異常時の電力レジリエンスにおける原子力の役割

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カテゴリ: 第17回
異常時の電力レジリエンスにおける原子力の役割 The Role of Nuclear in Power Resilience during Natural Disasters 東 工 大 奈良林 直 Tadashi NARABAYASHIMember It is premised on the safe operation of nuclear power plants, and it is possible to reduce the economic benefits and the serious risks facing humankind due to global warming. The use of renewable energy should be promoted, but it is important to promote the best mix with improved safety nuclear power generation and significantly reduce CO2 emissions. On the other hand, typhoons, blizzards, torrential rains, abnormal heat, earthquakes, etc. have caused major power outages all over the world. Solar power and wind power are vulnerable to such natural disasters, and if the AC power supply is lost or the frequency of the AC power supply drops, it will be disconnected from the system. It is necessary to strengthen the resilience of the system. To this goal, the role of nuclear power as a main power source with enhanced disaster countermeasures became important. Keywords: Global warming, Power resilience, Renewable energy, Nuclear power, Reduce CO2 emissions, Typhoons, Blizzards, Torrential rains, Abnormal heat, Earthquakes 1.緒 言 原子力基本法は,原子力利用を推進し,人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的としている.また,原子力利用は,安全の確保を旨とし, 確立された国際的な基準を踏まえ,国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として行うものと規定している。同法はこれらの目的からして当然のことではあるが, 原子力発電所の安全運転を前提としており,それによる経済的便益と地球温暖化による人類が直面している深刻なリスクを低減させることが可能となる。再生可能エネルギーの利用は推進すべきであるが,安全性を向上させた原子力発電とのベストミックスを推進し,CO2の排出を大幅に削減することが重要である。 一方、台風や暴風雪、集中豪雨、猛暑、地震などで、世界各地で、大停電が発生するようになってきた。このような自然災害に対し、太陽光や風力は脆弱で、交流電源が喪失したり、交流電源の周波数が低下すると系統から離脱してしまうため、異常時に完全なブラックアウトを防ぐためには、電力系統のレジリエンス(回復力)を強靱化する必要がある。これには、災害に対する対策が強化された原子力の基幹電源としての役割が重要となったと言える。 2.世界中で多発する異常気象と火災 ロサンゼルスの森林火災と輪番停電 欧州や我が国の猛暑と国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候変動を防止する取り組みや、海面の海水温度上昇で台風やハリケーンが凶暴化していることを紹介しました。