埋込金物に対するAEセンサを用いた打音検査の効率化に 向けた取組み2

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カテゴリ: 第17回
埋込金物に対する AE センサを用いた打音検査の効率化に向けた取組み2 Improvement of the efficiency of hammering inspection using AE sensor for embedded hardware 2 原子燃料工業㈱ ○小川良太 Ryota OGAWA Member 原子燃料工業㈱ 石井元武 Motomu ISHII Member 原子燃料工業㈱ 藤吉宏彰 Hiroaki FUJIYOSHI Member 原子燃料工業㈱ 礒部仁博 Yoshihiro ISOBE Member 日本原燃㈱ 鈴木峻史 Takashi SUZUKI 日本原燃㈱ 服部功三 Kouzou HATTORI 日本原燃㈱ 関口昭司 Shouji SEKIGUCHI 日本原燃㈱ 三浦進 Susumu MIURA Non-destructive evaluation technique was developed to identify the integrity of embedded hardware using digital hammering inspection with AE (Acoustic Emission) sensor. The inspection can diagnose the fixed state of the embedded hardware in terms of its natural frequency and vibration duration. Mockup tests were conducted to investigate the relationship between the change in vibration duration and the fixed state under various loads including external tensile loads and thermal loads when welding supports on the hardware. Keywords: Embedded Hardware, Hammering Inspection, Acoustic Emission Sensor, Efficiency Improvement 1.はじめに 2015 年8 月に日本原燃株式会社再処理施設にて、一般 共同溝の蒸気配管を支持する埋込金物(図1 参照)に浮き上がりが発見された。浮上った埋込金物を調査した結果、ジベルが欠損した不適切な施工であることが判明した1。日本原燃株式会社では、本事象を受け、再処理施設の埋込金物数量約52.8 万枚を調査した結果、17.6 万枚については施工記録が不十分であるため、現品点検による健全性評価が必要と判断し点検を進めている。 現品点検では、超音波探傷(UT)検査によりジベルの長さを測定することで健全性評価を実施したが、埋込金 図 1 埋込金物と埋込金物の設置概要図 連絡先:小川良太、〒590-0481 大阪府泉南郡熊取町朝代西1 丁目950 番地 原子燃料工業株式会社 E-mail: ryo-ogawa@nfi.co.jp 物に溶接された耐震サポート等により埋込金物のジベル直上にUT センサを設置できず、UT 検査できないジベルが多数存在した。これらのUT 検査できないジベルに対して、健全性評価を実施する手法として、著者らはAE (Acoustic Emission)センサを用いた打音検査(以下、AE 打音検査という)としてハンマー打撃により発生する音響振動の持続時間および周波数により埋込金物の固定状態が判断できる健全性評価技術を開発し2、日本原燃株式会社の再処理施設における現場検査に適用している3。 前報4 では、AE 打音検査の効率化に向けた検討として、これまでの経緯とこれからの計画として、過去のAE 打音検査結果のデータ分析、信号解析の自動化システムの開発、高所・狭隘部検査治具の開発について報告した。 本報では、AE 打音検査を主体とした健全性評価の実現を目指すにあたり、埋込金物の固定状態変化と荷重影響について、AE 打音検査時の振動持続時間との関係を把握することを目的にモックアップ試験体により評価した結果を報告する。 2.モックアップ試験 埋込金物は、コンクリート打設した直後から有意な応力や荷重負荷を受けるまでの間は、コンクリートとの相 互作用が「完全密着」の状態であり、強固に固定されている。この「完全密着」状態の変化に伴うAE 打音検査における振動持続時間との関係を把握するためにモックアップ試験体を用いた試験を実施した。 埋込金物/コンクリート拘束状態変化の影響 埋込金物/コンクリート間の拘束状態(接触条件)において「完全密着」と「接触」による違いが振動持続時間に及ぼす影響を確認するため、埋込金物のプレート部側面および裏面に発泡スチロール等を固定(養生)し、意図的に「接触」状態を模擬した試験体を作製した。 作製したモックアップ試験体に対して、AE 打音検査により得られた振動持続時間を図2 に示す。 図2 各試験体における振動持続時間 埋込金物プレート部において、側面および裏面の両方を養生した位置のAE 打音検査結果では、コンクリート打設直後でも振動持続時間が20ms 程度と十分長くなることが確認でき、接触条件が振動持続時間に影響していることが確認できた。 架台溶接による影響 2.1 より、埋込金物/コンクリート間の拘束状態が変化すると振動持続時間も変化することが確認できた。拘束状態の変化は、架台溶接等による熱影響および埋込金物への引張/せん断等の荷重負荷により変化することが想定される。そこで、架台溶接による熱影響について、モックアップ試験体を用いて確認した。P タイプ埋込金物 (プレートサイズ250×250×t16mm)をコンクリートに打設して、架台溶接前と溶接後におけるAE 打音検査による振動持続時間について確認した。その結果を図3 に示す。 図3 溶接前および溶接後の振動持続時間 架台溶接前では、すべて10ms 程度の振動持続時間であったが、架台溶接後は概ね20ms 以上に増加することが確認できた。