福島第一原子力発電所3号機使用済燃料取り出し完了までの道のり
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カテゴリ: 第17回
福島第一原子力発電所3号機
使用済燃料取り出し完了までの道のり
Completion of Spent Fuel Removal from Fukushima Daiichi NPS Unit 3
東京電力HD(株)
中島
典昭
Noriaki NAKASHIMA
Non-Member
東京電力HD(株)
土井
秀信
Hidenobu DOI
Non-Member
東京電力HD(株)
清水
研司
Kenji SHIMIZU
Non-Member
東京電力HD(株)
野田
浩志
HIROSHI NODA
Non-Member
東京電力HD(株)
原
貴
TAKASHI HARA
Non-Member
Abstract
At Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Unit 3, the Spent Fuel Pool(SFP) was buried in rubble due to the hydrogen explosion. In order to keep the Spent Fuel stored in the SFP safe, we removed them to the Common Spent Fuel Pool, which is not damaged by the explosion. This paper describes rubble removal, installation of Spent Fuel Removal System and Spent Fuel Removal at Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Unit 3.
Keywords: Spent Fuel Pool, Spent Fuel Removal, Fukushima Daiichi NPS, Decommissioning, Remote control system
1.はじめに
震災が発生した2011 年3 月の時点で、福島第一原子力発電所の1~4 号機の使用済燃料プールには、あわせて約3000 体の燃料を保管していた。震災後1~4 号機は爆発による建屋損傷、または放射性物質放出による放射 線量上昇等により、震災前と大きく異なる厳しい環境と なったことから、使用済燃料プール内の燃料をより安定 な状態で保管・管理するため、同じ発電所構内にある別 の建屋のプール(共用プール)へ移送する計画とした。
3 号機では、爆発により建屋上部に散乱した瓦礫を撤去し、放射線量を低減させるため、除染・遮へいを行っ た。さらに放射性物質の飛散を抑制するため建屋上部に ドーム型のカバーを設置した。また作業員の被ばく線量 を抑えるため遠隔操作できる燃料取扱設備を設置し、2019 年4 月より燃料取り出し作業を開始し、2021 年2 月に燃料取り出し作業を完了した。
本稿では3 号機における燃料取り出しの取り組みについて紹介する。
連絡先:中島典昭、〒979-1392 福島県双葉郡大熊町大字夫沢字北原 22 番地、所属:東京電力HD(株)福島第一廃炉推進カンパニー福島第一原子力発電所
E-mail: nakashima.noriaki@tepco.co.jp
2.瓦礫撤去及び除染・遮へい・カバー設置
2011 年3 月時点で、3 号機使用済燃料プール内には、
566 体の燃料を保管していた。原子炉建屋の天井と変形した燃料交換機がプール内に落下していた。これらの大 型瓦礫は遠隔操作式のクローラークレーンを用いて撤去 した。現場には複数台のカメラを配置し、立体感や遠近 感を得て操作しやすくした。大型瓦礫撤去後に集積・吸 引・はつりの機能を備えた遠隔操作の装置により散在し ていた小型瓦礫の撤去や床表面のはつりを実施した。
その後、最大厚さ250mm の鋼板の遮へい体を設置し、燃料取扱設備等の設置に要する有人作業が可能なレ ベル(1mSv/h オーダー)まで線量低減を図った。
