、6.1?/min・m2 とした。
2 2 3 絶縁抵抗測定
日本工業規格「ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法」
(JIS C 3005: 2000、4.7 項)[20]に準じ、2.2.2 の蒸気暴露中に、コネクタを介して蒸気暴露装置外に引 出したケーブルの絶縁芯線 3 本のうち 2 本を短絡させた上で、他
250
200
Temperature (oC)
150
100
50
0
-10
1.0
0.8
Pressure (MPaG)
0.6
0.4
0.2
0.0
-10
020 4060 80 100 120 140 160 180 20
Time (h)
Temperature
020 40 60 80 100 120 140 160 180 20
Time (h)
Pressure
の1 本との間に直流電 大100V を印加し、電流を2 ごとに測定した。なお、印加電 は、試験対象ケーブルが事故時の計装系で使用される際の電 が数V から数十V であることを踏まえて設定した。印加電 値を電流値で除すことによってケーブルの絶縁抵抗が得られるが、こ
Fig. 2. Various temperature and pressure profiles; 1) steam exposure under conditions 1 and 2 of this study, 2) in a primary containment vessel under the postulated SA for BWRs in Japan [16-19].
1014
Insulation resistance per meter (Om)
1013
1012
1011
1010
109
108
107
106
105
104
-10 020 40 60 80 100 120 140 160 180 200
Time (h)
FR-EPDM cable
1014
1013
Insulation resistance per meter (Om)
1012
1011
1010
109
108
107
106
105
104
-10 020 40 60 80 100 120 140 160 180 200
Time (h)
FR-EPDM cable
1014
Insulation resistance per meter (Om)
1013
1012
1011
1010
109
108
107
106
105
104
-10 020 40 60 80 100 120 140 160 180 200
Time (h)
1014
1013
Insulation resistance per meter (Om)
1012
1011
1010
109
108
107
106
105
104
-10 020 40 60 80 100 120 140 160 180 200
Time (h)
SiR cable(b) SiR cable
Fig. 4.Insulation resistances per meter as a function of
Fig. 3. Insulation resistances per meter as a function of time, during the saturated steam exposure at 171 °C for 168 h (condition 1), measured for the two cables.
time, during the saturated steam exposure at 171 °C for 168 h with spraying of aqueous solution of NaOH (condition 2), measured for the two cables.
(a) Cables after the steam exposure(b) Surface of SiR cables
Fig. 5. Cables after the saturated steam exposure at 171 °C for 168 h with spraying of aqueous solution of NaOH (condition 2). The red sqare in (a) indicates the zoomed area shown in (b).
の値は、試験ケーブルの長さに する。そこで、この値にケーブル長を乗じてケーブル長 1 メートル当たりの絶縁抵抗(以下「換算絶縁抵抗」という。)を算出した。
試験結果
3 1 蒸気暴露温度及び圧力
蒸気暴露時の温 及び 力をそれぞれFig. 2(a)及び(b) 中に示す。試験条件2 では、34h 程 まで温 及び 力が目 値よりも麻 なっているが、それ以 は、試験条件1 と2 は同等の温 及び 力となっている。
3 2 絶縁抵抗測定
3 2 1 試験条件1
試験条件1(171°C 蒸気による蒸気暴露、化学スプレイなし)にお る、換算絶縁抵抗の推移を Fig. 3 に示す。Fig. 3 では、蒸気暴露装置内の温 が 171°C 以上となった時点を開始時間(0h)として図示している。換算絶縁抵抗は、蒸気暴露前は、1011 1014Om 程 であるが、蒸気暴露開始後は、107 108Om 程 に 下し、60h 程 までほ 定で推移した後、 やかに 加し、
