AgXの外気温度域におけるヨウ化メチル吸着性能と応用

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カテゴリ: 第15回
AgX の外気温度域におけるヨウ化メチル吸着性能と応用 Methyl iodine adsorption characteristics and applications of AgX in the outside air temperature range ラサ工業株式会社 石川慶浩 YoshihiroIshikawa Member ラサ工業株式会社 小林稔季 ToshikiKobayashi Member ラサ工業株式会社 王吉豊 JifengWang Member ラサ工業株式会社 宇津山雄一郎 YuichiroUzuyama Member ラサ工業株式会社 遠藤好司 KojiEndo Member The nonflammable adsorbent AgX shows excellent adsorption characteristics of methyl iodide under harsh gas conditions like venting gas released from a nuclear power plant. Furthermore, it also exhibited good adsorption performances even in the temperature range of room temperature to 40 degrees below zero Celsius. Keywords: AgX, Adsorbent, Severe accident measure, Radioactive iodine, Nuclear power plant, Outside temperature range, Air clean system 1 緒言 原子力発電所のシビアアクシデント発生時、フィルターベントなど除去設備によって、ベントガスに含まれる放射性ヨウ素のうち、無機ヨウ素は除去されますが、有機ヨウ素は除去が難しく、大気中に拡散することが懸念されています。外気を取り込むための空気浄化システム の建屋などへの取り付けを想定した場合、外気温度域で良好なヨウ素吸着性能を持つ吸着剤が求められます。 弊社では過酷なベントガス条件下(高温高湿度下)でも、有機ヨウ素の一つであるヨウ化メチルに対して、良好な吸着性能を示す不燃性の吸着剤AgX を開発し、ベント用の吸着剤として採用されました。このAgX について今回の報告では、外気温度での使用を想定した常温からマイナス40°C の温度域でのヨウ化メチルの吸着性能、及びヨウ化メチルがAgX に吸着することで生成するメタノールの吸着と脱離について報告いたします。またモバイル式の空気浄化設備、及び核シェルター等への利用についても提案いたします。 2 試験 2.1 常温でのAgX のヨウ化メチル吸着率 吸着率の測定はガス状のヨウ化メチルを使用し、ガス 温度30°C、相対湿度95%で測定しました。測定は第三者 連絡先: 石川慶浩 〒989-6313 宮城県大崎市三本木音無字山崎26-2 ラサ工業(株)三本木工場 E-mail: yoshihiro.ishikawa@rasa.co.jp 機関に依頼し、放射性ヨウ素(I-131)を使用しました。表 1 に放射性ヨウ素を使用したヨウ化メチルと無機ヨウ素の吸着率を示します。 表1 30℃、相対湿度95%での吸着率 接触時間 (sec.) 吸着率 (%) CH3I I2 0.25 98.738 98.935 99.995 0.38 99.850 99.885 > 99.999 0.50 99.962 99.971 > 99.999 このように接触時間 0.50 秒で 99.9%以上のヨウ化メチル吸着率になり、また無機ヨウ素に対しては接触時間 0.25 秒で99.99%以上の吸着率になりました。この吸着率の傾向から、無機ヨウ素の吸着率はヨウ化メチルの吸着 率を上回ります。 別途行った接触時間0.250 秒、30°C、相対湿度30%という乾燥した条件でも、99.99%以上という良好なヨウ化メチル吸着率になりました。 マイナス5℃でのAgX のヨウ化メチル吸着率 より広い温度範囲で使用できるか調査するため、マイ ナスの温度域での吸着率を測定しました。