2020 年は米国カリフォルニア州が記録的な猛暑に見舞われていて、ロサンゼルス郡ウッドランドヒルズでは9月6日に49.4℃ を記録した。こうした猛暑のなかで、各地で激しい山火事が相次いで発生している。また、この記録的な暑さのために、冷房機器の使用などにより、8月からカリフォルニア州で電力需給が逼迫し、輪番停電が発生する事態となった。 2008 年のノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン・ニューヨーク市立大教授が、自由化してはいけないものとして、教育と医療に加え、電力を挙げている。それにも係わらず、我が国を含めて電力自由化政策が進められている。 現在、我が国を含む世界のいくつかの国で電力自 由化が実施されたが、電気代が下がった国は1つも無い。米国では、意図的に電力供給を絞って電気代をつり上げ、数々の不正会計が発覚して2001 年に経営破綻して倒産したエンロン社事件が有名である。カリフォルニア州では、その後も太陽光・風力の再エネ普及を推進した結果、火力と原発が663 万kW 減少し、太陽光・風力で1700 万kW 増えた。お天気任せの脆弱 な電力供給網になったのである。エアコンは外気温度が上がると消費電力が急増するのだが、急に風が弱まって風力発電の供給が途絶した途端に、突然の停電に見舞われたのだ。また、太陽光発電が働かなくなる夕方では、冷房需要や家族の団らん、夕食の時間帯に電力不足になるのです。カリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)は再エネへの過度のシフトが停電を招くことになったと指摘し、当時のトランプ大統領は、「カリフォルニア州では民主党が意図的に輪番停電を行 い、国民に暗闇を強いた。バイデン氏のグリーンニューディール政策は、失敗した政策を全国民に広げることになる」とツイートしていた。2020 年の猛暑は米国のデスバレーの54.4℃を筆頭に、我が国でも浜松で41.1℃の記録を出した。 カリフォルニアの計画停電 真冬に電力不足で、あわや大停電の危機に陥った日本に対し、真夏に熱波による電力需要増に対応できずに、電力供給が不足し、度々の節電要請や停電を引き起こしたのが米国カリフォルニア州だ。米国カリフォルニア州では、2020年8月16日にデスバレーにおいて世界で過去3番目の記録となる摂氏 54.4℃を記録するなど、歴史的猛暑に見舞われた。こうした中、表2に示すように、8月14日から連日のように計画停電を実施した。ギャビン・ニューサム州知事は17 日、電力容量拡大の許可および停電回避のための調整実施などを主な内容とする緊急事態宣言に署名した。知事は同日、翌週にかけて熱波が激化し、大規模な停電が起きる可能性があるとして、州のエネルギー関係機関と協議を行った。8月13日以降、カリフォルニア州独立系統運用機関(CASIO)は、電力需給の逼迫に伴い、電力使用の削減を呼び掛けているほか、度々 表1 カリフォルニア州の熱波による計画停電 図3 カリフォルニア州の電源構成の推移 図4 カリフォルア州の昼間の電気の買取り価格はゼロ$ 緊急事態宣言を行い、計画停電や需要削減計画の実施に至っている。今後も毎年のように、熱波が予想され、電力需給の状況は予断を許さない状況が今年以降も想定される。一方、5月のように電力需要が下がって、電力が余剰気味になると、電力自由取引の市場では、太陽光の出力が大きくなると、電気の買取り価格はゼロドルとなり、利益がでにくい事業となってしまった。 テキサス州の寒波による大停電 2021 年2月16日、テキサス州では、寒波が来襲した(図5)。全電力に占める風力発電の比率は42%であったのが、風力発電のタービン発電機の半数が凍結して、比率が8%まで低下。日本の1月上旬と同じで、火力発電所などのベースロード電源も暖房需要の電力急増には対応できなかった。 図5 テキサス州の寒波による大停電 図6 テキサス州大停電・雪で車が立ち往生 筆者が訪問したことのあるサウステキサスプロジェクト原子力発電所も給水流量計も凍結によりご信号を出して運転停止した。21日には、零下18℃という極寒のなかで、430 万人もの人が凍える夜を過ごした。 