168h 時点においては、108 109Om 程 となった。このような は、ケーブル や劣化処理の にらず、同様である。 のケーブルにおいて、蒸気暴露終了直後から換算絶縁抵抗が 下するが、その後上昇した。
3 2 2 試験条件2
試験条件2(171°C 蒸気による蒸気暴露、化学スプレイあり)にお る、換算絶縁抵抗の推移を Fig. 4 に示す。Fig. 4 では、蒸気暴露装置内の温 が171°C 以上となった後に、NaOH 水溶液噴霧を開始した時点を開始時間
(0h)として図示している。換算絶縁抵抗は、蒸気暴露前 は、1012 1014Om 程 であるが、蒸気暴露開始後は、107
108Om 程 に 下した後、30h 程 から やかに 加した。FR-EPDM ケーブルについては、168h 時点にお る換算絶縁抵抗は、108 109Om 程 となった。 のケーブルにおいて、蒸気暴露終了直後から換算絶縁抵抗が下した。 方、SiR ケーブルについては、同時劣化と事故時照射を行ったケーブルは38h、事故時照射を行ったケー ブルは95h、末劣化のケーブルは 159h 傍で絶縁抵抗の測定が不可能となった。
考察
実用絶縁ゴムの電気伝導は、絶縁体中に存在する各 添加剤、吸湿が寄与するイオン伝導によるものとされて
いる[21, 22]。また、これまでの研究から、蒸気暴露中のケーブルの絶縁抵抗 下には、蒸気が寄与していることが示唆されている[6, 7]。Fig. 3 及び4 に示すように、いずれのケーブルについても、NaOH 水溶液噴霧の 無にかかわらず、蒸気暴露開始後に絶縁抵抗が 下しており、蒸気が寄与していると考えられる。
FR-EPDM ケーブルについては、試験条件 1 及び 2 の
168h までの蒸気暴露中において、換算絶縁抵抗は、概ね
107 108Om で推移しており、NaOH 水溶液噴霧の 無にかかわらず同様の挙動を示している。このことから、171°C の 蒸気による 168h の蒸気暴露中にお る pH
13 のNaOH 水溶液噴霧がFR-EPDM ケーブルの絶縁抵抗に与える影響は さい。なお、 のケーブルにおいて、蒸気暴露終了直後から換算絶縁抵抗が 下する。これは、蒸気暴露終了時の操作による温 及び 力の変動に関係すると思われるが、原因については、今後調べる。
方、SiR ケーブルについては、試験条件2 において、同時劣化と事故時照射を行ったケーブルは38h、事故時照射を行ったケーブルは95h、末劣化のケーブルは 159h 傍で絶縁抵抗測定が不可能となる。また、ケーブルの心線間の電位差が、同時劣化と事故時照射を行ったケーブルでは 79h、事故時照射を行ったケーブルでは 142h、末劣化のケーブルでは160h でほ 0 となったことが確認されている。絶縁抵抗の測定が不可能となる時間と電位差が0 となる時間に差がある理由は明らかではないが、遅 とも電位差が 0 となる時間までにケーブルの絶縁体の絶縁機能が失われたと考えられる。
Fig. 5 に試験条件2 の蒸気暴露試験後のケーブルの外観を示す。Fig. 5(b)に示すように、SiR ケーブルにおいては、ガラス編組シース及び絶縁体が激し 劣化し、 では導体が露出している。本報では の は するが、試験条件 1 の蒸気暴露試験後の SiR ケーブルでは、Fig. 5(b)に示すようなシース及び絶縁体の損傷は見られない。
シリコーンゴムは、麻温の強アルカリにより解重合し て 解する[23, 24]。原子力ケーブルの絶縁材料と同等の配合のシート状のシリコーンゴムは、160°C の pH9.5
13.4 の水溶液中に すると、 解が 行して重量減が起こること及び pH が大 いほど重量減 量が大なることが報告されている[25]。また、麻温蒸気暴露中の アルカリ性溶液噴霧によっては、シート試料は重量減するが面積変化は さいことが報告されており、主に試料表面の 解起こり、重量減 したとされている[26]。これらのことから、試験条件2 では、171°C の麻温蒸気環境
において pH 13 の NaOH 水溶液が噴霧されることから、ケーブル絶縁体のシリコーンゴムが外表面 から解してFig. 5(b)のように損傷し、ケーブルの絶縁機能が喪失したと考えられる。
まとめ
国内の BWR プラントにお る SA 時に 用される化学スプレイが安全系ケーブルの絶縁性能に及 す影響を
することを目的として、新品末劣化の又は模擬的に経年劣化を 与した FR-EPDM ケーブル及び SiR ケーブルに対し、171°C の 蒸気による168h の蒸気暴露中にpH 13 の NaOH 水溶液を噴霧しながらケーブルの絶縁抵抗を測定した。その結果、次のことが かった。
FR-EPDM ケーブルについては、本研究で行った化学スプレイによるケーブルの絶縁性能への 意な影響は見られない。
SiR ケーブルについては、本研究で行った化学スプレイ及び麻温蒸気暴露においては、シリコーンゴム絶縁体の 解による劣化が 行し、絶縁機能が喪失する。今後、蒸気暴露試験後のケーブルの劣化状態の 析を行い、NaOH 水溶液噴霧がケーブル絶縁体の麻 子構造や
機械的特性に与える影響について調べる。
参考文献
原子力規制 会、 実用発電用原子炉及びその属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則 (第四十三条)”、平成25 年原子力規制 会規則第 5 号、2013.
東京電力ホール一`ングス、 柏崎刈羽原子力発電所6 号及び7 号炉 重大事故等対処設備について”、第428 回原子力発電所の新規制基準 合性に係る審査会合、資料1-2、p.3.7-58、2017.