また、架台溶接位置により、振動持続時間の変化量に差が有ることが確認できた。 AE 打音検査の振動持続時間と荷重値の関係 埋込金物/コンクリート間の拘束状態が「完全密着」 から「接触」に変化し、浮き上がりが発生するまでの強度が不明なため、「完全密着」状態の埋込金物に対して、静的な引張荷重を負荷し、荷重、振動持続時間、浮き上がりに至るまでの状態変化についてモックアップ試験体を用いて確認した。試験は、コンクリートに埋設された Q タイプ埋込金物(プレートサイズ200×200×t12mm) を対象とし、プレート面鉛直方向に引張荷重を徐々に増加させながら負荷した。試験には、ジベル無、ジベル全数プレートから25mm 位置で切断、50mm 位置で切断、1 本は健全で3 本を25mm 位置で切断、健全の5 種類の埋込金物を用意した(図4 参照)。 図4 試験に用いた埋込金物条件一覧 静的な引張荷重負荷による試験体毎のひび割れ発生荷重値の一覧を表1 に示す。ジベル欠損を含む許容荷重値より低い値でひび割れが発生することが確認できた。 表1 各試験体におけるひび割れ発生荷重値 試験体 番号 試験体概要 ひび割れ 発生荷重値 1 プレートのみ 25.0 kN 2 25.0 kN 3 ジベル全欠損残存長さ25mm 31.4 kN 4 35.0 kN 5 ジベル全欠損残存長さ50mm 40.0 kN 6 40.0 kN 7 ジベル一本健全他 残存長さ25mm 40.0 kN 8 40.0 kN 9 健全 - 10 - また、一例として、ジベル全欠損25mm のモックアップ試験体における、静的引張荷重値と振動持続時間の変化および代表タイミングにおける埋込金物表面写真を図5 に示す。 振動持続時間 [ms] れは、埋込金物/コンクリート間の拘束状態がひび割れ発生直前に「完全密着」から「密着(一部接触)」に変化し、振動持続時間が増加したと考えられる。 静的な引張荷重負荷におけるジベル状態の異なる試験体毎の負荷荷重値と振動持続時間の関係をまとめたグラフを図6 に示す。図中にひび割れまたは埋込金物の浮き上がりが確認されたタイミングも記載した。 (左)(右) 図5 ジベル欠損モックアップの引張荷重負荷結果ジベル欠損の埋込金物では、許容荷重値(40.18kN)よ り低い荷重値(35kN)で埋込金物周囲のコンクリートにひび割れが確認された。また、ひび割れ発生直前の30kN までは振動持続時間は10ms 以下であったのに対し、ひび割れ発生直前からは振動持続時間が増加すると共に、埋込金物の浮き上がり量も増加することが確認できた。こ 健全試験体では、許容荷重値(40.18kN)を超えても外観上変化は無く、振動持続時間も10ms 程度を維持していることが確認できた。このことから、健全な埋込金物では、許容荷重値までの引張静的荷重が負荷されたとしても、外観上の変化は無く、埋込金物/コンクリート間の拘束条件も「完全密着」状態であると想定され、浮き上がる可能性が無いことが確認できた。一方、ジベル欠損を含む埋込金物では、ジベル欠損の程度に依存するが許容荷重値までの引張静的荷重により埋込金物周囲のコンクリートにひび割れが確認され、振動持続時間が増加することが確認できた。また、健全を含まず全てのジベルが欠損した埋込金物では、ジベル残存長さが短い埋込金物ほど、低い負荷荷重値で浮き上がりが発生した。 ジベル全数欠損の埋込金物における引張荷重負荷による埋込金物状態毎の埋込金物周囲のコンクリートの外観およびAE 打音検査結果について図7 に整理した。埋込金物の供用の順番に合わせ、コンクリート打設後、架台溶接後、埋込金物の供用による支持部材の重量等による埋込金物/コンクリート間の状態変化進展後、コンクリート表面ひび割れ発生後、埋込金物浮き上がり発生後の5 条件を左から順番に記載した。埋込金物は、コンクリ打設後、架台溶接/供用による荷重負荷の段階を経て、外観変化としては、ひび割れの発生、埋込金物周囲のコンクリート片のはく落、埋込金物の浮き上がりの順番で発生することが判明した。また、各段階でのAE 打音検査で は、架台溶接や埋込金物/コンクリート間の状態変化進展までは振動持続時間が短く、ひび割れ発生後は振動持続時間が長くなり、周波数判定可能となる事が判明した。 3.まとめ 静的引張荷重負荷による埋込金物がコンクリートに打設されてから、浮き上がりが発生するまでの状態変化とAE 打音検査を用いた健全性評価の関係について、モックアップ試験を行い、その結果について整理した。 埋込金物は荷重負荷により埋込金物/コンクリート間の「完全密着」状態から「密着(一部接触)」状態を経て 「接触」状態となり、これら状態変化に合わせて、外観変化としてコンクリートのひび割れ発生、一部はく落、埋込金物の浮き上がりと状態が変化し、振動持続時間も増加することが確認できた。 今後は、より現場状況に近い動的荷重負荷における外観変化および振動持続時間の変化について確認すると共に、供用されている埋込金物の外観調査結果を基に、埋込金物の浮き上がりの可能性を判定できる可能性について検討し、埋込金物の健全性評価手法の効率化を目指す。 参考文献 日本原燃株式会社, “日本原燃(株)六ヶ所再処理施設の一般共同溝における一般蒸気系の埋込金物の浮き上がりに関する面談”, 被規制者等との面談概要・資料, 2015.12. 三浦進, 関口昭司, 服部功三, 小川良太, 藤吉宏彰, 礒部仁博,“AE センサを用いた埋込金物検査 その1 モックアップ試験”, 日本保全学会第15 回学術講演会要旨集, pp.113-120, 2018. 三浦進, 関口昭司, 服部功三, 小川良太, 匂坂充行, 礒部仁博,“AE センサを用いた埋込金物検査 その2 現場検査”, 日本保全学会第15 回学術講演会要旨集, pp.121-124, 2018. 三浦進, 関口昭司, 服部功三, 小川良太, 匂坂充行, 礒部仁博,“埋込金物に対するAE センサを用いた打音検査の効率化に向けた取組み”, 日本保全学会第16 回学術講演会要旨集, pp.131-134, 2019. 図 7埋込金物に引張荷重が生じた場合の固定状態変化について
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