かなりの人々が車のエンジンをかけて暖を取った が、ガレージなどのなかで長時間車がエンジンをかければ、ガレージは暖かくなるが、換気をしなければ、一酸化炭素中毒になる。チェーンやスタッドタイヤが装着されていなければ、車は立ち往生する(図6)。 車で走れなければ、スーパーへの食糧の買い出しには行けないし、スーパーの前には極寒の屋外に長蛇の列ができた。あれやこれやで命を落とした人は 40 名に上る。2020 年末時点のテキサス州の電源構成は天然ガス火力が約47%、風力が約20%。運転中にCO2 を出さない風力発電は 10 年前に比べ3倍以上に拡大した。 電力会社の発電、送配電、小売り事業を分離する「電力自由化」を強力に推進してきたが、先行事例として日本も参考にしてきた。同州での寒波による停電は10 年前にもあった。発電業者が予備電力を十分確保する仕組みがないために供給危機が再発した。 「天候に左右される再生可能エネルギーのみに依存するのは危険だ」と、野党共和党に属するアボット・テキサス州知事は当初、寒波に伴う風力発電設備の凍 結が危機を招いたと主張。これに対して民主党は再生 エネの不信感をあおる政治的な発言だと猛烈に批判し、バイデン政権(報道官)は「大寒波は気候の危機が迫 っている証左だ」と反論した。同州の電力網を運営す る電気信頼性評議会(ERCOT)の経営陣の辞任まで発 展した。家庭や企業向けの電力小売業者の一部は調達難に陥り、経営破綻寸前だ。 米大手ビストラ社は、マイナスの影響が最大13億ドル(約1400 億円)に上ると試算(時事通信3月1日記事)。モーガン最高経営責任者(CEO)は「競争と信頼性とのバランス」を重視した電力制度に見直すよう求めている。さらに、この制度上の問題は、電気の消費者にも跳ね返った。テキサス州では、今回の寒波の影響で家庭の電気料金が月100 万円を超えるケースが続出したという。 3.我が国の自然災害(台風・豪雨・地震) 猛暑と集中豪雨 図7 は環境省が熱中症予防情報サイトで公表している令和2年の全国の暑さ指数である。実線が過去 10 年間の6 都市の平均値、線の上のグラフが今年の平均値よりも高い期間、線の下が同じく低い期間である。7 月は雨や曇りの日が多く太陽光発電にも不利でしたが、気温も低かったので停電を免れたが、8 月に 入ると晴天と猛暑が続いた。日照が多いと太陽光発電が多く、またコロナ肺炎の自粛の影響で、電力需要が低下しているため、停電にはならなかったが、九州の集中豪雨や台風10号による豪雨や強風による停電が相次いだ。 図7 全国の暑さ指数と過去10年間の平均値 図8 は「令和2年7月豪雨」と命名された九州の豪雨災害により熊本県人吉市の球磨川の氾濫である。死者は60 人を超え、136 万人に非難指示が出された。 新型コロナ禍を避けるために、避難所は3密を避けるように人数制限を行ったため、避難所に到着しても、他の避難所に行かざるを得なかった人も多かった。 図8 2020 年7月豪雨(熊本県人吉市球磨川の氾濫) 図9 2020 年台風10号の雨と風の分布 「50 年に一度」のレベルの「大雨特別警報」が1年 に何回も出ることになったのは、ここ数年のことである。図9 に示すように台風10 号は、非常に強い勢力で沖縄や奄美を通過し、2020 年9 月6日(日)に九州全県が暴風域に入った台風十号。九州上陸は免れ、高知県四万十町窪川で333mm、次いで長崎県長崎市野母崎と山口県萩市の238mm となった。これは、平年1 月分を超える雨量である。8日午前3時には大陸で温帯低気圧に変わったが、日本列島には南から湿った空気が流れ込み続け、西日本を中心に大気の非常に不安定な状態が続いた。 1月上旬の我が国の電力危機 今年の1月6日から12日にかけて全国で大雪が降った。雪は屋根だけでなく、太陽光パネルにも積もった。太陽光による発電量の減少と暖房需要の急増で、全国各電力管内で電気の使用率が97%から99%に達した。 図10 2021 年1月上旬・需給ひっ迫で大停電の危機 わが国の発電に占める液化天然ガス(LNG)火力の比率は40%を超えており、一気にLNGの消費が急増した。図3のように、電力会社のLNG の在庫は12月から減少傾向が続き、このままでは、我が国のLNG の在庫が払底して、燃料の面でも大停電の危機にあった。全国のLNG のタンクの備蓄量は約2週間分しかない。暖房需要の急増で、電力需要は大幅に増加した。電力会社は慌てて海外の天然ガスを購入しようとしたが、同じく寒波に見舞われた中国と韓国がスポット市場で購入した。