線量低減後、門型架構と門型架構上部にドーム屋根を 設置する構造で、燃料取り出し用カバーを設置した。
3.主要設備
燃料取り出し作業には、燃料上部に堆積した瓦礫を撤 去し、燃料を取り出すための燃料取扱機、燃料を共用プ ールまで移送するための輸送容器、輸送容器を移送する ためのクレーンが必要となる。また作業員の被ばく線量 を抑えるため、燃料取扱機、クレーン、輸送容器は遠隔 操作が可能な仕様とした。
Fig.1 Appearance of Unit 3 Spent Fuel Removal System
燃料取扱設備
燃料取扱設備は燃料取扱機、クレーンで構成される。 これらはいずれも門型構造であり、使用済燃料プール上 部に設置した。
燃料取扱機はブリッジ、燃料把握機、テンシルトラ ス、マニピュレータ等で主に構成される。燃料把握機、 テンシルトラスはブリッジ上を横行する。テンシルトラ スには2 本のマニピュレータを取り付けており、片方のマニピュレータの先端は瓦礫の把持、切断など作業に応 じて各種の治具に取り替えることが可能な構造となって いる。燃料取扱機は吊りワイヤーの二重化やインターロ ック機能等により、燃料の落下防止や、燃料が過度に吊 り上げられることを防止する等の安全対策を講じた。
クレーンはブリッジ、トロリ、主巻、補巻で主に構成 される。トロリには主巻と補巻を備え、ブリッジ上を横 行する。輸送容器の吊り上げは主巻で行う。補巻の先端 は輸送容器の蓋を締め付ける装置(蓋締付装置)を接続 することが可能な構造となっている。クレーンは吊りワ イヤーの二重化やインターロック機能等により、輸送容 器の落下防止や、予め定められた動作範囲から逸脱する ことを防止する等の安全対策を講じた。
燃料取扱機及びクレーンは、放射線量の低い遠隔操作 室内に設置された操作卓にて操作する。また燃料取扱 機、クレーン等に取り付けた耐放射線カメラからの映像 を遠隔操作室内のモニタで確認する。
輸送容器
震災前に使用していた輸送容器は作業員が蓋締めや、 容器表面の除染等を行う設計であったため、これらを遠 隔操作で対応可能な輸送容器を新たに設計、製造した。 輸送容器は7 体の燃料を収納することが可能であり、密封、除熱、遮へい、未臨界の安全機能及び構造強度を有
している。
輸送容器の蓋締めは、蓋締付装置を遠隔操作して蓋ボ ルトを締め付けることができる。また蓋のシール部に空 気圧を加えて密封性を確認する。輸送容器の表面には突 起物を設けず、塗装には除染性に優れた塗料を採用して おり、使用済燃料プールから吊り上げた後、容器表面の 洗浄が容易な構造としている。
4.遠隔操作訓練
燃料取り出し作業は、使用済燃料プール近傍に作業員 を配置せず、遠隔操作室にてカメラ映像を確認しながら 燃料取扱設備を操作するため、操作技術の習熟が必要で ある。このため、メーカの工場内に模擬のプールを準備 し、燃料取扱設備を用いた操作訓練を実施した。操作訓 練は、①瓦礫撤去、②模擬燃料の取り出し、③模擬輸送 容器の取扱い等について実施した。また操作訓練によっ て得られた知見に基づき、設備改善を図る他、作業手順 書を改善し、現場作業の更なる安全性向上を図った。
また3 号機に燃料取扱設備を設置した後も、模擬燃料を用いて遠隔操作の訓練を行った。
5.燃料取り出し作業
燃料取扱設備を用いて燃料上部に堆積した瓦礫を撤去する作業を進め、2019 年4 月から燃料取り出し作業を開始した。2021 年2 月に84 回目の燃料取り出し作業を終
え、全566 体の燃料取り出しを完了した。燃料取扱設備に発生した不具合に対しては、一つひとつ原因を究明 し、再発防止対策に取り組むとともに、迅速な復旧、対 応が可能なよう交換用部品の手配、対応手順の整備を行 った。
一部の燃料は瓦礫落下の影響で燃料のハンドルが変形 しており、専用のつかみ具や輸送容器の改造等、特別な 対応を要した。また、一部の燃料は隙間に入り込んだ瓦 礫の影響で引き抜けない状態となっており、治具による 干渉解除対応を要した。
6.おわりに
協力企業と連携し、遠隔操作による3 号機の燃料取り出し作業を安全に完了することができた。今回得られた 知見を活かし、引き続き他号機の燃料取り出しを着実に 進めていく。