米国におけるリスク情報活用事例の紹介
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カテゴリ: 第16回
米国におけるリスク情報活用事例の紹介
Examples of risk information utilization in the United States
電力中央研究所
矢吹
健太郎
Kentaro YABUKI
非会員
岡本
拓男
Takuo OKAMOTO
会員
原子力リスク研究センター電力中央研究所
原子力リスク研究センター
概要
米国におけるリスク情報の活用事例の中から特徴的なものを数点紹介する。Keywords リスク情報活用、 RIDM、 PRA、 RI-ISI
1 はじめに
リスク情報を活用した意思決定(RIDM)及び確率論的リスク評価(PRA)の登場以来、米国の原子力産業界は、事実上その利用を率先してきた。PRAを使用することにより、許認可上のいくつかの困難な状況が解決されており、成功と失敗の両面において、米国の経験から きことは い。
日本の原子力産業界においては、PRA、RIDM、リスクコミュニケーションの最新手法を開発し、これを用いることにより、原子力事業者及び原子力産業界が原子力施設の安全性を継続的に改善していくことを支援するため、2014 年に電力中央研究所(CRIEPI)内に原子力リスク研究センター(NRRC)が設立された。NRRCでは、カリフォルニア大 ロサンゼルス校(U CLA)のB.John Garrickリスクサイエンス研究所(GIRS)と共同で“リスク情報を活用した意思決定 米国の経験に関する調査”を実施し、米国におけるリスク情報活用事例を した。 はその中から、将来、我が国に適用すると有益と考えられる事例を
紹介する。
〒100-8126 東京都千代田区大手町1-6-1 電力中央研究所 原子力リスク研究センター 矢吹健太郎yabuki@criepi.denken.or.jp
2 米国における活用事例の紹介
2.1 リスク情報を活用した供用期間中検査(RI- ISI)
原子炉冷却系(RCS)配管の健全性維持は、深層防護上不可欠な要素として、ASME指針による供用 間中検査(ISI)が行われてきた。配管検査は、プラント 中にの 実行可 なことから、 間のに伴う事業者コストの増加につながっていた。また、検査に伴う作業員被ばくについても課題となっていた。
米国規制委員会(NRC)は、安全性を改善し、不必要な負担を軽減するために、PRAの活用を増やすよう指示をした。その結果、PRA及び運転経験から、リスク上重要な配管が、必ずしもASME指針に規定された検査の対象になっていないことやASME指針に含まれていない配管の劣 が確認された。
NRCは規制ガイドR.G.1.174(1997 年)、R.G.
1.178(1998 年)を発行し、事業者がリスク情報を活用して 的にISIプログラ を できるようにした。プログラ の対象範囲はRCS配管及びその接続配管に限定され、 として内的事象に焦点を当てればよいことから、既に個別プラントのPRAモデルを備えていた米国の くの事業者がRI-ISIを適用することができた。
その後、Westinghouseオーナーズグループ(WOG)、EPRIがRI-ISIのプロセスを標準
し、合 したより詳細の指針を産業界のために開発した。これにより現在では米国のほぼす ての事業者において、RI-ISIが実施されている。
RI-ISIの導入により、発電所の安全性が向上するとともに、発電所職員の被ばく線量が大幅に低減された。また、検査の 数が減少することで、付随するコストが削減された。
3 まとめ
深層防護及び設計基準事故(DBA)による従来の決 定論的な規制プロセスは、米国の原子力産業界において上手く機 していたが、PRAにより なる改善が可であることが示された。また、PRAにより、従来のアプローチでは特定できなかったリスク要因が特定されるケースもあった。
検査数量
RI-ISIのような事例はリスク情報活用の成功例であるが、一方でリスク情報を活用した供用 間中試験(RI-IS )のように、それほ 上手くいかなかった事例もあった。
このような種々の米国の活用事例を参照しながら、日本においても、 後リスク情報の活用を進めていく。
参考文献
[1] カリフォルニア大 ロサンゼルス校B.John Garrickリスクサイエンス研究所及び電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC), “リスク情報を活用した意思決定 米国の経験に関する調査”, 2017
図1 RI-ISI実施前後の検査数量[1]
$2,500,000
90
84 0
$2,000,000
80
$2,034,900
70
$1,500,000
Inspection Costs
$851,90060
50
Man-REM
$1,000,000
$500,000
$1,183,000
$613,000
$196,000
$417,000
40
30
20
8 110
$0
Before
After
0
BeforeAfter
Class 1 lnsp CostsClass 2/3 lnsp CostsMan-REM
図2 RI-ISIコストと被ばく量の減少(年当たり)[1]