このため、我が国の電力会社は極めて高いスポット価格で緊急調達するはめになった。8か月前の18 倍にも達している。 欧米の先進国では石炭火力から天然ガス火力に移行しつつあり、コロナ肺炎による経済活動の落ち込みが終われば、LNG の価格が今後も上昇基調が続くと考えられる。 さらに、購入した天然ガスを満載したLNG タンカーが日本に到着するのは最低でも一か月はかかる。それで、電力 会社のLNG の在庫量が回復するまで、約1か月かかった。 1 月上旬の週の電力各社の電力の発電シェアを見ると太陽光発電などは 40%に達しているところもある。その比率の高くなった太陽光発電が大雪により、一気にゼロに低下する事態が発生したのだ。 図11 電力化会社のLNG の在庫推移 図12 LNG のスポット価格の高騰(18 倍) 東日本大震災のとき、東京を含む首都圏に電力を供給 したのが、日本海側の柏崎刈羽原子力発電所である。今回は、原子力規制委員会の柏崎刈羽原子力発電所や若狭湾に沿岸にたくさん立地する原子力発電所が、特定重大事故対処施設(特重設)の工事遅延で、運転停止に追い込まれている。安定ベースロード電源である原子力発電所の再稼働を急ぐ必要がある。 表1 を見ると、2018 年には9基の原発が再稼働していた。病院が大停電に遭うと、非常用自家発電所の燃料の備蓄が消防法により数時間しか保管できない。このため、大停電が発生して、数時間を超えると多くの人命が失われる事態となる。原発の航空機テロ対策の工事遅延を理由にした、原子力規制委員会の規制により、安全対策審査で認められて再稼働した原発を運転停止に追い込み、我が国の電力需給逼迫を作り出し、あわや大規模停電になっていたことは、原発にとっては外部電源喪失なのだ。 確率論的リスク評価を行えば、それなりに炉心損傷頻度のリスクは高まる。原子力規制委員会は、原子炉だけのPRA だけでなく、原子力発電所が多数止まっているときの、外部電源喪失のリスクの増大も含むPRA 評価が必要であると思う。 図 13 は、LNG 火力と太陽光発電の発電比率の推移を示している。1月上旬の太陽光の比率は全国的な大雪で、6%から 2%まで低下した。これで LNG 火力の発電比率が急増した。一方、原発は9基稼働するだけで8%を占める実力がある。我が国の太陽光は発電出力の kW のその千倍のGW で表すと63GW で、1GW が百万キロワットであるから、我が国の太陽光はすでに原発63基分の設備容量がある。でも、実際の発電量(kWh)で表せば、たった9基の原発とほぼ同等なのである。 昨年4月から電力自由化の最終段階で発電会社と送電 図13 LNG 火力と太陽光の発電比率の推移 会社を法的にも完全に分離した。従来は電力会社が電力の供給責任を負っていたが、電力自由化のもとで、送会社や新電力と呼ばれる電話やガス会社などが電力会社から安く買った電気を市場価格に合わせて販売している。ところが、1 月上旬の寒波で、1kWh で5~6円くらいの電気の買い取り価格が一気に200 円を超え、250 円くらいまで急騰したのだ。これが新電力のビジネスに逆ザヤの損失を与える事態となったのである。もし、使用率が100% を超える事態となった場合は、大停電を防ぐために、他電力からの電力融通や企業が所有している自家発電所の電力の供給を受け、それでも足りない場合は、大企業の工場などの大口の需要家に操業を停めていただくなどの緊急措置が必要となる。今回の場合は、スポット市場で高いLNG を買ったので、その高い LNG で発電することになる。 わが国でも電力自由化に伴い、老朽火力発電所を設備廃棄している。このように電力制度も同じ仕組みだから、寒波という共通原因で、日本もテキサス州も電力危機となる。日本でも電話会社の携帯と込みの安い電気料金のはずの電気代が1万円から3万円になったとの報道があった。国際エネルギー機関(IEA)は「各国は再生エネの割高なコスト負担、予備電力の確保など制度上の課題は多い」と指摘している。 2018 年9 の北海道大停電 2018 年9月6日午前3時の北海道胆振東部地震(震度7)により,北海道の約50%の電力を供給していた苫東厚真火力発電所の2、4号機,そして17 分後に1号機の運転停止により、北海道大停電(ブラックアウト)が発生した (図13)。この大停電で、行政、病院、乳業、鉄道・航空・物流、百貨店・スーパー・コンビニなどの機能が停止し 図13 北海道胆振東部大地震による全道大停電 た。