日本原子力発電、 東 第二発電所 重大事故等対の 性評価”、PS-C-1 改86、p.添 3.1.3.1-31、2018.
http://www.nsr.go.jp/data/000229792.pdf (2019 年5
10 日確認)
中国電力、 原子力発電所2 号炉 重大事故等対
性評価成立性確認 補足説明資料”、EP- 015(補)改21、p.補1.15-1 11、2016.
http://www.nsr.go.jp/data/000161087.pdf (2019 年5
10 日確認)
中 電力、 岡原子力発電所4 号炉 重大事故等対
の 性評価 補足説明資料”、H4-NP-027-R26、
p.補1.16-1 12、2016.
http://www.nsr.go.jp/data/000161089.pdf (2019 年5
10 日確認)
T. Minakawa, M. Ikeda, N. Hirai, and Y. Ohki, “Insulation Performance of Safety-related Cables for Nuclear Power Plants under Simulated Severe Accident Conditions,” IEEJ Trans. Fundam. Mater., Vol. 139, No. 2, pp.54-59, 2019.
皆川武史、池田雅昭、平井直志、大木義路、 沸騰
水型原子炉用安全系 ケーブルの麻温蒸気暴露中及びその後の絶縁性能”、日本保全学会第15 回学術講演会要旨集、福岡、pp.465-470、2018.
日本原子力発電、 東 第二発電所運転期間延長認可申請書(発電用原子炉施設の運転の期間の延長) の 補正について(添 書 二 東 第二発電所劣化状況評価書)”、発室発第122 号、2018. http://www.nsr.go.jp/data/000250027.pdf (2019 年5 10 日確認)
Institute of Electrical and Electronics Engineers: “IEEE Standard for Type Test of Class 1E Electric Cables, Field Splices, and Connections for Nuclear Power Generating Stations”, IEEE Std 383-1974, pp. 10-12, 1974.
電気学会、 原子力発電所用電線・ケーブルの環境試験方法ならびに耐延焼性試験方法に関する推奨案”、電気学会技術報告(II )第139 号、1982.
原子力安全基盤機構、 原子力発電所のケーブル経年劣化評価ガイド”、JNES-RE-2013-2049、2014.
原子力規制 会、 実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対 及び格納容器破損防止対 の 性評価に関する審査ガイド(2.2.1 項(4)及び3.2.1 項(4))”、平成25 年6 19 日原規技発第13061915 号、pp.
3、14、2013.
原子力安全基盤機構、 原子力プラントのケーブル経年変化評価技術調査研究に関する 終報告書”、JNES-SS-0903、pp. 39-124、179-245、2009.
日本原子力発電、 東 第二発電所 劣化状況評価
(電気・計装設備の絶縁 下)補足説明資料”、
TKK 補-III-5 改23、2018.
http://www.nsr.go.jp/data/000252500.pdf (2019 年5
10 日確認)
IEEE, “IEEE Standard for Qualifying Electric Cables and Splices for Nuclear Facilities”, IEEE Std 383-2015, p.15 2015.
日本原子力発電、“東 第二発電所発電用原子炉設
置変更許可申請書(発電用原子炉施設の変更)本文及 び添 書 の 変更”、添 書 十、pp.10-7.2-
74、10-7.2-108、2018.
http://www.nsr.go.jp/data/000233534.pdf (2019 年5
10 日確認)
東京電力、“柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(6 号及び7 号原子炉施設の変更)本文及び添 書 の 補正について”、添 書 十、pp.10-7-2-14、10-7-2-184、2017. http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11105588/www.nsr. go.jp/data/000194746.pdf (2019 年5 10 日確認)
中国電力、“ 原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2 号発原子炉施設の変更)”、添 書
十、pp.10-II-115、10-II-127、10-II-128、2013.
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11105588/www.nsr. go.jp/data/000031478.pdf (2019 年5 10 日確認)
電力、“志 原子力発電所用原子炉設置変更許
可申請書(2 号発電用原子炉施設の変更)”、添 書十、pp.10-4-148、10-4-149、2014.
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11105588/www.nsr.
go.jp/data/000028442.pdf (2019 年5 10 日確認)
日本工業規格、 ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法”、JIS C 3005: 2000、2000.
志 、 実用ゴムの電気性能”、日本ゴム 会
38 10 号、pp. 930-939、1965.
家田正之、沢五郎、 麻 子の電気伝導”、電気学会
89 968 号、pp. 812-825、1969.
、 シリコーン ンドブック”、日 工業新聞社、p. 309、1990.
W. Noll, “Chemistry and technology of silicone”, Academic Press, p. 514, 1968.
木 明ら、 放射線照射したシリコーンゴムの
液中にお る劣化”、電気学会絶縁材料研究会資料、EIM-85-161、pp.83-92、1984.
日 ら、 原子炉用電線 の健全性試験法に関する研究-SEAMATE II を用いた絶縁材料のLOCA 時の劣化の研究-”、日本原子力研究所、JAERI-M 88-178、p.133、1988.