画像処理による異常予兆の検知技術の開発

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カテゴリ: 第15回
画像処理による異常予兆の検知技術の開発 Development of technology to detect a damage foresee by image processing 中部電力株式会社池堂和仁Kazuhito IKEDOUMember We developed a technology for monitoring machine frequency by using a camera available on the market which is possible to install in place difficult to approach due to high temperature or radiation environments. This camera detects frequency by using Fast Fourier Transform (FFT) from images taken of equipment. Cavitation in the pump was measured using this camera and it was confirmed that it could be detected. By measuring the vibration frequency of the machine with this camera, it is possible to detect an abnormality sign in the equipment, and it is expected to reduce the maintenance cost. Keywords: Camera, image, frequency, FFT, vibration はじめに 原子力発電プラントの保守管理では、停止中に経年劣化を考慮した点検・部品交換を行うだけでなく、プラント運転中も多くの機器について、異常やその予兆(以下、異常予兆とする。)を監視している。 監視は、機器に取り付けたセンサー類で機器の態(温度や振動など)を確認する方法が一般的であるが、運転中に新たに監視が必要となった機器が高所や狭監部に設置されている、あるいは高放射線・高温環境などの条件下にある場合は、センサー類を取り付けられず機器の監視が困難である。 そこで、本研究では遠隔からカメラで撮影した画像を計算処理することで機器の振動 態を把握し、異常予兆を検知する技術の開発を目指した。開発にあたっては低コスト化を意識し、市販機器の組み合 せで検知システムを構成することに留意した。 研究内容 検知システムの検討 プラントで多く用いられている回転機械の異常は、 おおよそ lOHz,,.. lOkHz の周波数領域に現れることが知られている。そこで、市販カメラの性能を踏まえlkHz 付近の周波数領域を測定できる検知システムを 連絡先:池堂和仁、〒437-1695 静岡県御前崎市佐倉 5561 中部電力(株)原子力安全技術研究所 E-mail: Ikedou.Kazuhito@chuden.co.jp 目指し、カメラの撮影画像から振動解析を行う手法を検討した。 市販のカメラで lkHz までの周波数領域を測定できるものはラインセンサーカメラとエリアセンサーカメラの2種類があったが、まずは安価で要件を満たすラインセンサーカメラを用いて検知システムを構成した。あ せて振動解析に高 ーリエ 換(以下、FFT とする。)を取り入れたアレゴリズムを開発し振動の周波数解析を行うこととした。 検知システムの作製と検証 市販のスピーカを用いて所定の振動を発生する試 験装置を作製し、ラインセンサーカメラで構成した検知システムの動作確認を行った(図1)。 図1 ラインセンサーカメラによる振動検知システム スピーカで発生させた 2OOHz の振動をラインセンサーカメラで撮影した画像を図2に示す。 図2 ラインセンサーカメラ 画像 レを 2O ピクセレごとに分割制御し、 レームレートをおおよそ 2OOO"-'23OOfps まで上げる手法を開発した(図4)。この分割制御によりカメラからのデータの転送負荷も軽減でき画像処理 度も向上した。 表1 エリアセンサーとラインセンサーの比較例 エリアセンサーカ う うインセンサーカ う レーム水平X垂直 (ピクセレ) 2048X1088 ⇒20 に分 2048X1 ピクセレごと 割制御 レーム 50 51,000 レート(fps) ⇒ 2000"-'2300 (うイン ー ) 2048 t゜クセル2048 t゜クセル 20 t゜クセル パワ ス画素数 2048X1088 ペ画像処理速度 ク50fps 画素数 2048X20 画像処理速度2000-2300fps トレ 図3 画像のFFT 解析結果 図3は撮影した画像を、FFT 解析して得られたパワースペクトレ(周波数ごとの強度)である。ライ ンセンサーカメラによる検知システムで振動を捉えられていることが確認できる。 検知システムの改良 ラインセンサーは一列に並んだ画像素子で一次元 の画像を捉える仕様である。撮影できるエリア( レーム)が狭く測定対象を捉えづらいため、検知シ ステムのセッティングに l"-'2 時間かかる。またカメラと測定対象の距離を 3Ocm 程度しか離せないなどの課題が明らかとなった。そこで、これらの課題を解決するため、 レームが広いエリアセンサーカメラを検討した。安価なエリアセンサーカメラは レームレート fps(l 秒あたり処理可能な レーム数) が 5Ofps と小さく(表1)、高周波数領域の振動を捉えられない。そこで、垂直方向解像度の lO88 ピクセ 図4 垂直方向解像度の分割制御のイメージ エリアセンサーカメラの採用により検知システムのセッティングは l5 分程度となり、測定対象との距離も l.5m 程度確保できるように改善できた。 検証試験 開発した検知システムの検証として回転機器の過 渡 化を検知する試験を行った(図5)。 図5 保守点検訓練用ポンプによる検証試験 試験では、ポンプが異常振動する要 の一つとして考えられるバブレキャビテーションを発生させ、その過渡 化が捉えられるかを測定した。 図6に示すとおり、FFT 解析の結果、バブレキャビテーションの気泡崩壊に伴う周波数ピークが捉えられることを検証した。なお、l5O"-'2lOHz の周波数ピーク群はポンプの運転によるものである。 パワ スペクトレ 波数( )を確認した。なお、周波数( )は交電源を用いた光源の周波数である。 パワ スペクトレ 図8 発電機シャフトの振動解析結果 図6 バブレキャビテーションによる気泡崩壊 実機の測定 開発した検知システムを用いて、当社の水力発電 所の発電機シャ トの振動測定を行った(図7)。 図7 発電機シャフトの振動測定の様子 発電機シャ ト画像の FFT 解析から得られた周波数ごとのパワースペクトレを図8に示す。発電機シャ トの回転による周波数(a)だけでなく、ランナ出口に発生する旋回 による脈動と推定される周 現場環境において測定対象から約 3m 離れた位置からの測定ができたことにより開発した検知システムの現場機器測定への適用性を確認した。 まとめ 本研究では、市販のカメラで撮影した画像をノートパソコンで計算処理することにより、遠隔から機器の振動や振動過渡現象を把握する検知システムを開発し、回転機器での検証や実機での振動測定により、その性能と現場適用性を確認した。 本検知システムは、センサー類が取り付けられない環境にある機器の振動を遠隔から捉えられる点だけでなく、常に同じ部位を確認できる点や、追設型センサーで懸念される振動への影響が全く無い点が従来の振動検出器と比べたメリットである。 将来、この検知システムをカメラ撮影と計算処理ができる携帯性に優れたタブレット端末で実現し、機器の撮影情報から同一部位の振動を定期的に監視することで異常予兆の検知システムとして利用できると考えている。
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