行政や病院などの非常電源の燃料に限りがあり、機能の縮小を余儀なくされた。また人口 200 万人の大都市である札幌市でも清田区を中心に深刻な液状化現象を発生し、家が傾き、道路が陥没した。9 月9 日夕刻の時点で、全道での死者は36 名に達した。 3.11 のときに大停電から首都圏を救ったのは、柏崎刈羽原発の電源供給である。原発を止めるリスクは高い。北海道の全道大停電は、泊原発3号機(出力92 万kW)が動いていれば防止できた。再稼働審査に数年を要した規制委員会の審査ペースにも問題があったのではないか。病院の自家発の燃料が尽きていくと酸素呼吸器や生命維持装置、透析装置などが止まっていくし、手術もできなくなる。0 歳女児の酸素呼吸器が停止して重体に陥った。今回の事態は自然災害を起因事象とするものの、本来あるべき基幹安定電源が運転されていなかった人災であるとも言える. 4.深刻さを増す地球温暖化と再エネの課題 温暖化は止まっていない アラスカ大学国際北極圏研究センター初代所長の 赤祖父俊一名誉教授と筑波大学の田中博教授らが主張されるハイエイタス期(温度上昇停滞期)以降世界のスパコンの予測にはバラつきがあるかもしれませんが、「地球温暖化は2000 年頃から殆ど止まっている」とした結論は、筆者が国家基本問題研究所の2月19日付「ろんだん」提示した図6の2018 年までの実測データにより否定された。むしろIPCC の予想線と一致したといえることから、今後も世界の温暖化は温度上昇を続けると考えられる。しかし、赤祖父名誉教授の再エネ原理主義とも言える過度の再エネ礼賛を問題視する主張には筆者も賛成したい。「各国の首脳を交えた国際会議は、再エネ原理主義とも言える過度の再エネ偏重政策により、「地球 図14 世界の年平均気温偏差の上昇とIPCC 予測 を救う会議」どころか、再エネ産業の巨大企業が、再エネを美徳として盲目的に礼賛するマスコミ報道の元で、マネーゲームの会議に成り下がっているように思えるからである。 マイケル・ムーア監督の「プラネット・オブ・ヒューマン」(人類が支配する地球)で、再エネ産業が巨大な利益を上げながら二酸化炭素の排出は減らず、熱帯雨林の伐採や環境破壊が進んでいることも、指摘されている (図15)。 図15 バイオマスが熱帯雨林やアマゾンの森林伐採の元凶に 国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、「もはや気候変動というレベルではなく、気候危機だ」とその取り組みの必要性を世界に向けて発信されている。 一方、小泉進次郎環境大臣が、昨年9 月22 日にニューヨークで開催された国連温暖化対策サミットに華々しくデビューして、「気候変動のような大問題にはセクシーに取り組むべきだ」と記者会見をしたのだが、記者から、「具体的にどう取り組むのですか」と質問が出たのに、それに回答できず、数秒間の沈黙の後、『10 日前に大臣になったばかり』と言い訳したので、日本の環境大臣は一番重要なことも、本気で考えていないことが世界に向けて放映されてしまった。 変動再エネでCO2 の排出は減らない 2019 年7 月3 日に第5 次エネルギー基本計画が閣議決定され公表された.気候変動に対処するパリ協定の発効を受け,2030 年および 2050 年を見据えた新たなエネルギー政策の方向性を示すものとして見直し、平成30 年5 月 19 日~平成30 年6 月17 日にパブリックコメントを経て, 閣議決定された.しかし,第4 次基本計画で火力依存度を下げるはずであったが,逆に再エネの増加と共に,そのバックアップとして火力に頼る現状では,火力への依存度 は 84%にも達している.太陽光は、稼働率(正確には設備利用率)が不安定で低いという致命的な欠点がある。太 陽が強く照るのは1 日24 時間のうち約6 時間として25%. これに晴天率を仮に 50%として乗じると 12.5%。つまり稼働率は高々13%にしかならない。 太陽光の設備利用率は高々13% 太陽光だけでエネルギー供給するには膨大なコストが必要 図16 再エネを主力電源化することは極めて困難 太陽光の実力は49GW×0.13=6.4GW,つまり原子力発電所6,7基分にすぎず,残りを水力と火力に頼ることになっている。全体で見れば,太陽光のシェアはわずか 5%,風力は1%,水力の10%を加えても再エネのシェアは16%にしかならない.