埋込金物に対するAEセンサを用いた打音検査の効率化に向けた取組み

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カテゴリ: 第16回
埋込金物に対する AE センサを用いた打音検査の効率化に向けた取組み Improvement of the efficiency of hammering inspection using AE sensor for embedded hardware 日本原燃掬 O三浦進 Susumu MIURA 日本原燃掬 関口昭司 Shouji SEKIGUCHI 日本原燃掬 服部功三 Kouzou HATTORI 原子燃料工業掬 小川良太 Ryota OGAWA Member 原子燃料工業掬 匂坂充行 Mitsuyuki SAGISAKA 原子燃料工業掬 儀部仁博 Yoshihiro ISOBE Member Non-destructive evaluation technique was developed for embedded hardware using hammering inspection with AE (Acoustic Emission) sensor. The integrity of the studs welded on the hardware is judged from both the vibration duration of the embedded hardware and the frequency analysis of the vibration signal. The hammering inspection has been applied to the reprocessing plant of JNFL (Japan Nuclear Fuel Limited) for three years and we are now planning the improvement of the efficiency of the inspection in various ways. Keywords: Embedded Hardware, Hammering Inspection, Acoustic Emission Sensor, Efficiency Improvement はじめに 日本原燃株式会社再処理施設において、2015 年8 月に一般共同溝の蒸気配管を支持する埋込金物(図1 参照) に浮き上がりが発見され、調査の結果、ジベルが欠損し ており不適切な施工であることが判明した1。埋込金物の不適合事象の対応として再処理施設の埋込金物数量約 52.8 万枚を調査した結果、適切な施工記録が確認された埋込金物と点検対象外の埋込金物の合計が約35.2 万枚、 り17.6 万枚については施工記録が不 であるため、現品点検による健全性評価が必要と判断した。 現品点検では、ジベルの欠損を確認する方法として超 音波探傷(UT)検査を実施し、その結果、一般共同溝の UT 検査結果では規格外の埋込金物が約200 枚確認された1。一方で、UT 検査では埋込金物のジベル直上にセン 図 1 埋込金物と埋込金物の設置概要図 連絡先:三浦進、〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所村大字尾駁字沖付4 番地108 日本原燃株式会社 E-mail: susumu.miura@jnfl.co.jp サを設置し測定する必要があるが、耐震サポート等が設置されていることから、UT 検査用のセンサをジベル直上に配置できず、UT 検査できないジベルが多数存在している。これらのUT 検査できないジベルについては、欠損していない事を証明できないため、著者らはAE(Acoustic Emission)センサを用いた打音検査(以下ではAE 打音検査)としてハンマー打撃により発生する音響振動の持続時間および周波数により埋込金物の固定状態が判断できる健全性評価技術を開発し2、日本原燃株式会社の再処理施設にお る現場検査に適用している3。 本報では、その後のAE 打音検査の効率化に向 た検討、計画について報告する。 これまでの経緯 埋込金物のAE 打音検査技術の開発2 AE 打音検査には、図2 に示すAE センサ、計測ボックス、波形処理装置(タブレットPC)などより構成されているAE 打音現場検査システムを用いた。 AE 打音検査では、埋込金物の健全性を評価するための判定基準を設定する必要があったことから、モックアッ プ試験を行い判定基準値を定めた。モックアップ試験体は、再処理工場において不適切に施工された埋込金物を確実に検知できるよう、健全な埋込金物と不適合な状態 図 2 AE 打音現場検査システム を模擬した埋込金物を製作した。 モックアップ試験では、埋込金物とコンクリート間の固定状態変化をAE 打音検査により検知できることが確認された。図3 に示すように埋込金物をコンクリート埋設する は されていないため振動持続時間が に長い。それを、コンクリートに埋設すると埋込金物が強固に されるため、振動持続時間が数ミリ秒と に短い時間で減衰し、周波数 布のヒークもほとんど現れない。そこに荷重が負荷されると埋込金物とコンクリート間の固定状態に変化が生じ、振動持続時間が増大する とともに、周波数 布のヒークが高くなりシャープなヒークが現れるようになる。この時、健全な埋込金物の場 合は高い周波数帯域にヒークが現れるが、ジベルが欠損 している埋込金物は、出現ヒークの周波数帯域が低周波側にシフトするため健全性判定が可能になる。 モックアップ試験では、以下の2 点のパラメータを評価することで健全性判定が可能になることを確認したことから、各パラメータの判定基準値を設定した。 ① 振動持続時間のしきい値(20 ミリ秒):埋込金物のコンクリート埋設時点からの固定状態に変化(荷重負荷の有無)状態を判定する。 ② 周波数ヒークのしきい値(1,900Hz):埋込金物のジベルが健全であるか欠損しているか判定する。 再処理施設における現場検査3 再処理施設の埋込金物のうち、UT 検査だ では健全性を判断できないものが約6 千枚あったため、AE 打音検査で補完して健全性判定を実施した。 AE 打音検査では、埋込金物1 枚あたり 準 に8 所の計測点を設定し、耐震サポート等の により計測できない場合を除き計測した。 