測定は低温評価用設備を作製し、非放射性のガス状のヨウ化メチルを使用して自社で行いました。試験はマイナス5°C でガス配管内にヨウ化メチルの吸着が無いことを確認してから始めています。図1 に低温評価設備の概略を示します。試験用ガスは冷却槽で冷却され、ガス冷却槽内の吸着力 ラムに入ります。吸着力ラムから出てきたガスを捕集し、ヨウ化メチルをGC-MS で測定しました。ガス中の水 図1 ヨウ化メチル吸着 低温評価設備 分は湿潤空気と乾燥空気を混合し、露点計で露点を計測 して調整しました。試料は外気での保管を想定し、水と共に密閉容器に入れた状態で、30°C の恒温槽に入れて吸湿させた後に使用しました。表2 にマイナス5°C、相対湿度70-80%での吸着率を示します。吸着率は接触時間0.50 秒以上で99.9%以上になりました。また、別途実施した接触時間0.60 秒の試験では、マイナス5°C でのヨウ化メチルの吸着容量(吸着率99%以上を維持する吸着量)は、AgX 1ml 当たり31mg になります。 表2 マイナス5℃でのヨウ化メチル吸着率 接触時間 (sec.) ョウ化メチル吸着率 (%) 20 min. 40 min. 60 min. 0.26 97.87 97.61 97.24 0.41 99.76 99.53 99.32 0.50 100.00 99.98 99.95 0.62 99.99 99.98 99.97 マイナス40℃でのヨウ化メチル吸着率 次にマイナス40°C でのヨウ化メチルの吸着を評価しました。試験では露点約マイナス50°C の乾燥空気をキャリアとして、非放射性のヨウ化メチルを使用し、30°C で吸湿した試料を評価しました。マイナス40°C でのAgX への接触時間と、ヨウ化メチルの吸着率の関係を表3 に示します。マイナス40°C では0.25 秒で吸着率99%以上になり、マイナス5°C より良好な結果になりました。また別途実施した接触時間0.60 秒の試験では、マイナス40°C でのヨウ化メチルの吸着容量は、マイナス5°C よりも少なく、AgX 1ml 当たり19mg になります。 表3 マイナス40℃でのヨウ化メチル吸着率 接触時間 (sec.) ョウ化メチル吸着率 (%) 20 min. 40 min. 60 min. 0.25 99.85 99.69 99.60 0.40 99.99 99.98 99.99 0.50 99.98 99.98 99.99 0.59 > 99.99 > 99.99 > 99.99 マイナス温度域でのヨウ化メチルの吸着機構 ヨウ化メチルがAgX に化学吸着すると下記の式からメタノールが生成します。 CH3I + H2O + Ag+ → AgI + CH3OH + H+ マイナス5°C での挙動を調べるため、OUT ガス中のメタノール濃度を測定した結果、流したヨウ化メチルの99%相当がメタノールに転化していることが分かりまし た。次にマイナス40°C でのメタノールの挙動を調べました。試験ではマイナス40°C、接触時間0.60 秒の条件でヨウ化メチルをAgX に吸着させ、吸着率が99%以下になる前にヨウ化メチルを停止しました。ヨウ化メチル停止後、 マイナス40°C を一定時間保持した後、徐々に温度を上げていったところ、マイナス40°C の保持期間ではメタノールは少量しか出ず、温度をマイナス20°C 付近まで上げると大量のメタノールが出てくることが分かりました。こ のことからヨウ化メチルのAgX への吸着では、初めに物理吸着が主体で起き、温度の上昇と共に化学吸着が起きてメタノールが生成されることが推測されます。 3 モバイル式空気浄化システム等の提案 ラサAgX は常温からマイナス40°C までの広い温度範 囲で、良好なヨウ化メチルの吸着性能を示すことから、外気を加熱する装置を必要としない小型の空気清浄化システムの構築が可能になると考えられます。また不燃性であること、及び300°C でも除去性能があり、一旦吸着したヨウ素を800°C まで保持することから、核シェルター用フィルターへの利用も可能です。 4 系言 AgXには常温からマイナス40°Cの外気温度域において ヨウ化メチル吸着性能が非常に良いという 性があり、この 性から、個別に外気の加熱装置を必要としない、モバイル式の空気浄化システム等への応用が可能になる と考えられます。
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