このことから,二酸化炭素を減らすには,スウェーデンやフランスのように,原子力と水力を増やすことが絶対に必要であり,安全性を高めた原子力発電所の稼働基数を増やしつつ,設備利用率も上昇させて,地球環境保全に貢献するべきであることが分かる. いくら再エネに投資しても、稼働率(正確には設備利用率)が 13%くらいの太陽光では、残りの時間帯が火力発電を使っているので二酸化炭素の排出は減らない。 再エネ優先政策をとっているドイツも同じで、再エネは40%に達したものの、風力が20%、太陽光は9%、バイオマスは、熱帯雨林の伐採まで入れて8%。45%が石炭火力発電と天然ガスの火力発電になっている(図18)。 図17 我が国の電源構成(2019 年度) 図18 ドイツの電源構成(2019 年度) 我が国はドイツのように風が強い地域が少ないので、風力発電はあまり普及しておらず、2017 年度で0.6%しかない。太陽光は発電設備容量としては、原発 62 基分の61.8GW(1GW は百万kW に相当)の設備容量であるが、設備利用率が13%程度では、年間の発電量では、8%しかない。そして、この 8%のために 20 年間で約 60 兆円の最エネ賦課金が電力消費者の課される。太陽光事業者はボロ儲けできる(年利回り10%を超える)ので、太陽光事業者が殺到したのである。 5.第6次エネルギー基本計画 6月5日、再エネ賦課金(FIT)法の改正を盛り込んだ「エネルギー供給強靱化法案」が参議院本会議で可決・成立しました。施行は2年後の2022年4月からとなる。第6次エネルギー基本計画の策定も始まるなかで、わが国の再生可能エネルギーの普及は、固定価格買取制度への全面依存から、主力電源化の実現に向けた新たな段階に移るとあるが、再エネの実力を見抜かないと絵に描いた餅になりかねない。 2050 年カーボンニュートラルの目標に取り組むに当たり、原子力を排除することは合理的ではない。世界一厳し い新規制基準に従った安全対策工事によって、原子力発電所の安全性は飛躍的に高まった。今こそ国産技術である原子力を正当に評価する時だ。 米国バイデン政権は2050 年カーボンニュートラルを目指す中で原子力を活用する方針だ。脱原発のドイツやスイスを除き、欧州も全体として原子力を活用する。中国政府も独自開発の原発開発を決めた。日本はこの世界潮流から取り残されてはならない。 また、原子力発電の経済性は過去の実績から約 10 円 /kWh という安価な発電コストを達成できる可能性は高い。また、技術自給率は100%であり国内産業への貢献度も非 常に大きい。 世界各国では、安全性を高めた原子力発電の建設が 続々と開始され、また米国では大型軽水炉の80 年運転がすでに数基許可されている。このように世界は原子力推進の潮流にあり、我が国でも脱炭素電源の切り札として2050 年までに原子力発電所の新増設、リプレースをすべきである。 政府のグリーン成長戦略では、輸送、工場、業務、家庭など全分野の電化拡大により2050 年の発電量は現状より30~50%増加すると推定している。一方、2050 年電力ベストミックスの政府参考値は原子力+CCUS 付き火力の合計で 30~40%としている。原子力発電は増加する全電力の少なくとも35%は担うべきである。2050 年までに再稼動と60 年運転、および3 基の建設再開・運転開始だけであれば2050 年における原子力発電は全発電量の14%程度と推定されるので、約20%を追加するには、約30GW の新増設、リプレースが必要となる。必要なコストは、再稼動と廃炉に必要な約 14 兆円と、次世代軽水炉 24 基の新増 設に必要な建設コスト約 20 兆円、合計 34 兆円と推定され、再エネに比べ費用対効果は遥かに大きく、実現性はより確実である。こうして人材育成、産業基盤の復活を実現し、エネルギー安全保障強化が達成できる。工場での量産化によるコスト低減と現地工事に伴う不確定な建設コストを削減することができる。 6. 結 言 原子力発電所の安全運転を前提として、それによる経済的便益と地球温暖化による人類が直面している深刻なリスクを低減させることが可能となる.再生可能エネルギーの利用は推進すべきであるが、安全性を向上させた原子力発電とのベストミックスを推進し、CO2 の排出を大幅に削減することが重要である。
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