AE 打音検査による埋込金物の健全性判定は、図4 の判定のフローを用いて実施した。まず埋込金物に溶接施工 されている個々のジベルについて表1 に示す判定を行い、次に表2 に示す全ジベルの判定結果を組み合わせ、A~E の5 段階評価を行った。 なお、現場に設置されている埋込金物には、モックア 図 3 埋込金物の固定状態による振動持続時間・周波数分布の変化 :現場検査においては、上記判定値を しないものであっても、その原 が明確であるものについてはエンジニアリン‘ジャッジにより健全性を評価 図 4 埋込金物の判定方法 表 1 ジベル毎の判定記号 全体凡例 健全 O 荷重発生無 . NG X 未確認 【測定不可l 表 2 埋込金物毎の評価記号 判定 判定項目 ジベル判定結果の組合せ 健全 荷重発生無 NG 未確認 A 全数健全 O B1 一部健全 O . B2 一部健全 O (.) B3 一部健全 O (.) X ( ) C1 荷重発生無 . C2 荷重発生無 . D 追加情報無 E NG (.) X ( ) ップ試験体と形状が大きく異なるものおよび取り付く耐震サポート 体が振動し、外 要 となるものがあったが、追加試験を行いエンジニアリン‘ジャッジにて健全性判定を行ったものもある。 AE 打音検査を実施した約6 千枚の埋込金物の結果は、表3 に示すとおり対象数の約87%について健全性判定を 表 3 AE 打音検査の解析対象とAE 評価結果の割合 図 対象毎のジベル の振動持続時間 行うことができた。UT では測定条件が整わず計測できなかったものでもAE 打音検査では計測できたことで本方法が に有効であることが確認された。 対象 対象割合 A 全数健全 B 一部健全 C 荷重発生無 D 追加情報無 E NG 建屋 84 % 19 % 20 % 35 % 10 % 0.02 % 洞道 11 % 3 % 2 % 3 % 2 % 0 % その他 5 % 1 % 1 % 3 % 0 % 0 % 合計 100 % 22 % 24 % 41 % 13 % 0.02 % 87 % また、個々のジベルの振動持続時間に着目すると、図5 に示すとおり約82%のジベルの振動が20ミリ秒未 で減衰している結果が得られた。振動持続時間が20 ミリ秒未 であるということは、施工から15 年以上経過しているにも関わらず埋込金物がコンクリートに密着した状態が維持され、固定状態が変化するような荷重が発生していないことを表している。 AE 打音検査は、検査時点での埋込金物の浮き上がりの可能性を判定するだ でなく、固定状態の変化を確認する方法としても利用できることが かった。 AE 打音検査の効率化に向けた取組み これまで、埋込金物の健全性確認はUT を主体に取り組まれており、UT 検査が出来ない 所を補完するため、代替検査方法としてAE 打音検査の開発からスタートした。しかし、今回の結果を踏まえるとAE 打音検査は、UT よりも判定可能な対象数が多く、UT を行わずとも AE 打音検査だ で健全性を判定できる実績が得られた。 今後、未調査 の記録不 な埋込金物に対して継続 に健全性確認調査を行う必要があるが、AE 打音検査を主体とした健全性判定に移行することを考えている。 そのためには、現場検査の経験を踏まえ更なる技術開発を行い、効率化および高度化を図っていく必要があることから、現在以下の取り組みを進めている。 過去のAE 打音検査結果のデータ分析 埋込金物の計測データは、計測点数にすると約3万点 に及ぶため、埋込金物の種類、耐震サポート種別、建屋、 屋内外、設置場所等の視点からデータ 析を行い、効率化および高度化を図っていく予定である。現在、AE 打音検査にお る埋込金物の計測数は8 所/枚を基準としているが、過去データを見ると固定状態の良いものは何 れの計測結果も振動持続時間が20 ミリ秒未 であるため、振動しやすい 所を代表点として評価することができれば効率化を図ることができる。 図 6 部位毎のAE 計測 単位判定結果の数量 例えば、図6 は埋込金物の設置位置毎に振動持続時間を比較したものであるが、「床」>「壁」>「天井」の順 に20 ミリ秒未 の割合が高くなっている。これは、これは、埋込金物の設置位置により引張荷重のかかり方が異なることが影響しているものと考えられる。特に天井面 の埋込金物において、引張荷重が全面にかかったことで密着状態に変化が生じている傾向が見て取れる。 また、他の視点についても同様のデータ 析を行うことで、計測データもしくは作用する荷重の傾向が埋込金物とコンクリート間との密着状態に相関性が認められれば、埋込金物の検査精度の向上につながっていくものと考えている。 信号解析の自動化システムの開発 現場検査において、埋込金物に設置されている耐震サポートによっては、音響振動が大きく影響するケースが見られた。埋込金物は健全に施工されていたが、耐震サ ポートの振動ヒークの周波数帯域が低周波側に出現し、欠損ジベルと誤判定されるような状況であった。 このようなケースでは、状態をシミュレートしたモックアップ試験を行い、原 を究明して個別評価により、エンジニアリン‘ジャッジしていたが、判定に時間を要したことから、エンジニアリン‘ジャッジデータを判定ロジックに組み込み、可能な限り 動化する信号システムの開発を行う。 高所・狭陰部検査治具の開発 埋込金物の設置位置には、高所、狭監部に存在する埋込金物が多く存在するが、 場を設置することなくAE 打音検査を実施できるよう治具の開発を行う。 参考文献 日本原燃株式会社, “日本原燃(株)六ヶ所再処理施設の一般共同溝にお る一般蒸気系の埋込金物の浮き上がりに関する面談”, 被規制者等との面談概要・資料, 2015.12. 三浦進, 関口昭司, 服部功三, 小川良太, 藤吉宏彰, 儀部仁博,“AE センサを用いた埋込金物検査 その1 モックアップ試験”, 日本保全学会第15 回学術講演会要旨集, pp.113-120, 2018. 三浦進, 関口昭司, 服部功三, 小川良太, 匂坂充行, 儀部仁博,“AE センサを用いた埋込金物検査 その2 現場検査”, 日本保全学会第15 回学術講演会要旨集, pp.121-124, 2018.
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